経済・経済学に関するメモ。

松原聡
「景気が低迷しているときには、マーケット・メカニズムにまかせていると景気は行き詰ってしまうので、政府が積極介入すべき」という理論は、1936年にイギリスの経済学者ケインズが『一般理論』という本の中で発表したものです。ケインズの理論は世界的に大きな影響を与え「ケインズ革命」とも呼ばれています(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、160頁)。
池田信夫
政府が財政支出を増やせば、「乗数効果」によって有効需要(購買力の裏づけのある需要)が増え、失業がなくなると論じた。これは「ケインズ革命」と呼ばれ、彼の理論は「マクロ経済学」として世界中の教科書に載るようになった(ニューズウィーク日本版編集部編著 『経済超入門 ゼロからわかる経済学&世界経済の未来』 CCCメディアハウス、2017年、198頁)。
池田信夫
ケインズ学派 keynesian Economics ・不況時には需要が不足して失業が発生するため、政府支出で需要を補う必要がある ・不況時にあてはまりやすい ・主にマクロ経済学を対象とする(ニューズウィーク日本版編集部編著 『経済超入門 ゼロからわかる経済学&世界経済の未来』 CCCメディアハウス、2017年、39頁)。
小室直樹
ケインズより前に書かれた経済学のテキストは失業について何も論じていないのである(小室直樹 『経済学をめぐる巨匠たち』 ダイヤモンド社〈Kei BOOKS〉、2003年、45頁)。
ジョン・メイナード・ケインズ
ケインズは、経済全体での物余りもあるし、失業も見られるとして、古典派経済学や新古典派経済学を批判しました(高橋洋一・田中秀臣 『日本経済再起動』 かや書房、2020年、114頁)。
ジョン・メイナード・ケインズ
ケインズの考え方は、貨幣を加えて、財・サービス、労働、債券の四つの市場を考えました。そして財・サービス、労働、債券、貨幣の超過需要の和は恒等的にゼロというものです。たとえば、債券市場は需要と供給が一致しているケースをまず考えます。このときワルラス法則から、貨幣に対する超過需要が発生していれば、財・サービスや労働の超過供給が常に発生するということです。つまり古典派や新古典派が否定していた全般的な失業や不況が常に生じる可能性を示したといえます(高橋洋一・田中秀臣 『日本経済再起動』 かや書房、2020年、115頁)。
田中秀臣
財・サービス、労働が超過供給のとき、つまり、不況や失業の裏には、必ず貨幣に対する超過需要があるということ、貨幣が不足していることです。現象的に見ればデフレが起きている可能性が大きい。したがって、人々の財布に現在ドカーンと貨幣を持たせてやれば、財・サービスなどに対する需要が回復するということが、ワルラス法則から導き出されます。この場合、債券市場はどう関係するのでしょうか。まず債券市場でも貨幣市場と同様に超過需要になってるとします。新古典派経済学のように、仮に債券をどんどん発行して利子を下げていって景気を拡大していこうとすると、債券の超過需要は解消されるけれども、貨幣の超過需要は解消されない可能性があるということに、ケインズは気づきました(高橋洋一・田中秀臣 『日本経済再起動』 かや書房、2020年、115頁)。
田中秀臣
マイナス金利が出てくる前の状況ですから、債券発行で利下げしても、利子には下限がある。利下げで調整しても、貨幣の超過需要は解消できない可能性があり、財・サービス、労働の超過供給が続く可能性があるということです。わかりやすく言えば、債券を発行して利下げをしても、ゼロ金利の債券がだぶつくだけで(=債券の超過供給)、不況、失業の解消はできない可能性があるということです。このときワルラス法則からは財・サービス、労働、債券それぞれが超過供給で、そして貨幣だけ超過需要です。このとき貨幣をドカーンと供給して超過需要を解消することが、ケインズ経済学の処方箋になっています(高橋洋一・田中秀臣 『日本経済再起動』 かや書房、2020年、115-116頁)。
ジョン・メイナード・ケインズ
マクロ経済学の大家であった英国のジョン・メイナード・ケインズ(一八八三年-一九四六年)は、不況のときには、ただちに政府が公共事業を実行して、政策的に失業者の数を減らすことが景気対策として有効であると説きました。ケインズは公共投資の有効性を主張する際、「穴を掘って埋める作業をやらせるだけでも意味がある」といった趣旨の発言をしています(門倉貴史 『必ず誰かに話したくなる経済学』 PHP研究所、2016年、116頁)。

有効需要

橘木俊詔
ケインズのマクロ経済学は、有効需要の不足を失業発生の理由とみなす(日本経済新聞社編著 『やさしい経済学』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、211頁)。
小室直樹
ケインズは「有効需要があれば、それに見合うだけの供給がなされる」としているが、そこには重要な条件が付いていた。「価格不変」の条件である。つまり、有効需要を創出する前も、した後も、需要されたモノは同じ価格で供給される--と言うのだ(小室直樹 『経済学をめぐる巨匠たち』 ダイヤモンド社〈Kei BOOKS〉、2003年、104-105頁)。
田中秀臣
ケインズ経済学の世界では、「賃金が硬直的なので需要と供給が一致することはない」とされる。(中略)ケインズ経済学の世界では、このように労働市場で賃金の下方硬直性があるために失業が存在している。また、財やサービス市場においても価格は硬直的であり、新古典派経済学の世界の様に価格が瞬時に調整されるわけではない。この、価格と賃金が少なくとも短期的にはゆっくりとしか調整されないことが、経済の停滞(失業や倒産の増加)を考えるときに重要なポイントになる(田中秀臣 『経済論戦の読み方』 講談社〈講談社新書〉、2004年、46-47頁)。
田中秀臣
ケインズ経済学の特徴ともいえる賃金や価格の硬直性は、あくまで短期の仮定であり、数年間かければ、賃金も価格もやがて調整される。しかし、以下に説明する利子率の下方硬直性(正確には名目利子率の非負制約、すなわち金利がゼロ以下にならないことい)では、事情が異なる。利子率の下方硬直性によって、ケインズ的不況を短期だけでなく、中期(一〇年ほど)にわたって継続させることがあるからである(田中秀臣 『経済論戦の読み方』 講談社〈講談社新書〉、2004年、71頁)。

注意点

池田信夫
ケインズの理論は、古典派とは逆に、供給を考えないで需要だけで経済活動の水準が決まると考えるもので、現在では誤りとされている(ニューズウィーク日本版編集部編著 『経済超入門 ゼロからわかる経済学&世界経済の未来』 CCCメディアハウス、2017年、198頁)。
小室直樹
ケインズ理論の落とし穴--それは「クラウディング・アウト」であり「インフレ」である。ケインズは、インフレという事を一切考えなかった(小室直樹 『経済学をめぐる巨匠たち』 ダイヤモンド社〈Kei BOOKS〉、2003年、100頁)。
小室直樹
ケインズ理論に依れば、完全雇用に達しない限り物価上昇は起きない筈であった(小室直樹 『経済学をめぐる巨匠たち』 ダイヤモンド社〈Kei BOOKS〉、2003年、69頁)。
ミルトン・フリードマン
仮にケインズ政策を採ったとすると、景気が拡大するので失業率が下がる。失業率が下がると人々はインフレ期待を強めて、結果的に賃金が上昇し、結局のところ実質GDP成長率が低下して、失業率が再び上昇してしまうというのである。(中略)GDPはほとんど変わらずに物価だけが上昇することになるというわけである(竹中平蔵 『経済古典は役に立つ』 光文社〈光文社新書〉、2010年、200-201頁)。
内田勝晴
しかし一九七〇年代になると、アメリカはインフレと不況が共存するスタグフレーションに悩まされるようになり、ケインズ理論の人気が凋落した。不況のときには物価が下がるのが当たり前で、だからこそケインズ政策によって投資を増やし、景気をよくすることができる。そして景気が過熱して物価が高くなってきたら、つまりインフレになってきたら、金利を高くしたり政府投資を抑えたりして、投資を抑制させる。これが一般的なケインズ政策のやり方だ。しかし、不景気でも物価が高いのでは、打つ手がなくなってしまった。ケインズ政策は破綻したと言われるようになった(内田勝晴 『家康くんの経済学入門-おカネと貯蓄の神秘をさぐる』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2001年、210-211頁)。

批判

内田勝晴
政府は不況対策のため赤字公債を発行しても、好況になってからの税収増でその赤字を解消すればよい。このようなケインズ政策の前提条件が民主主義的選挙のもとでうまく行かないという批判だ。なぜなら、民主主義のもと、政治家は当選したいために、自分の選挙民や圧力団体の要求を無視できず、予算のぶんどりに力を尽くさざるをえない。それは不許のときはもとより、好況になっても同じだから、ケインズ政策は悪用され、財政赤字を増やす元凶になる。アメリカの学者、J・ブキャナンらはこのように批判する(内田勝晴 『家康くんの経済学入門-おカネと貯蓄の神秘をさぐる』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2001年、212頁)。
内田勝晴
人々は経済政策の将来を冷静かつ合理的に予想するから、政府による経済政策は効果がなくなってしまうというものだ。たとえば赤字公債を出して景気を刺激しようとしても、合理的な国民は、どうせ将来はその分だけ増税されることになるだろうから、おカネを使わないでおこうと考える。だから、景気刺激策の効果がでないというのである。「合理的期待仮説」と呼ばれる考え方によるケインズ批判だ(内田勝晴 『家康くんの経済学入門-おカネと貯蓄の神秘をさぐる』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2001年、212頁)。

ヒトラーの経済政策

小室直樹
ヒトラーはアウトバーンの建設や大規模な軍備拡張に依って巨大な有効需要を創出し、失業を克服した。これは実質的なケインズ政策である(小室直樹 『経済学をめぐる巨匠たち』 ダイヤモンド社〈Kei BOOKS〉、2003年、118頁)。

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