経済・経済学に関するメモ。

歴史

トマ・ピケティ
戦前のヨーロッパでは凄まじい格差があったが、その後、戦費調達のために金持ちに重税が課せられ、かなり是正された。日本やドイツでは、敗戦で資本が破壊されたせいで、ある程度平等な社会になった。しかも日本やドイツは米国などの新技術を取り入れたりすることでキャッチアップ効果が発生し、きわめて高い成長率が可能だったことも経済格差の縮小につながった。しかし、二十一世紀になりそのキャッチアップ効果も消滅した、という(飯田泰之・田中秀臣・麻木久仁子 『「30万人都市」が日本を救う! 〔中国版「ブラックマンデー」と日本経済〕』 藤原書店、2015年、32頁)。

世界の現状

滝田洋一
1人当たり100万ドル、1億1000万円あまりを超える資産を保有する人は、全世界で合わせて3300万人。世界の総人口の1%にも満たない。彼ら超富裕層の保有資産の合計額は116・6兆ドルと、全世界の家計資産の45・6%にのぼる。「1%に満たない一握りの超富裕層が、世界の半分近くの富を握る」といった構図だ(滝田洋一 『今そこにあるバブル』 日本経済新聞出版、2017年、159頁)。

所得格差

原田泰
もっとも豊かな国と貧しい国とでは、一人当たりの所得の差は100倍以上の差がある(原田泰 『コンパクト日本経済論(コンパクト経済学ライブラリ)』 新世社、2009年、2頁)。
ロバート・H・フランク
第二次世界大戦後の三〇年間、は所得の伸びは、所得のよい人も悪い人も年間三%程度だった。ところがそれ以降、所得の伸びの恩恵を受けてきたのは、ほとんどが高所得者層の人である。購買力からみると賃金の中央値は一九七五年も今も変わらないが、現在は上位一%の高所得者が当時の約三倍を稼ぎだしている(ロバート・H・フランク 『日常の疑問を経済学で考える』 月沢李歌子訳、日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2013年、93頁)。
クリスティーヌ・ラガルド
テクノロジーの進歩と「独り勝ちの市場」は多くの国で経済格差を生んでいる。主要先進国では過去20年、上位10%の高所得者層は所得を40%増やしたが、下位層ではわずかの上昇しかない(ニューズウィーク日本版編集部編著 『経済超入門 ゼロからわかる経済学&世界経済の未来』 CCCメディアハウス、2017年、27頁)。

格差社会

栗原昇
格差社会とは、国民の間で収入や財産によって貧困層と富裕層という階層が生じ、階層間を移動することが困難な状況になっている社会のことです(栗原昇・ダイヤモンド社 『図解 わかる!経済のしくみ[新版]』 ダイヤモンド社、2010年、126頁)。

格差の要因

伊藤修
富の差をもたらす要因は少なくとも四つある。第一は「当初の富」である。人は生まれた時点で平等ではなく、親から受け継ぐ富の差は放っておけばさらに拡大する性質をもつ。第二は「素質」である。第三は良い先生、先輩同輩などの環境に恵まれる「運」である。そして第四が本人の「努力」である。(中略)「富は努力が生み出す」、「貧富の差は努力の差」という命題は誤りであり、富すべて本人に帰属して当然だという根拠はない(伊藤修 『日本の経済-歴史・現状・論点』 中央公論新社〈中公新書〉、2007年、163-164頁)。
大竹文雄
所得の重要な部分を占める賃金に格差が生じる基本的な原因は、生産性の差である。個人間の生産性の差が生じるのは、生まれつきの才能、教育、努力、運・不運が人によって異なるからである(大竹文雄 『経済学的思考のセンス-お金がない人を助けるには』 中央公論新社〈中公新書〉、2005年、xii頁)。
大竹文雄
努力水準が他人には観測できないため、人々に努力を促す手段として賃金格差が発生してくる。つまり、人々にインセンティブ(意欲)をもたらす手段として、賃金格差が存在する(大竹文雄 『経済学的思考のセンス-お金がない人を助けるには』 中央公論新社〈中公新書〉、2005年、xiii頁)。
大竹文雄
競争に対する態度の違いや、競争で実力を発揮できるかどうかは、経済的な格差にもつながる。それだけではなく、社会全体の生産性にも影響を与える可能性が高い(大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、41頁)。

貧困の連鎖

田中秀臣
そして非正規雇用は非常に所得が不安定であり、またその所得の不安定さはさまざまな影響をもたらしていく。例えば両親ともに非正規雇用で、所得が不安定であると、その子供たちも同じように所得が不安定な一生を送る可能性が否定できないし、一部の実証研究はそのことを示唆しています(麻木久仁子・田村秀男・田中秀臣 『日本建替論 〔100兆円の余剰資金を動員せよ!〕』 藤原書店、2012年、89-90頁)。
カリー
カリー教授は、貧困家庭の子どもが貧困となり、その子どもも貧困になるという貧困の連鎖の原因を、遺伝ではなく、つぎのように説明している。栄養状態の悪い妊婦から低体重児が生まれ、その子どもが育っても健康状態が悪く、所得が低くなる。所得が低い親となって、子供を産むと低体重の子供が生まれる。そうすると、またその影響が子どもが大人になったときに現れるというのだ(大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、86頁)。
教育
大竹文雄
アメリカの研究によれば、親の所得階級による子どもの数学の学力差は、六歳時点においてすでに存在し、その学力格差はその後も拡大を続ける(大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、94頁)。
マイケル・サンデル
以前こんな調査を行った人がいた。アメリカの優秀な大学、一六四校の学生を対象に統計を取り、彼らの経済的なバックグラウンドを調べようとしたのだ。(中略)最も優秀な大学では、貧しい家庭出身の学生は、たった三%しかいなかった。七〇%以上が、裕福な家庭出身だったのだ(マイケル・サンデル 『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(下)』 NHK「ハーバード白熱教室」制作チーム・小林正弥・杉田晶子訳、早川書房、2010年、56頁)。

人種間

ミルトン・フリードマン
黒人は職業選択において白人と同じ立場にはなかった。(中略)顧客と同僚の労働者の双方の偏見のせいで、黒人であることはある職業においてはより低い経済的生産性を伴う、またしたがって肌の色は所得に対しての能力の格差と同じ効果を与える。その結果、肌の色による人口の階層化は明らかに、合衆国における収益の非均等化格差を生み出す最も強力な要因の一つとなっている(田中秀臣 『不謹慎な経済学』 講談社〈講談社biz〉、2008年、140頁)。
スティーヴン・レヴィット、スティーヴン・ダブナー
黒人と白人の所得格差はほとんど黒人と白人の教育格差であり、もうずっと昔からわかっていたことが原因だったのだ(スティーヴン・レヴィット、スティーヴン・ダブナー 『ヤバい経済学 [増補改訂版]』 望月衛訳、東洋経済新報社、2007年、190頁)。

都市への一極集中と地方経済の疲弊

ロバート・H・フランク
アジア諸国の所得水準は欧米に比べると低いにもかかわらず、人口密度が高いために、地価はより高くなる傾向にある(ロバート・H・フランク 『日常の疑問を経済学で考える』 月沢李歌子訳、日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2013年、238頁)。
OECD(経済協力開発機構)
OECD(経済協力開発機構)は「人口700万人までは富裕であることを意味するが、その限度を超えると大都市圏の規模と所得は負の相関関係になる」と報告しています(栗原昇・ダイヤモンド社 『図解 わかる!経済のしくみ[新版]』 ダイヤモンド社、2010年、116頁)。

デフレーション

森永卓郎
デフレーションが少数の強者と大多数の弱者との経済格差を拡大することは間違いありません(森永卓郎 『日本経済50の大疑問』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、35頁)。
大竹文雄
名目で賃金が下がるということの衝撃は大きく、労働者の間の格差拡大感を実態以上に強くする可能性が高い。これが、日本の九〇年代末以降、人々に格差拡大を感じさせた原因の一つではないだろうか(大竹文雄 『経済学的思考のセンス-お金がない人を助けるには』 中央公論新社〈中公新書〉、2005年、202頁)。

資本収益率(r)>経済成長率(g)

トマ・ピケティ
無制限な資本主義は格差を拡大させ、ひと握りの名家に富が集中する時代に逆戻りすると説く(ニューズウィーク日本版編集部 編著『経済超入門 ゼロからわかる経済学&世界経済の未来』 CCCメディアハウス、2017年、87頁)。
トマ・ピケティ
ピケティいわく、資本収益率(r)が経済成長率(g)を上回る国々では格差は必然的に大きくなる(ニューズウィーク日本版編集部編著 『経済超入門 ゼロからわかる経済学&世界経済の未来』 CCCメディアハウス、2017年、91頁)。
トマ・ピケティ
ピケティの理論によれば、成長が鈍化する一方で国民所得から貯蓄に回る割合が安定している国では、資本の総量の増加が経済成長率を上回る(すでに欧米や日本で起きている現象だ)。資本の総量が増加する一方で資本収益率はそれほど落ちていないため、資本から得られる収益の割合は増加する(より多くの資本+同じ収益率=金持ちはもっと金持ちに)(ニューズウィーク日本版編集部 編著『経済超入門 ゼロからわかる経済学&世界経済の未来』 CCCメディアハウス、2017年、93頁)。
マシュー・ログンリー
資本が積み重なれば、投資の機会を求めてより多くのカネが動くことになると、ログンリーは主張。そうなれば、ピケティが予測するような格差拡大のシナリオを十分回避できるほど資本収益率は下がるという(ニューズウィーク日本版編集部編著 『経済超入門 ゼロからわかる経済学&世界経済の未来』 CCCメディアハウス、2017年、93-94頁)。

格差が国家・社会へ与える影響

治安への影響

松原聡
また貧富の差が激しい社会では、犯罪が発生しやすくなります(松原聡 『日本の経済 (図解雑学-絵と文章でわかりやすい!)』 ナツメ社、2000年、144頁)。
大竹文雄
貧困層が増える一方で金持ちが増えて所得の格差が大きくなることは、強盗、恐喝、窃盗、詐欺等の財産犯の便益を増加させることになる(大竹文雄 『経済学的思考のセンス-お金がない人を助けるには』 中央公論新社〈中公新書〉、2005年、176頁)。

健康への影響

ニューズウィーク日本版編集部
2010年にカリフォルニア州で行われたある研究では、貧困ライン以下の大人の肥満率は27.7%で、高収入層の19.6%を大きく上回った。糖尿病患者の割合も、貧困ライン以下の層の大人が最も多いという(ニューズウィーク日本版編集部編著 『経済超入門 ゼロからわかる経済学&世界経済の未来』 CCCメディアハウス、2017年、152頁)。
ニューズウィーク日本版編集部
貧困層の平均寿命はそうでない人より10年以上短いというデータもある(ニューズウィーク日本版編集部編著 『経済超入門 ゼロからわかる経済学&世界経済の未来』 CCCメディアハウス、2017年、152頁)。

格差の是正

クリスティーヌ・ラガルド
格差解消にはいくつかの方法がある。第一に、オートメーションやアウトソーシングによって取り残された非熟練労働者への援助だ。政府はヘルスケア、教育、技能訓練の予算を増やし、就労機会の拡大に力を入れるべきだろう。第二にセーフティーネット、とりわけ家族向けの保育、産休、ヘルスケア、職場環境の柔軟性を強化しなくてはならない。低所得層のための税制改革や法定最低賃金、女性を労働市場に呼び込む税制優遇措置も必要だ。第三に、政府は経済の公正さを確かなものにして、国民の信頼を取り戻すことだ。公正な競争を促し、脱税を取り締まり、租税回避地を利用するビジネスを禁止しなくてはならない(ニューズウィーク日本版編集部編著 『経済超入門 ゼロからわかる経済学&世界経済の未来』 CCCメディアハウス、2017年、28頁)。

再配分政策

大竹文雄
運・不運による所得の差を小さくするものは、民間の保険、家族の助け合い、そして税や社会保障による再分配制度である。民間の保険や家族の助け合いがうまく機能しない場合には、政府による所得再分配や雇用創出が不可欠になる(大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、20頁)。
大竹文雄
「市場による自由競争によって効率性を高め、貧困問題はセーフティーネットによる所得再分配で解決することが望ましい」。これは、どんな経済学の教科書にも書いてあることだ。実際、ほとんどの経済学者はこの市場競争とセーフティネットの組み合わせによって私たちが豊かさと格差解消を達成できると考えている(大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、5頁)。
大竹文雄
経済学者の多くは、市場競争で豊かさを達成し、その成果を分配し直すことで格差に対処すべきだと考えている(大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、xi-xii頁)。
竹中平蔵
重要なのは、格差に戸惑い、競争を否定することではなく、誰もが平等に競争に向かっていける環境を保証することである(竹中平蔵 『竹中平蔵の「日本が生きる」経済学』 ぎょうせい・第2版、2001年、127頁)。
原田泰、大和総研
必要なのはセーフティーネットを作ることで、無理やり格差をなくすことではない(原田泰・大和総研 『新社会人に効く日本経済入門』 毎日新聞社〈毎日ビジネスブックス〉、2009年、34頁)。
大竹文雄
市場競争で格差が発生したら、それに対する対策は基本的に二つである。第一に、政府による社会保障を通じた再分配政策によって格差を解消することであり、第二に、低所得の人たちに技能を身につけさせて高い所得を得られるよう教育・訓練を充実することである(大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、5-6頁)。
大竹文雄
規制を強化すると、規制で守られた人のなかで格差が小さくなり、そのなかで運・不運の要素は小さくなるが、規制の枠に入れなかった人たちとの格差は拡大する。規制の枠に入れるかどうか、という運・不運の要素が大きくなってくるのである(大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、21頁)。
ロバート・バロー
容貌の差による所得の差は生まれ持っての資質の差が原因なので、機会均等の観点からの政策的な介入をするとすれば、ハーバード大学のバロー教授が提案するように「美男美女税」、「不器量補助金」が経済学的には正しい政策ということになる(大竹文雄 『経済学的思考のセンス-お金がない人を助けるには』 中央公論新社〈中公新書〉、2005年、18頁)

経済成長

飯田泰之
経済成長は貧困を減らすもっとも直接的な手段たりえます。経済成長がない状態では、失業者・不完全就労者の数は増加を続けるほかありません。継続的な経済成長はこれらの生活困難者を減少させるため、「生存できない」という意味での貧困を減少させるのです。さらに、経済成長下では政府予算に余裕ができるため、社会保障充実への要求が可能になる点も重要です。(中略)成長なき社会では個人が所得を伸ばすためには、必ず他の誰かから奪う必要があります(飯田泰之・雨宮処凛 『脱貧困の経済学』 筑摩書房〈ちくま文庫〉、2012年、224-225頁)。
岩田規久男
成長率が上昇する過程では、中所得者以上の人の所得は、低所得者以上に高まる可能性がある(岩田規久男 『「不安」を「希望」に変える経済学』 PHP研究所、2010年、258頁)。
飯田泰之
好況・人手不足状態ならば、格差と貧困はここまで深刻な規模にはなり得ません(飯田泰之・雨宮処凛 『脱貧困の経済学』 筑摩書房〈ちくま文庫〉、2012年、162頁)。
飯田泰之
経済成長すると、たしかに最初のうちは不平等度は上がっていくんです。でも、そのうち頂点を迎えて下がり、平等になっていく。たとえば、明治時代は成長にしたがって資本家が登場し、どんどん不平等になっていきました。だけど資本家により会社が増えると、労働者が足りなくなっていき、労働者の権利が強くなって不平等度が下がる(飯田泰之・雨宮処凛 『脱貧困の経済学』 筑摩書房〈ちくま文庫〉、2012年、196頁)。
飯田泰之
経済成長は労働者の発言力を強めます。その発言力の強化の中で、経済成長の果実を再分配政策の見直しにわりふること、社会保障の充実をはかることができるのです(飯田泰之・雨宮処凛 『脱貧困の経済学』 筑摩書房〈ちくま文庫〉、2012年、267頁)。

教育

岩田規久男
機会の平等を重視する立場からもっとも重要な政策は、教育を受ける機会の平等化である。(中略)教育の平等化は就職機会の平等化も進めるであろう(岩田規久男 『「不安」を「希望」に変える経済学』 PHP研究所、2010年、253頁)。
就学前の教育
ジェームズ・ヘックマン
ノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のヘックマン教授は、就学後の教育の効率性を決めるのは就学前の教育であり、特に出生直後の教育環境が重要であることを、さまざまなデータを用いて実証的に明らかにしている(大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、87頁)。
大竹文雄
就学以前の段階できちんと教育を受けていた場合には、学校教育における援助は大きな効果があるという(大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、94頁)。

格差そのものに対する見解

三橋貴明
資本主義である以上、人々の間に格差が生じ、ある程度は拡大して当たり前なのです。そもそも人々の間に格差が存在しなかった時代など、歴史上に一度たりとも存在しません(三橋貴明 『高校生でもわかる日本経済のすごさ』 彩図社、2009年、121頁)。
原田泰
経済成長への貢献と所得は比例していない場合が多い。(中略)しかし、既存の富は不公正なものだから、それは略奪するに値すると考えだせば、社会はとんでもないを災厄に巻き込まれる(原田泰 『コンパクト日本経済論(コンパクト経済学ライブラリ)』 新世社、2009年、126頁)。
竹中平蔵
本来重要なのは、生涯所得の比較である(竹中平蔵 『竹中平蔵の「日本が生きる」経済学』 ぎょうせい・第2版、2001年、126頁)。
アルベルト・アレジーナ
ハーバード大学のアレジーナ教授らは、ヨーロッパ(EU諸国)とアメリカについて、膨大なデータを用いて比較研究を行った。彼らの研究によれば、ヨーロッパでは不平等感が高まると人々は幸福感を感じなくなるのに対して、アメリカ人は不平等感が高まっても幸福感が影響を受けないという。(中略)アメリカでは所得階層間の移動率が高いので、現在貧しいことは必ずしも将来の貧しさを意味しない。(中略)ヨーロッパの方が、アメリカに比べて、所得階層間の移動率が低いことが、ヨーロッパで所得の不平等感が深刻な問題だと考えられている理由なのである(大竹文雄 『経済学的思考のセンス-お金がない人を助けるには』 中央公論新社〈中公新書〉、2005年、216-217頁)。
ジョン・ロールズ
しかしロールズは、努力すら恵まれた育ちの産物だと言う。「努力し、挑戦し、一般的な意味での評価を得ようとする姿勢でさえ、幸福な家庭と社会環境に依存する」(マイケル・サンデル 『これからの「正義」の話をしよう--いまを生き延びるための哲学』 鬼澤忍訳、早川書房、2010年、206頁)。
ジョン・ロールズ
彼の一つ目の答えは、勤労倫理や誠実に頑張る意欲でさえ、私たちが自分の功績だとは主張できない家庭の環境や、社会的・文化的偶然性などによって決まるというものだ。(中略)二つ目の答えもある。努力を引き合いに出す人は、本当は、道徳的な適価は努力に付随していると信じてはいないのだ(マイケル・サンデル 『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(下)』 NHK「ハーバード白熱教室」制作チーム・小林正弥・杉田晶子訳、早川書房、2010年、75頁)。
ジョン・ロールズ
能力主義の擁護者が、分配の道徳的な根拠だと信じているのは、本当は努力ではなく貢献だ。どれだけ貢献したかが重要なのだ。しかし貢献は、私たちを単なる努力ではなく、生まれながらの才能と能力の問題に引き戻してしまう。そして、私たちがそのような才能を持つに至ったのは、自分の行いのおかげではない(マイケル・サンデル 『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(下)』 NHK「ハーバード白熱教室」制作チーム・小林正弥・杉田晶子訳、早川書房、2010年、76頁)。
大竹文雄
人々がどれだけ努力しているかということを知ることは、最も難しいことの一つである。生まれもっての才能が人によって違うため、同じ成果を得るために必要とされる努力レベルは、人によって大きく異なってくる(大竹文雄 『経済学的思考のセンス-お金がない人を助けるには』 中央公論新社〈中公新書〉、2005年、xii頁)。
吉川洋
偶然に左右される分配を放置すれば、社会の安定は大きく損なわれるだろう。そう考えれば『結果の平等』を求める狩猟採集民の社会にはそれなりの合理性があるといえる(田中秀臣 『不謹慎な経済学』 講談社〈講談社biz〉、2008年、62頁)
ミルトン・フリードマン
努力によって勝ち取ったのではなく、生まれながらに優れた素質や才能を持っている者も、そうでない者より不当に優位な立場にあるとフリードマンは言う。しかしロールズとは異なり、フリードマンはこの不公平さを是正するのではなく、この差を受け入れ、そこから利益を得るべきだと主張した(マイケル・サンデル 『これからの「正義」の話をしよう--いまを生き延びるための哲学』 鬼澤忍訳、早川書房、2010年、214頁)。
スティーヴン・ランズバーグ
幸福と所得とが同等ならば、全員が中程度の所得の国の方が、一部が豊かで一部が貧しい国よりも優れていることになる。だが同時に、最底辺の人々にも生活水準以上の福利が保証されるなら不平等も認められる。所得格差が大きくても最貧困者が十分に食べていける社会の方が、全員が等しく飢えている社会よりも望ましい(スティーヴン・ランズバーグ 『ランチタイムの経済学-日常生活の謎をやさしく解き明かす』 佐和隆光・吉田利子訳、日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2004年、96頁)。

日本

伊藤修
ジニ係数などの数字によって示される格差の大きさが道義的に問題なのではない。必要最低限が満たされない実在、実態こそが問題なのである(伊藤修 『日本の経済-歴史・現状・論点』 中央公論新社〈中公新書〉、2007年、164頁)。
土居丈朗
格差拡大への批判が世界的に起きている。だがその動きをよく見ると、権利や機会の平等を訴えるものと、結果の平等を訴えているものとがある。わが国では、人口減少・高齢化と先行きの閉塞感からか、どちらかといえば結果の平等を訴える声が大きいかもしれない。これは危うい傾向といえよう(日本経済新聞社編著 『経済学の巨人 危機と闘う-達人が読み解く先人の知恵』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2012年、100頁)。
原田泰
明治の日本人は、富は自ら創造するものだと認識したのに、昭和初期の日本人は、富は略奪だと認識した。富を略奪であると認識し、しかも、それを欲しいといえば、戦争をするしかない。(中略)もちろん、戦前昭和にも、石橋湛山のように、富を略奪であると認識することの誤りを指摘していた人々はいた。(中略)戦後の繁栄と平和と自由は、戦前昭和を否定し、富は略奪ではなく創造できると考えたことから始まったことを忘れてはならない(原田泰 『コンパクト日本経済論(コンパクト経済学ライブラリ)』 新世社、2009年、129頁)

日本

田中秀臣
つまりピケティの問題視する経済格差は社会のわずかな人たちに富や所得が集中することで出現するのだが、日本ではその種の経済格差は深刻ではない。むしろ日本では「貧しい人が多すぎる」ことが経済格差を深刻化している(飯田泰之・田中秀臣・麻木久仁子 『「30万人都市」が日本を救う! 〔中国版「ブラックマンデー」と日本経済〕』 藤原書店、2015年、34頁)。

歴史

戦前の格差
竹中平蔵
戦前の日本社会はどういう社会だったかというと、強国の中で最も所得格差が大きな国の一つでした。私たちは日本は平等な社会だと何の気なしに言ってしまいますけれど、これは、高度成長のごくかぎられた期間に実現した、かなり特殊な現象なんです。もちろん、平等なほうがいい面があるということはわかりきっています。でも日本は、文化的にも社会的にも、もともと極端に平等な国であったわけではないのです(竹中平蔵 『竹中平蔵の「日本が生きる」経済学』 ぎょうせい・第2版、2001年、49頁)。

格差の要因

田中秀臣
日本の経済格差の主因は、急激な高齢化によるものと長期の不況がもたらした低所得者層の増大に求められるというのが通説である(飯田泰之・田中秀臣・麻木久仁子 『「30万人都市」が日本を救う! 〔中国版「ブラックマンデー」と日本経済〕』 藤原書店、2015年、33頁)。
三橋貴明
実際問題として、日本の所得の問題は貧困率でもなければ格差拡大でもありません。真の問題は、名目GDPが高まらないことで、各人の所得水準が上昇していないことにあるのです(三橋貴明 『高校生でもわかる日本経済のすごさ』 彩図社、2009年、128頁)。
循環的要因
竹中平蔵
日本の所得不平等が、八〇年代から九〇年代に入って一気に高まったという事実だ(竹中平蔵 『竹中平蔵の「日本が生きる」経済学』 ぎょうせい・第2版、2001年、124頁)。
池田信夫
格差の拡大した原因は市場原理主義でも構造改革でもなく、バブル崩壊後の長期不況なのだ(池田信夫 『希望を捨てる勇気-停滞と成長の経済学』 ダイヤモンド社、2009年、6頁)。
田中秀臣
若い世代(特に現在20代半ば-30代初めの人たち)にとって、経済格差は、不況が原因となる新卒市場での就職難によるものである。中高年の失業についても、経済格差は不況を反映したリストラに起因している。まさに、格差は不況の長期化がもたらしたものなのである(田中秀臣 『不謹慎な経済学』 講談社〈講談社biz〉、2008年、110頁)。
飯田泰之
1990年代末の、不況が深刻化する第一段階では、新卒求人の縮小という形で人員の絞り込みが行われ、それがロスジェネ問題を生み、格差の問題を生んでいるのです。(中略)雇用や格差の問題を考える際には、マクロの経済環境の悪化、そしてデフレが大きな影響を及ぼしているという点にも、もう少し注目する必要があるでしょう(飯田泰之・雨宮処凛 『脱貧困の経済学』 筑摩書房〈ちくま文庫〉、2012年、185頁)。
池田信夫
中谷氏が強調する格差の原因は「新自由主義」ではなく、90年代に終身雇用が維持できなくなった状況で、中高年社員の安心のコストを若年層に転換した結果なのだ(池田信夫 『希望を捨てる勇気-停滞と成長の経済学』 ダイヤモンド社、2009年、218頁)。
田中秀臣
ところで「格差社会」の実体とは何であろうか。それは端的にいえば1990年代からの長期的な経済停滞がもたした雇用の悪化に基づいている。さらにいえば若い世代でパート・アルバイトに従事している人たちが相対的に増加したことで所得格差が拡大していることでもある(田中秀臣 『経済政策を歴史に学ぶ』 ソフトバンククリエイティブ〈ソフトバンク新書〉、2006年、18頁)。
田中秀臣
特に近時いわれている「格差社会」は、長期にわたる大停滞の産物であり、構造的な問題というよりも、不況の長期化がもたらしたものである、というのが本書の理解だ。(中略)今日いわれている「格差社会」が、もともと短期的な問題であるはずの景気循環的問題であり、政府の失敗によって長期化したことが問題の真相である(田中秀臣 『経済政策を歴史に学ぶ』 ソフトバンククリエイティブ〈ソフトバンク新書〉、2006年、15頁)。
田中秀臣
不況は、同世代でも正規の職に就いた人と就けない人との間の経済格差をもたらし、同時にバブル期までの売り手市場で就職した世代とそれ以降の世代との間に、世代間の経済格差をももたらしているのです(田中秀臣 『デフレ不況 日本銀行の大罪』 朝日新聞出版、2010年、44頁)。
大竹文雄
非正規雇用を雇用の調整弁と位置づけ、その増加をデフレ下の労務費削減ツールとすることで、正社員の解雇規制と賃金を守っていくという戦略に、経団連(日本経済連合会)と連合(日本労働組合総連合会)の利害が一致したのだ。少数の正社員の過重労働と、多数の非正規社員の不安定化という二極化が起きたのは当然の帰結である(大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、164-165頁)。
太田清
〇三年以降、若年層の所得格差の拡大が止まっていることも指摘しています(田中秀臣 『雇用大崩壊 失業率10%時代の到来』 NHK出版〈生活人新書〉、2009年、52頁)。
構造的要因
太田清
太田は個人を正規雇用と非正規雇用の2つのグループに分け、さらに格差がどのような原因で生じたかにも注目した。その上で1997年から2002年にかけてすべての年齢層でジニ係数が大きくなっていて、特に20代と30代の若年層で所得格差の拡大がみられることを明らかにしている。またこれらの若年層の所得格差の生じる原因として、非正規雇用者の構成比の高まりを挙げている。太田自身は、これを1997年以降の景気低迷に加え、雇用流動化などの構造的要因が寄与した可能性を指摘している(田中秀臣 『経済政策を歴史に学ぶ』 ソフトバンククリエイティブ〈ソフトバンク新書〉、2006年、19-20頁)。
大竹文雄
かつてなら非正規雇用者の雇用調整は、それほど深刻な貧困問題を引き起こさなかったが、世帯主の男性や単身男性が非正規雇用者ということが増えてきたため、非正規雇用の雇用調整が貧困問題に直結するようになってきたのだ。というのは、九〇年半ばまで、非正規雇用者の中心は、既婚女性労働者であり、家計の生計を主として担う存在ではなかったからだ。世帯主の多くは、正規雇用者として雇われており、家計所得の補助的役割を非正規雇用者が担っていたのである(大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、51頁)。
大竹文雄
「非正規切り」に象徴されている問題は何だろうか。それは、雇用の二極化という不合理な格差が生み出す社会全体の不安定化であり閉塞感である。(中略)世代間の不公平が固定化されてしまうことが問題なのだ(大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、161頁)。
池田信夫
「派遣労働の規制緩和が格差の原因だ」という類の話は原因と結果を取り違えたもので、派遣労働者は非正社員の8%にすぎない。大部分は契約社員であり、これは規制緩和とは無関係に90年代前半から増えている(池田信夫 『希望を捨てる勇気-停滞と成長の経済学』 ダイヤモンド社、2009年、67頁)。
原田泰、大和総研
日本で格差の原因となっているのは、直観的に考えれば流通や外食、介護などの低賃金のサービス労働の拡大だと思われる(原田泰・大和総研 『新社会人に効く日本経済入門』 毎日新聞社〈毎日ビジネスブックス〉、2009年、33頁)。
原田泰
若年の失業率は2002年をピークに下降しているが、2002年を境に若者の社会適応能力が上昇したり、実業を無視しない教育が改まったり、若者の自分探し志向が変わったりしたはずはない(原田泰 『コンパクト日本経済論(コンパクト経済学ライブラリ)』 新世社、2009年、132頁)。
グローバル化
岩田規久男
〇三年から〇七年初頭までの景気回復期、企業収益が伸びたにもかかわらず、正社員の実質賃金の伸びは鈍いままだった。発展途上国から輸入品との競争で、実質賃金を切り下げざるを得なかったからです。その延長線上で、企業は正社員よりも賃金の低い非正規就業者(フリーターを含む)を多く雇いました。しかも、彼らに賃金の伸びはありません。アジアなどで生産される輸入品は、現地の未熟練な低賃金労働者がつくっている。それに対抗するために、日本のフリーターたちの賃金を低い水準に抑えこんでしまったのです。同じ頃、製造業の正社員の実質賃金は、競争圧力があったにもかかわらず二・二%程度上昇してしまいました。岩田氏は、グローバル競争が正社員とフリーター間の経済格差を拡大させた可能性を指摘したのです(田中秀臣 『雇用大崩壊 失業率10%時代の到来』 NHK出版〈生活人新書〉、2009年、62-63頁)。
ジニ係数
松原聡
日本の各省庁発表しているジニ係数はいずれも80年代以降ゆるやかに上昇しています。その意味では格差は拡大しているといえますが、構造改革が本格化した2001年以降に特に目立った変化はありません。拡散の拡大は、構造改革とは直接的な関係はなく、あくまでそれ以前からの大きな潮流なのです(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、38頁)。
松原聡
ジニ係数が拡大した大きな要因の一つは「世帯の規模が小さくなっていること」です。日本では以前から核家族化が進んでおり、1世帯の規模が小さくなる傾向にあります。核家族化が進めば、大家族が多かった時代に比べて世帯ごとの所得の格差は広がっていくわけです。また、高齢化が進展していることも大きな要因です。一般に年齢層が高い人々ほど所得の格差も大きいため、人口全体の高齢化が進めば、格差は拡大します(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、38頁)。
少子高齢化
三菱総合研究所政策経済研究センター
ジニ係数が上昇しているのは、日本社会の高齢化の進んでいる大きな要因です。一般に、若い世代の収入格差は小さく、年齢を重ねるにつれて格差が開いていきます。人口全体の高齢化が進めば、おのずと格差も開いてしまうわけです(オフィステクスト・三菱総合研究所政策経済研究センター 『手にとるように経済がわかる本』 かんき出版、2009年、78頁)。
三和総合研究所
高齢者の所得や貯蓄水準は実にさまざまで、高齢者を一括りにすることは、もはや現実的ではないのである(三和総合研究所編著 『30語でわかる日本経済』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2000年、203頁)。
税制の変化
飯田泰之
「なぜこんなに貧富の差が広がったんですか」と問われたら、僕はいつも「金持ちを減税して貧乏人に増税しているんだから当たり前です」と言います(飯田泰之・雨宮処凛 『脱貧困の経済学』 筑摩書房〈ちくま文庫〉、2012年、96頁)。

格差の固定化

竹中平蔵
格差がいけないのではない。格差が固定されることがいちばんいけないと思います。格差が固定されている社会というのは、やはり非常に閉塞感があります。いままでの日本の社会は、実は意外と格差が固定されています。有名な話ですが、どの大学生の親がいちばん所得が高いかというと、圧倒的に東京大学の親の所得が高いわけです。つまり、お金持ちが再生産されるシステムがこの社会にはあり、所得格差がないように見えても、けっこう格差が固定されている社会かもしれないんです。所得格差があっても、自分も高所得者になれるんだというチャンスがある社会は、やっぱり夢のある社会であるし、そんなに悪い社会ではないと思います(竹中平蔵 『竹中平蔵の「日本が生きる」経済学』 ぎょうせい・第2版、2001年、50-51頁)。

格差の是正

雇用規制の緩和
池田信夫
労働市場が柔軟になれば、新卒で就職できなかった人が一生を棒に振るような絶対的な格差はなくなる。もちろん結果として所得格差はあるが、問題は結果の平等ではなく機会の平等だ(池田信夫 『希望を捨てる勇気-停滞と成長の経済学』 ダイヤモンド社、2009年、76頁)。
再分配
池田信夫
格差を単なる所得の差と考えるかぎり、その解決は簡単である。高所得者に高額の課税をして低所得者に分配すればよい。しかし「分配の平等」には多くの国民の合意が得られるが、増税に合意を得ることはきわめてむずかしい(池田信夫 『希望を捨てる勇気-停滞と成長の経済学』 ダイヤモンド社、2009年、179頁)。
飯田泰之
日本の場合、生活に困っている人から取って、お金を多く持っている人に与えてしまっているという側面がある。なぜなら、日本の再分配というのは、お金を多く持っているかではなく、どこに住んでいるか、何歳かによって決まっている部分が大きいからなんだ。実際の日本の再配分の仕組みは、都市部に住むの20代-50代から集めた税金で、60歳以上を養う仕組みになっている。(中略)お金を多く持っている60代の人たちが、お金のない20代や30代から集めたお金を受け取るということが起こっている((飯田泰之 『世界一わかりやすい 経済の教室』 中経出版〈中経の文庫〉、2013年、245-246頁)。
飯田泰之
すると20代の貧困率は、税金をとる前よりもそれを再分配したあとのほうが高いというデータもある。やらないほうがまし。(中略)高齢者間への再分配は結構うまくいっているんですけど(飯田泰之・雨宮処凛 『脱貧困の経済学』 筑摩書房〈ちくま文庫〉、2012年、68頁)。
景気回復
ゲイリー・ベッカー
日本の経済格差と言われている問題は不況のせいなので、あと1-2年もいまの景気が続けば、経済格差と騒がれている問題の大半は解決する(田中秀臣 『不謹慎な経済学』 講談社〈講談社biz〉、2008年、111頁)
岩田規久男
再配分前所得の格差を拡大させる最大の要因は、完全雇用を達成できないような低成長が続くことである(岩田規久男 『「不安」を「希望」に変える経済学』 PHP研究所、2010年、230頁)。
岩田規久男
すなわち長期的には、金融政策によるマクロ経済の安定化を伴った経済改革は、成長率を引き上げることによって、格差の拡大に歯止めをかけることを可能にするといえるであろう(岩田規久男 『「不安」を「希望」に変える経済学』 PHP研究所、2010年、257頁)。
田中秀臣
若年層の所得格差の拡大には、フリーターの増加が大きく関係しています。そしてフリーターの増加自体は、景気が良くなると減少することがわかりました。ここからわかることは、若年層の所得格差の拡大をストップさせるためには、景気を良くすることが最も効果的だということです(田中秀臣 『偏差値40から良い会社に入る方法』 東洋経済新報社、2009年、164頁)。
田中秀臣
若年層の世代間格差は、1997年以降に拡大していきました。景気が多少良くなった2003年以降、若年層の所得の悪化には歯止めがかかっています。ということはロスジェネとかワーキングプアとか若い人たちの生活のつらさをもたらした主犯は、長期にわたる不況だったのではないかという疑いが強いわけです。不況が原因となって、たとえば不安定な就労を余儀なくされているフリーターの増加を生み出し、好景気がフリーターの減少を生み出している、というわけです。このことはフリーターの増減で見ると、わかりやすいでしょう。たとえば不況が深刻であった2002年は208万人でしたが、景気回復が明瞭になった2004年から次第に減少して、07年には181万人まで低下しています(田中秀臣 『偏差値40から良い会社に入る方法』 東洋経済新報社、2009年、161-162頁)。

地域による格差

森永卓郎
新聞などで発表される各種データを見ていると、首都圏や中京圏といった都会と、北海道や東北、九州などで明らかな差の出ているものが多いことに気づかされます。平均給与、失業率、人口増加率……ほとんどの分野で、都会より地方が苦しんでいる様子が見えてきます(森永卓郎 『「騙されない!」ための経済学 モリタク流・経済ニュースのウラ読み術』 PHP研究所〈PHPビジネス新書〉、2008年、127頁)。

アメリカ

スティーヴン・ランズバーグ
統計データによると、一九八〇年代に貧富の格差が大いに拡大したかのように見える。金持ちはますます豊かになり、貧乏人はそのままだったようである。この統計が現実を反映しているのかどうか、私にはわからない。だが、そうではないと推察できる理由はいくつかある。第一に、一九八〇年代には所得税率が大幅に引き下げられた。この減税は重要な影響を及ぼしたけれども、見かけだけの影響で会ったことも無視できない。税率が下がると、人は所得隠しにそう熱心ではなくなる。それだけでも、富裕層の所得が上昇したかのように思える。低所得者層はいずれにせよ所得のほとんど一〇〇パーセントを申告するだろう税率が低いし、賃金のように補足されやすい収入が主たる所得源だからだ。したがって、低所得者層の所得には目立った変化はない。高所得者層の方が所得隠しの動機も機会も多いのだが、税率が下がれば、そう熱心に所得隠しをしなくなる。すると高所得者層の所得が増え、格差が広がったように見える。第二に、家庭の崩壊は貧困が広がったかのような統計的錯覚を生む。共働きの二人のそれぞれの年間所得が二万五〇〇〇ドルという世帯は、家計の所得が五万ドルの中産階級だ。家族がばらばらになると、中産階級の世帯が一つなくなり、そのかわりに所得二万五〇〇〇ドルの低所得者層が二つ生まれる。第三に、非常に面白いことだが、年間所得の格差拡大は必ずしも生涯所得格差の拡大を意味しない。これは、個人の属する所得階層が移り変わる可能性があるためだ(アメリカでは、所得階層五分位に属する世帯が八年後に同じ階層にいる可能性は小さい)(スティーヴン・ランズバーグ 『ランチタイムの経済学-日常生活の謎をやさしく解き明かす』 佐和隆光・吉田利子訳、日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2004年、210-212)。
フリードリッヒ・ハイエク
だが自由の伝統を持つ米国でも変化が起こっていることに、ハイエクは強い危機感を持つ。「社会保障制度」「累進課税」などで「結果の平等」を目指した政策が導入された結果、自由への脅威が生まれたと彼は考えるのである(日本経済新聞社編著 『世界を変えた経済学の名著』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2013年、97頁)。

アメリカの現状

マイケル・サンデル
アメリカの金持ち上位一パーセントが国中の富の三分の一以上を保有し、その額は下位九〇パーセントの世帯の資産を合計した額より多い。アメリカの上位一〇パーセントの世帯が全所得の四二パーセントを手にし、全資産の七一パーセントを保有している。アメリカの経済的不平等はほかの民主主義国よりもかなり大きい(マイケル・サンデル 『これからの「正義」の話をしよう--いまを生き延びるための哲学』 鬼澤忍訳、早川書房、2010年、78頁)。
マイケル・サンデル
アメリカ国内ではここ数十年で貧富の差が大きくなり、一九三〇年代以来最大と言える水準にまで広がった(マイケル・サンデル 『これからの「正義」の話をしよう--いまを生き延びるための哲学』 鬼澤忍訳、早川書房、2010年、341頁)。

格差の要因

ポール・クルーグマン
格差の増大は「グローバリゼーションが主要な要素ではない」、「グローバリゼーションが引き起こした格差は、広い格差問題のほんの一部」と言っている(中略)クルーグマンは、格差の拡大は主にアメリカ、イギリスの現象だから「市場原理主義」が原因だとしている(若田部昌澄・栗原裕一郎 『本当の経済の話をしよう』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2012年、168頁)。

中国

北京大学社会科学調査センター
北京大学の社会科学調査センターの報告によれば、上位1%の富裕層が中国全土の3分の1以上の資産を保有している(日本経済新聞出版社編著 『中国バブル崩壊』日本経済新聞出版、2015年、102頁)。
三和総合研究所
中国における所得格差は重層的である。都市部と農村部、沿海部と内陸部、そして個人レベル(実はこれが一番大きい。中国政府の関係者によれば、個人の金融資産の八割以上を上位二割の高所得層が保有しているという)といったさまざまな格差が生じ拡大し続けている(三和総合研究所編著 『30語でわかる日本経済』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2000年、241頁)。
三菱総合研究所
地域別の一人当たりGDPは、発展著しい沿岸部の上海市と、内陸部に位置する貴州省では一〇倍近い差がある(三菱総合研究所編著 『最新キーワードでわかる!日本経済入門』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2008年、160頁)。

中国の所得格差

栗原昇
上海などの主要都市部と内陸農村部の賃金は10倍以上の格差があるとされています(栗原昇・ダイヤモンド社 『図解 わかる!経済のしくみ[新版]』 ダイヤモンド社、2010年、177頁)。
三橋貴明
貴州省というところは、中国でもっとも貧しい省である、上海との年収格差は15-16倍だ(三橋貴明 『経済ニュースが10倍よくわかる「新」日本経済入門』 アスコム〈アスコムBOOKS〉、2010年、141頁)。
日本経済新聞社
中国では二〇〇〇年に、都市と農村の一人当たりの所得格差が、九七年の二・四七倍から二・七九倍に広がった(日本経済新聞社編著 『そうか、わかった!いまどき日本経済-エコノ探偵団デフレの街を行く』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2002年、97頁)。
栗原昇
そこで問題となったのは、沿岸部の経済特区と内陸部の農村地帯の激しい所得格差です。これが、やがて天安門事件へとつながっていきます(栗原昇・ダイヤモンド社 『図解 わかる!経済のしくみ[新版]』 ダイヤモンド社、2010年、176頁)。

インド

栗原昇
一方でインドにはカースト制度と呼ばれる階級制度のの伝統が残っており、先進産業に従事する人以外の人口の3分の2は低所得者という格差社会です。女性の識字率は58%といわれます(栗原昇・ダイヤモンド社 『図解 わかる!経済のしくみ[新版]』 ダイヤモンド社、2010年、173頁)。

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