経済・経済学に関するメモ。

森川友義
税金には、おもなものに、利潤を生んだ企業に対して課せられる「法人税」、わたしたちが稼いだお金に対して課せられる「所得税」、財やサービスを消費したときに課せられる「消費税」、そしてすでに持っている不動産等にの財産に対して課せられる「固定資産税」の4つがあります(森川友義 『どうする!依存大国ニッポン』 ディスカヴァー・トゥエンティワン〈ディスカヴァー携書〉、2009年、126頁)。
小塩隆士
直接税と間接税はお互いの欠点を補い合うという面を持っています。そのため、どちらかだけで税を集めることは望ましくないことは明らかです。しかし、それではどのように組み合わせるの仕方がよいうのかという点については、経済学者や財政学者の間で意見が分かれています。そしてその対立は、効率性と公平性の組み合わせをどのように考えるかの問題にもかかわってきます(小塩隆士 『高校生のための経済学入門』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2002年、195頁)。
高橋洋一
税制はあるべき社会像に対する価値判断が根底にあるということです。(中略)どういう所得再分配方法をとるかは、趣味嗜好や好みの問題といっています(高橋洋一 『日本の大問題が面白いほど解ける本 シンプル・ロジカルに考える』 光文社〈光文社新書〉、2010年、167-168頁)。
伊藤元重
多くの場合、税を課すことが、資源配分に追加的なゆがみを生じさせます。そこで、政府に必要な税収を確保するという制約の下で、できるだけ税による資源配分のゆがみを小さくすることが求められます(伊藤元重 『はじめての経済学〈下〉』 日本経済新聞出版社〈日経文庫〉、2004年、36頁)。
門倉貴史
地下経済と税負担の間には密接な関係があり、一般に直接税や間接税などの税率が高まると地下経済が拡大するといわれる(門倉貴史 「日本の地下経済と税」『税とは何か (別冊環)』7号、藤原書店、2003年、108頁)。
UFJ総合研究所調査部
税金や社会保険料という公的負担については各人が認識できるのですが、それに対するメリットはなかなか目に見えてきません。(中略)自分たちの払った税金が、こうしたものとは別に、無駄に使われているのではないかと疑ってしまうと負担感が出てきます。また、脱税のニュースや保険料未納などの話を耳にすると、自分は人よりも多く負担しているのではないかという不公平感が生まれてきます(UFJ総合研究所調査部編著 『50語でわかる日本経済』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2005年、40頁)。
UFJ総合研究所調査部
税金の使われ方や集め方が適切なものであれば、国民も税金を払うことに納得します。でも、それを誰が決めるのでしょうか。国民全員が納得するのは実際に無理でしょう。そこで、税金がムダに使われていないか、そして税制が適切か、国民が選んだ議員がチェックするのです。議会で定められた法律に基づかないと税金は集められません。この考え方を「代表なければ課税なし」といいます。一八世紀の英国議会は植民地であった米国に印紙税を課する法律を決めましたが、英国議会に代表を送っていなかった米国では反対運動が巻き起こり、その後の独立戦争へとつながりました(UFJ総合研究所調査部編著 『50語でわかる日本経済』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2005年、188頁)。
ジョン・ロック
所有権に関しては、ロックの考え方では民主的に選ばれた政府には国民に課税する権利がある。だがそれは、同意に基づく課税でなければならない。なぜなら課税とは公共の利益のために国民の財産を取り上げることだからだ。だが、税制を定めたり徴収したりするときに国民一人一人から同意を取り付ける必要はない。必要なのは社会に参加し、政治的な義務を引き受けることに対し、事前に同意を得ておくことだ。一度その義務を引き受ければ、多数派に束縛されることに賛成したのと同じことになる(マイケル・サンデル 『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(上)』 NHK「ハーバード白熱教室」制作チーム・小林正弥・杉田晶子訳、早川書房、2010年、161頁)。
マイケル・サンデル
リバタリアンによれば、再分配のための課税は一つの形の強要であり、さらに言えば盗みである。国家には富裕な納税者に貧者のための社会計画を支えるよう強制する権限はない(マイケル・サンデル 『これからの「正義」の話をしよう--いまを生き延びるための哲学』 鬼澤忍訳、早川書房、2010年、81頁)。
ウォルター・ブロック
徴税とは、善良な市民に対する、国家による暴力的な侵害にほかならない。払った税金の見返りとして国家がモノやサービスを提供しているとしても、この結論はすこしも変わらない。大事なのは、ここで言う「取引」(国家によるサービスと税金の交換)が強制されていることである。わたしたちは、この申し出を断る自由を持ってはいない(ウォルター・ブロック 『不道徳な経済学: 転売屋は社会に役立つ』 橘玲訳、早川書房〈ハヤカワ文庫NF〉、2020年、59頁)。
ロバート・ノージック
「働いて得た所得に対する課税は強制労働と同じである」(マイケル・サンデル 『これからの「正義」の話をしよう--いまを生き延びるための哲学』 鬼澤忍訳、早川書房、2010年、87頁)。
マイケル・サンデル
リバタリアンの見方によれば、課税(私の稼ぎを取り上げること)から強制労働(私の労働を取り上げること)さらに奴隷制(私が自分自分を所有していることの否定)までが道徳的に連続しているのである(マイケル・サンデル 『これからの「正義」の話をしよう--いまを生き延びるための哲学』 鬼澤忍訳、早川書房、2010年、88頁)。

応能負担と応益負担

竹中平蔵
税の徴収の考え方としては、まず応能負担という考え方があります。たくさんお金を稼ぐ人は税を支払う能力も大きいのでたくさん払ってもらおう、という考え方です。これに対して、応益負担という考え方があります。これは公的サービスをたくさん享受している人に税を多く負担してもらおうというもので、外形標準課税もこの考え方です(竹中平蔵 『竹中教授のみんなの経済学』 幻冬舎、2000年、60頁)。

直接税と間接税

松原聡
直接税は、収入や利潤の大小に応じて一定割合の税金を納める「累進課税」のかたちをとっています。収入や利潤が大きいほど納める税金の額も大きくなり、所得再分配による不平等の解消という効果を持っています。また、直接税には景気の影響を強く受けるという特徴があります(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、112頁)。
松原聡
間接税は税金を納める人と税金を負担する人が一致しないものを指します。その代表格は消費税です。(中略)こうした間接税の場合、同じ金額の消費に対して定められた税率が課されるため(消費税であれば5%)、お金持ちからたくさん税金をとるという所得再分配機能はありません。また間接税は景気の影響を受けにくく、安定した財源だと考えられています(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、114頁)。

日本の税制に関する議論

日本経済新聞社
実際には二二・九%(二〇〇二年度当初予算見通し)。米国の二六・七%、英国の四〇・〇%(一九九八会計年度)などと比べて低い。(中略)個人の所得税は所得水準によって一〇-三七%。地方税である住民税が五-一三%上乗せされ、実際の負担率は五-五〇%だ。別途、消費税なども払っている(日本経済新聞社編著 『そうか、わかった!いまどき日本経済-エコノ探偵団デフレの街を行く』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2002年、307-308頁)。
日本経済新聞社
公的年金や保険など社会保障負担も合わせて考える必要がある。税金に社会保障負担を加味した国民負担率は現在、約三七%(日本経済新聞社編著 『そうか、わかった!いまどき日本経済-エコノ探偵団デフレの街を行く』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2002年、308頁)。
松原聡
一般的に国民負担率(国民所得のうちの税金と保険料の占める割合)が4割を超えると国民は労働意欲をなくすといわれていますが、現在の日本の国民負担率はすでに4割なのです。よって、法人税率や個人の所得税率をいま以上に上げるのは現実的ではないでしょう(松原聡 『日本の経済 (図解雑学-絵と文章でわかりやすい!)』 ナツメ社、2000年、178頁)。
鈴木亘
消費税を上げても、所得税を上げても、ともに景気を悪化させて、収入が引き下げられることで、労働意欲を喪失する働きがある(鈴木亘 『社会保障亡国論』 講談社)(田中秀臣 『増税亡者を名指しで糺す!』 悟空出版、2018年、185頁)。
UFJ総合研究所調査部
私たちは財政再建のための増税議論だけではなく、経済社会構造の変化に合った新しい税制について考える必要があります。時代に合わない税制を続けていれば、一部の国民に税負担が集中して不満が爆発するか、税収基盤を喪失してしまうかどちらかになるでしょう(UFJ総合研究所調査部編著 『50語でわかる日本経済』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2005年、191頁)。
岡部直明
税制という、国の政策の最も基幹の部分を牛耳るのが、事実上財務官僚であるということは、国際的に見てきわめて異常な姿といえます(岡部直明 『ベーシック日本経済入門』 日本経済新聞社・第4版〈日経文庫〉、2009年、104頁)。

直間比率

松原聡
日本の場合、税金に占める直接税と間接税の比率(直間比率)は、直接税が7で、間接税が3の割合になっています。直間比率は国によってそれぞれです。アメリカは7対3、イギリスは6対4、ドイツとフランスは5対5です(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、114頁)。
松原聡
この直間比率が高いことは、日本の税収が景気に大きく左右される原因となっています。直間比率の是正は重要な税制改革の課題です(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、114頁)。

日本の税制の推移

若田部昌澄
江戸発展のもう一つの理由は意図せざる低税制です。(中略)当時の税は収穫されるお米ですから、どれだけ所得があるのかを先に捕捉しないといけなかった。その捕捉が非常に難しく、検地も一定のところまではやるけれども、山の奥のほうはやらないとか、お米以外の畑は検地しないとか抜け穴だらけでした。そのおかげで、これは予期しない結果ですが、税率が非常に低かったわけです(若田部昌澄 『もうダマされないための経済学講義』 光文社〈光文社新書〉、2012年、54頁)。
伊藤修
一九四〇年度の税制改正は大きな意味をもつ。それまでの日本の税制は、しだいに変化してきたとはいえ、地租や各種の間接税のウェイトが大きく、所得税や法人課税は小規模だった。ところが戦争のため可能なかぎりの税収をかき集める必要が生じて、法人税の体制を整え、また所得税を広く国民に課すyぷになった。大衆課税の性格が一気に強まり、直接税の比重が高まったのである(伊藤修 『日本の経済-歴史・現状・論点』 中央公論新社〈中公新書〉、2007年、51頁)。
中谷巌
日本の税制は第2次世界大戦後、アメリカの財政学者であるシャウプ博士が提案した「シャウプ勧告」とよばれる考え方を引きずるものと言われています。連合国軍は日本の財閥を解体し、民主的な政府のもとで国民に平等な生活をさせたい考え、当時としてはかなり思いきった直接税中心の税制を日本に持ち込んだのです(中谷巌 『痛快!経済学』 集英社〈集英社文庫〉、2002年、188頁)。

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