経済・経済学に関するメモ。

松原聡
市場経済とは、市場を通じてモノ・サービスの取引(売買)が自由に行われている経済のことをいいます(松原聡 『日本の経済 (図解雑学-絵と文章でわかりやすい!)』 ナツメ社、2000年、20頁)。

概要

日本経済新聞社
経済学でいう市場は建物や仲買人をさすのではない。需要と供給が折り合って、価格が形成されていく過程のことだ(日本経済新聞社編著 『いやでもわかる日本経済』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2003年、22頁)。
野口旭
市場経済というのは、価格の調整を通じて社会全体の有限な資源がうまく配分されていくという経済制度です(野口旭 『ゼロからわかる経済の基礎』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、110頁)。
小塩隆士
市場メカニズムは、限られた資源を最も効率的に配分するきわめて優れた仕組みです。そして、市場メカニズムが十分機能していれば、人々は社会における生産活動に貢献した分だけ報酬として受け取ることができます(小塩隆士 『高校生のための経済学入門』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2002年、94頁)。
ウォルター・ブロック
市場経済は、指令によって管理される代わりに、利潤と損失のメカニズムで動いていく(ウォルター・ブロック 『不道徳な経済学: 転売屋は社会に役立つ』 橘玲訳、早川書房〈ハヤカワ文庫NF〉、2020年、265頁)。
ウォルター・ブロック
市場経済は、個人が自由意思によって互いに契約を交わす権利を保障することで成立している(ウォルター・ブロック 『不道徳な経済学: 転売屋は社会に役立つ』 橘玲訳、早川書房〈ハヤカワ文庫NF〉、2020年、137頁)。
中谷巌
市場経済では、何を消費するかについての判断は、政府の役人がするのではなくて、個人が自分の責任でするというのが基本です(中谷巌 『痛快!経済学』 集英社〈集英社文庫〉、2002年、178頁)。
伊藤元重
市場経済の場合、実際の資源配分を決めるのは一つひとつの企業であり、あるいは一人ひとりの消費者です。末端の個々の経済主体の行動が集約されて、経済全体の資源配分につながっていくのです。そして、市場経済において資源配分を決める上で極めて重要な役割を果たしているのが、価格ということになります(伊藤元重 『はじめての経済学〈上〉』 日本経済新聞出版社〈日経文庫〉、2004年、142頁)。

利点

大竹文雄
スーパーに商品がたくさんあり、売れ残りや、品切れが少ないのは、市場経済がうまく機能しているからである(大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、67頁)。
岩田規久男
市場経済とは価格の持つこの誘因機能をうまく利用して、経済の成長・発展を目指す経済といってもよい(岩田規久男 『経済学を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、1994年、27頁)。
岩田規久男
右に述べた市場経済のメカニズムの重要な点は、個人や企業の自由で自発的な行為に委ねながら、資源の無駄使いを防ぐという点である(岩田規久男 『経済学を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、1994年、105頁)。
岩田規久男
バブルが発生したり、環境問題などが存在するケースを別にすれば、市場経済には各種の資源を生産性の最も高い部門に配分するメカニズムが存在する(岩田規久男 『マクロ経済学を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、1996年、229頁)。
野口旭、田中秀臣
市場システムには、あたかも「神の見えざる手」のように、こうした「社会的に最適な生産および消費」を自動的に実現させるようなメカニズムが備わっている。これこそが、アダム・スミス以来の経済学が育んできた、経済学的思考の核心部分にほかならない。経済学者は一般に、「市場で実現できることは、政府ではなく市場にゆだねるべきである」と主張するが、その根拠はまさしくこの論理のなかに存在する(野口旭・田中秀臣 『構造改革論の誤解』 東洋経済新報社、2001年、32頁)。
ウォルター・ブロック
政府による法的禁止よりも市場にまかせたほうがより大きな成功が期待できる理由として、市場の柔軟性を挙げることもできる。政府はたったひとつの包括的なルールしかつくることができない。どんなにがんばっても例外が一つか二つ認められる程度だ。市場にそのような制限はない。その柔軟性と複雑性は、市場参加者の創意工夫によって生み出されるものだからだ(ウォルター・ブロック 『不道徳な経済学: 転売屋は社会に役立つ』 橘玲訳、早川書房〈ハヤカワ文庫NF〉、2020年、141-142頁)。
大竹文雄
市場競争とは、いわばインセンティブの与えられ方の一つである。厳しい競争にさらされることはつらいかもしれないが、私たちは競争そのものの楽しさや競争に打ち勝った時の報酬があるから競争に参加する。しかも、市場競争を通じた切磋琢磨は、私たちを豊かにしてくれるという副産物をもたらす。一方で、市場競争の結果、格差が生まれてしまうのは事実である(大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、xi頁)。
タイラー・コーエン
タイラー・コーエンは、カネ勘定ばかりで人間を疎外するといって目の敵にされる市場経済こそが実は多様なインセンティブを許容する仕組みであって、インセンティブが制限されている社会主義のほうがむしろ金銭的なインセンティブに硬直しがちだ、なんてことも書いている(若田部昌澄・栗原裕一郎 『本当の経済の話をしよう』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2012年、34頁)。
スティーヴン・ランズバーグ
エコノミストは、誰も資源から利益を得ないよりは誰かが利益を得た方がいいと考えるがために、私的所有制度の方が優れていると考える(スティーヴン・ランズバーグ 『ランチタイムの経済学-日常生活の謎をやさしく解き明かす』 佐和隆光・吉田利子訳、日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2004年、77頁)。
スティーヴン・ランズバーグ
所有権が十分に守られており、市場が競争的であれば、費用に対する便益が最大になるように市場価格の決まることが理論的にわかっている。この条件が満たされておれば、いちいち費用と便益を計算しなくても、市場メカニズムによる価格決定に比べて価格管理は悪であると自信を持って言い切れる(スティーヴン・ランズバーグ 『ランチタイムの経済学-日常生活の謎をやさしく解き明かす』 佐和隆光・吉田利子訳、日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2004年、168頁)。
小塩隆士
性別や国籍、出身地、親の職業などに関係なく、みんなが共通の土俵の上で平等に勝負できる社会は、「機会の平等」が維持されている社会といえます。市場メカニズムが基盤になっている社会は、この「機会の平等」が成り立ちやすい社会といえるでしょう(小塩隆士 『高校生のための経済学入門』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2002年、94頁)。
ロバート・H・フランク
アメリカなどの先進国の生活水準は、一八世紀に所有権という考え方が明確化かつ強化されて以来、約四〇倍も向上した。対照的に、所有権という考え方ない社会が豊かになることはまれだった。明確な法的所有権を確立できなくては、設備投資をして富を生みだそうという意欲は生まれてこない。しかし、所有権は莫大な利益を生みだす一方で、費用も生じさせる(ロバート・H・フランク 『日常の疑問を経済学で考える』 月沢李歌子訳、日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2013年、175頁)。
ウォルター・ブロック
市場経済は、分業と交換によってわたしたちにとてつもない富をもたらしている。もしわたしたちが自給自足で暮らしたら、なにが起きるか想像してみてほしい。わたしたちの生活は、ほかの人たちとの取引によって支えられている。市場経済が機能しなくなったら、人類のすべてとは言わないまでも、その大半が死滅するであろう(ウォルター・ブロック 『不道徳な経済学: 転売屋は社会に役立つ』 橘玲訳、早川書房〈ハヤカワ文庫NF〉、2020年、153頁)。
中谷巌
マーケットメカニズムの果たしている役割の本質、効率的な資源配分の意味、所得分配の決まり方、人々にインセンティブを巧みに与えている機能など、マーケットメカニズムがもっているすばらしい力、すごさ、というものを十分に理解して欲しいのです。その上で、初めて、私たちは、「しかし、じつはマーケットといえども万能ではない」という議論に進むことができるのです。もし、マーケットのもつすごい力を十分に理解しないで、マーケットの欠点だけをあげつらうと「何だ、マーケットって大したことないんだね。じゃあ、競争を制限したり、政府にもっといろんなことをやってもらおうか」という誤った方向に関心がいってしまう可能性があるからです(中谷巌 『痛快!経済学』 集英社〈集英社文庫〉、2002年、175頁)。

欠点

中谷巌
市場経済の考え方は、そのような一見まちがった判断をしている人たちであっても、あくまで個人の自主性を尊重しようというものです(中谷巌 『痛快!経済学』 集英社〈集英社文庫〉、2002年、178頁)。
西川潤
現実の市場では完全競争の条件が満たされることは少ない(日本経済新聞社編著 『やさしい経済学』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、112頁)。
香西泰
市場経済はショックに対して敏速に適応する半面、不安定さを内包している面も否定できない(日本経済新聞社編著 『やさしい経済学』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、20頁)。
香西泰
不安定と並び市場経済の問題とされるのが分配の不平等だ(日本経済新聞社編著 『やさしい経済学』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、21頁)。
マイケル・サンデル
格差が広がる時代に、あらゆるものを市場化するということは、懐の豊かな人とそうでない人がますますかけ離れた生活を送ることを意味する(マイケル・サンデル 『それをお金で買いますか--市場主義の限界』 鬼澤忍訳、早川書房、2012年、284頁)。
岩田規久男
市場は所得と資産を公正に、あるいは平等に分配することはできない。それは、何が公正な、あるいは平等な分配かは価値判断の問題だからである(岩田規久男 『経済学的思考のすすめ』 筑摩書房、2011年、203-204頁)。
野口旭、田中秀臣
現実は理論そのものではない。現実の経済には、市場の理想的な働きを妨げるさまざまな要素が存在している(野口旭・田中秀臣 『構造改革論の誤解』 東洋経済新報社、2001年、32頁)。
伊藤修
これ以外にも市場競争だけで解決できない重大な問題がある。景気変動やバブルのような不均衡の累積と共倒れによる害悪がなくせないことのほかに、所得分配、格差の問題がそうだ。市場経済は、放っておけば貧富の差を雪だるま式に拡大する法則をもち、社会的に公正とは思われない状態にまで至る(伊藤修 『日本の経済-歴史・現状・論点』 中央公論新社〈中公新書〉、2007年、191頁)。
野口旭
市場経済の宿命ともいえる問題点の一つは、「所得分配の不平等性」です。上述のように、市場経済においては、人々の所得は、自身の労働が市場でどのように評価されるのかによって決まります。したがって、そこには必ず、所得の不平等が生じます。イチロー選手のような高額所得者がいる一方で、何らかのハンデを負っている社会的弱者などは、非常に低い所得しか得られない場合が多いのが現実です。市場経済はさらに、こうした所得の不平等の結果として、「所有の不平等」がもたらされます(野口旭 『ゼロからわかる経済の基礎』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、111頁)。
立岩真也
市場経済そのものが私的所有を前提にすることで、私的所有の条件を満たしていない人々の生き方を困難にしてしまう、というのが立岩の見方だ(田中秀臣 『不謹慎な経済学』 講談社〈講談社biz〉、2008年、113頁)。
マイケル・サンデル
市場はものを分配するだけではなく、取引されるものに対する特定の態度を表現し、それを促進するのだ(マイケル・サンデル 『それをお金で買いますか--市場主義の限界』 鬼澤忍訳、早川書房、2012年、20頁)。
マイケル・サンデル
経済学者はよく、市場は自力では動けないし、取引の対象に影響を与えることもないと決めつける。だが、それは間違いだ。市場はその足跡を残す。ときとして、大切にすべき非市場的価値が、市場価値に押しのけられてしまうこともあるのだ(マイケル・サンデル 『それをお金で買いますか--市場主義の限界』 鬼澤忍訳、早川書房、2012年、20頁)。
マイケル・サンデル
重要な社会的慣行--兵役、出産、教育と学習、犯罪者への懲罰、新しい国民の受け入れなど--の正しい評価法も問われる。社会的慣行を市場にゆだねると、その慣行を定義する基準の崩壊や低下を招きかねない(マイケル・サンデル 『これからの「正義」の話をしよう--いまを生き延びるための哲学』 鬼澤忍訳、早川書房、2010年、340-341頁)。
イマヌエル・カント
カントに言わせれば、大多数の人が市場の自由や消費者の選択だと考えているものは真の自由ではない。なぜなら、そこで満たされる欲望はそもそも、自分自身で選んだものではないからだ(マイケル・サンデル 『これからの「正義」の話をしよう--いまを生き延びるための哲学』 鬼澤忍訳、早川書房、2010年、150頁)。

反論

野口旭
「分配と所有の不平等が存在しない社会」という考え方は、市場経済へのアンチ・テーゼとして、きわめて古くから存在しています。そして、その理念に基づいた経済社会というものが、実際に数多く存在していました。それは、数は少なくなったとはいえ、現在でも存在します。その経済とは、社会主義経済です(野口旭 『ゼロからわかる経済の基礎』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、115頁)。
野口旭
市場経済=資本主義経済は時として、社会の成員の間に、極端なまでの所得格差、資産格差を生み出します。それが社会公正や社会理論の観点からみて許容されるべきものかどうかは、市場経済それ自体の評価とはまったく別の問題です(野口旭 『ゼロからわかる経済の基礎』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、169-170頁)。
福田徳三
福田はまた効率性を非常に重視しており、「市場によって資源配分が効率的に行なわれれば、社会的な強者と社会的な弱者が生まれることが通常であり、それ自体は悪いことではない」と言い切っている(田中秀臣 『不謹慎な経済学』 講談社〈講談社biz〉、2008年、56頁)。
大竹文雄
市場競争は、人々の間に発生する所得格差の問題を解決してはくれない。それでも、社会全体の所得が上昇するという意味で、市場経済が人々を豊かにするので。豊かな人から貧しい人に所得の再配分をする余力も生まれて、貧しい人の生活水準を上げることもできる(大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、69頁)。
大竹文雄
一人勝ちが発生してしまうと市場メカニズムはうまく機能しないことが多い。その際大事なことは、市場競争そのものが問題だと結論し、競争を否定するようなルールを設定するのではなく、市場競争がうまく機能するようにルールを設定していくべきことではないだろうか(大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、232頁)。
大竹文雄
競争メカニズムを使うことが適切ではなかったり、うまく機能しない分野が存在することは事実である。しかし、現実の世界では、私たちは市場競争とうまく付き合って生きていかなければならない。そういう現実のなかで、市場競争のデメリットばかり強調してもはじまらない。私たちは、市場競争のメリットを最大限生かし、デメリットを小さくするよう規制や再分配政策を考えるという、市場競争に対する共通の価値観をもつべきではないだろうか(大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、78頁)。
香西泰
市場経済は環境問題を解決できないと批判される。しかし、社会主義の国々でもすさまじい環境破壊が起きた。環境問題の解決には、環境保護の市民の声や運動が十分に尊重される民主主義体制が必要だ。その結果、環境規制がなされれば、市場はそれを守る(日本経済新聞社編著 『やさしい経済学』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、23頁)。
香西泰
内部化により環境保護へのインセンティブがより強まり、自発的な環境破壊防止への努力が広がる(日本経済新聞社編著 『やさしい経済学』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、24-25頁)。

政府の介入

日本経済新聞社
市場経済の利点は、企業が競争することを通じて、よい製品やサービスが提供されることだ。だが、実際には企業間の競争が妨げられる事例に事欠かない。弱い立場にある企業が取引のうえで不当な扱いを受ける。業界内の談合で、本来は競争の中で決められるべき価格が不当につりあげられる。市場へ参入しようとしている企業の邪魔をする--。形は様々だ。民間の活動だからとこうした事例を放置していれば、消費者は市場経済のメリットを享受できない。そこで、こうした活動を監視し、問題があればやめさせる「市場の番人」のような組織が必要になる(日本経済新聞社編著 『いやでもわかる日本経済』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2003年、177頁)。
竹中平蔵
民間企業の活動はマーケットのルールに基づいて民間が行うべきものですが、マーケットのルールに違反した人をを取り締まるのは政府の役割です(竹中平蔵 『あしたの経済学』 幻冬舎、2003年、132頁)。
佐和隆光
自由で競争的な市場経済は効率的だが、公正までは担保しない。公正を担保するのは政府の役割である(日本経済新聞社編著 『世界を変えた経済学の名著』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2013年、76-77頁)。
野口旭
市場経済の持つそうした「弱肉強食」的な弊害は、社会保障制度の充実やセーフティネットの拡充などによって、ある程度までは緩和することができます(野口旭 『グローバル経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、231頁)。
田中秀臣
政府自身でさえかならずしも「完全な情報」を所有しているとはかぎらない(田中秀臣 『日本型サラリーマンは復活する』 日本放送出版協会〈NHKブックス〉、2002年、201頁)。
日本経済新聞社
市場メカニズムをゆがめて、価値がないものまで助けてしまうような政策は有害だ。新規参入を促すことの裏側には、価値のないものの退出を促すことがある(日本経済新聞社編著 『いやでもわかる日本経済』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2003年、179頁)。
池田信夫
20世紀の経済学が示したように、見えざる手によって効率的な状態が効率的な状態が成立する条件は非常に特殊なもので、これを補う仕組みがないと市場はうまく機能しない。ただし、それは政府が介入すればうまくいくことを意味しない。スミスも指摘したように、特定の業者を政府が保護する重商主義は、すべての国を貧しくする(ニューズウィーク日本版編集部編著 『経済超入門 ゼロからわかる経済学&世界経済の未来』 CCCメディアハウス、2017年、192-193頁)。
ミルトン・フリードマン
フリードマンは基本的には、市場に任せられるところはすべて任せてよいが、いくつか例外がある。自由主義者は無政府主義者ではないと言っています(浜田宏一・若田部昌澄・ 勝間和代 『伝説の教授に学べ! 本当の経済学がわかる本』 東洋経済新報社、2010年、150頁)。
ミルトン・フリードマン
大恐慌も、他の時代に発生した大量失業も、実際には政府の経済運営の失敗が原因で発生したのである。けっして市場経済が本質的に不安定だからではない。(中略)経済の安定的のためにも成長のためにもいま必要なのは、政府の介入を減らすことであって、断じて増やすことではない(竹中平蔵 『経済古典は役に立つ』 光文社〈光文社新書〉、2010年、212頁)
野口旭、田中秀臣
市場の機能を阻害する最大の要素は、市場経済に対する政府の関与そのものでもある。最も典型的なのは、公的企業である。すでに述べたように、公的企業には効率的な資源配分を実行するインセンティブが備わっていない。(中略)政府関与による市場機能の阻害のもう一つの根源は、政府規制である。(中略)右記の政府規制や優遇政策の多くは、既得権として固定化し、さまざまな利権を発生させるだけでなく、資源の産業間、地域間の移動を妨げることで、経済の効率性を恒常的に悪化させる原因となる(野口旭・田中秀臣 『構造改革論の誤解』 東洋経済新報社、2001年、33-34頁)。
岩田規久男
市場とは資源の配分や人々の間の所得の分配を決める手段なのであって、規制やルールのあり方によって、その性能は良くも悪くもなる。性能に問題のあることが判明した場合には、性能が悪かった原因を徹底的に追究し、性能が良くなるように、規制やルールを変えることが重要である(岩田規久男 『スッキリ!日本経済入門-現代社会を読み解く15の法則』 日本経済新聞社、2003年、41頁)。
香西泰
市場経済から生まれる経済的弱者の保護を口実として、市場への規制や介入が正当化される例は多い。(中略)善意で出発した弱者保護政策が、むしろ一部の既得権益を擁護する結果になり、大勢の人々の生活をかえって苦しくするような副作用を伴うことは、珍しいことではない。こうした帰結を避けるには、市場経済と、規制や介入による不公平の実態を冷静に比較・観察することが必要だ。実状に当たってみると個々の不平等の是正よりも一般的な所得再配分政策をとることが望ましい場合が多い(日本経済新聞社編著 『やさしい経済学』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、21頁)。

資本主義と市場経済

アダム・スミス
『道徳感情論』は自由主義的な市場経済に際して、それを経済活動として実行する人々の道徳が重要であるということを主張したのであり、非常に価値の高い主張である(橘木俊詔 『朝日おとなの学びなおし 経済学 課題解明の経済学史』 朝日新聞出版、2012年、31頁)。
ウォルター・ブロック
自由経済は、道徳的な制度ではない。消費者の欲望を満たす手段である以上、市場はその参加者の程度に応じて道徳的であるにすぎない(ウォルター・ブロック 『不道徳な経済学: 転売屋は社会に役立つ』 橘玲訳、早川書房〈ハヤカワ文庫NF〉、2020年、62頁)。
岩田規久男
スミスの言う「神の見えざる手」は、自由な価格機構の存在によって実現するのである。価格機構の前では、身分も階級もない。市場経済は経済的民主主義と一体であると言える(岩田規久男 『スッキリ!日本経済入門-現代社会を読み解く15の法則』 日本経済新聞社、2003年、11頁)。
岩田規久男
このような市場経済、あるいは資本主義経済の不安定性が最も鋭い形で現れたのは、一九二九年に米国から始まった世界大不況である(岩田規久男 『マクロ経済学を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、1996年、68-69頁)。
アンナ・シュウォーツ
金融当局が政策的な誤りを犯さないのであれば、本来、金融危機は短期的な現象であり、公衆の追加的な通貨への需要が緩和されれば危機は自然に終息する(田中秀臣 『ベン・バーナンキ 世界経済の新皇帝』 講談社〈講談社BIZ〉、2006年、127頁)。
ピュー研究所
「貧富の格差が生じるとしても、自由な市場経済で多くの人々はより良くなる」という考え方にあなたは賛成するだろうか。アメリカの調査機関であるピュー研究所は、二〇〇七年のピュー・グローバル意識調査で、この質問を行っている。(中略)主要国のなかで日本の市場経済への信頼は最も低く、四九パーセントの人しかこの考え方に賛成していない。これに対してアメリカでは七〇パーセントの人が賛成している。(中略)つまり大陸ヨーロッパ諸国とロシアは比較的市場に対する信頼が低い国だ(大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、6-7頁)。
若田部昌澄
世界中で日本ほど市場経済に嫌悪感を持っている人の割合が多い国はないのね。「市場経済に信頼を置く」という人が、アメリカ、イギリス、カナダ、スウェーデン、インド、中国、韓国などでは7割以上にのぼるのに、日本は49%しかいない(若田部昌澄・栗原裕一郎 『本当の経済の話をしよう』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2012年、111頁)。

社会主義と市場経済

小塩隆士
かつての社会主義諸国が体制を維持できず、市場経済に移行したのも、公平性をあまりに追及し、効率性がおろそかになった結果と言えるでしょう(小塩隆士 『高校生のための経済学入門』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2002年、98頁)。
池田信夫
市場と同じ効率を実現する社会主義は理論的には可能だとされたが、実際には計画を実施するのに必要な情報が膨大で、実用にならないことが40年代に判明した(ニューズウィーク日本版編集部編著 『経済超入門 ゼロからわかる経済学&世界経済の未来』 CCCメディアハウス、2017年、202頁)。
コルナイ・ヤーノシュ
すべての人々の目的関数を明確に情報として与えられている場合は、オペレーション・リサーチでかなりのことはわかるが、そんなことはあり得ないので、政府が市場の代わりを演じることはできないというものだった。結果的に、市場経済がいかに膨大な計算を自律分散的に行っているかが明らかになった(竹中平蔵 『経済古典は役に立つ』 光文社〈光文社新書〉、2010年、189頁)。
中谷巌
社会主義経済が失敗したのは、マーケットという偉大な人類の発明を有効に利用できなかったからでした。(中略)今では、中国も「社会主義市場経済」を目指すと言いはじめていますが、そのうち、社会主義という言葉が消えていくのではないでしょうか。というのは、社会主義という言葉と市場経済という言葉は、基本的に相容れないものだからです。市場経済はあくまで個人の経済活動の自由を前提にしていますが、社会主義は個人の自由な政治活動を禁じているからです。経済活動は自由だけれども、政治活動は不自由という体制はおそらく長くはつづかないと思われます(中谷巌 『痛快!経済学』 集英社〈集英社文庫〉、2002年、174頁)。

歴史

竹中平蔵
13世紀にはじまって19世紀半ば頃まで、市場システムへの拒絶反応状況は続いたといわれている。その間、市場メカニズムは、“神を冒涜する行為”であり、“不法行為”であり、“平穏な生活を脅かす行為”とされた(竹中平蔵 『経済古典は役に立つ』 光文社〈光文社新書〉、2010年、27頁)。

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貨幣・通貨

資本主義・市場経済

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