経済・経済学に関するメモ。

四元正弘
「情報リテラシー(読み書き能力)調査」(対象約七百人)で、能力の高低が収入の多寡に関係する可能性が高いと分かったという。この能力は、情報技術・機器を読み書きの道具としてどの程度使えるかを示す。能力が最も高い層の平均年収は七百三十九万円。年収が一千万円以上の人の比率も二六・一%と突出して高い(日本経済新聞社編著 『なるほど!不思議な日本経済-エコノ探偵団レポート・新世紀版』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、263-264頁)。
アラン・クルーガー
プリンストン大学のクルーガー教授は、パソコンを使って仕事をしている労働者は、そうでない労働者よりも賃金が一〇-一五パーセント程度高いということを実証的に示した(Krueger,1993)。ただし、この分析にはパソコンが賃金が高めているのではなく、優秀な人がパソコンを使う仕事をしているのである、という有力な反論もある(大竹文雄 『経済学的思考のセンス-お金がない人を助けるには』 中央公論新社〈中公新書〉、2005年、199頁)。
児玉卓
主任研究所の児玉卓さん(37)が米商務省のデータを示した。九四年から四年間にコンピュータープログラマーの雇用者数は年平均四・七%増加した。だが、賃金の伸び率は三・八%から三・四%に低下した。この間、それ以外のIT関連労働者は一六・五%と大幅に増えたが、賃金の伸び率は三・〇%で全職業平均(二・九%)並みだった(日本経済新聞社編著 『なるほど!不思議な日本経済-エコノ探偵団レポート・新世紀版』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、266頁)。
日本経済新聞社
もう一つ見落とされているのが、IT能力が高い層は高学歴層とほぼ重なる点だ。能力が高いから高所得ではなく、高学歴だから高所得である可能性がある(日本経済新聞社編著 『なるほど!不思議な日本経済-エコノ探偵団レポート・新世紀版』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、266頁)。
小原美紀、大竹文雄
日本でも大阪大学の小原美紀教授と筆者が行ったの研究によれば、パソコンを用いて仕事をする人の賃金はそうでない人よりも高くなっている(小原・大竹、二〇〇一)。しかも、その傾向は高学歴労働者に特徴的に現れる。さらに、個人の観察されない能力をコントロールしてもパソコンの賃金引き下げ効果は存在する。筆者たちの研究によれば低学歴の労働者の場合には、パソコン利用が賃金引き下げの要因とさえなっていることが示されており、IT革命は学歴間賃金格差拡大の要因となっていることを示唆している(大竹文雄 『経済学的思考のセンス-お金がない人を助けるには』 中央公論新社〈中公新書〉、2005年、199頁)。
大竹文雄
IT革命が賃金格差を高めるという論点は、デジタル・デバイドといわれるIT革命の負の側面として指摘されることが多い。しかし、このようにIT革命が高学歴者に対する需要増加をもたらすことが賃金格差の原因であるならば、その対処の方法は、高学歴者の供給増加政策である。無理に賃金格差を縮小するような政策をとったとすれば、高い学歴を身につけようとする意欲を低下させることになる。IT革命に対応するために、単なるパソコンの操作を身につけさせようとする政策を行うことは賃金格差の縮小にはつながらない。IT技術の習得は高学歴者にとっては、賃金引き上げ要因となるが、低学歴者にとっては賃金の引き上げをもたらさない。ITと補完的な判断能力・分析能力の習得が必要なのである(大竹文雄 『経済学的思考のセンス-お金がない人を助けるには』 中央公論新社〈中公新書〉、2005年、201頁)。

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