経済・経済学に関するメモ。


ロバート・マルサス

ジョン・メイナード・ケインズ
……もしかりに、リカードウではなくマルサスが、一九世紀経済学の根幹をなしていたならば、今日の世界は、はるかに賢明な、富裕な場所になっていたに違いない。(中略)私は長らく、ロバート・マルサスをケンブリッジ学派だと主張してきた(中矢俊博 『やさしい経済学史』 日本経済評論社、2012年、25頁)。

日本経済

森永卓郎
実質GDPでの成長は必ずしもしなくてよいということです。これからは、実質マイナス成長、名目プラス成長というのが、正常な日本の姿になるのではないでしょうか。このやり方なら摩擦を起こさずにすみます(森永卓郎 『日本経済50の大疑問』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、213頁)。
内田勝晴
アメリカでは、経営者と従業員の収入の差は非常に大きく、日本ではそれほどでもない。日本型は、社会に階層をつくらず、社会不安を抑える効果を持っていると思われる(内田勝晴 『家康くんの経済学入門-おカネと貯蓄の神秘をさぐる』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2001年、152頁)。

ミルトン・フリードマン

田中秀臣
そもそもフリードマンは、訪れた国の大半で、チリで行ったのと同じスタンスで時の政治的実力者(その国の経済政策の最高責任者)にアドバイスをしてきたのだ。例えば、自民党一党支配の続いた日本でも、文化大革命時代の中国でも、国民の福祉に貢献する政策を等しくアドバイスしている(田中秀臣 『不謹慎な経済学』 講談社〈講談社biz〉、2008年、134頁)。

ポール・クルーグマン

ポール・クルーグマン
高水準の財政支出を長期間続けることも可能ではない。日本は非常に金持ちの国であり、また政府にも財政力があるから、GDP比で10%を超える財政赤字をしばらくは持続させることができるだろう。しかし、いつまでも続けられるかというと、それは別の問題である。政府債務の水準はすでに非常に高く、かつこれが急速に拡大していくので、政府債務をどのような尺度で評価しても、遅かれ早かれ、問題のある状態に陥ってしまうといえよう。財政政策が答えではないならば、何があるのか。そこに金融政策という答えがでてくる(吉川洋・通商産業研究所編集委員会 『マクロ経済政策の課題と争点』 東洋経済新報社、2000年、9-10頁)。

デイヴィッド・ヒューム

アルベルト・アインシュタイン
アインシュタインは回顧録の中でヒュームに触れている。それによれば、特殊相対性理論の誕生の直前、かれは、「ヒュームの『人生論』を熱心に、また崇敬の念をもって読み」、「核心部分の推論は、ヒュームの理論によって促進された」という(日本経済新聞社編著 『世界を変えた経済学の名著』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2013年、139頁)。

フリードリッヒ・ハイエク

池田信夫
彼は世間の保守派というイメージとは違い、イギリスの保守党の崇拝する「伝統」を既得権の別命だとし、そうした部族社会の道徳を批判した(池田信夫 『希望を捨てる勇気-停滞と成長の経済学』 ダイヤモンド社、2009年、101頁)。
フリードリッヒ・ハイエク
そもそも自分(ハイエク)のような「自由主義」の立場と「保守主義」とが、なぜ混同されるのか。それは両者がともに社会主義に反対するからである。しかし、共通点はそれで終わる。保守主義とは現状維持の立場だ。それは進歩的思想に対する「代案」を持たず、たかだか「進歩」を遅らせることが望みである。それにこの立場は現状維持が好きだから、貿易についても保護主義を主張し、何ごとにつけ「強い政府」を求める(日本経済新聞社編著 『世界を変えた経済学の名著』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2013年、98頁)。
フリードリッヒ・ハイエク
晩年のハイエクに興味深い発言がある。「私が一番後悔しているのは、ケインズの貨幣論の批判を再開できなかったことではなく、(理論は予測に役立てばよいという)ミルトンの危険な方法論を攻撃する機会がなかったことだ」(日本経済新聞社編著 『世界を変えた経済学の名著』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2013年、87頁)

住谷悦治

住谷悦治
またナチスの失業対策が極めて劣悪な条件下での公共事業などへの強制労働にしかすぎず、「突撃隊」の監視下にあるので抗議の声も上げることができないと指摘した(田中秀臣 『沈黙と抵抗-ある知識人の生涯、評伝・住谷悦治』 藤原書店、2001年、110頁)。
住谷悦治
しかもこのような天皇との身分の階梯を前提にするような教育制度や社会的風潮が、人の間に差別意識を育てていると住谷は述べている(田中秀臣 『沈黙と抵抗-ある知識人の生涯、評伝・住谷悦治』 藤原書店、2001年、190頁)。
小林昇
リスト研究においても、住谷の日本主義批判は止まらない。著作として『リストの国家主義経済学』(一九三九)としてまとめられているが、小林昇も指摘しているように、この著書は「リストの主著〔『経済学の国民的体系』〕の平易な解説」であり、「沒理性的なナショナリズムが、この古典を利用することを斥けている」(田中秀臣 『沈黙と抵抗-ある知識人の生涯、評伝・住谷悦治』 藤原書店、2001年、138頁)。

内定取り消し

田中秀臣
2008年9月の、いわゆるリーマン・ショック以後、不動産や一部のメーカーなどで、内定切りという問題が発生しました。その数は全体で数千人にものぼり、社会問題化しました。ところが最近、内定切りよりも聞くようになった大きな問題は、試用期間切りです。(中略)内定切りが社会的に批判を浴びて、厚生労働省がホームページでいくつかの企業の名前を公表したことなどもあったため、内定切りとはならないように、いったん採用してから、(事実上の内定切りである)試用期間切りをするようになったからです(田中秀臣 『偏差値40から良い会社に入る方法』 東洋経済新報社、2009年、131-132頁)。

天下り

野口旭、田中秀臣
「天下り」の経済学的本質は、「賄賂」とまったく変わらない。というのは、企業がなぜ高い給料や退職金を支払ってまで天下りを受け入れるのかといえば、みずからの属する業界に規制が存在し、その運用権限を所轄官庁が握っており、その意向を左右することが特別な収益機会に結びつくからである(野口旭・田中秀臣 『構造改革論の誤解』 東洋経済新報社、2001年、96頁)。

小泉信三

田中秀臣
関東大震災のときに、当時慶応義塾の教授であった小泉信三は、被災した人たちの実態調査を同僚の堀江帰一とすすめるかたわら、テニスや歌舞伎など文化的な行事に多くの精力を割いていった(麻木久仁子・田村秀男・田中秀臣 『日本建替論 〔100兆円の余剰資金を動員せよ!〕』 藤原書店、2012年、241頁)。

森永卓郎

森永卓郎
お金のない人間を「負け組」と呼び、安い給料で大人しく勤勉に働いてさえいればいいのだと言って人間性を否定するような社会は、絶対におかしいと思います(森永卓郎 『日本経済50の大疑問』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、110頁)。

河上肇

河上肇
主に大正時代に論客として活躍した河上は、『貧乏物語』の中で、「ワーキングプアが生まれるのは、富裕層が贅沢をして、社会が貧しい人の生活必需品を作らないからだ」という趣旨の批判を行った。その上で、社会全体が贅沢を控え、質素倹約すればワーキングプアの問題も解消されるだろうと論じ、人々の精神改造を求めた(田中秀臣 『不謹慎な経済学』 講談社〈講談社biz〉、2008年、60頁)。

福田徳三

福田徳三
その中で福田が提唱した「生存権の社会政策」は、国民に人間として最低限の保障を行うよう、政府に要求する主張であった(田中秀臣 『不謹慎な経済学』 講談社〈講談社biz〉、2008年、54頁)。
福田徳三
彼は、市場が非効率なもの、非合理的なものを淘汰することで社会が発展してきたことに同意しつつ、「誰が淘汰されるべきでされるべきでないかなど、絶対にわかるわけがない。そのような無知に等しい場合は、すべての社会のメンバーに等しく最小の保障を与えるのが望ましいだろう」と考えた(田中秀臣 『不謹慎な経済学』 講談社〈講談社biz〉、2008年、61頁)。
福田徳三
福田は小泉と同じく被災者の実態調査を行い、それを日本で最初ともいうべき災害経済学の書『復興経済の原理及び若干問題』(一九二四)にまとめた。この本の中核にあるのは、有体財(物)の損失よりも、被災した人間性の損失とでもいうべきものに多くの紙数を割いたことにある(麻木久仁子・田村秀男・田中秀臣 『日本建替論 〔100兆円の余剰資金を動員せよ!〕』 藤原書店、2012年、245頁)。
福田徳三
福田は第一次世界大戦後直後、金解禁に反対の立場を採っていた。当時、国民所得の分配が福田の最大の関心事であり、一九一〇年代の中頃から有産者階級と無産者階級との資産の歪みが顕著になったと考えていた。そしてこの経済格差を助長するものとして、第一次世界大戦中・直後のインフレを問題視していた(田中秀臣・安達誠司 『平成大停滞と昭和恐慌〜プラクティカル経済学入門』NHK出版〈NHKブックス〉、2003年、176頁)。
福田徳三
福田は、政府・日銀による「貨幣調節」でインフレはコントロールが可能であると考えていた。福田はアービング・フィッシャーの貨幣数量説を支持し、日銀がマネーサプライをコントロールしてインフレをおさえるべきだとしたが、他方で、当時の政府・日銀ではマネーサプライをコントロールできないと主張するものであった。その意味で、今日のリフレ派と同様にインフレやデフレは貨幣的現象であり、そのコントロールは基本的に中央銀行ができると主張していたのである(田中秀臣・安達誠司 『平成大停滞と昭和恐慌〜プラクティカル経済学入門』NHK出版〈NHKブックス〉、2003年、176-177頁)。
福田徳三
福田はしかし一九二五年ごろから、旧平価金解禁論者に転身した。例えば、浜口雄幸内閣発足に際しての寄稿「局外者の立場から新内閣に要望す」(一九二九年八月号)でデフレ下の緊縮政策を支持し、旧平価金解禁を説いている(田中秀臣・安達誠司 『平成大停滞と昭和恐慌〜プラクティカル経済学入門』NHK出版〈NHKブックス〉、2003年、178-179頁)。
福田徳三
一九二〇年以降の不良債権の累増にあることがわかる。不良債権が「動脈硬化」のように存在するので、日銀がマネーサプライをコントロールして物価を決めることができないと考えたのである(田中秀臣・安達誠司 『平成大停滞と昭和恐慌〜プラクティカル経済学入門』NHK出版〈NHKブックス〉、2003年、179頁)。

高田保馬

高田保馬
またケインズ経済学的な有効需要の創出政策に関しても批判的であった。ただひとつ勧めているのが、労働者に対してその生活水準全体を引き下げることであり、賃金についていえば、より低い賃金でそのプライドを充たすことであった。すなわち既存労働者は既得権を放棄することが求められるべき政策であった(田中秀臣 『経済政策を歴史に学ぶ』 ソフトバンククリエイティブ〈ソフトバンク新書〉、2006年、117-118頁)
高田保馬
人口減少対を防ぐためには、都市階層に課税して、それを農村に所得移転として与えることを政策と望ましいと高田は主張した。(中略)高田が人口と国力をイコールと捉え、また農村を人口の供給源として重要視していたことにあった(田中秀臣 『経済政策を歴史に学ぶ』 ソフトバンククリエイティブ〈ソフトバンク新書〉、2006年、121頁)。
高田保馬
高田独自の観点から失業やまた一国の衰亡は、過度な消費に主な原因があるとして、「貧乏」の生活が経済の発展の基礎であると唱え、また倫理的な意味でも正しいと主張した(田中秀臣 『沈黙と抵抗-ある知識人の生涯、評伝・住谷悦治』 藤原書店、2001年、100頁)。
天野貞祐
この高田の貧乏論を、カント哲学の研究で著名であった天野は、「教授〔高田のこと〕の議論を読むと生活が低くあればあるほど大なる報謝を意味し、低き生活は即ち道徳である、という意味に解せられる。もし仮に社会的享受が少なくありさえすれば報謝の道に適うというのであれば、死んで貧乏という事実が直ちに道徳的意味を有するならば、我々の社会は有徳者の大きに苦しむわけである」と痛烈に皮肉る。さらに高田は貧乏であることが生産費の安さに通じ、それが日本製品の国際競争力につながる、と主張している点についても、そのようなダンピングがもたらすのは、「『貧乏必勝』というも必勝者は貧者ではなくして貧者を利益の方便とする少数派だ」と断じている(田中秀臣 『沈黙と抵抗-ある知識人の生涯、評伝・住谷悦治』 藤原書店、2001年、100-101頁)。
住谷悦治
住谷は、このような天野の高田批判を全面的に支持している。(中略)貧乏というのは食べないということではない。虚栄心が充たせないこと仰言る。だから虚栄心を捨てれば貧困問題の解決などへっちゃらである、というわけである(田中秀臣 『沈黙と抵抗-ある知識人の生涯、評伝・住谷悦治』 藤原書店、2001年、101頁)。

竹中平蔵

竹中平蔵
物価が下がるのはいいことですが、本来ならそれに応じて賃金も下がらないといけません。ところが、賃金は下げられない。売り上げが下がっても賃金が下げられないために、企業収益に対する労働分配率が上がってしまった(竹中平蔵 『竹中平蔵の「日本が生きる」経済学』 ぎょうせい・第2版、2001年、106頁)。
竹中平蔵
企業に十分な生産力があるのに需要が不足しているなら、企業利益を吐き出して労働者の取り分を増やすことが重要になる。それによって需要が刺激されるからだ。しかし、企業の生産力そのものに欠落が生じている場合、企業の蓄積を増やし設備投資を拡大させることのほうが重要になる(竹中平蔵 『竹中平蔵の「日本が生きる」経済学』 ぎょうせい・第2版、2001年、153頁)。

メンタルアカウンティング

山崎元
メンタルアカウンティング心の会計)」という現象も有名です。これは、本来価値に差がないはずのお金のありがたみが、収入の名目や使途などで別々に評価されがちな現象です(山崎元 『お金をふやす本当の常識-シンプルで正しい30のルール』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2005年、218頁)。
山崎元
まず「メンタルアカウンティング」とは、お金が入ってくる形(名目)や出ていく形によって、同じ金額の損得でも異なった価値のように感じる判断心理の歪みのことです(山崎元 『「投資バカ」につける薬』 講談社〈講談社BIZ〉、2006年、168-169頁)。

マーケティング

山崎元
マーケティングという行為は「いかにして顧客にとって不利な商品をたくさん買わせるか」という技術を追求するものですから、この種の、人間を非合理的な(=損な)行動に陥らせるテクニックを体系化した理論が応用されるのも当然です(山崎元 『「投資バカ」につける薬』 講談社〈講談社BIZ〉、2006年、174-175頁)。

自己同一性

スティーヴン・レヴィット
社会科学者は、ときどき「自己同一性」という概念を持ち出すことがある。人は、自分がどんな種類の人間であるかについて何らかの考えを持っていて、その考えに外れることをした場合、とても嫌な気分になるという考え方だ。そういうものがあるために、人は一見、短期的には自分にとって一番いいとはいえない行いをすることがある(スティーヴン・レヴィット、スティーヴン・ダブナー 『ヤバい経済学 [増補改訂版]』 望月衛訳、東洋経済新報社、2007年、370頁)。

ナッシュ均衡

池田信夫
ナッシュ均衡とは、ゲームにおいて、すべてのプレーヤーが相手の戦略の下で自分の利益を最大化するように行動しているときに成立する均衡、つまり、相手が戦略を変えないときに自分も戦略を変えないことで利益を最大化できる状態のことをいう(ニューズウィーク日本版編集部編著 『経済超入門 ゼロからわかる経済学&世界経済の未来』 CCCメディアハウス、2017年、208頁)。

関税

森川友義
わが国の関税率の平均は12%で、次のページの図4-2に示したとおり、世界的に見れば、決して高いほうではありません。カナダ(5%)や米国(6%)より高いですが、EUより断然低い。世界の192カ国全体から見れば、非常に低い関税率です(森川友義 『どうする!依存大国ニッポン』 ディスカヴァー・トゥエンティワン〈ディスカヴァー携書〉、2009年、154頁)。
山下一仁
日本は市場原理に基づいて農作物製品を売買しておらず、生産調整や高い関税等によって価格維持をしているため、わが国の消費者は損している。農家を保護する手段としては消費者を犠牲にするのではなく、原則原理は市場メカニズムに任せて、農家に直接的に差額を支払う欧米型にすれば、他国からの批判は免れる、ということです(森川友義 『どうする!依存大国ニッポン』 ディスカヴァー・トゥエンティワン〈ディスカヴァー携書〉、2009年、159頁)。

貨幣改鋳

内田勝晴
荻原は、通貨は幕府(政府)に対する信用さえあれば、「瓦でもかまわぬ」と言ったといわれる(内田勝晴 『家康くんの経済学入門-おカネと貯蓄の神秘をさぐる』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2001年、80頁)。
内田勝晴
萩原は多分、試行錯誤しながら貨幣発行量を増やしていったのだろうが、現実の物価上昇率は十五%にとどまった「元禄改鋳」は大成功だった。当時の経済に未利用の資源や人材があったからだろう。こういう状態の下なら、ニセ金の発行でも、モノをつくり出し経済繁栄をもたらすきっかけになることを証明したのだ。もし、新たに生産物をつくる資源や労働力の余裕がなければ、貨幣の増量は生産増大につながらず、そのまま物価の値上がり、つまりインフレに終わってしまうだろう(内田勝晴 『家康くんの経済学入門-おカネと貯蓄の神秘をさぐる』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2001年、82-83頁)。
内田勝晴
貨幣改鋳で味をしめた幕府は、さらに十数年後の宝永末期にも改鋳を行った。これは激しいインフレを引き起こし、失敗に終わった。これでは「悪鋳」になる(内田勝晴 『家康くんの経済学入門-おカネと貯蓄の神秘をさぐる』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2001年、83頁)。
内田勝晴
白石は荻原のことを、インフレで庶民を苦しめ、改鋳でもうけた銀座の商人から賄賂を取っていた「天地開闢以来の悪人」だと非難し、将軍に罷免をたびたび要求した。しかし、荻原ほど財政に通じている者がいなかったので、なかなか罷免は実現しなかった。宝永末期のインフレの混乱を収束するため、やっと幕府は白石の意見を聞き入れ、ずっと以前の慶長金銀に戻す「改鋳」を行った。そのため逆にひどいデフレに陥り、経済は深刻な不況に陥ってしまった(内田勝晴 『家康くんの経済学入門-おカネと貯蓄の神秘をさぐる』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2001年、83頁)。
内田勝晴
戦前のわが国での荻原と白石の評価は、以上で述べたこととは正反対で、荻原は「貨幣悪鋳」した悪者、白石はそれを正して貨幣の信用を取り戻した賢者というものだった(内田勝晴 『家康くんの経済学入門-おカネと貯蓄の神秘をさぐる』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2001年、84頁)。

建設国債と赤字国債

松原聡
この国債には「建設国債」「赤字国債」の2つがあります(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、110頁)。
松原聡
建設国債とは、道路建設や河川整備などの財源に充てるために発行されるものです。(中略)道路は一度建設されれば、世代を超えてその道路を使うことができますから、道路の建設費を建設時の納税者だけが負担するのは不公平になります。そこで建設国債を発行し、建設費をローン形式で払っていけば、現役世代と将来世代のどちらにも建設費を負担させることができるのです(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、110頁)。
松原聡
赤字国債は単に財政赤字の穴埋めするために発行される国債です。建設国債の逆で、今の世代が負担すべきものを、将来世代に先送りすることになります。赤字国債を発行すればいくらでも借金ができてしまうため、赤字国債の発行は法律で禁じられています。しかし、法律に特例を設けるというかたちで、赤字国債の発行が例外的に認められているのです。しかも例外といっても、近年ではほぼ毎年赤字国債が発行されています(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、110頁)。
大和総研
不況時に歳出と歳入を均衡させるために増税を行うことは非現実的ですから、赤字国債にも一定の役割は認めるべきでしょう。しかし、何らの見合い資産が残っていないという点で、赤字国債の問題は建設国債以上に大きいといえます(大和総研 『最新版 入門の入門 経済のしくみ-見る・読む・わかる』 日本実業出版社・第4版、2002年、143頁)。
内田勝晴
高橋是清が編み出した「国債の日銀引き受け」という手法は、戦後、禁止された。国家が安易に発行しておカネを手に入れると、軍事費に使ったりしてろくなことはないというのだ。ただし「建設国債」だけは許されている。ダムや道路などの建設に使うのなら、国債という借金でそれらを作り、その返済を子孫に先送りしても、彼らもその恩恵にあずかるのだから、いいではないかというのである(内田勝晴 『家康くんの経済学入門-おカネと貯蓄の神秘をさぐる』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2001年、206頁)。

ジニ係数

松原聡
ジニ係数 国民間における所得や資産などの格差の度合いを示す代表的な指標。所得等が完全に平等に分配されている状態に比べて、現実の状態がどのぐらい乖離しているかを指数で示している。完全に平等であれば数値はゼロ。格差が大きくなるほど数値は1に近づく(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、238頁)。

労働生産性

デービッド・アトキントン
就業者ひとり当たりの労働生産性=購買力平価で測った名目GDP/就業者数(高橋洋一・田中秀臣 『日本経済再起動』 かや書房、2020年、173頁)。
田中秀臣
就業者数が一定であれば、労働生産性を高めるには名目GDPを拡大するだけでいいということ。それだけで、労働生産性は上がってしまうのです(高橋洋一・田中秀臣 『日本経済再起動』 かや書房、2020年、174頁)。
田中秀臣
お金の不足を解消して、総需要不足を解消すれば、自然に労働生産性は回復していくということ(高橋洋一・田中秀臣 『日本経済再起動』 かや書房、2020年、174頁)。
田中秀臣
マクロ政策を増やしていけば、労働生産性は高まります。それ以外のことは、民間が自主的にやればいい(高橋洋一・田中秀臣 『日本経済再起動』 かや書房、2020年、176頁)。

メモ

田中秀臣
日本においては、事実上政府は政権ではありません。政府とは官僚のことなのです。財務省が変わらないから、いつまでたってもプログラムは変わらないのです(田中秀臣 『雇用大崩壊 失業率10%時代の到来』 NHK出版〈生活人新書〉、2009年、130頁)。
田中秀臣
政府は国民の富を収奪できないが、国民もまた政府の富を収奪できないのである(田中秀臣 『経済論戦の読み方』 講談社〈講談社新書〉、2004年、218頁)。
田中秀臣
企業は売り上げ全体の動向と価格を見て供給を決定するのではなく、新たに一単位生産するときのコストとその販売価格の大小関係で意思決定をおこなう(田中秀臣 『最後の『冬ソナ』論』 太田出版、2005年、104頁)。
スティーヴン・ランズバーグ
何よりも重要なのは、貯蓄と勤勉ではなく、消費と余暇こそが人生であることを学ぶだろう(スティーヴン・ランズバーグ 『ランチタイムの経済学-日常生活の謎をやさしく解き明かす』 佐和隆光・吉田利子訳、日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2004年、80頁)。
ロバート・H・フランク
ほとんどすべての人工的な環境や、人間および動物の行動は、費用と便益の相互作用の結果なのである(ロバート・H・フランク 『日常の疑問を経済学で考える』 月沢李歌子訳、日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2013年、321頁)。
中矢俊博
『種の起源』(一八五九)を発表して世間を驚かぜたダーウィンは、マルサスの『人口論』を読んで、生物学的な進化を思いついたと言っています(中矢俊博 『やさしい経済学史』 日本経済評論社、2012年、26頁)。
デイヴィッド・オレル
ケインズはアルバート・アインシュタインに会ったことがあり、著書『雇用・利子および貨幣の一般理論』の題名はアインシュタインの『一般相対性理論』にちなんでいる(ニューズウィーク日本版編集部 『経済超入門 ゼロからわかる経済学&世界経済の未来』 CCCメディアハウス、2017年、82頁)。
ジョン・メイナード・ケインズ
経済学者のケインズは1930年に「わが孫たちの経済的可能性」と題するエッセイを発表している。(中略)この中でケインズは、2030年に人々は週に15時間働くだけで生活水準を維持できるようになると書いている(岩崎日出俊 『気弱な人が成功する株式投資』 祥伝社〈祥伝社新書〉、2014年、188頁)。池田信夫 20世紀の社会主義は、マルクスの予言を検証する壮大な「社会実験」で、これによって1億人以上の人命が奪われた史上最大の災難だった(ニューズウィーク日本版編集部編著 『経済超入門 ゼロからわかる経済学&世界経済の未来』 CCCメディアハウス、2017年、194頁)。
カール・メンガー
メンガーは『国民経済学原理』で、商品の価値を決めるのは費用ではなく、消費者の「必要」だと論じた(ニューズウィーク日本版編集部編著 『経済超入門 ゼロからわかる経済学&世界経済の未来』 CCCメディアハウス、2017年、196頁)。

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