経済・経済学に関するメモ。

松原聡
通学も就業も職業訓練もしていない「ニート」の人口は、2002年でも64万人を記録して以降ずっと横ばい状態が続き、2007年時点でも62万人と、ほとんど減っていません(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、42頁)。

識者の見解

田中秀臣
彼らは「ニート」として社会問題化しました。日本では、その原因を本人のやる気のなさに求める風潮がありますが、本質は不況による失業問題(求職意欲喪失者の増加)なのです(田中秀臣 『雇用大崩壊 失業率10%時代の到来』 NHK出版〈生活人新書〉、2009年、48-49頁)。
田中秀臣
注目すべきは、急速に増えたという九七年以降が、ちょうど不況が深化した時期だということです。つまり、ニートの問題も景気に大きく左右されるのではないでしょうか(田中秀臣 『雇用大崩壊 失業率10%時代の到来』 NHK出版〈生活人新書〉、2009年、67-68頁)。
田中秀臣
日本の若者はダメになったのでは全くなく、そう見えるのは、逆に責任をとらない既得権益丸出しの大人たちがいるからである、というのが、最近、僕が経済学者の立場で言ってきたことでもあります(田中秀臣 『AKB48の経済学』 朝日新聞出版、2010年、221頁)。
田中秀臣
先ごろ政府はこのニートがいままでの倍、約八〇万人超に膨れ上がったと公表した(内閣府「若年無業者に関する調査」中間報告)。もしこれが本当だとしたら景気回復局面で増えているわけで、深刻な構造問題といえるだろう。しかし増えた原因は実はかなり問題のある「数字操作」であった。従来のニートに加えて、この内閣府の報告では、いわゆる「家事手伝い」や「病気・ケガ」で治療中の人、さらには働きたいが職がないので待機している人達まで含んで定義されている。この拡張版「ニート」はいわば、求職意欲喪失者といわれる層を大きく含んで定義され直したといえる(田中秀臣 『最後の『冬ソナ』論』 太田出版、2005年、152頁)。
大竹文雄
日本でもバブル崩壊以降、長期の不況が続き、若年層の就職が困難な時期が続いた。このような経済環境は、若年層を中心に勤勉に対する価値観を崩壊させた可能性がある(大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、18頁)。
原田泰
現在ニートとなっている若者の中にも、経済情勢さえよければ、仕事を見つけ、仕事の中に自分を探し、世間の波にもまれて社会適応力を身につけていったに違いない若者も多いはずだ。何もかも構造問題だというのは、むしろ社会問題の解決を妨げることになる(原田泰 『コンパクト日本経済論(コンパクト経済学ライブラリ)』 新世社、2009年、134頁)。
飯田泰之
高齢の方になるといまのニート・フリーターに対して、自分は戦争でこんなに大変だったとか(笑)そういう、反論しにくいような自己正当化の言葉を投げてしまう(飯田泰之・雨宮処凛 『脱貧困の経済学』 筑摩書房〈ちくま文庫〉、2012年、195頁)。

対策

田中秀臣
彼らへの対策は、教育や雇用のミスマッチなどの解消ではなく、景気対策であることを、僕はこれまでも主張してきた(田中秀臣 『不謹慎な経済学』 講談社〈講談社biz〉、2008年、82頁)。
田中秀臣
ニート対策として考えられてきた政策は、公営・民間の就職相談所の活用や、さらにニート層への課税をおこなうことで労働や教育を受けることへのインセンティヴを促す政策が提唱されてきた。もし今回のように拡張ニートに、そのような政策を適用すれば、明らかに間違いといえる。求職意欲喪失者への対策は、まさに景気対策が必須である。彼らに税金を課したり、公営の説教を垂れることでは解決しない。このような政策対応の誤りは、いたずらに社会的なコストを増やしかねないだろう(田中秀臣 『最後の『冬ソナ』論』 太田出版、2005年、153頁)。
田中秀臣
構造改革主義者からすれば、彼らが働かないという経済的な非効率性にのみ注目しているからだ。これはあまりにも利己的な愛のみによって物事を見ているといえよう。ニート問題というミクロ(個人)の問題を効率性一辺倒という利己的な愛の経済学の観点からのみとらえるのではなく、マクロの次元に立って社会全体への関心という利他的な愛の経済学で解消をはかるべきである(田中秀臣 『最後の『冬ソナ』論』 太田出版、2005年、154頁)。

Menu

貨幣・通貨

資本主義・市場経済

管理人/副管理人のみ編集できます