経済・経済学に関するメモ。

野口旭
グローバリゼーションとは端的にいえば、市場経済の持つ競争機能と資源配分の効率化機能を、一国経済を超えたグローバル経済というより広い舞台の中で発揮させようとするプロセスのことです(野口旭 『グローバル経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2007年、27頁)。
松原聡
経済のグローバル化とは、国境を越えた経済活動が世界的に活発化し、世界各国での経済的な結びつきが強まっていくことを指します。近年はモノやサービスはもちろん、労働力の国際的な移動や国境を越えた投資活動なども増え、各国のあらゆる経済活動が国内にとどまらずに地球規模で広がっています(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、212頁)。
竹中平蔵
グローバル化の進展で起きることをひと言で表すなら、それは「制度の競争」です。制度とは、財政制度や金融制度などですが、人間と資本の移動が自由であるのならば、だれでも自分にとって都合のよい場所で働けばよく、企業も都合のよいところで事業を行えばよいという話になります。(中略)このように制度の均一化が起きてくるというのも、ほんとうの意味でのグローバリゼーションであると思います(竹中平蔵 『竹中教授のみんなの経済学』 幻冬舎、2000年、218頁)。
三浦瑠麗
九〇年代後半からグローバリゼーションが本格化します。旧共産圏諸国や新興国でも自由主義的な改革が行われ、グローバルな市場が急拡大します。投資や貿易のルールが明確になったことでヒト・モノ・カネの流れも一気に加速しました(三浦瑠麗『 日本に絶望している人のための政治入門』 文藝春秋〈文春新書〉、2015年、20-21頁)。

起因

松原聡
グローバル化が進んだ要因は、まず第一に、先進諸国の国内経済が成熟化したため、これらの国々の企業が活動の舞台を世界に求めるようになったことが挙げられます(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、212頁)。
松原聡
またグローバル化をより推し進めるため、各国が貿易自由化をはじめとする各種の規制緩和に積極的に取り組むようになったことも、グローバル化を加速させています(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、212頁)。
松原聡
さらに運輸、情報通信、金融などの分野の技術が発達したことも、グローバル化を促す要因となっています(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、212頁)。
原田泰、大和総研
グローバル化の進展が喧伝されたのは、1991年のソ連崩壊が契機となっている。東西冷戦の象徴である「鉄のカーテン」に閉じ込められていた人々が、ソ連崩壊で国際競争に参加する。その数は4億人である。これらの新しい労働者の国際市場への参加は当然、国際競争を激化させる(原田泰・大和総研 『新社会人に効く日本経済入門』 毎日新聞社〈毎日ビジネスブックス〉、2009年、30頁)。
竹中平蔵
九〇年代に起きたグローバリゼーションは、それまでの国際化とは次元の違うものです。その原因をつくったのは東西冷戦の崩壊です。これによって、それまでの世界経済の構造が根本的に変わってしまったのです。冷戦が崩壊したということは、かつて東側にいた国々も市場のなかに入ってくることを意味します。冷戦崩壊以前は、市場経済のなかにいる人たちというのは基本的には西側諸国の人だけでしたが、冷戦崩壊によって市場経済のなかに住む人口は急激に増えました。どう計算してみても、一気に二倍ほどに膨れ上がったのです。これにより、それまでよりもスケールを大きくした、より激しい世界的な競争が起こりました(竹中平蔵 『あしたの経済学』 幻冬舎、2003年、27-28頁)。
野口旭、田中秀臣
冷戦の終了と新興工業国の登場によって、各国が互いに熾烈な競争を繰り広げ合うグローバルな市場競争が築き上げられつつあるという考えである。この「大競争」時代には、日本的システムはまったくの時代遅れとなっており、アメリカ型の市場志向型システムに転換するしかないというのが、その結論である。これらの考え方の最大の問題は、経済のミクロ的な非効率とマクロ的な停滞を峻別する視点をまったく持っていないというところにある(野口旭・田中秀臣 『構造改革論の誤解』 東洋経済新報社、2001年、13頁)。
伊藤修
需要と供給の両面を持たない経済はない。商品を供給するだけで需要しない国はない。供給して売れれば所得が得られ、需要が出てくるのは当然である。もちろん需給にはギャップがあるが、それは%レベルの問題にすぎない。したがって、旧共産圏が加わって単純に供給過剰になったということはありえない(伊藤修 『日本の経済-歴史・現状・論点』 中央公論新社〈中公新書〉、2007年、182頁)。

文化への影響

サミュエル・P・ハンチントン
つまり世界がグローバル化していくと、最終的にイデオロギーの対立はなくなりますが、改めて東西対立のようなものが浮き彫りにされてくる。それが東洋の文明と西洋の文明の対立、アメリカ的な思考とアジア的な思考の対立だということをハンチントンは予言してたんです(佐藤雅彦・竹中平蔵 『経済ってそういうことだったのか会議』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2002年、214-215頁)。
タイラー・コーエン
コーエンには『創造的破壊』という本もある。ここで彼は「グローバル化によって文化の多様性が失われる」という通説に疑問を投げかけて、社会間の多様性は減少するかもしれないけど、個々の社会のなかでの多様性はむしろ促進されるんじゃないかという指摘をしている(若田部昌澄・栗原裕一郎 『本当の経済の話をしよう』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2012年、34-35頁)。

経済への影響

宮本又郎
かつては先進国に限られた工業製品市場がグローバル化し、需要・供給とも新規参入が容易となってメーカーの価格支配力は低下した(日本経済新聞社編著 『世界を変えた経済学の名著』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2013年、63頁)。
岡部直明
人・モノ・カネが自由に移動するグローバル経済の下では「生産要素価格均等化の法則」が働くとされます。簡単にいえば一国ではなく、国際的にモノの値段が決まるということです。当然、高賃金、あるいは高コスト体質の産業や企業は生きていけません(岡部直明 『ベーシック日本経済入門』 日本経済新聞社・第4版〈日経文庫〉、2009年、59頁)。
堂目卓生
現代において、貿易と金融のグローバル化は各国の経済と社会に大きな衝撃を与えるようになり、国家は貿易や国際金融に関し、より戦略的な政策を迫られるようになっていた(日本経済新聞社編著 『経済学の巨人 危機と闘う-達人が読み解く先人の知恵』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2012年、296-297頁)。

日本

松原聡
経済のグローバル化は世界経済の活発化につながるものであり、日本経済にとっても基本的にプラスに働くと考えられます。日本の企業としては、国内だけではなく世界に販路を広げることができれば収益向上が期待できますし、安く品質の良いさまざまな輸入品が海外からもたらされることは、日本の消費者にとってもメリットになります。そうした優れた輸入品との競争に負けないよう、国内企業も一層の経営努力をするようになり、日本で作られる製品の品質も向上していくでしょう(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、214頁)。
松原聡
マイナスの面もいくつか考えられます。一つは国内の景気や金融市場などの動きが、今まで以上に海外の経済動向の影響を受けるようになるということです(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、214頁)。
松原聡
またさまざまな分野で輸入が増えれば、それまで国際競争と無関係だと思われていたような業種の企業も厳しい競争にさらされることになります(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、214頁)。
松原聡
投資資金の流れもグローバル化し、日本の株価動向や為替動向なども、外国人投資家の動きに大きく左右されるようになりました(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、211頁)。

批判

岩井克人
グローバル化とは、世界を市場で覆い尽くせば、見えざる手に導かれて効率的で安定的な社会が実現するという新古典派経済学の壮大な実験にほかならない。だが実験は失敗した。米国の資産バブル崩壊を機に瞬時に世界に広がった今回の経済危機は、グローバル化した資本主義社会とは効率性と安定性が両立する新古典派的世界ではなく、両社が二律背反してしまうケインズ的世界であることを立証した(日本経済新聞社編著 『経済学の巨人 危機と闘う-達人が読み解く先人の知恵』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2012年、40頁)。
岩井克人
市場のグローバル化はマクロ経済の不安定性を増大させる(日本経済新聞社編著 『経済学の巨人 危機と闘う-達人が読み解く先人の知恵』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2012年、303-304頁)。

批判に対する反論

三浦瑠麗
左派にせよ、右派にせよ、国民国家に偏りすぎて鎖国すべきみたいなことを仰る方は、たいていの場合、そうすることで我々がどれだけ貧しくなるかを理解していない。貧しくなるどころか、もはや実現できないことを知るべきでしょう。反対に、グローバル化する世界にあって国民国家は邪魔でしかないとするリバタリアンや一部のビジネスエリートは、平和や、治安や、衛星や、福祉や、教育や、科学技術研究をはじめとする現代社会の基盤のほとんどが国民国家によって支えられていることを都合よく忘れています(三浦瑠麗 『日本に絶望している人のための政治入門』 文藝春秋〈文春新書〉、2015年、140頁)。
岡部直明
市場そのものを否定したり、グローバル化を否定するという方向で問題を解決しようとすると、資本主義そのものの否定になってしまいます(岡部直明 『ベーシック日本経済入門』 日本経済新聞社〈日経文庫〉、2009年、24-25頁)。
野口旭
グローバル経済に「閉じた」国がほぼ例外なく経済停滞に陥る一方で、グローバル経済に対して積極的に自国経済を開放していった国の多くは、さまざまな苦難を経験しながらも、経済的な豊かさを着実に実現させていったことからも明らかです(野口旭 『グローバル経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2007年、27-28頁)。
野口旭
社会は一般に、グローバリゼーションの利益を過小評価し、その不利益を過大評価しがちです。グローバリゼーションは確かに、いま指摘したような意味での経済的敗者を生み出します。しかしそれは、グローバル経済というよりはむしろ、市場経済そのものの問題です(野口旭 『グローバル経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、231頁)。

食料安全保障

日本経済新聞社
食肉市場の国際化による販売競争の激化が、安価な飼料の使用拡大につながり、狂牛病や口蹄疫のまん延をもたらしたと批判する声もある。(中略)迅速な情報の開示と対応が教訓となったが、世界に拡大する食肉汚染は経済のグローバル競争の負の側面も映し出している(日本経済新聞社編著 『「値段」でわかる日本経済』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、156頁)。

国際資本の移動

野口旭
一九九〇年代の末期には、まったく性質の異なる新奇なグローバリズム批判が世界の論壇を席巻しました。それは、国境を越えた自由な資本移動の拡大がグローバル経済を混乱あるいは崩壊に導きつつあるという、「グローバル資本主義の危機」なる議論です(野口旭 『グローバル経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2007年、44-45頁)。
野口旭
反グローバリズム論者たちは、ほぼ以上のような構図に基づいて、九〇年代に頻発した通貨危機に代表される世界的な経済混乱を説明します。彼らに共通する問題意識とは、現在のグローバル資本主義においては、実体経済とかけ離れた異常な規模の国際資本移動が展開されているということです。彼らによれば、このカジノ的資本主義を横行させた元凶こそがアメリカであり、その主体こそがヘッジ・ファンドであるというわけです(野口旭 『グローバル経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2007年、197頁)。
ジョージ・ソロス
ソロスはその中で、国境による求心性を失ったヒトとモノとカネの動きは、もはや各国ごとの政策によっては制御不可能な段階に到達しつつあり、それは「開かれた社会」としてのグローバル資本主義を危機的状況に追い込みつつあると論じました(野口旭 『グローバル経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2007年、45頁)。
ジョージ・ソロス
ソロスが自著『グローバル資本主義の危機』において暗に問題視していたのは、自ら最大の「戦犯」の一人でもあった通貨投機であり、各国の通貨危機でした(野口旭 『グローバル経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2007年、46-47頁)。

批判に対する反論

岩井克人
だがグローバル化と同時に進んだ金融の自由化と金融技術の発展は、金融市場全体が信用創造を行うことを可能にし始めている(日本経済新聞社編著 『経済学の巨人 危機と闘う-達人が読み解く先人の知恵』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2012年、41頁)。
野口旭
反グローバリズム論者による国際資本移動性悪説の最大の問題点は、資金の出所が国内か国外かによって「善」と「悪」を区別する根拠を、彼らが何も示していないというところにあります。国際資本移動とは、本質的には、国境を越えた資金貸借にすぎません。確かに資金の貸し借りにはリスクが伴いますが、資本主義経済である限り、資金貸借それ自体を禁止するわけにはいきません(野口旭 『グローバル経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2007年、198-199頁)。

各国の金融政策への影響

岩井克人
だがグローバル化された資本主義社会には、自らの不安定性に対抗するための世界政府も中央銀行も存在しない(日本経済新聞社編著 『経済学の巨人 危機と闘う-達人が読み解く先人の知恵』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2012年、41頁)。

産業構造の変化

田中秀臣
産業構造でいえば、製造業は主に貿易財を生産するので、その活動は「グローバル」です。一方のサービス産業は非貿易財を中心に生産するために、その活動は「ローカル」です(田中秀臣 『日本経済復活が引き起こすAKB48の終焉』 主婦の友社、2013年、157頁)。
加藤寛
金融のグローバル化と、一国経済の柱たる産業の振興は、両立が難しくなってきているのだ(日本経済新聞社編著 『マネーの経済学』 日本経済新聞社〈日経文庫〉、2004年、219頁)。
野口旭
グローバリゼーションは常に、既存の経済と社会に対して、誰も拒否できないような巨大な変化を強制するのです。一般に、そのグローバル化の圧力が最も厳しい形で現れるのは、比較優位ではなく劣位にある部門です(野口旭 『グローバル経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2007年、43頁)。
野口旭、田中秀臣
現代の変貌するグローバルな経済においては、人々の嗜好の変化による需要構造の変化、技術革新等による生産構造の変化、新興市場の拡大による比較優位構造=貿易構造の変化等々が不可避である。これらは、一国経済内部における産業構造調整を必然化させる。すなわち、一方に成長産業を生むと同時に、他方に衰退産業を生む。そして、衰退産業においては、その調整の過程のなかで、必ず要素所得の減少が生じる(野口旭・田中秀臣 『構造改革論の誤解』 東洋経済新報社、2001年、33-34頁)。
野口旭
後進国においても、より深刻な形で存在します。それは、グローバリゼーションに伴う伝統的産業や伝統的経済構造の崩壊です(野口旭 『グローバル経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2007年、42-43頁)。
野口旭
開放されたグローバル経済を守るためにも、その苦痛を社会で分かち合う心構えが必要と考えます(野口旭 『グローバル経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2007年、145頁)。
野口旭
経済成長よりは社会安定の方により大きな価値観を持つ社会にとっては、グローバル化は人々の経済厚生をむしろ悪化させることになるだろうからです。どのような社会も、その構成員の経済厚生を悪化させるようなような経済政策に対しては、それを拒否する自由を持ちます。重要なのは達成される結果であって、「グローバル・スタンダード」などというスローガンに踊らされる必要はまったくないのです(野口旭 『グローバル経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2007年、228-229頁)。

貧困と格差の拡大

岩田規久男
国際競争にさらされる製造業の賃金は上がりにくい(岩田規久男 『「不安」を「希望」に変える経済学』 PHP研究所、2010年、78頁)。
伊藤元重
市場経済が世界に広がっていく中で、先進国と発展途上国との間の所得格差が大きくなり、また市場経済化した発展途上国などでは国内の貧富の格差が急速に拡大し、さらには地球環境の問題がより深刻になっています。そのような状況で、グローバルな世界の中で安易に市場経済化を広げていくことが好ましいかどうかということについて、さまざまな論議が出てきています(伊藤元重 『はじめての経済学〈上〉』 日本経済新聞出版社〈日経文庫〉、2004年、40頁)。

批判に対する反論

原田泰、大和総研
グローバル化した世界では、先進国の労働者は、もっとも貧しい国の労働者とも競争しなければならない。その結果、先進国の労働者の賃金を低下させる圧力が働く。ただし、この圧力が先進国の単純労働者には強く働くが、技能労働者にはそれほど強くは働かない(原田泰・大和総研 『新社会人に効く日本経済入門』 毎日新聞社〈毎日ビジネスブックス〉、2009年、30頁)。
原田泰、大和総研
グローバル化には、格差を縮小させる効果もある。貧しい国が発展すれば、豊かな国が買うものが安くなる。(中略)所得の低い人はエンゲル係数も高くなるので、食料品が安くなれば、実質所得は高まる(原田泰・大和総研 『新社会人に効く日本経済入門』 毎日新聞社〈毎日ビジネスブックス〉、2009年、33頁)。
若田部昌澄
「グローバリゼーションが(国内における)格差を拡大した」という説にもこれといった証拠があるわけじゃないんだ。IMFの報告書でもそう分析されているし、クルーグマンはかつてはグローバリゼーションの影響について完全に否定的だったけど、少しは影響しているかもしれないという態度。(中略)要因は多岐にわたるし、国によっても事情が違うから、これが元凶だ!と一つだけ示すことはできない(若田部昌澄・栗原裕一郎 『本当の経済の話をしよう』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2012年、168頁)。
ポール・クルーグマン
格差の増大は「グローバリゼーションが主要な要素ではない」、「グローバリゼーションが引き起こした格差は、広い格差問題のほんの一部」と言っている(「世界中の銀行が凍結する日」)(若田部昌澄・栗原裕一郎 『本当の経済の話をしよう』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2012年、168頁)。
若田部昌澄
グローバリゼーションが進むほど経済成長は早くなるから、むしろ貧困は減る。先進国の賃金が途上国の水準に落ちていくというのも、理論的にはありうるけど、先進国は技術水準も高いから。本当に深刻なのは、グローバリゼーションからこぼれ落ちてしまった最貧国の問題のほうなんだよね(ポール・コリアー 『最底辺の10億人』)(若田部昌澄・栗原裕一郎 『本当の経済の話をしよう』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2012年、167頁)
野口旭、田中秀臣
この前者の「貿易相手国の生産性上昇=国際競争力の低下」という命題は、比較優位の基本原理と矛盾した単純な誤りである。後者の「貿易相手国の生産性上昇=自国の経済厚生の低下」という状況は、理論的にはありえるが、現実的にはほとんどない(野口旭・田中秀臣 『構造改革論の誤解』 東洋経済新報社、2001年、86頁)。
ポール・クルーグマン
クルーグマンはそこで、低賃金国の生産性上昇が高賃金国の経済厚生を低下させる些末な理論的可能性を説明している。しかしその後に、第一世界の交易条件の悪化が確かに生じているのでないかぎり、その理論的可能性は現実化していないと判断できることを示すのである(野口旭・田中秀臣 『構造改革論の誤解』 東洋経済新報社、2001年、87頁)。

日本

森川友義
若者をグローバル競争に勝てるように鍛えなければ、将来、日本の富の総和は減少し、小さくなったパイを分け合うしかなくなります(森川友義 『どうする!依存大国ニッポン』 ディスカヴァー・トゥエンティワン〈ディスカヴァー携書〉、2009年、49-50頁)。
清家篤
その枠外にあるパートタイマー、契約社員、派遣社員など非正規労働者が一九九〇年代半ば以降大幅に増えている。この背景としてグローバルな競争激化にに対応するためのコスト削減圧力や規制緩和の影響などが指摘されている(日本経済新聞社編著 『世界を変えた経済学の名著』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2013年、270頁)。
岩田規久男
〇三年から〇七年初頭までの景気回復期、企業収益が伸びたにもかかわらず、正社員の実質賃金の伸びは鈍いままだった。発展途上国から輸入品との競争で、実質賃金を切り下げざるを得なかったからです。その延長線上で、企業は正社員よりも賃金の低い非正規就業者(フリーターを含む)を多く雇いました。しかも、彼らに賃金の伸びはありません。アジアなどで生産される輸入品は、現地の未熟練な低賃金労働者がつくっている。それに対抗するために、日本のフリーターたつの賃金を低い水準に抑えこんでしまったのです。同じ頃、製造業の正社員の実質賃金は、競争圧力があったにもかかわらず二・二%程度上昇してしまいました。岩田氏は、グローバル競争が正社員とフリーター間の経済格差を拡大させた可能性を指摘したのです(田中秀臣 『雇用大崩壊 失業率10%時代の到来』 NHK出版〈生活人新書〉、2009年、62-63頁)。
岩田規久男
経済のグローバル化によって、安くて質のよいものが輸入されることにより、未熟練労働者もグローバル化から利益を受けることに注意しよう(岩田規久男 『「不安」を「希望」に変える経済学』 PHP研究所、2010年、235頁)。
竹中平蔵
竹中平蔵氏は、経済財政担当相としての立場から、「わが国の隣には、時給五〇円でユニクロ級の品質を生み出す人々が一〇億円いる。わが国ではコンビニのバイトでも時給一〇〇〇円はもらえる。グローバル化が進むなかで、わが国が今後も現在の生活水準を維持するには、少なくとも彼らの二〇倍の生産性を持たなければならないことになる」と述べて、「構造改革」の必要性を強調したとされる(野口旭・田中秀臣 『構造改革論の誤解』 東洋経済新報社、2001年、85-86頁)。
森永卓郎
同じモノづくりで中国と競争するためには、日本の人件費が半分になっても勝てません。それとも、二〇分の一以下にまで下がるべきだと言うのでしょうか(森永卓郎 『日本経済50の大疑問』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、35頁)。
田中秀臣
グローバル化がもたらす競争圧力によって、日本の企業はコスト削減を余儀なくされています。自前で社員を教育・訓練する余裕を失ってしまい、すでにスキルを身につけている人材に、需要が集中しています。そのために、スキルを身につけていないフリーターは、ますます正社員として採用されなくなってしまうということになるでしょう(田中秀臣 『偏差値40から良い会社に入る方法』 東洋経済新報社、2009年、175頁)。
田中秀臣
「経済格差の原因はグローバリゼーションやIT革命、規制緩和などの構造改革である」とする見方は、日本の90年代におけるデフレと失業の増加や不況の進展を、整合的に説明できない(中略)長期停滞や経済格差を生んだものが(本書でも触れたように)総需要不足であることは、国内外のほぼ99%まともな経済学者の同意事項である(田中秀臣 『不謹慎な経済学』 講談社〈講談社biz〉、2008年、109-110頁)。
大竹文雄
グローバル化が、格差が拡大する原因であることは確かだと考えられる。しかし、グローバル化による貿易の拡大によって日本人全体は豊かになっているのも事実である(大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、142頁)。
大竹文雄
グローバル化の阻止には、世界の貧困問題を深刻にするという問題もある。世界には日本よりももっと貧しい国がたくさんある。そうした国が安い労働力を武器にして、安い製品や農作物を日本のような豊かな先進国に売って、以前よりも豊かになってきている。日本がグローバル化をやめて、そうした国から農産物や製品を買わなくなくなると、日本も貧しくなるが、もともと貧しかった国はさら貧しくなる。世界の貧困を解決するためには、貿易を拡大していくことが重要である。日本の格差や貧困問題が貿易によって拡大するという側面があっても、それは日本国内の社会保障制度や教育で解決すべきものではないだろうか(大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、143頁)。
竹中平蔵
グローバリゼーションという流れのなかで人間の移動も活発になってはいるものの、実際問題として普通の人間が国境を越えて移動するのは容易ではありません。いまわれわれにとってほんとうに重要なのは、日本の普通の人間が所得価値を生み出せるような仕組みを国内につくることだといえます(竹中平蔵 『竹中教授のみんなの経済学』 幻冬舎、2000年、87頁)。
経済企画庁
貿易を制限するよりも、非熟練労働者の技能水準を高めるような教育や職業訓練が、賃金格差拡大の対処する上で大きな役割を果たすという(原田泰 『コンパクト日本経済論(コンパクト経済学ライブラリ)』 新世社、2009年、136頁)
為替レートの影響
飯田泰之
企業は国際的なものですから、為替レートによってどの国の人を雇うかを一生懸命考えるんです(飯田泰之・雨宮処凛 『脱貧困の経済学』 筑摩書房〈ちくま文庫〉、2012年、38-39頁)。
野口旭、田中秀臣
もし日本の現実の賃金が、各国と比較して理論的に想定される以上に割高だとすれば、それは単に、為替レートが実物経済の均衡と整合的な水準にまで調整されていない(すなわち円高すぎる)ということにすぎない(野口旭・田中秀臣 『構造改革論の誤解』 東洋経済新報社、2001年、85頁)。
円居総一
貨幣という名目価値で、それぞれの国の通貨で表示した絶対価格を直接比較して、日本の物価は高く、それは国際的価格に収斂していかなければならない、あるいは、高コスト体質を改めなければならないなどと議論しても、まったく意味はない。異なる通貨の交換比率である為替相場(名目相場)によって、高いか、低いか、が決まる。それでは、果たして日本のモノや賃金が米国のそれらより実質的に(相対価格として)高いのか、低いのか、はまったくわからないからだ(円居総一 『原発に頼らなくても日本は成長できる』 ダイヤモンド社、2011年、148頁)。
大和総研
輸出企業ばかりではなく、日本国内で商品を生産・販売している企業でも、海外から同様の商品が輸入される場合、円高になると人件費などのコストが相対的に高くなるため、競争が厳しくなります(大和総研 『最新版 入門の入門 経済のしくみ-見る・読む・わかる』 日本実業出版社・第4版、2002年、184頁)。
岩田規久男
この過度の円高は非正社員比率を引き上げるとともに、製造業を中心とする海外移転を促進し、国内の雇用需要の減少と失業率の上昇をもたらした(岩田規久男 『「不安」を「希望」に変える経済学』 PHP研究所、2010年、235頁)。

日本

岩田規久男
八〇年代後半、特に九〇年代以降、大きく変化したのは、グローバル競争による競争の激化以上に、経営のグローバル化です。単に、競争がグローバルに激化しただけならば、日本的経営が変わることはなかったと思われます(岩田規久男 『日本経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2005年、106頁)。
野口旭
日本経済が、低迷していたのは、グローバル競争の圧力が強まったからではありません。むしろ、一九六〇年代の日本の高度経済成長が貿易自由化とともに始まったことからも分かるように、日本ほど経済の構造改革や構造調整によってグローバリゼーションに巧みに適応し、そこから恩恵を受け続けてきた国はなかったとさえいえます(野口旭 『グローバル経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2007年、23頁)。

識者の見解

みずほ総合研究所
グローバル・スタンダード論が盛り上がりをみせた根底には、日本経済に対する過度な悲観論とその裏返しである好調な米国経済への追従の姿勢があったことは否定できない(みずほ総合研究所編著 『3時間でわかる日本経済-ポイント解説』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2002年、203頁)。
森永卓郎
グローバル化とは本来「国際化」とでも言うべきののですが、日本人がグローバル化と言う場合、それはほぼ間違いなくアメリカ化という意味です。(中略)アメリカが世界標準であるなどという根拠はどこにもありません。当のアメリカだけが、自分たちこそ世界だと思い込んでいるのです(森永卓郎 『「騙されない!」ための経済学 モリタク流・経済ニュースのウラ読み術』 PHP研究所〈PHPビジネス新書〉、2008年、169-170頁)。

反グローバリゼーション活動

特徴

伊藤元重
こうしたグローバル化の動きが世界の経済成長に大きな貢献をしたことは否定できない事実ですが、一方で、富める国と貧しい国の格差を広げ、さらには地球環境の悪化の原因にもなっているといった、厳しい批判が出てきました。批判の声を上げているのは途上国の政府だけではなく、先進国を中心としたNPOのような市民団体も、その活動の中心となっています(伊藤元重 『はじめての経済学〈上〉』 日本経済新聞出版社〈日経文庫〉、2004年、27頁)。

思想

野口旭
反グローバリズム派によるグローバリゼーション批判は、ある意味で、国内経済あるいは地域経済の自律性を確保すべきという、古くからある自給自足主義の現代版という性格を根強く持っています(野口旭 『グローバル経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2007年、44頁)。
野口旭
世界中の根強い「反グローバリズム」の感情の根底にあるものも、自分たちの経済が貿易というとらえどころのないものによって変えられていくことに対する嫌悪感なのかもしれません(野口旭 『ゼロからわかる経済の基礎』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、204頁)。
伊藤元重
先に触れた反グローバリズムの動きなども、新たな形の保護主義のあらわれであると見ることもできるでしょう(伊藤元重 『はじめての経済学〈上〉』 日本経済新聞出版社〈日経文庫〉、2004年、33頁)。
野口旭
グローバル化それ自体への感情的な反発は、やはりある種の排外主義と言わざるをえない(野口旭 『経済論戦-いまここにある危機の虚像と実像』 日本評論社、2003年、319頁)。
野口旭
現在の反グローバリズム運動の中でも、先進国の製造業労働組合や農業の関係団体は、一つの大きな勢力になっています。それは、グローバル化の進展の中で、それらの産業がとりわけ厳しい構造調整を強いられてきたからです。絶えざる構造調整のしわ寄せを受け続けてきた労働者や農業生産者たちが、グローバリゼーションを制限することでその苦痛から逃れたいと考えて運動するのは、少なくとも当事者にとっては当然の政治的行動です(野口旭 『グローバル経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2007年、42頁)。

反論

野口旭
このグローバリゼーションの波は、現在いくつか残っている「閉じられた社会」にも、二一世紀の早い段階に必ず及んでくることになるであろう。マルクスはかつて、その過程を「資本の文明開化作用」と呼んだ。われわれは行うべきは、その作用を阻害するのではなく、むしろ推進することである(野口旭 『経済論戦-いまここにある危機の虚像と実像』 日本評論社、2003年、319頁)。
八代尚宏
若者の雇用機会減少や賃金格差拡大の現状を改善するためには、政治的な圧力だけでなく、市場の活用を進めよと説くはずである。輸出産業と、輸入品と競合する産業との間では、必要とされるスキル(技能)の内容が異なる。この結果、世界的に貿易が拡大するなか、労働生産性や賃金の差の拡大が生じたのだ。それだけに、反グローバリズムを唱えても、世界の潮流から取り残され、じり貧になるのみである(日本経済新聞社編著 『経済学の巨人 危機と闘う-達人が読み解く先人の知恵』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2012年、66頁)。

展望・対策

ダニ・ロドリック
米ハーバード大のD・ロドリック教授、は近著『グローバリゼーション・パラドクス』の中でグローバル化には今後3つの道があると指摘した。(中略)ロドリック教授が唱える道の一つめは、民主主義を犠牲にしてでもグローバル化を進める方向だ。(中略)二つめがグローバル化を進めると同時に政治統合を促し、グローバル民主主義を実現する道だ。(中略)そこで三つめの道が登場する。各国の政策的自律性を保証し、国家レベルでの民主主義を維持する代わりに今のグローバル化に一定の制限を加える方向だ(日本経済新聞社編著 『経済学の巨人 危機と闘う-達人が読み解く先人の知恵』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2012年、81-82頁)。
ジョセフ・E・スティグリッツ
グローバリゼーションそれじたいは評価しつつも、そのプロセスは正しい政策の組み合わせや順序を踏まえるべきというものである。とりわけ、自由化・民営化に対する慎重さ、市場経済への移行時における政府の役割の強調は際だつ(田中秀臣・野口旭・若田部昌澄編著 『エコノミスト・ミシュラン』 太田出版、2003年、201頁)。

日本

松原聡
経済のグローバル化が日本国内の経済にとってプラスに働くようにするためには、各種の規制改革を進めていくことも重要です。(中略)日本の政府はグローバル化に対応する意味でも、産業活動にとって障害となっているような各種の規制について引き続き緩和を進んていくことが必要です。加えて、国際競争力を備えさせるような適切な産業育成策を取り入れていくことも重要になるでしょう(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、216頁)。
松原聡
国際的なルールへの対応に出遅れて、日本経済がグローバル化の波に取り残されてしまうことのないよう、政府も積極的に取り組んでいくことが求められます(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、216頁)。
加藤寛
地域社会がグローバリゼーションの中で生き残っていくためには、(1)地域社会を開放し世界的レベルでモノ、カネ、ヒトの出入りを活発にする、(2)地域での資源・資金・人材の循環を活発にする--、が不可欠になる(日本経済新聞社編著 『マネーの経済学』 日本経済新聞社〈日経文庫〉、2004年、213頁)。
みずほ総合研究所
日本にとって必要なのは、グローバル・スタンダードへの対応というかけ声のもとで、無条件に日本的経済システムを破棄することではない(みずほ総合研究所編著 『3時間でわかる日本経済-ポイント解説』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2002年、204頁)。
森永卓郎
今の日本にとっての本当のグローバル化というのは、アメリカを相対化することだと言ってもいいでしょう。つまり、アメリカの言うことをなんでもかんでも信じ、アメリカを追従するのではなく、勇気を持ってアメリカに立ち向かい、アメリカ化を拒絶することこそが、本当の意味でのグローバル化なのです(森永卓郎 『「騙されない!」ための経済学 モリタク流・経済ニュースのウラ読み術』 PHP研究所〈PHPビジネス新書〉、2008年、171頁)。

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