経済・経済学に関するメモ。

機能

栗原昇
一般に国の財政政策には次の三津の機能があるといわれています。一つは資源配分機能です。市場経済のもとでは、道路、下水道、ダム、公園などの建設や整備に関する事業は民間ビジネスになりづらく、放っておくと社会インフラが整備されません。外交、国防、警察なども国の事業です。(中略)財政の二つ目の機能は、「所得再分配」です。(中略)方法は、累進課税、相続税、社会保障の三つ。(中略)持てる者から持たざる者へと所得の移転を行っているのです。財政の三つ目の機能は、「経済の安定化」です。その一つが前述の累進課税で、ビルト・イン・スタビライザーと呼ばれる方法です。(中略)不況になると、政府は大型減税や大型公共投資を実施して需要を増やし、逆に好況になると減らすことで景気をコントロールします(栗原昇・ダイヤモンド社 『図解 わかる!経済のしくみ[新版]』 ダイヤモンド社、2010年、94-96頁)。

手法

岩田規久男
財政政策であるが、これには自動安定化装置と裁量的財政政策がある。自動安定化装置とは、税金や社会保障支出の自動的増減によってマクロ経済の安定化を図るメカニズムが経済に埋め込まれていることを指す。たとえば累進課税制度の下では、景気が悪くなって人々の所得が減ると、所得税率が下がるため、所得税が自動的に減税になる(岩田規久男 『「不安」を「希望」に変える経済学』 PHP研究所、2010年、87頁)。
岩田規久男
裁量的財政政策には、財政支出政策(歳出面)と減税政策(歳入面)がある(岩田規久男 『日本経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2005年、238頁、岩田規久男 『「不安」を「希望」に変える経済学』 PHP研究所、2010年、88頁)。
伊藤元重
財政政策には、支出を調整する方法だけでなく、減税あるいは増税といった形で税に変化を加える方法があり、同じような影響が考えられます(伊藤元重 『はじめての経済学〈下〉』 日本経済新聞出版社〈日経文庫〉、2004年、47頁)。
弘兼憲史、高木勝
財政政策による支出は、基本的に毎年入ってくる税金の収入でカバーすることが基本だ。税収だけでは足りないときは国債という形で借金をして、将来返すことにしている(弘兼憲史・高木勝 『知識ゼロからの経済学入門』 幻冬舎、2008年、144頁)。
田中秀臣
財政余剰の使い道は、いくらでもあります。さしあたり考えられるのは、減税する、社会保障負担を減らす、補助金を増やす、派遣労働者やフリーターの人たちにより質の高い職業訓練の機会を与える、または住宅手当や失業保険きちんとフォローする、などでしょうか(田中秀臣 『雇用大崩壊 失業率10%時代の到来』 NHK出版〈生活人新書〉、2009年、114-115頁)。
田中秀臣
財政出動を直接雇用に使う手もあります。たとえば、看護や介護、学校教育などへの支出も増やすべきでしょう。看護師や介護士、公立幼稚園や保育園の職員、学校の教員等を増やすのです。警察官がもっといてもいいし、それがダメなら地域の安全を守る保安要員のような人を採用する手もある。(中略)民間企業に正社員として就職するのは、残念ながら難しい情勢です。それなら、彼らを公務員として採用すればよいのです。あるいは半官半民の組織でもいいでしょう(田中秀臣 『雇用大崩壊 失業率10%時代の到来』 NHK出版〈生活人新書〉、2009年、115頁)。
田中秀臣
学生に対しては奨学金をもっと拡充すべきです(田中秀臣 『雇用大崩壊 失業率10%時代の到来』 NHK出版〈生活人新書〉、2009年、116頁)。
田中秀臣
国民が国に余計に払ったものを返すだけで、かなり消費が刺激される。そういう形の財政政策は十分にあり得ます(田中秀臣 『雇用大崩壊 失業率10%時代の到来』 NHK出版〈生活人新書〉、2009年、118頁)。
田中秀臣
看護や介護、学校教育への支出を増やす、保育園や託児施設を増やす、学校教員も増員するといった直接雇用につながる支出も可能です(田中秀臣 『デフレ不況 日本銀行の大罪』 朝日新聞出版、2010年、268頁)。
田中秀臣
・所得税減税、法人税減税 ・消費税率の引き下げ(田中秀臣 『デフレ不況 日本銀行の大罪』 朝日新聞出版、2010年、238頁)
野口旭
財政政策には、もう一つあります。それは、減税です。政府は、人々から税金を強制的に徴収しています。それが、政府の収入です。減税とは、それを減らすことです。具体的には、所得税や消費税の税率を引き下げたり、税金を何らかの方法で払い戻したりします(野口旭 『ゼロからわかる経済の基礎』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、181頁)。
岩田規久男
その他の減税政策としては、法人税減税や設備投資減税あるいは研究開発投資減税などがある(岩田規久男 『スッキリ!日本経済入門-現代社会を読み解く15の法則』 日本経済新聞社、2003年、254頁)。

ケインズ経済学

ジョン・メイナード・ケインズ
ケインズは不足している総需要を増大させる方法として、財政政策、特に財政支出政策を重視した。総需要を増加させる方法としては、金融緩和政策もあるが、ケインズは大不況のような状況では、金融政策は効果的ではなく、モノやサービスに対する支出を直接的に増やす財政支出政策が最も効果的であると主張した(岩田規久男 『マクロ経済学を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、1996年、76頁)。

効果と弊害

野口旭、田中秀臣
財政政策の長所は、確実な「政府需要」を生み出せることである。たとえば、政府が公共投資を行えば、少なくともその分だけは総需要は増える。しかし、短所もある。それは、公共投資の性質上、建設業などに資金が集中されることから、資源配分と所得配分に歪みが生じがちな点である。こうした歪みは、業界と政治が利権によって結びつくことにより、とめどなく増幅される。その結果、一国経済は、あたかも「麻薬患者」のように財政政策依存から抜け出せなくなる傾向がある。そうなった場合、残るのは膨大な政府債務のみである(野口旭・田中秀臣 『構造改革論の誤解』 東洋経済新報社、2001年、56頁)。

効果

野口旭
政府が行う財政政策は、その総需要管理のための最も簡単な手段です。たとえば、政府が道路や橋などの公共投資を行うとします。これは、政府投資としての財政支出です。このように政府が支出を拡大すれば、その分は必ず総需要が拡大します(野口旭 『ゼロからわかる経済の基礎』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、180頁)。
田中秀臣
なぜ税収が不足するかといえば、景気が悪いからです。それを止めるには、やはり長期国債を発行して経済を活性化させるしかありません。たしかにそこで国債残高は増えますが、経済全体が拡大することによって税収が増えれば、長期的には国債残高を抑制ないし減らす方向になる。これがノーマルな考え方です(田中秀臣 『雇用大崩壊 失業率10%時代の到来』 NHK出版〈生活人新書〉、2009年、125頁)。
池田信夫
財政支出は、基本的にはその支出される年度にしか効果はない(池田信夫 『希望を捨てる勇気-停滞と成長の経済学』 ダイヤモンド社、2009年、145頁)。
森永卓郎
いままでの財政政策に効果がなかったといわれる一つの理由は、タイミングの問題です。財政支出をすれば、その本当の効果はその後数年から数十年にわたってずっと出てくるのですが、支出のほうは一年でドカンと出ていくので、財政支出の初期段階では財政赤字は拡大します。その後、景気拡大にともなう税収増でじわじわ回収され、最終的にはプラスになるというのが基本的な効果の現れ方です(森永卓郎 『日本経済50の大疑問』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、96-97頁)。

ビルト・イン・スタビライザー

松原聡
財政制度は、景気を自動的に安定させる機能を持っています。累進課税制度や社会保障制度などがその代表例です。景気が良く、所得が伸びている時は課税額も増え、景気が過度に拡大するのを抑えられます。逆に景気が悪いときには課税額も低くなる一方で、社会保障給付が増え、景気を下支えします。このような機能を「ビルトイン・スタビライザー」といいます(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、154頁)。
岩田規久男
税以外でも、雇用保険金や生活保護費などの財政支出も、不況期には増加して消費の減少に歯止めをかけ、好況期には減少して消費の増加を抑制するので、物価の上昇や不況の進行に対する歯止めになる。右の税収や雇用保険等の変化は、景気変動にともなって自動的に生じて、経済の変動を緩和する働きがあるので、自動安定化装置と呼ばれる(岩田規久男 『マクロ経済学を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、1996年、78頁)。

乗数効果

経済企画庁
公共投資の乗数効果よりも所得税減税の乗数効果の方が理論的に考えて小さく、旧経済企画庁(現内閣府)の計量分析などによっても小さいことが示されている(岩田規久男 『マクロ経済学を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、1996年、82頁)。
岩田規久男
この所得税減税の効果については、物事はそれほど単純ではないという反論がある。いま所得税減税の効果を取り出すために、財政支出は所得税が減税されても変化しないとしよう。所得税とともに財政支出も変化してしまうと、結果として起こる変化が所得税減税のために生じたのか、財政支出が変化したために生じたのか区別ができなくなるからである(岩田規久男 『マクロ経済学を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、1996年、83-84頁)。
ポール・クルーグマン
それに対してクルーグマン氏は、減税政策はほとんど乗数効果がなく、むしろ一ではなく〇・五しかないと言っています(田中秀臣 『雇用大崩壊 失業率10%時代の到来』 NHK出版〈生活人新書〉、2009年、168頁)。
岩田規久男
財政支出が乗数効果を弱める要因がいくつか存在する。第一に、財政支出の増加とその乗数効果により所得が増えても、人々はそれを一時的な増加と考えるかもしれない。人々が所得の増加は一時的であると考えると、消費は増えない可能性がある。第二に、財政支出の増加は国債の発行でまかなわれるのが普通であるが、人々は国債残高が増えるにつれて、将来の増税を予想するようになり、その増税による将来の可処分所得の減少に備えるために、消費を抑制して、貯蓄を増やす可能性がある。第三に、国債残高が増加すると、国債金利が上昇する可能性がある。国債金利の上昇は円高要因になる。円高は輸出を減らし、輸入を増やすため、国内総生産に対する需要を減少させる。この需要の減少は財政支出増加の需要拡大効果を相殺してしまうかもしれない。以上に述べた財政支出拡大政策の乗数効果を低下させる要因は、減税にも当てはまる(岩田規久男 『「不安」を「希望」に変える経済学』 PHP研究所、2010年、88-89頁)。
原田泰
ケインズの乗数は失業率がきわめて高い状況を前提としている。そのような状況であれば、乗数が大きいことも考えられるが、やがて雇用は拡大し、失業率が十分に低下して、それ以上は拡大できない状況になる。ケインズの乗数が働くためには、失業率が高い状況でなければならない。以上のことを考えると、どのような状況でも乗数が大きいとは考えられない(原田泰 『コンパクト日本経済論(コンパクト経済学ライブラリ)』 新世社、2009年、78頁)。
田中秀臣
日本では「乗数効果の大きさが経済構造の変化によって低下している」とよく指摘されている。しかし私は、そのような見解には懐疑的である。財政政策の効果が低下したのは、主に金融政策の引き締め的スタンスによって著しく乗数効果が落ちてしまったためだと考えている。過去に行われた財政政策の効果が不安定だったり、意外なほど効果がなかったりしたのは、金融政策の協力を十分に得られなかったためであろう(田中秀臣 『ベン・バーナンキ 世界経済の新皇帝』 講談社〈講談社BIZ〉、2006年、58頁)。

弊害

竹中平蔵
このようなケインズ政策は、万能ではなかったんですね。失業が増えたから需要を増やした。そこまではいい。しかし、それで失業が無くなったからといって、今度政府は財政支出を減らすかというと、そんなことしないわけです。公共事業を一回やっちゃったら、それを減らすのは大変ですよ。民主主義社会においては、失業をなくすために需要を作り始めたら、財政は徹底的に拡大していって赤字になるんです(佐藤雅彦・竹中平蔵 『経済ってそういうことだったのか会議』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2002年、344-345頁)。
岩田規久男
政策の持続性と有効性の観点から見て、財政政策よりも金融政策の方が望ましい(岩田規久男 『スッキリ!日本経済入門-現代社会を読み解く15の法則』 日本経済新聞社、2003年、44頁)。
野口旭、田中秀臣
財政政策には確実性はあるが、やめてしまえば終わりであり、逆に無意味に続ければ、政府債務のみが累積することになるからである(野口旭・田中秀臣 『構造改革論の誤解』 東洋経済新報社、2001年、60頁)。
野口旭、田中秀臣
財政の本来の機能とは、マクロ安定化というよりも、税金の徴収を通じた公共財の供給である。(中略)日本の現実を見ればわかるように、景気対策としての財政支出は、政治的利権がからむなかで、付け焼き刃で実行されるために、どうしても「無駄金」が多くなる(野口旭・田中秀臣 『構造改革論の誤解』 東洋経済新報社、2001年、60-61頁)。
ジェームズ・M・ブキャナン
財政は下方硬直性があり、膨らませるのは簡単だが、収縮しないで膨張しつづける傾向があるというブキャナンの指摘通りのことが起きる可能性が高いということである(竹中平蔵 『経済古典は役に立つ』 光文社〈光文社新書〉、2010年、120頁)。
ジェームズ・M・ブキャナン
そのうち「民主主義の中に財政赤字ってのはビルトインされてる」という議論が出てきました。このように主張したのはブキャナンというノーベル経済学賞をとった人なんですが、彼のその主張は、労働組合はもっと自粛すべきだとか、賃金のメカニズムを重視しようという一つの運動になっていくわけです(佐藤雅彦・竹中平蔵 『経済ってそういうことだったのか会議』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2002年、345頁)。
ミルトン・フリードマン
財政政策による景気安定化も批判した。その理由として、政府に効果的な財政支出を選ぶ能力がないとか、政策決定の遅れが生じて効果がないなどを挙げている(日本経済新聞社編著 『経済学の巨人 危機と闘う-達人が読み解く先人の知恵』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2012年、97頁)。
岩田規久男
政府当局がインフレや景気後退を認知してから、政策を立案し、予算を審議し、それを可決して実行に移すまでには長い時間がかかる。そのため、インフレや景気後退を食い止めるためには手遅れになったり、政策が実行に移される頃には、逆の総需要政策が必要になっていたりして、かえって景気変動を増幅する可能性もある。インフレや景気後退の認知から政策の実行までの遅れを考えると、総需要の微調整(ファイン・チューニング)を目的とする裁量的な財政政策の有効性には限界がある(岩田規久男 『マクロ経済学を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、1996年、87頁)。
小野善康
失業者のセーフティーネット(安全網)としての補助金やバラマキ減税よりも、そのカネを賃金にして活用する方がずっとよい(日本経済新聞社編著 『やさしい経済学』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、191頁)。
野口旭、田中秀臣
マクロ政策としての財政政策によって、循環的な要因によって生じる失業や倒産をできるだけ少なくすることは、政府のみがなしうる重大な機能である。政府はその一方で、やむをえざる失業や倒産に対するセーフティー・ネットを構築し、そのための政府支出を確保しておく必要がある。財政赤字の一時的な拡大を忌避するあまり、そのような政府の経済的能力の行使をあえて怠り、失業や倒産の拡大を放置することは、政府の経済的な存在根拠それ自体を否定することにほかならないのである(野口旭・田中秀臣 『構造改革論の誤解』 東洋経済新報社、2001年、190-191頁)。
田中秀臣
不景気の際に財政政策を行うにあたっては、あまり効率性を重視するのは賢明なやり方ではありません。たとえば公務員を多く雇うということは、生産性の低い人を多く抱えるということです(田中秀臣 『雇用大崩壊 失業率10%時代の到来』 NHK出版〈生活人新書〉、2009年、147頁)。
日本での試算
原田泰、大和総研
名目GDP1%分の公共事業の拡大は、財政収支の対GDP比を0.5%悪化させる。名目GDP1%分の所得税減税なら、同様に0.81%悪化させる(原田泰・大和総研 『新社会人に効く日本経済入門』 毎日新聞社〈毎日ビジネスブックス〉、2009年、26-27頁)。
岩田規久男
政府が財政支出の拡大といった景気対策を実施すれば、一時的には、景気は多少良くなるが、それを止めれば、たちまち戻ってしまう。財政政策で一二〇万人程度の雇用を創出し、それを維持することは不可能である(岩田規久男 『経済学的思考のすすめ』 筑摩書房、2011年、169頁)。

注意点

マリナー・S・エクルズ
財政は、民間の信用が拡大している時だけ緊縮し、民間活動が低下している時だけ拡大すべきである(中野剛志 『レジーム・チェンジ-恐慌を突破する逆転の発想』 NHK出版〈NHK出版新書〉、2012年、207頁)
原田泰、大和総研
公共事業より減税のほうが効果が小さいが、公共事業がいいと考えるかどうかは哲学の違いである。減税は政府の規模を縮小し、人々の経済的自由を拡大するが、公共投資の増大は政府が何に使うべきかを人々に指図する(原田泰・大和総研 『新社会人に効く日本経済入門』 毎日新聞社〈毎日ビジネスブックス〉、2009年、22頁)。
岩田規久男
財政政策は社会資本の形成と社会保障(税金や年金などによる)などの所得再分配政策に専念すべきでしょう(岩田規久男 『日本経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2005年、247頁)。
田中秀臣
また財政支出を拡大することで、経済に占める政府部門の割合が高まると、経済全体の非効率性をもたらすという問題もあります。ですから財政政策だけではだめで、必ず金融政策と組み合わせてデフレ対策、不況対策をやっていかねばならないのです(田中秀臣 『デフレ不況 日本銀行の大罪』 朝日新聞出版、2010年、242頁)。
田中秀臣
利子率が動いても、関係のない人が多いけれど、財政のほうは、それによって潤う業界が出てくる。マクロ効果としては、財政も金融も似たようなものだけれど、金融を否定して、財政にしてもらわないと、利益を得られない人たちがたくさんいる。そういう人たちは、ともかくたくさん財政支出をさせたいんだと思いますよ(高橋洋一・田中秀臣 『日本経済再起動』 かや書房、2020年、135頁)。
高橋洋一
財政政策っていうのは、突き詰めると、強力な利権の塊。財務省が財政を絞ったことを好意的に評価する面があるとすれば、既存の利権を拒否したことです(高橋洋一・田中秀臣 『日本経済再起動』 かや書房、2020年、137頁)。
ベン・バーナンキ
日本における財政政策は、巷間言われる以上に効果が期待できるとしている。消費者の信頼性が低下して消費が低迷し、効果を打ち消さないかぎり、財政政策は日本の不況脱出に貢献するだろうと推測している(田中秀臣 『ベン・バーナンキ 世界経済の新皇帝』 講談社〈講談社BIZ〉、2006年、58頁)。

合理的期待形成仮説

岩田規久男
人々が効用の低下を避けようとすれば、今年の所得税減税分を国債の購入に向け、全額貯蓄しなければならない。このように考えると、所得税が減税されてもその全額が貯蓄に回ってしまうので、消費は全く変わらず、したがって所得税減税がGDPを拡大させる効果もないことになってしまう。右のような議論を、人々は将来の増税を予想してそれに備えて合理的に行動するという意味で、合理的期待形成の理論という。この合理的期待形成の理論に対しては、人々はそれほど合理的ではなく、将来の増税に備えることなく所得税減税分のかなりの分を消費に回してしまうという反論がある(岩田規久男 『マクロ経済学を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、1996年、85-86頁)。
若田部昌澄
財政政策だって、本当に効果があるかどうかは期待によります。財政政策はどこかで必ず税金をとる。そうすると、どの時点でどう税金をとるかという期待に応じて、政策の効果が違ってくる(田中秀臣・野口旭・若田部昌澄編著 『エコノミスト・ミシュラン』 太田出版、2003年、79頁)。

ストップ・アンド・ゴー政策

岩田規久男
ストップ・アンド・ゴーの財政政策は景気対策の効果を低下させるとともに、名目経済成長率の低下を招くことによって、財政の持続可能性を低下させる(岩田規久男 『「不安」を「希望」に変える経済学』 PHP研究所、2010年、195頁)。

日本

みずほ総合研究所
九二年八月の総合経済対策以来、九次にわたって経済対策が実施され、その事業規模は合計で一二〇兆円を超える(みずほ総合研究所編著 『3時間でわかる日本経済-ポイント解説』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2002年、102頁)。
みずほ総合研究所
九次にわたる景気対策(財政政策)を実施した。その事業規模は一二〇兆円を超える。内訳をみると、公共投資等社会資本整備が五七・一1兆円(地方単独事業も含む)とほぼ半分を占める。一方、減税等は一六・七兆円にとどまっており、景気刺激策として主に公共投資追加策がとられてきたことになる。(中略)九〇年代に積み上げられた公的固定資本形成は、三八二兆円にのぼる。これは八〇年代に積み上げられた公的固定資本形成(二三八兆円)の一・六内の水準だ(みずほ総合研究所編著 『3時間でわかる日本経済-ポイント解説』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2002年、45頁)。
岩田規久男
九二年以降、財政支出が増えると、景気は回復するのですが、その増加を止めたり、減らしたりすると、たちまち景気は回復が悪くなってしまうということが繰り返されてきました(岩田規久男 『日本経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2005年、239頁)。
松原聡
最近では国家財政の赤字が深刻化しているため、財政政策をするための予算も限られています。また、かつてよく実施されていた財政政策の中には、効果が出にくくなっているものもあります(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、152頁)。
松原聡
90年代以降の長い不況の中で、日本の政府は景気を回復させるために、巨額の予算を投じて積極的な財政政策を実施してきました。しかし、効果がまったくなかったわけではないものの、景気を回復させるきっかけになりませんでした(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、156頁)。
田中秀臣
一九九〇年代のように多くの産業や地域が経済的に疲弊する中では、政府がその「痛み」を緩和するために一定の財政支援を行うのは、少なくとも社会的な公正の確保という点では当然です。しかし、純経済学的には、それは必ずしも望ましい政策といえません。というのは、衰退産業への政府による永続的な支援は、労働や資本の産業間移動のインセンティブを失なわせ、社会的非効率性を固定化させることにつながるからです。その意味では、「政府財政への過度な依存が構造改革を遅らせてきた」という構造改革主義的な主張は、一面の真理を含んでいます。しかし、それは一面の真理でしかありません。というのは、その主張は、「そもそも日本はなぜかくも巨額の財政支出を強いられたのか」という、財政依存の根本的原因に対する経済学的な考察をまったく欠いているからです(田中秀臣 『デフレ不況 日本銀行の大罪』 朝日新聞出版、2010年、182-183頁)。

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