経済・経済学に関するメモ。

理論の是非

ジョセフ・E・スティグリッツ
トリクルダウン効果により、成長の利益が自動的に社会の隅々まで行きわたるということだ。この二つの前提は、経済理論にも歴史経験にも反している(ジョセフ・E・スティグリッツ 『世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す』 楡井浩一訳、徳間書店、2006年、168頁)。
中野剛志
アメリカは、この「トリクル・ダウン」の理論によって、格差の拡大を正当化しようとする傾向が強い国です。ところが、実際には「トリクル・ダウン」は起きないのです。アメリカの著名な政治経済学者ロバート・ライシュは、一部の富裕層が消費をするよりも、分厚い中産階級が消費する方が消費規模は大きくなると主張しています(中野剛志 『レジーム・チェンジ-恐慌を突破する逆転の発想』 NHK出版〈NHK出版新書〉、2012年、70頁)。
大竹文雄
中間層が厚く存在するほうが、平均的な教育レベルが高くなり、中間層の消費がすぐれた製品やサービスを生み出す力になり、安全・安心な社会になると考えられる(大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、162頁)。
飯田泰之
トリクルダウンが成り立っていないなら人為的におこせばよい。そのために、さまざまな分配政策とか社会保障制度をつくるべきです(飯田泰之・田中秀臣・麻木久仁子 『「30万人都市」が日本を救う! 〔中国版「ブラックマンデー」と日本経済〕』 藤原書店、2015年、63頁)。

アメリカ

田中秀臣、安達誠司
アメリカ型の成果主義がもてはやされる理由としては、一部のエリート・サラリーマンが業績を伸ばすことによって、組織全体がその成果の果実を享受することができるとする「したたり効果(trickle-down)」の考え方が前提にあるといえる。しかし、このような「したたり効果」は、注意して用いないと組織メンバーのモラル低下を生み出してしまう(田中秀臣・安達誠司 『平成大停滞と昭和恐慌〜プラクティカル経済学入門』NHK出版〈NHKブックス〉、2003年、145-146頁)。

日本

野口旭
これまで日本の企業は、ほとんど賃金を切り下げなかったし、終身雇用ということでクビにもしなかった。それがいまでは、企業がどんどん賃金を下げ、労働者のクビを切ってリストラを進めている。だからこそ企業の収益が改善していたとも考えられるわけだ。とすると、企業収益の改善が、名目賃金の改善に結びつくとは必ずしもいえないことになる。(中略)ふつうのサラリーマンであれば、名目賃金が下がっていれば、「将来どうなれうだろう」と不安に思うはずだ。当然、家を買うのは無理だなとか、しばらくお金のかかる買い物は控えようという心理が働いてくる。これでは、いくら企業の収益が拡大しても、個人消費につながるはずがない。そういう事情を考えると、企業の収益さえ拡大すれば、たとえデフレが続く中でも個人消費が伸びて景気が回復するというダム論の考え方には、かなり無理がある(猪瀬直樹・MM日本国の研究企画チーム 『日本病のカルテ 一気にわかる!デフレ危機』 PHP研究所、2001年、26-27頁)。
アベノミクス
田中秀臣
また政府は、法人税減税や設備投資減税を社員の賃上げ減税とセットで設定しているようだ。つまり減税によって企業に余剰が生まれるので、その余剰を社員への報酬となるように減税で誘導しようという「トリクルダウン政策」のひとつだ(田中秀臣編著 『日本経済は復活するか』 藤原書店、2013年、17頁)。
若田部昌澄
アベノミクスはトリクルダウン(富裕層が豊かになれば、貧困層にもいずれ富が浸透する、という考え方)と批判されることもあるが、そういう批判はあたらない。それは、ポール・クルーグマンやジョセフ・スティグリッツら、いわゆるリベラルとされる経済学者たちがアベノミクスの方向性を基本的には支持していることからもわかる(田中秀臣編著 『日本経済は復活するか』 藤原書店、2013年、97頁)。

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