経済・経済学に関するメモ。

岩田規久男
このようにモノやサービスとの交換に用いられる「お金」を、経済用語では貨幣または通貨と呼ぶ(岩田規久男 『国際金融入門』 岩波書店・新版〈岩波新書〉、2009年、8頁)。

解説

内田勝晴
通貨の役割としては、交換手段、蓄蔵手段、価値尺度機能という三つを兼ね備えているのがよい(内田勝晴 『家康くんの経済学入門-おカネと貯蓄の神秘をさぐる』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2001年、80頁)。
野口旭
貨幣が定着し流通してくると、貨幣は通貨と位置づけられ、通貨制度として決まりごとをもつようになります(野口旭 『「経済のしくみ」がすんなりわかる講座』 ナツメ社、2003年、122頁)。
伊藤元重
このように通貨制度は、各国のマクロ経済政策の運営や貿易や投資に対する規制と深いかかわりがあります(伊藤元重 『はじめての経済学〈下〉』 日本経済新聞出版社〈日経文庫〉、2004年、169頁)。
野口旭
通貨は、現金通貨と預金通貨に大別されます。前者はお札(日本銀行券)と500円玉などの硬貨(補助紙幣)のこと、後者は普通預金、当座預金などの決済口座のことです(野口旭 『「経済のしくみ」がすんなりわかる講座』 ナツメ社、2003年、123頁)。

本位制度と管理通貨制度

野口旭
管理通貨制度 銀行券は金に交換されず、通貨の調整は政府や発券銀行が管理する制度(野口旭 『「経済のしくみ」がすんなりわかる講座』 ナツメ社、2003年、123頁)。
野口旭
日本の中央銀行は日本銀行(日銀)ですから、日本で通貨を管理しているのは日銀ということになります(野口旭 『「経済のしくみ」がすんなりわかる講座』 ナツメ社、2003年、124頁)。
田中秀臣
なぜなら政府・日銀は無限に自国通貨を市場に供給できるからだ(田中秀臣 『経済論戦の読み方』 講談社〈講談社新書〉、2004年、155頁)。
弘兼憲史、高木勝
家電メーカーは自社製品を保証する。これと同じように中央銀行も通貨を保証しなければならない。それは通貨の価値を下げないこと。つまり物価を安定させることだ(弘兼憲史・高木勝 『知識ゼロからの経済学入門』 幻冬舎、2008年、120頁)。
弘兼憲史、高木勝
必要以上のお金が市場に供給されると「金余り」の状態を生み、通貨価値が下落してインフレ(物価上昇)状態になる。逆に、市場に供給されるお金が不足すると「もの余り」の状態になり、デフレ(物価下落)になる。どちらの現象も回避したい日銀は、通貨供給量の動きを監視し、市場に出回る通貨量が適量となるよう調整する(弘兼憲史・高木勝 『知識ゼロからの経済学入門』 幻冬舎、2008年、122頁)。
内田勝晴
印刷などの製作コストが十数円の一万円札が、たんに日本国民みんながその価値を信じて疑わないからというだけで、立派に一万円の通貨として流通している(一応、法律で流通が保証されているが)(内田勝晴 『家康くんの経済学入門-おカネと貯蓄の神秘をさぐる』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2001年、147頁)。
田中秀臣
一万円札を紙くずだと国民全員が思えば、その瞬間から一万円札は本当に紙切れに成り下がるだろう(田中秀臣 『経済論戦の読み方』 講談社〈講談社新書〉、2004年、216頁)。

固定相場制と変動相場制

高橋洋一
変動相場制 為替レートを外国為替市場における外貨の需要と供給の関係に任せて自由に決める制度。フロートあるいはフロート制とも呼ぶ。それに対して各国政府間で為替レートを固定・維持する制度が固定相場制である(高橋洋一 『高橋教授の経済超入門』 アスペクト、2011年、43頁)。
ウォルター・ブロック
変動相場制のもとでは、二国間の通貨の価値に齟齬が生じれば、その差異は為替レートの変動によって自動的に調整される(ウォルター・ブロック 『不道徳な経済学: 転売屋は社会に役立つ』 橘玲訳、早川書房〈ハヤカワ文庫NF〉、2020年、180頁)。
ウォルター・ブロック
固定相場制に対する変動相場制の決定的な優位性は、為替レートの調整が自動的にされていることにある。それによって固定相場制のもとでは、通貨の価値が変動するごとに引き起こされてきた通貨危機を回避できるのである(ウォルター・ブロック 『不道徳な経済学: 転売屋は社会に役立つ』 橘玲訳、早川書房〈ハヤカワ文庫NF〉、2020年、180頁)。

シニョリッジ(通貨発行益)

田中秀臣
貨幣発行益とは、政府・日銀が発行する通貨や紙幣から、その製造コストを控除した分の発行利益のことである(田中秀臣 『経済論戦の読み方』 講談社〈講談社新書〉、2004年、77頁)。
内田勝晴
政府と日銀を、実質的には一体だと考えると、内部で国債という紙切れを動かすだけで、紙幣を発行していることになる。一万円札を印刷コストである十数円を引いた分がまるまる政府・日銀の差益金になるわけだ(内田勝晴 『家康くんの経済学入門-おカネと貯蓄の神秘をさぐる』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2001年、82頁)。
野口旭
もともと「シニョレッジ」という言葉は「王様の通貨発行利益」という意味でした。ただし、それはやりすぎるとインフレになってしまう。実際、藩札もただの紙切れになってしまった。しかし、少なくともその通貨が信任されている限りは、シニョレッジの効果はあります(田中秀臣・野口旭・若田部昌澄編著 『エコノミスト・ミシュラン』 太田出版、2003年、80-81頁)。

金融商品としての通貨

竹中平蔵
為替というのはその通貨に対する需要と供給で価格(この場合は為替レート)が上下するものですが、バーツの場合は需要と供給に関係なく、ドルに連動して上下する形になっていたのです(竹中平蔵 『竹中教授のみんなの経済学』 幻冬舎、2000年、147頁)。
弘兼憲史、高木勝
為替レートが変化するのは、通貨を商品のように扱い、需要と供給の市場原理が働いているからだ(弘兼憲史・高木勝 『知識ゼロからの経済学入門』 幻冬舎、2008年、154頁)。
弘兼憲史、高木勝
為替レートは時々刻々と変動し、通貨の価値が上下する(弘兼憲史・高木勝 『知識ゼロからの経済学入門』 幻冬舎、2008年、160頁)。
栗原昇
「マネー経済」ではお金自身が株などの有価証券に形を変えて、市場を流通し、その過程で利益をもたらしていきます。たとえば株などは、市場を流通している間に価値が上下します。つまり、モノやサービスを介在せず、お金が単独で市場を動いていくのです。円やドルを売買するように、通貨そのものも商品になります(栗原昇・ダイヤモンド社 『図解 わかる!経済のしくみ[新版]』 ダイヤモンド社、2010年、20頁)。
弘兼憲史、高木勝
日本の場合は、外国為替市場で通貨どうしを売買して為替レートを決めている。これを「変動為替相場制」とよぶ。ここでは商品を売買するのと同じように、自国通貨を売り(買い)、外国通貨を買う(売る)ことが行われる(弘兼憲史・高木勝 『知識ゼロからの経済学入門』 幻冬舎、2008年、152頁)。
野口旭
各国の通貨は、輸出入の代金の決済に使われますが、資産としての性格ももっています。(中略)外国の通貨も資産になり得るのです(野口旭 『「経済のしくみ」がすんなりわかる講座』 ナツメ社、2003年、68頁)。
竹中平蔵
外国に投資するということは、その国の通貨建ての資産を持つということです(竹中平蔵 『竹中教授のみんなの経済学』 幻冬舎、2000年、147頁)。

国際通貨

弘兼憲史、高木勝
国の経済力は、自国の通貨ではなく、外貨保有量ではかることができる。自国の通貨をたくさん持っていても、そのままでは他国で使えないただの紙切れだからだ(弘兼憲史・高木勝 『知識ゼロからの経済学入門』 幻冬舎、2008年、168頁)。
野口旭
経済活動がグローバルに行われると、輸出入や国際投資には他国の通貨が必要になってきます(野口旭 『「経済のしくみ」がすんなりわかる講座』 ナツメ社、2003年、64頁)。

通貨危機

伊藤隆敏
通貨危機とは、為替レートが、均衡為替レートのレベルをはるかに超えて下落することである(日本経済新聞社編著 『マネーの経済学』 日本経済新聞社〈日経文庫〉、2004年、149頁)。
弘兼憲史、高木勝
ある国で財政などが悪化しはじめると、経済が停滞する。それと歩調を合わせるように通貨価値は下落していく(弘兼憲史・高木勝 『知識ゼロからの経済学入門』 幻冬舎、2008年、22頁)。
伊藤隆敏
政治的、社会的、経済的に、ある国の信認が失われたときに、通貨が暴落して、国内の信用収縮、銀行危機、所得の低下、輸入インフレが発生し、あるいは、そうなると予想されて、さらに通貨が暴落するというような、通貨下落がさらなる通貨下落を呼ぶようなプロセスが、「通貨危機」である(日本経済新聞社編著 『マネーの経済学』 日本経済新聞社〈日経文庫〉、2004年、149頁)。
弘兼憲史、高木勝
国は、外貨準備を投入して自国の通貨を買い支えようとするが、資金が底をつくと通貨危機となる。通貨危機に陥った場合、自国の通貨の切り下げを行うなどして事態の打開をはかる(弘兼憲史・高木勝 『知識ゼロからの経済学入門』 幻冬舎、2008年、22頁)。
野口旭
通貨危機のその本質は、通貨危機が起きる可能性があるのは、もっぱら自国の為替レートを一定の目標水準に維持しようとしている「固定相場制」の国であることを意味しています。(中略)自国の為替レートに特定の目標水準を設定せず、為替レートを外国為替市場に委ねて変動させている「変動相場制」の国では、通貨危機は原理的に起きようがないのです(野口旭 『グローバル経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2007年、49頁)。

通貨の切り上げ・切り下げ

林康史、河野龍太郎
金融引締め政策の結果、自国通貨の増価が発生するからである(ポール・クルーグマン 『通貨政策の経済学-マサチューセッツ・アベニュー・モデル』 林康史・河野龍太郎訳、東洋経済新報社、1998年、141頁)。
栗原昇
経済の危機的な局面で見受ける「通貨の切下げ」とは、その名のとおり、自国の通貨と外国の通貨の交換比率を下げることをいいます。通貨の価値を強引に下げてしまおう、という政策です。基本的には、基軸通貨である米ドルとの交換比率(為替レート)を、自国経済の防衛のために通貨当局が低く定めてしまう(栗原昇・ダイヤモンド社 『図解 わかる!経済のしくみ[新版]』 ダイヤモンド社、2010年、146頁)。
栗原昇
しかし通貨切下げは、いわば国際経済の「禁じ手」です(栗原昇・ダイヤモンド社 『図解 わかる!経済のしくみ[新版]』 ダイヤモンド社、2010年、147頁)。
ウォルター・ブロック
頻繁な通貨の切り下げや切り上げは、市場が長年にわたって築きあげてきた国際貿易の秩序を混乱に陥れる(ウォルター・ブロック 『不道徳な経済学: 転売屋は社会に役立つ』 橘玲訳、早川書房〈ハヤカワ文庫NF〉、2020年、178頁)。
林康史、河野龍太郎
自国通貨を減価させれば、輸出増加、輸入減少圧力が働くことになる(ポール・クルーグマン 『通貨政策の経済学-マサチューセッツ・アベニュー・モデル』 林康史・河野龍太郎訳、東洋経済新報社、1998年、75頁)。
ポール・クルーグマン
自国通貨の減価はかなり早い段階で輸入価格に転換されて輸入価格の上昇を招くということも、多くの実証モデルは示唆している(ポール・クルーグマン 『通貨政策の経済学-マサチューセッツ・アベニュー・モデル』 林康史・河野龍太郎訳、東洋経済新報社、1998年、13頁)。
ポール・クルーグマン
金利の低下は自国通貨の減価を招き、自国通貨の減価は経常赤字の縮小をもたらすことになる。だが、短期的には、自国通貨の減価は経常赤字の縮小をもたらさない。それどころか、実際にはJカーブ効果によって経常赤字の拡大を招いてしまう。もし、投資家が経常赤字のファイナンスを続けなければ、通貨は際限なく減価する(ポール・クルーグマン 『通貨政策の経済学-マサチューセッツ・アベニュー・モデル』 林康史・河野龍太郎訳、東洋経済新報社、1998年、128頁)。
ポール・クルーグマン
通貨の減価そのものが資本流入に必要なインセンティブを生み出しているというものである(ポール・クルーグマン 『通貨政策の経済学-マサチューセッツ・アベニュー・モデル』 林康史・河野龍太郎訳、東洋経済新報社、1998年、128頁)。
ポール・クルーグマン
実際の通貨の減価幅は、投資家が要求するインセンティブによって決定される(ポール・クルーグマン 『通貨政策の経済学-マサチューセッツ・アベニュー・モデル』 林康史・河野龍太郎訳、東洋経済新報社、1998年、129頁)。

通貨同盟

伊藤隆敏
最適通貨圏が成功する条件としては次のような点が知られている。第一に、経済構造が似ていて、外的ショック(原油価格高騰など)からの影響が共通である。第二に、その地域間で、生産要素(資本、労働者)の移動が、自由にできること。第三に、価格や賃金が伸縮的に動くことである。第四に、金融市場の統合がある、第五に、政策が協調があることが必要である(日本経済新聞社編著 『マネーの経済学』 日本経済新聞社〈日経文庫〉、2004年、164頁)。
浜田宏一
金融政策は制約されても、単一通貨があるために、通貨取引のコストの節約され、通貨の相場変動を心配する必要がないので貿易が活発化する利点もある。そこで、将来日本や中国が中心となって、あるいは日本、中国、韓国東南アジア諸国連合(ASEAN)、オーストラリアなどが協力して日本円の通貨圏なり中国元の通貨圏なりによって東洋の通貨圏の形成していくことも考えてもよいであろう(日本経済新聞社編著 『マネーの経済学』 日本経済新聞社〈日経文庫〉、2004年、70頁)。

世界の通貨制度

内田勝晴
ちなみに国家の高い信用力を背景に世界最初の不換紙幣(金銀とリンクしない紙幣)を発行したのは、モンゴル帝国のフビライ・ハーンといわれている(内田勝晴 『家康くんの経済学入門-おカネと貯蓄の神秘をさぐる』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2001年、80頁)。
内田勝晴
第一次世界大戦(一九一四-一九一八年)後、先進各国は次々に金本位制に復帰した。一九一九年アメリカ、一九二〇年ドイツ、一九二五年イギリス、オーストラリア、一九二六年カナダ、ベルギー、一九二七年イタリア、一九二八年フランスなどだ(内田勝晴 『家康くんの経済学入門-おカネと貯蓄の神秘をさぐる』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2001年、154頁)。
内田勝晴
各国が金本位制から離脱し管理通貨制度を採用するのは、ようやく一九三〇年代になってからだ。第一次世界大戦(一九一四年-一八年)の混乱で各国は金本位制から離脱していたが、大戦後に復帰した。しかし一九二九年十月からの世界恐慌により、また各国は次々に金本位制から離脱した。一九三七年のフランスの離脱で金本位制は終わり、現在まで管理通貨制度が続いている(内田勝晴 『家康くんの経済学入門-おカネと貯蓄の神秘をさぐる』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2001年、84頁)。
内田勝晴
一九二九年の世界恐慌を機に、世界はそれまでの金本位制から離脱するようになる。先進各国は、中央銀行の金庫にある金の地金をもとに、銀行券(紙幣)を発行していた。この銀行券を兌換券というが、金本位はこの兌換性と一体だった。しかし一九三六年のフランスをもって、主要国は金本位制を放棄した。管理通貨制度へ移行したのだ。政府が金を管理し、金と銀行券との交換をやめ、通貨供給を自由にコントロールしようというのである。これにより、、国内の財政金融政策を、国外の景気とは別に、行えるようになった(内田勝晴 『家康くんの経済学入門-おカネと貯蓄の神秘をさぐる』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2001年、146頁)。
内田勝晴
一九三一年(昭和六年)十二月、高橋是清は犬養毅内閣の蔵相として、異例の復帰。ただちに金本位制から離脱した。これはイギリスに次ぐ早さだった。ドイツは一九三一年、アメリカは一九三二年、フランスは一九三六年に金本位制から離脱した。これ以後、世界は管理通貨制度になり、銀行券と金はリンクしなくなった。人為的に国内の通貨供給量をコントロールできるようになったのだ(内田勝晴 『家康くんの経済学入門-おカネと貯蓄の神秘をさぐる』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2001年、201頁)。
高橋洋一
1944年に国際復興開発銀行(IBRD)と国際通貨基金(IMF)が設立され、自由貿易や資本移動の促進を目的に金1オンス=35ドルの交換レートが定められ、ドルと金は常に交換可能とされた(ブレトン・ウッズ体制)。しかし、1971年、アメリカは固定比率によるドルと金の交換を停止。この衝撃は「ドル・ショック」または「ニクソン・ショック」と呼ばれて全世界を駆け巡った。1973年、先進各国は変動相場制へと移行した(高橋洋一 『高橋教授の経済超入門』 アスペクト、2011年、43頁)。
吉本佳生
1973年2月14日に、アメリカや日本の為替レートは変動相場制に移行しました(吉本佳生 『スマホは人気で買うな!』 日本経済新聞出版社〈日経プレミアシリーズ〉、2014年、165頁)。

日本の通貨制度

上念司
そして日本の運命を決めた1930年1月11日、井上蔵相はついに金本位制に復帰してしまいました(上念司 『デフレと円高の何が「悪」か』 光文社〈光文社新書〉、2010年、177頁)。
野口旭
日本は1942年に管理通貨制度に切り替わった(野口旭 『「経済のしくみ」がすんなりわかる講座』 ナツメ社、2003年、123頁)。

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