経済・経済学に関するメモ。

橘木俊詔
実は所得再分配政策は、高所得者から低所得者に直接所得を移転する方策ではなく、政府が間に入って税制や社会保障制度の活用によってなされるのが現実の政策である(橘木俊詔 『朝日おとなの学びなおし 経済学 課題解明の経済学史』 朝日新聞出版、2012年、65頁)。

歴史

マイケル・サンデル
分配の正義の理論 1.リバタリアン-自由市場システム 2.能力主義-公正な機会均等 3.平等主義-ロールズの格差原理(マイケル・サンデル 『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(下)』 NHK「ハーバード白熱教室」制作チーム・小林正弥・杉田晶子訳、早川書房、2010年、67頁)。
小塩隆士
政府に所得再分配配分を担当させるとしても、どこまで所得再分配を進めるかという重要な問題が残っています。ここでは、両極端の考え方を紹介しましょう。一つは、まったく所得再分配をしなくてもかまわないという考え方です。世の中にどんなに貧乏人がいてもかまわない。その社会を全体として見た場合、人々が得た所得の総額が高ければ高いいほど、その社会は幸せだと考えるわけです。(中略)とにかく、社会全体の幸福の最大化が目指されます。これを功利主義的な考え方といいます。高校の「倫理」でも、功利主義という言葉は、ベンサム(J.Bentham,1748-1832)というイギリスの思想家の名前と共に登場すると思います。もう一つは、世の中で最も所得の低い人の幸せによって、その社会全体の幸せの度合いが決定されるという考え方です。この考え方は、アメリカの政治哲学者ロールズ(J.Rawls,1921-2002)によって打ち立てられました。この考え方を採用すれば、所得はなるべく平等に分配されている状況が望ましいということになります。所得がどのように分配されているかという点に無頓着な功利主義的な発想とは、一八〇度異なる考え方です(小塩隆士 『高校生のための経済学入門』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2002年、97頁)。
橘木俊詔
極貧者に高いウエートをおいて評価する社会的厚生関数という考え方もあり、これはその主張者である20世紀最大の哲学者ロールズの名前をとって、ベンサム型社会的厚生関数と対比させて、ロールズ型社会的厚生関数と呼ばれるものがある(橘木俊詔 『朝日おとなの学びなおし 経済学 課題解明の経済学史』 朝日新聞出版、2012年、86頁)。

所得再分配(パイの分割)の有用性

飯田泰之
何があったとしても最低限度の生存は保証される。だからこそ長期的な計画・行動・チャレンジが可能になるのです。これが成長を支えるための再分配政策の必要性です(飯田泰之・雨宮処凛 『脱貧困の経済学』 筑摩書房〈ちくま文庫〉、2012年、177頁)。
飯田泰之
再分配政策は、みんなのベンチャースピリットを下支えすることを通して、社会を活性化する政策なんだ。(中略)再分配政策がまったく行われなかった場合、あまりにも経済格差が広がってしまうかもしれない((飯田泰之 『世界一わかりやすい 経済の教室』 中経出版〈中経の文庫〉、2013年、168-169頁)。

所得再分配(パイの分割)の注意点

飯田泰之
行きすぎた再分配政策は、「頑張って働いても損しかしない」、「だから頑張らない」という結果を招いてしまいかねない政策なんだ。そういった意味で再分配政策というのは、やりすぎると社会全体の生産性を下げてしまう可能性のある政策なんだ((飯田泰之 『世界一わかりやすい 経済の教室』 中経出版〈中経の文庫〉、2013年、167頁)。
伊藤元重
もちろん所得分配の公平性を実現することは、資源配分の効率性の達成することとトレードオフの関係にあることも少なくありません。効率性と公平性をどのように折り合いをつけていくかも、公共部門の活動の重要な役割となります(伊藤元重 『はじめての経済学〈下〉』 日本経済新聞出版社〈日経文庫〉、2004年、14-15頁)。
スティーヴン・ランズバーグ
政府が新たな歳入の一億ドルを再分配せずに、無益なプロジェクトに支出すれば、社会はそれだけ貧しくなる(スティーヴン・ランズバーグ 『ランチタイムの経済学-日常生活の謎をやさしく解き明かす』 佐和隆光・吉田利子訳、日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2004年、156頁)。

効率的な資源配分(パイの拡大)の有用性

アダム・スミス
スミスは、貧しい人に富が行き渡るのは望ましいことであった。しかし、それは経済成長を通じて実現されるべきものであり、政府による富者からの貧者への強制的な所得移転によって達成されるべきものではなかった(日本経済新聞社編著 『経済学の巨人 危機と闘う-達人が読み解く先人の知恵』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2012年、290頁)。
ヴィルフレード・パレート
パレートは、彼の得た観察事実から、所得再分配政策は現実の所得分布に大きな影響を与えないという、やや飛躍した結論に至っている。従って、特定の所得階層の生活水準の向上のためには、限られたパイの再分配ではなく、パイ自体の拡大が必要であるとした(日本経済新聞社編著 『経済学をつくった巨人たち-先駆者の理論・時代・思想』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、106頁)。
岩田規久男
成長は人々の間の所得格差を縮める最大の要因です。多くの実証研究が、所得格差の縮小にもっとも貢献したのは政府による所得再分配政策ではなく、経済成長だったことが明らかにしています(岩田規久男 『日本経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2005年、258頁)
森永卓郎
経済全体のパイが成長しているときには、パイは比較的均等に分配されやすくなります。逆に縮小しているときには、均等に少しずつ所得が減るのではなくて、特定のグループだけがパイの縮小の影響をこうむりやすくなる(森永卓郎 『日本経済50の大疑問』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、108頁)
高橋洋一
分配の仕方だけがうまくいっても、分配すべきパイ小さくなってしまえば、社会全体が貧しさのなかに落ち込んでいかざるをえないのです(高橋洋一 『日本の大問題が面白いほど解ける本 シンプル・ロジカルに考える』 光文社〈光文社新書〉、2010年、157頁)。
松尾匡
今日広がる深刻な貧困問題に対処するために、まっとうな雇用を拡大することなしに、ただ再配分だけで解決しようということは、戦争中、傷痍復員兵や戦死者の遺族が困窮しているから生活をちゃんと保障しろとだけ言い、反戦を言わないことに等しい。いくら手厚く保障しても、戦争が続く限り次々と対象者が現れてきりがない。このような態度が、戦争指導者の責任を免罪し、結局は戦争体制を支えるものであるのと同様に、雇用拡大を説かない再分配は、このかんの不況をもたらした自民党と旧日銀の責任を免罪し、労働者がクビ切り賃下げに抵抗できない不況体制を支えるものと言わざるを得ない(田中秀臣編著 『日本経済は復活するか』 藤原書店、2013年、173頁)。

効率的な資源配分(パイの拡大)の注意点

堂目卓生
経済成長が貧者の状態を改善するとは限らない。悪化させる場合すらある(日本経済新聞社編著 『経済学の巨人 危機と闘う-達人が読み解く先人の知恵』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2012年、290頁)。
橘木俊詔
ある政策の導入によって社会全体のパイは増加するメリットがあり、人によっては厚生が増加して利益を受ける場合があるが、他方別の人では厚生が減少して不利益を被る場合がある。このときには利益が受ける人が、被害を受ける人に対して補償を行えばよい、というのが補償原理の教えるところである(橘木俊詔 『朝日おとなの学びなおし 経済学 課題解明の経済学史』 朝日新聞出版、2012年、86頁)。
竹中平蔵
競争を野放しにしていると当然のことながら貧富の差が拡大するわけですから、それを補うための制度を作らなければいけません(佐藤雅彦・竹中平蔵 『経済ってそういうことだったのか会議』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2002年、372頁)。
ケネス・アロー
これはノーベル経済学賞を受賞したケネス・アロー教授が証明した「厚生経済学の基本定理」として知られる。この理論のポイントは「社会全体の厚生水準を最大化するためには、まず競争原理の貫徹により経済効率を最大限に引き上げ(国内総生産を最大にする)、その後に、望ましい所得分配を実現させるための所得再配分政策を実行せよ」ということである(日本経済新聞社編著 『やさしい経済学』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、56頁)。

ジョン・ロールズの格差原理

ジョン・ロールズ
「恵まれた者は、恵まれない者の状況を改善するという条件でのみ、その幸運から便益を得ることが許される」これが格差原理で、道徳的な恣意性から来る議論だ(マイケル・サンデル 『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(下)』 NHK「ハーバード白熱教室」制作チーム・小林正弥・杉田晶子訳、早川書房、2010年、60頁)。
ジョン・ロールズ
格差原理とは、いわば個人に分配された天賦の才を全体の資産と見なし、それらの才能が生みだした利益を分かち合うということに関する同意だ(-マイケル・サンデル 『これからの「正義」の話をしよう--いまを生き延びるための哲学』 鬼澤忍訳、早川書房、2010年、203頁)。
ジョン・ロールズ
米国の政治哲学者のジョン・ロールズが『正義論』(1971年)を出版してから分配の問題が、再び哲学者や経済学者の間で議論されるようになった。(中略)第1--参政権や思想・言論の自由など、基本的な自由は構成員のすべてに平等に与えられること。第2--富や地位の不平等の拡大は(a)均等な機会が保障されており、なおかつ(b)不遇な人々の境遇が改善されている場合にのみ許されること。各国は、これらの原理を体現する憲法を制定し、憲法に即した法律や制度を作り、政策を施行すればよい。そうすれば、経済成長に頼ることなく、また個人の自由を著しく侵害することなく、富や地位について不満のない分配を実現することができるだろう(日本経済新聞社編著 『経済学の巨人 危機と闘う-達人が読み解く先人の知恵』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2012年、291-291頁)。
アマルティア・セン
ジョン・ロールズの正義論を高く評価しつつも、個人が権利や富や地位を獲得する目的とプロセスの視点が欠けていると指摘する。センによれば、人間は権利や富や地位が分け与えられるのを待つだけの受動的存在ではない。自分の「ケイパビリティ」(用いることができる能力の幅)を自らの力で広げたいと願う能動的な存在である(日本経済新聞社編著 『経済学の巨人 危機と闘う-達人が読み解く先人の知恵』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2012年、292頁)。

再配分としての税

竹中平蔵
税は、われわれの生活を支えるための重要な国の収入です。しかも、税には政府の支出を賄う以外にも重要な意味があります。それは所得の再分配という役割です(竹中平蔵 『竹中教授のみんなの経済学』 幻冬舎、2000年、60頁)。
八田達夫
税は、再配分や市場の失敗などに対応するための政策手段となる。(中略)この観点から税はの三つに分類できる。(1)貧富の差に応じた税負担を求める「再配分税」(2)公害対策として、企業や人々の行動を変えさせることを意図して課税される「環境税」(3)政府支出を賄うために税収をあげることだけを目的とする「税収目的税」--である。再分配税の典型は、累進的な所得税と相続税である。税収目的税は酒税や消費税などである(日本経済新聞社編著 『やさしい経済学』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、194-195頁)。
岩田規久男
右で提案した最高限界所得税率の引き上げ、所得控除の縮小ないし撤廃、給付付き税額控除制度の創設、退職金優遇税制の廃止、基礎年金の財源としての目的消費税の導入は、結果の平等をもたらす所得再分配政策である(岩田規久男 『「不安」を「希望」に変える経済学』 PHP研究所、2010年、252頁)。
八田達夫
政府が再配分をしないことに決めるならば、税の設計は容易である。すべての人に人頭税をかければ良い。(中略)もし貧富の差が、努力の差のみで発生するのなら、税による再配分は不要である。(中略)再配分を強めるために税率を上げれば、豊かな人々に多かれ少なかれ租税回避をさせる誘因を与える。したがって、国は、再分配の規模を決める上で、租税回避効果が大きさを考慮せざるを得ない。結局、国がどれだけ再配分すべきかは、再分配の重要性に関する国民の価値観と、再配分による租税回避効果に対する現状認識とに依存する(日本経済新聞社編著 『やさしい経済学』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、196-197頁)。
マイケル・サンデル
リバタリアンによれば、再分配のための課税は一つの形の強要であり、さらに言えば盗みである。国家には富裕な納税者に貧者のための社会計画を支えるよう強制する権限はない(マイケル・サンデル 『これからの「正義」の話をしよう--いまを生き延びるための哲学』 鬼澤忍訳、早川書房、2010年、81頁)。
八田達夫
食品の消費税を非課税にできる。しかし、これは高所得者の外食や高級食材の消費を促してしまう。そもそも、低所得者も教育、住居、交通などに支出するので、食品だけの非課税は所得の再配分にとって焼け石に水だ。一方、相続を含めた所得に関しては、累進課税が技術的に可能である(日本経済新聞社編著 『やさしい経済学』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、198頁)。
土居丈朗
所得税は所得格差是正を実現できるが、経済活力(効率性)を阻害する恐れのある税である。消費税は経済活力(効率性)を保てるが、所得格差是正は実現しにくい税である。これらのバランスを考えれば、効率性を実現するには消費税、公平性を実現するには所得税を行うという役割分担が必要である。消費税は逆進的だからよくないという主張に現れているように、消費税に公平性を阻害するなと期待することは、そもそも無理な話である(ダイヤモンド社編著 『日本経済の論点いま何が問題なのか』 ダイヤモンド社、2004年、97頁)。
高橋洋一
所得の再分配に使う税は、稼ぎの多い人が多く負担する所得税や法人税が適している。消費税で所得の再分配をしようとすれば、所得の多い人も低い人も同じように負担することになり、再分配にはならない(高橋洋一 『大阪維新の真相』 中経出版、2012年、71頁)。
ミルトン・フリードマン
格差是正を狙いとした累進所得税制が、実態的に格差是正に寄与していないことを明快に示した。確かに、表面税率では高所得者ほど高税率になる仕組みだが、負担軽減措置や節税の余地があるため、実効所得税率(=実際に払った所得税率÷所得額)はある所得水準以上になると下がってくる。「累進課税はむしろ富を保護する税制」と皮肉った。(中略)貧困対策として、フリードマンの有名な提言は負の所得税である(日本経済新聞社編著 『経済学の巨人 危機と闘う-達人が読み解く先人の知恵』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2012年、101-102頁)。

日本

田中秀臣
過去の民主党政権の悲惨な実績を見ればわかるように、景気浮揚を二の次にした再分配政策は、「コンクリートから人へ」どころか、人の価値を度外視し、経済を低迷させ、雇用や生活を持続的に悪化させるだけの結果に終わった(田中秀臣 『増税亡者を名指しで糺す!』 悟空出版、2018年、132頁)。

生活保護

田中秀臣
日本の生活保護の水準は、イギリスやフランスと比べると2割くらいは高いと指摘されています(高橋洋一・田中秀臣 『日本経済再起動』 かや書房、2020年、197頁)。

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