経済・経済学に関するメモ。

経済への影響

伊藤元重
消費に税金を課されることにより、消費者が支払う価格は、企業のコストに消費税が上乗せされたものになります。消費価格と生産者価格のギャップをもたらす消費税も、資源配分にさまざまなゆがみをもたらすことになります(伊藤元重 『はじめての経済学〈下〉』 日本経済新聞出版社〈日経文庫〉、2004年、38頁)。
松原聡
消費税には、安定した税収が期待される一方、この引き上げは消費意欲をそぐ可能性もあります(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、236頁)。
田中秀臣
消費増税は経済が過熱していても停滞していても、持続的に税の重圧をかけていく、恒久的な増税という特徴があることを忘れてはいけない(田中秀臣 『増税亡者を名指しで糺す!』 悟空出版、2018年、83頁)。
田中秀臣
消費増税というのは一時的なものではなく、長期的なものであり、政策的な対応がなければその影響は持続する(飯田泰之・田中秀臣・麻木久仁子 『「30万人都市」が日本を救う! 〔中国版「ブラックマンデー」と日本経済〕』 藤原書店、2015年、2-3頁)。

逆進性の問題

松原聡
所得が多い人ほど支出も多いと考えれば、消費税は公平な税制といえます(松原聡 『日本の経済 (図解雑学-絵と文章でわかりやすい!)』 ナツメ社、2000年、178頁)。
森永卓郎
低所得者からたくさん取ったところで、最終的にはその低所得者に多く分配されるのだから、結果的にはチャラだと言いたいのでしょう。ですが、社会保障というものは本来、所得の高い人から低い人に所得移転が行われるのでなければ体をなさないものです(森永卓郎 『「騙されない!」ための経済学 モリタク流・経済ニュースのウラ読み術』 PHP研究所〈PHPビジネス新書〉、2008年、142頁)。
土居丈朗
消費税は逆進的だからよくないという主張に現れているように、消費税に公平性を阻害するなと期待することは、そもそも無理な話である(ダイヤモンド社編著 『日本経済の論点いま何が問題なのか』 ダイヤモンド社、2004年、97頁)。

日本

導入された理由

麻木久仁子
消費税はもともとは直間比率の是正という文脈で説明されてきましたが、やがて社会保障のためと言い、財政再建のためと言い、被災地復興のためと言い、最近は世代間の公平な負担とも言い始めました(麻木久仁子・田村秀男・田中秀臣 『日本建替論 〔100兆円の余剰資金を動員せよ!〕』 藤原書店、2012年、30頁)。
松原聡
少子化・人口減少が進む中、安定した財源としての消費税への期待は高い(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、115頁)。

負担

森川友義
日本人の国民性として、天引きされるものには比較的寛容ですが、目の前で徴収される消費税に対しては、とくに嫌悪感をいだきます(森川友義 『どうする!依存大国ニッポン』 ディスカヴァー・トゥエンティワン〈ディスカヴァー携書〉、2009年、129-130頁)。
小泉祐一郎
消費税を負担するのは消費者個人だけであるという発想は、極めて例外的なケースを除いて、誤っている。また、日本の消費税(付加価値税)の場合、常に買い手が消費者個人とは限らない。さらに、売り手が課税分を価格で転換できない場合(供給曲線が上方へシフトしない場合)、納税額は全額売り手の負担となる。消費税の真の負担者は<立場の弱い売り手>である(小泉祐一郎 『図解経済学者バトルロワイヤル』 ナツメ社、2011年、43頁)。

制度上の問題点

益税
八田達夫
日本の消費税は自営業者に“追い銭”を与えている。このため消費税率を上げるほどクロヨン問題は悪化する。クロヨン問題の解決のためには徴税体制の整備が不可欠である(日本経済新聞社編著 『やさしい経済学』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、204頁)。
軽減税率の導入
財務省
軽減税率については、消費増税を推進する財務省側はその税収減などから終始反対の立場だった(田中秀臣 『増税亡者を名指しで糺す!』 悟空出版、2018年、105頁)。
八田達夫
食料品の消費税を非課税にできる。しかし、これは高所得者の外食や高級食材の消費を促してしまう。そもそも、低所得者も教育、住居、交通などに支出するので、食品だけの非課税は所得の再配分にとって焼け石に水だ(日本経済新聞社編著 『やさしい経済学』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、198頁)。
高橋洋一
消費税率を上げれば軽減税率の適用を巡って「レントシーキング」が横行し、利権が発生する(高橋洋一 『大阪維新の真相』 中経出版、2012年、40-41頁)。
高橋洋一
所得の低い人の税負担を減らすべきであり、そのためには、一定額を税額から控除する「給付付き税額控除」のほうがはるかにいいはずだ(高橋洋一 『大阪維新の真相』 中経出版、2012年、82頁)。

試算

税率
竹中平蔵
私は、二〇〇三年から段階的に消費税を上げ、最低でも一四%にしなければならないだろうと考えています。一四%など途方もなく高い税率だと思うかもしれません。しかし、ヨーロッパ諸国の消費税が一七、一八%から二五%となっていることを考えれると、この数字はそれほど高い数字ではないともいえます(竹中平蔵 『竹中教授のみんなの経済学』 幻冬舎、2000年、115頁)。
浜田宏一
このような財政事情が、税率の低さによるものとは限らないということだ(浜田宏一 『アメリカは日本経済の復活を知っている』 講談社、2012年、193頁)。
高橋洋一
ギリシャの消費税は23%だ。消費税が高ければ財政が健全化されるわけではないのは、ギリシャを見ても明らかだ(高橋洋一 『「借金1000兆円」に騙されるな!』 小学館〈小学館新書〉、2012年、133頁)。
飯田泰之
消費税は貧乏なほど負担が大きいので、本来なら僕はもっと下げるべきだと思っています。理想としてはなくていいと思っている(飯田泰之・雨宮処凛 『脱貧困の経済学』 筑摩書房〈ちくま文庫〉、2012年、245頁)。

景気への影響

悪化させるとする見解
松原聡
消費税の引き上げは、国民の消費生活に直結するだけに、実施時期の判断も重要です。将来的に引き上げるのはやむを得ないとしても、その時期はできるだけ先に延ばせるほうが望ましいはずです(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、122頁)。
田中秀臣
1989年(平成元年)の竹下登内閣時代の消費税導入以後、消費税収の動きだけ見ると「安定」した財源のように見える。だが、これはもちろん一部分だけを切り取って見ているだけの話である。消費税収が、「安定」的な財源になる一方で、他の税収は不安定化し、より重要なのは経済全体が不安定化していることだ。この理由は、消費増税のもたらす経済への悪影響がある(田中秀臣 『増税亡者を名指しで糺す!』 悟空出版、2018年、83頁)。
田中秀臣
消費税率と消費税収の「安定」だけが成立し、経済は不安定化していく。(中略)その負担の最大の犠牲者は、国民のなかでも最も所得の低い層だった(田中秀臣 『増税亡者を名指しで糺す!』 悟空出版、2018年、84頁)。
田中秀臣
消費税が経済を減速させる以外にも重要な弊害が少なくともふたつある。ひとつは国民の福祉の向上を阻害する働き、たとえば経済格差をより深刻化させることだ。もうひとつは経済を減速させることの波及効果で、人の生命に関わる問題である(田中秀臣 『増税亡者を名指しで糺す!』 悟空出版、2018年、37頁)。
田中秀臣
岩田氏と私が意見を同じくした点は、日本では貧しい人たちがあまりにも多いことが消費増税の影響を大きく長くしているという点だった(田中秀臣 『増税亡者を名指しで糺す!』 悟空出版、2018年、16頁)。
田中秀臣
消費増税は、生活がただでさえ苦しい人たちをさらに追い詰める。社会を分断させ、格差と持続的な貧困をもたらす(田中秀臣 『増税亡者を名指しで糺す!』 悟空出版、2018年、17頁)。
浜田宏一
消費税の税率が二倍になると、社会的な損失は二倍でなく、その二乗、つまり四倍となるのだ(浜田宏一 『アメリカは日本経済の復活を知っている』 講談社、2012年、195頁)。
試算
原田泰、大和総研
消費税率を2%引き上げることで、表2にみるように、実質GDPは0.54%低下する(原田泰・大和総研 『新社会人に効く日本経済入門』 毎日新聞社〈毎日ビジネスブックス〉、2009年、25頁)。
1997年の消費税増税の影響
八田達夫
八田達夫(2002)は消費税率引き上げが家計の資金制約に影響して、半耐久財消費や耐久財消費、そして住宅投資の下落につながったと指摘している(田中秀臣編著 『日本経済は復活するか』 藤原書店、2013年、158頁)。
三和総合研究所
消費税率引き上げ前の駆け込み需要が増加した九六年には、バブル期並の一六四万戸まで拡大した。しかし九七年以降は、駆け込み着工による反動による減少や景気が後退局面に入ったこともあり、九七年は一三九万戸、九八年には一二〇万戸と再び急減している(三和総合研究所編著 『30語でわかる日本経済』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2000年、207頁)。
竹中平蔵
九五年から九六年にかけての日本経済は、一種の“ミニ・バブル”の状態にあったと考えられることだ。企業は依然として多額の不良債権を抱え、極めて不健全な経済状況だったにもかかわらず、政府も民間もこれを認識していなかったのである。情報が開示されていなかったことの問題点は、極めて大きいと言える。このことはまた、九七年の消費税導入によって経済が悪化したという一部の指摘が誤りだということを示している。バブル経済であった以上、早晩これは破裂する運命にある。消費税の導入が悪かったのではなく、そもそもこのような“ミニ・バブル”状況をつくったこと自体に問題があったのだ(竹中平蔵 『竹中平蔵の「日本が生きる」経済学』 ぎょうせい・第2版、2001年、164頁)。
田中秀臣
実際、阪神・淡路大震災の2年後に消費税を2%上げた時に起こったのは、まさに名目GDPが減少するという不況であり、それに伴い、結局、税収全体が減るということだった(田中秀臣・上念司 『震災恐慌!〜経済無策で恐慌がくる!』 宝島社、2011年、123頁)。
田中秀臣
常に増税したがる財務省なんかは、「消費税を上げると、翌年の税収がガクンと減るという人がいるけれど、その後は緩やかに回復していきます」という話をするんです。でも、そんな話に騙されてはいけない。財務省は、全体の税収の変化を見ずに、消費税収の変化だけをとらえて、消費税を増税すれば税収が増えると言ってしまっている(田中秀臣・上念司 『震災恐慌!〜経済無策で恐慌がくる!』 宝島社、2011年、125頁)。
2014年の消費税増税の影響
田中秀臣
2011年の消費総合指数を100とすると、前回の消費増税の影響が顕在化する前の同指数は104・1であり、現在の消費総合指数もまた104・3である(2018年8月)。14年4月3の消費増税以降、消費は、なんと3年ものあいだ低迷し、ようやく2017年3月に現状並みに戻ってきて今日に至っている(田中秀臣 『増税亡者を名指しで糺す!』 悟空出版、2018年、24頁)。
原田泰、石橋英宣
原田泰氏(日銀審議委員)と石橋英宣氏(内閣府大臣官房人事課長補佐)の検証によると、2014年の増税で0・72%も実質経済成長率は引き下げられた(安達誠司・飯田泰之編著 『デフレと戦う 金融政策の有効性』 日本経済新聞社、所収論文)。消費税1%につき一年目に0・24%もの引き下げ効果である(田中秀臣 『増税亡者を名指しで糺す!』 悟空出版、2018年、26頁)。

所得税(累進課税)引き下げと消費税引き上げの影響

岩田規久男
OECD [2008年] が指摘しているように、日本では税・社会保険料負担後の可処分所得の不平等度(ジニ係数で見た)が、それらの負担前の所得の不平等度よりも高くなっている。その原因の一つは、消費税導入と引き換えに、所得税の累進度を引き下げたことにある(岩田規久男 『「不安」を「希望」に変える経済学』 PHP研究所、2010年、202-203頁)。
原田泰、大和総研
税収中立的に消費税を引き上げて所得税を減税すれば、GDPがより大きくなるというわけにはいかないようだ(原田泰・大和総研 『新社会人に効く日本経済入門』 毎日新聞社〈毎日ビジネスブックス〉、2009年、25頁)。
岩田規久男
消費税の税率を引き上げる場合には、基礎的年金目的税とし、所得税の最高限界税率を60%程度に引き上げるべきであろう(岩田規久男 『「不安」を「希望」に変える経済学』 PHP研究所、2010年、258頁)。
八田達夫
平均的な所得の人は所得税から消費税に課税の重心が移動することで、働いているときの税負担は減る。ただし老後(例:60歳から85歳まで)では、高い消費税を死ぬまで負担しなくてはいけない。そのため、現役以降、高齢になってからの税負担だの分だけ、より多く貯蓄するだろう。これではまったく税負担は変わらない。さらに深刻なのは、働いているときに所得の低い人たちは、所得税で減税措置または非課税となるかもしれない。その人たちも現役を引退して高齢になっても一律に高い消費税を負担し続けるだろう。他方で高所得者たちは所得税から消費税にシフトすることで現役のときは得をし、また高齢になっても低所得者だった人たちと変わらない負担になる。低所得者の人はもともと減税や無税なので、その意味では税負担は消費税へのシフトでも変化しない。つまり生涯を通じた税負担が、高所得者には有利に、低所得者には不利に作用する。この意味では低所得者層に大きなダメージを与え、「老老格差」とでも言うべきものを深刻化させてしまう(田中秀臣 『増税亡者を名指しで糺す!』 悟空出版、2018年、44頁)。
八田達夫
現状の所得税の最高税率は、1989年までは約70%だった。つまり1億円を稼いでもそのうち手元には3000万円しか残らない。ところがそれは高所得者の働く意欲をそぐという理由のもとに次第に引き下げられ、1999年には37%まで引き下げられた。その後、財政危機を名目にしてこの税率は再度引き下げられて、いまは45%である。ところが八田氏は、このような過去20年以上の所得税から消費税への課税シフトの結果、日本の個人所得税の対GDP比率は、先進国の中で最低になっているという。そのため累進課税を引き上げる余地が十分にあるというのが、八田氏の主張である。さらに、この高所得者層への所得税引き下げは、取れるところから税金を取っていないため、1990年代から今日まで財政赤字増加の潜在的な要因になっている(田中秀臣 『増税亡者を名指しで糺す!』 悟空出版、2018年、44-45頁)。
八田達夫
八田氏はまた、消費増税へのシフトが景気の安定化効果を阻害することを指摘してもいる。たとえば、景気が過熱しているときは、人々の平均所得も増加するので、課せられる所得税率も平均的に高くなり、また所得税も増加する。これは経済の過熱を抑制する。他方で経済が落ち込んでいるときはこれと逆のことが起きる。所得が平均的に低いので、課せられる平均的な税率も低く、また所得税も低い。そのため人々の可処分所得は上昇することで、経済を回復させる効果がある。これは教科書では、自動安定化装置(ビルト・イン・スタビライザー)と呼んでいた(田中秀臣 『増税亡者を名指しで糺す!』 悟空出版、2018年、45頁)。
田中秀臣
クロヨン(9・6・4)とは、税務署の課税所得の捕捉率をいう俗称であり、給与所得者は9割、自営業者は6割、そして農業者・漁業者などは4割にしかすぎないことをいう。(田中秀臣 『増税亡者を名指しで糺す!』 悟空出版、2018年、42頁)。
田中秀臣
このクロヨン解消について、八田氏は消費税の税率を上げれば上げるほど自営業者たちの「益税」をもたらす第二のクロヨン問題を生み出していると指摘する(田中秀臣 『増税亡者を名指しで糺す!』 悟空出版、2018年、43頁)。

社会保障目的税としての消費税

日本経済新聞社
社会保障の拡大に対しては、国民が広く薄く負担する消費税を活用していくべきだという声が多い。企業の利益にかける法人税や個人の所得にかける所得税の負担を大きくしすぎると、事業を伸ばそうとする努力や、一生懸命に働く意欲を阻害する恐れがあるためだ(日本経済新聞社編著 『いやでもわかる日本経済』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2003年、146頁)。
高橋洋一
これに対し日本の消費税の場合、高額所得者も低所得者も同じ金額の税を負担し、しかも食料品などの基本的な生活財にまで課税するので逆進性が高いのです。また、流通過程で広く課税することから、一人ひとりがどれだけ負担しているかを正確に把握することはできません。これでは、消費税を財源にして社会保障政策を行おうとしても、負担と給付の公平性がどれだけ実現できるかはわかりません(高橋洋一 『日本の大問題が面白いほど解ける本 シンプル・ロジカルに考える』 光文社〈光文社新書〉、2010年、161頁)。
高橋洋一
社会保障は保険原理のほうが制度的な安定性が高い。同じロジックで、社会保障に消費税を使うなと私は言っているんだけれどね(高橋洋一・田中秀臣 『日本経済再起動』 かや書房、2020年、200頁)。
森永卓郎
まず社会保障財源を保険料から、税金に切り替えただけで、会社の負担がなくなるのだ。(中略)庶民は収入の80%を消費に回しているのに対して、金持ちは20%しか消費していない。社会保険料は収入にかかるのに対して、消費税は消費にかかる。消費税率が10%になったとしよう。庶民の支払う消費税は、80%×10%で収入の8%となるが、金持ちが支払う消費税は、20%×10%だから、収入の2%でよい。つまり、社会保障財源を消費税に移すだけで、金持ちの負担はいまの4分の1になる。企業負担がなくなることを考えれば、8分の1になるのだ(森永卓郎 『庶民は知らないデフレの真実』 角川マガジンズ〈角川SSC新書〉、2012年、25頁)。
田中秀臣
日本の投票率をみればわかりますが、圧倒的に高齢者の投票率が高いのです。与党にとっても野党にとっても、高齢者の支持がきわめて重要です。消費税増税というのは、高齢者の利益にかない、また不況のような将来不安があるときには、まさに格好の高齢者対策になるのです。これが世界でも珍しい不況の中での増税議論の実体です(田中秀臣 『雇用大崩壊 失業率10%時代の到来』 NHK出版〈生活人新書〉、2009年、171-172頁)。
年金の財政
岩田規久男
基礎的年金財源を目的消費税に置き換えると、現役世代は基礎的年金保険料を支払わずに済むようになるが、受給世代である高齢者は消費税負担が増える。その結果、現在、「年金の純受給額」に関して発生している大きな世代間不公平は是正される。(中略)このように基礎的年金目的消費税の導入は世代間の不公平を是正し、将来世代の負担を軽減するため、年金の持続的可能性を高める。それに対して、消費税の増税は低所得者(とくに、高齢者のうちの低所得者)の税負担を高めるという理由から、反対がある。しかし、この問題は「給付付き税額控除制」の導入によって解決可能である(岩田規久男 『「不安」を「希望」に変える経済学』 PHP研究所、2010年、222-223頁)。

法人税引き下げと消費税引き上げ

竹中平蔵
法人税は、企業の国際競争力を失わせることになるので引き上げられません。個人の所得税も、フロンティアの時代にあっては引き上げるのは無理です。そうすると、消費税を上げるしかありません(竹中平蔵 『竹中教授のみんなの経済学』 幻冬舎、2000年、114頁)。
岡部直明
増収のための呼び水として活かすべきなのは、法人税率の引き下げを中心とした企業税制の改革です。そして、財政の帳尻合わせのためではなく、目的を社会保障に絞るという形の消費税率の引き上げを目指すべきです(岡部直明 『ベーシック日本経済入門』 日本経済新聞社・第4版〈日経文庫〉、2009年、102頁)。

対策についての議論

財政政策
飯田泰之
消費税ってすごくい効率のいい税制なんですよ。とりっぱぐれがないんで。だから消費税を上げるというのは税収を安定させるという意味では必要。その代わり消費税って、ものすごい弱い者にだけ負担が集中するのも確か。それだったら給付付き税額控除とか、ベーシックインカムという制度と同時に出されたら、大賛成っていうと思うんです(飯田泰之・雨宮処凛 『脱貧困の経済学』 筑摩書房〈ちくま文庫〉、2012年、289頁)。
片岡剛士、田中秀臣
消費増税が恒久的な性格を持つ以上、一時的な給付金や減税で消費税増税の悪影響を十分に抑制するのは困難である(田中秀臣編著 『日本経済は復活するか』 藤原書店、2013年、338頁)。

消費増税の代替案

所得税
八田達夫
八田氏の消費増税への反対は、消費税が税の公正性もたらさないこと、高齢化社会の福祉目的として妥当とはいえないこと、そして消費減税をむしろ行うべきでありそのときは所得税改革とともに行うべきだ、という点にある(田中秀臣 『増税亡者を名指しで糺す!』 悟空出版、2018年、42頁)。
環境税
岡部直明
ヨーロッパではすでに多くの国で環境税が導入されていて、年金財源などに充てられています(岡部直明 『ベーシック日本経済入門』 日本経済新聞社・第4版〈日経文庫〉、2009年、167頁)。
岩田規久男
環境税による税収が増えれば、財政再建のための消費税増税の必要性も低下する(岩田規久男 『「不安」を「希望」に変える経済学』 PHP研究所、2010年、181頁)。
岩田規久男
環境税は環境を破壊する者に外部費用を負担させるという「汚染者負担の原則」に基づくものである。この税は受益者負担の原則に基づく道路特定財源とは違って、使途を特定する理由はなく、一般財源として使える。(中略)所得税や消費税の減税財源としても使える(岩田規久男 『スッキリ!日本経済入門-現代社会を読み解く15の法則』 日本経済新聞社、2003年、180頁)。
行政改革など
湯元健治
湯元さんは優遇制度など税制や納税の仕組みを厳正にするだけで、「税収は五兆円近く増えるのでは」と見ている。これは消費税率を二%上げたのとほぼ同じ金額だ(日本経済新聞社編著 『日本経済の小さな大ギモン - エコノ探偵団・最新レポート』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2000年、307頁)。
田中秀臣
いまだって税の徴収もれや社会保険料の徴収もれなど、官僚のシステムがうまく機能しないところがある。納税者番号制度などを導入して、適切な官僚側の徴収するインセンティブ(=自らすすんで行う動機付け)を設計すれば、数兆円の税収改善が図られる(麻木久仁子・田村秀男・田中秀臣 『日本建替論 〔100兆円の余剰資金を動員せよ!〕』 藤原書店、2012年、63頁)。
高橋洋一
実はその歳入庁と納税者番号を導入すると、消費税のアップが必要なくなるぐらいに税収は上がってくるんですよね(田中秀臣編著 『日本経済は復活するか』 藤原書店、2013年、301頁)。

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