経済・経済学に関するメモ。

小塩隆士
「収縮すること」を意味する「デフレーション」(deflation)を略したデフレです(小塩隆士 『高校生のための経済学入門』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2002年、137頁)。
竹中平蔵
「デフレ」という言葉もあります。これはインフレーションの逆。英語で「収縮、縮んでいく」という意味の「デフレーション」が短く日本語になったものです((竹中平蔵 『ニュースがもっと面白くなる!竹中教授の経済教室』 中経出版、2012年、184頁)。

概要

大和総研
今日話題になっている「デフレ」は、貨幣価値の上昇を意味するともいえます(大和総研 『最新版 入門の入門 経済のしくみ-見る・読む・わかる』 日本実業出版社・第4版、2002年、108頁)。
田中秀臣
しかしデフレは「カネの価値が財やサービスよりも高い」という現象である。すなわちデフレとは、カネを持つことへの執着である(デフレの原因が構造的でも総需要不足でも同じである)(田中秀臣 『経済論戦の読み方』 講談社〈講談社新書〉、2004年、32頁)。
田中秀臣
経済学でいうデフレとは、経済全体の供給と需要のアンバランスによって一般的な物価水準、さまざまな財やサービスの平均価格が下落していく現象を指しています(田中秀臣 『デフレ不況 日本銀行の大罪』 朝日新聞出版、2010年、58頁)。
田中秀臣
また名目成長率と実質成長率の乖離は、物価の変化率を示している。実質成長率が名目成長率を上回っているということは、デフレ(物価下落)の方向に向かっていることを示している(飯田泰之・田中秀臣・麻木久仁子 『「30万人都市」が日本を救う! 〔中国版「ブラックマンデー」と日本経済〕』 藤原書店、2015年、29頁)。
経済企画庁
経済企画庁(現・内閣府)ではそれまで「物価の下落を伴った景気の低迷」をデフレと定義していましたが、三月からはより簡素化して「持続的に物価が下落している状態」としました(第一勧銀総合研究所編著 『基本用語からはじめる日本経済』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、99頁)。

デフレの定義

竹中平蔵
デフレという言葉を使う場合には、単に物価が下がるという意味だけではなく、物価が下がることと経済が悪化することとが一体になっている状態、つまり物価が下がっているなかで不況が深刻化することを指す場合も少なくありません(竹中平蔵 『あしたの経済学』 幻冬舎、2003年、72頁)。
円居総一
デフレは物価の持続的な下落現象だが、それでは抽象的ななので、貨幣と経済の収縮現象と捉えたほうがわかりやすいだろう(円居総一 『原発に頼らなくても日本は成長できる』 ダイヤモンド社、2011年、151-152頁)。
森永卓郎
デフレというのは、物価の下落と需要の縮小が同時進行する状態です(森永卓郎 『日本経済50の大疑問』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、27頁)。
クヌート・ヴィクセル
すなわちヴィクセルは「名目価格の変動……は、相対価格の変動……とは根本的に異質な現象」であることを発見したのである(日本経済新聞社編著 『経済学の巨人 危機と闘う-達人が読み解く先人の知恵』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2012年、35頁)。
ニューズウィーク日本版編集部
特定の企業がデフレの原因とは言えない。ある商品だけが安くなれば、節約したお金でほかの商品が買えるので、ほかの商品の値段は下がらないからだ。デフレとは、物価全体のレベルが下がること(ニューズウィーク日本版編集部編著 『経済超入門 ゼロからわかる経済学&世界経済の未来』 CCCメディアハウス、2017年、141頁)。
岩田規久男
消費者物価とはさまざまな消費財やサービスの価格をそれらの財・サービスに対する支出割合で加重平均した価格である。こうして計算された消費者物価が継続的に下落するのがデフレである。消費財の一部でしかないユニクロや牛丼の価格が下がっても、他の消費財やサービスの価格が上昇すれば、消費者物価は下落しないどころか、上昇することさえもある(岩田規久男 『スッキリ!日本経済入門-現代社会を読み解く15の法則』 日本経済新聞社、2003年、215頁)。
白川方明
デフレにはいろいろな定義があり、一概には定まらない(田中秀臣 『デフレ不況 日本銀行の大罪』 朝日新聞出版、2010年、29頁)

デフレの原因

シルビオ・ゲゼル
現在の日本経済はデフレ(持続的な物価の下落)の状況にありますが、デフレの原因はお金が利子を生むからだと考えた人がいました。それがシルビオ・ゲゼル(一八六に年-一九三〇年)という経済学者です(門倉貴史 『必ず誰かに話したくなる経済学』 PHP研究所、2016年、128頁)。

経済への影響

ジョン・メイナード・ケインズ
1923年、『貨幣改革論』を出版。「インフレの害とは富の分配が変わること。デフレの害とは富の生産が阻害されること」と説き、「したがって、インフレは不公平(unjust)であり、デフレは不得策(inexpedient)である。この2つのうち、より害が大きいのは、ドイツのような極端なインフレを除けば、デフレである」と主張した(岩崎日出俊 『気弱な人が成功する株式投資』 祥伝社〈祥伝社新書〉、2014年、83-84頁)。
日本経済新聞社
デフレはモノの値段が下がり続ける状態。不景気で商品などが売れないので、企業はさらに値段を下げても売ろうとする(日本経済新聞社編著 『エコノ探偵団がゆく!路地裏ニッポン経済』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2003年、44頁)。
日本経済新聞社
一般にデフレのときは、需要がメーカーなどの生産・供給を大きく下回る。その結果、モノが売れず、値段が下がる(日本経済新聞社編著 『エコノ探偵団がゆく!路地裏ニッポン経済』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2003年、45頁)。
日本経済新聞社
皆が物価が下がり続けると考えれば、買い控えでモノや住宅は売れなくなる(日本経済新聞社編著 『思わず誰かに話したくなる経済の不思議-エコノ探偵団』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2012年、146頁)。
日本経済新聞社
銀行からお金を借りる企業も、実質金利が高いと返済の負担が重いと感じるようになる(日本経済新聞社編著 『思わず誰かに話したくなる経済の不思議-エコノ探偵団』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2012年、146頁)。
日本経済新聞社
物価が下がると消費者は安くモノが買えて得する半面、企業など生産者は売り上げがあがらず苦労する。借金を背負っている家計や企業も、デフレによる収入の減少は痛手となる。さらに問題なのは、株価や地価といった資産価格が下がり、企業や家計のバランスシートが傷ついた状態のもとで、継続的に物価が下がっていくことさ。そのときには、おカネをはじめ安全資産しかないと信用できないというムードが高まり、消費や投資といった経済活動は著しく冷え込んでしまう(日本経済新聞社編著 『いやでもわかる日本経済』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2003年、64頁)。
ニューズウィーク日本版編集部
値段が下がること自体は消費者にとってありがたい。問題は、不況を悪化させかねないことだ。企業が儲からなくなると、給料が下がったり、リストラされたり、倒産する企業が増える。そして収入が減っても借金は減らないから、返済の負担が重くなる。こうして、モノが売れない→デフレが進む→収入が減る→モノが売れない、という悪循環に陥りかねない(ニューズウィーク日本版編集部編著 『経済超入門 ゼロからわかる経済学&世界経済の未来』 CCCメディアハウス、2017年、140頁)。
若田部昌澄
物価下落は名目値の硬直性と衝突して企業収益を停滞させ、国民の雇用と所得を減退させる(岩田規久男編著 『昭和恐慌の研究』 東洋経済新報社、2004年、91頁)。
田中秀臣、安達誠司
しかしデフレはマクロ経済学の環境だけではなく、それと同時にミクロレベルの企業や家計にまで深刻なダメージを与えるだろう(田中秀臣・安達誠司 『平成大停滞と昭和恐慌〜プラクティカル経済学入門』NHK出版〈NHKブックス〉、2003年、136頁)。
猪木武徳
デフレが悪化すると、政府への信任が失われてくるのは、インフレの悪化と同様である。つまり価格の異常な上昇も、数量の異常な収縮(有休資源の増加)も、その論理は異なるものの、統治への信任の喪失という点では同じ影響力を持つ(日本経済新聞社編著 『マネーの経済学』 日本経済新聞社〈日経文庫〉、2004年、86頁)。
若田部昌澄
年金や失業保険などの長期的な制度はほとんど崩壊の危機にさらされているといっても過言じゃありません(田中秀臣・野口旭・若田部昌澄編 『エコノミスト・ミシュラン』 太田出版、2003年、54頁)。
田中秀臣
社会保障制度はマイルドなインフレ対応にはなっているけれど、デフレ対応にはしていないから確実に破綻する(田中秀臣・野口旭・若田部昌澄編 『エコノミスト・ミシュラン』 太田出版、2003年、54頁)。

デットデフレーション

野口旭、田中秀臣
資産デフレとデフレが生じれば、土地、工場、機械設備、在庫といった企業の資産価格は下落する。しかし、企業の負債は名目で固定されているために減少しない。むしろ、その負債の実質価値はデフレによって増加する。したがって、デフレが進めば進むほど企業のバランスシートは悪化する(野口旭・田中秀臣 『構造改革論の誤解』 東洋経済新報社、2001年、16頁)。
上念司
これを「負債の名目固定性」といいます。値下がりした家の代金を、値下がり前の高い価格で払い続けなければならないという考え方です(上念司 『デフレと円高の何が「悪」か』 光文社〈光文社新書〉、2010年、41頁)。

デフレ下の所得移転

ウォルター・ブロック
人々は、その結果として生じるモノの値段の下落から大きな利益を得る。同じお金でより多くのモノが買えるのだから、いま持っているお金、これから使おうと考えているお金は、ずっと価値が高いものになる(ウォルター・ブロック 『不道徳な経済学: 転売屋は社会に役立つ』 橘玲訳、早川書房〈ハヤカワ文庫NF〉、2020年、191頁)。
岩田規久男
現在と将来の所得が変わらなければ、物価が上がるインフレよりも物価が下がるデフレの方が、その所得でたくさんのモノが買えるのだから、いいに決まっている。つまり、デフレになっても、自分の現在の所得と将来の所得は変わらないとして、デフレが良いかインフレが良いか考えるのである。しかし、所得がデフレやインフレによって実は影響を受けるとしたら、話は違ってくる。企業の倒産や失業率、さらに、預金や生命保険の安全性や将来の年金までもがデフレによって悪影響を受けることがわかれば、ますます話は違ってくるだろう(岩田規久男 『スッキリ!日本経済入門-現代社会を読み解く15の法則』 日本経済新聞社、2003年、216頁)。
岩田規久男
物価そのものには意味がなく、名目所得と物価の比率に意味があることが理解できたと思います。当り前のことですが、物価が下がっても、失業してしまい、所得がなくなれば、実質所得はゼロになってしまい、生活は楽になるどころか、苦しくなるばかりです(岩田規久男 『日本経済にいま何が起きているのか』 東洋経済新報社、2005年、40頁)。
みずほ総合研究所
物価の下落は、家計の所得や資産の購買力を高めるため、消費支出を促すという考え方である。(中略)デフレは個人消費を促進しているかのように思えるが、現在の日本の状況をみれば、こうした見方は当てはまらない。デフレは家計の消費支出に大きな悪影響を及ぼしているからだ(みずほ総合研究所編著 『3時間でわかる日本経済-ポイント解説』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2002年、25頁)。
みずほ総合研究所
物価の下落は、家計の購買力を高めていると同時に、失業増加や賃金削減を通じて、個人消費を押し下げている。また、恒常的なデフレのもとで先行き物価下落への期待がまん延している場合には、家計は不要不急の支出を先延ばしする。さらに、住宅ローンを抱えている世帯では、デフレ予想は先行きの債務返済負担が大きくなることを意味するため、消費を抑制して住宅ローン返済を早めるようという動きにつながる(みずほ総合研究所編著 『3時間でわかる日本経済-ポイント解説』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2002年、26頁)。

デフレと経済活動停滞の因果関係

デビッド・リカード
リカードは、貨幣的要因が生産と雇用という実物要因に影響を与えると明確に認識していた(日本経済新聞社編著 『経済学の巨人 危機と闘う-達人が読み解く先人の知恵』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2012年、249頁)。
根岸隆
貨幣的需要の拡大にすぎないインフレーションにおいてすべての産業で生産が拡大するのは、貨幣錯覚が存在するからである(日本経済新聞社編著 『経済学をつくった巨人たち-先駆者の理論・時代・思想』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、226頁)。
清水啓典
社会全体にとっては、お金の量が増えて物価が上がっても、長期的に生産量やサービスの供給が増えるわけではないといわれる。つまり、お金の量が増加が社会全体の富を増加させる(実質経済成長を促す)ことにはならない。社会にとって貨幣の量の多寡が意味を持たないというのは、このことである。もっとも、お金の量は長期的に物価しか影響を与えないとはいえ、短期的には生産活動や雇用にも響く(日本経済新聞社編著 『マネーの経済学』 日本経済新聞社〈日経文庫〉、2004年、89頁)。
円居総一
一般的に「物価の持続的下落」と定義されるデフレだが、それがもたらす最大の問題は、インフレと異なり、経済の成長循環をフリーズさせてしまうことにあろう(円居総一 『原発に頼らなくても日本は成長できる』 ダイヤモンド社、2011年、143頁)。
アーヴィング・フィッシャー
フィッシャーは景気循環が一般物価水準の騰落によって引き起こされると考えた。(中略)また物価の騰落はそのプロセスで所得分配に不公正な影響を与えるから、取り除かれるべき「社会悪」だとも主張した(日本経済新聞社編著 『経済学をつくった巨人たち-先駆者の理論・時代・思想』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、186頁)。
スティーヴン・ランズバーグ
価格低下によって消費者が得た利益は、生産者の同額の損失によって相殺される。消費者と生産者の双方の利益を勘定に入れれば、価格下落そのものは費用と便益の関係に影響を与えない。だが第二の消費者余剰--以前よりもピザを食べて喜ぶ人が増えるという事実--は、一般に社会的利益であり、便益として計上するべきである。政策の変更によってピザの価格が二ドル下がれば、政策分析の重要な仕事は、ピザの消費量の増加から生じる消費者余剰の増加分を推計することだ(スティーヴン・ランズバーグ 『ランチタイムの経済学-日常生活の謎をやさしく解き明かす』 佐和隆光・吉田利子訳、日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2004年、161頁)。
アーヴィング・フィッシャー
物価の下落は貨幣残高(預金など)の実質価値を高めることにより支出を刺激する(ピグー効果)。フィッシャーはこうした考え方に反対した。なぜなら物価の下落は負債の実質価値を高め、倒産を通して不況をさらに悪化させると考えたからである(日本経済新聞社編著 『経済学をつくった巨人たち-先駆者の理論・時代・思想』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、187頁)。
円居総一
ケインズ経済学では、賃金の下方硬直性を前提に、貨幣数量の変化が実質国内総生産に影響する、すなわち、物価の持続的減少と実質国内総生産の持続的減少が同時に起きることを提示している。その後、ニューケインジアンと、古典派の流れを汲むマネタリストとの論争はあったが、多くの実証研究の積み重ねもあって、一〇年以上のような長期でもない限り、ケインズ的見解が成立することが共通の理解となってきた。一方、長期(名目賃金下方調整が完了するような長期)では、貨幣数量説にいう中立性に収束していくことをニューケインジアンも認めている(円居総一 『原発に頼らなくても日本は成長できる』 ダイヤモンド社、2011年、152-153頁)。
吉川洋
もちろん物価の下落は債権者に益することになるが、債権者の支出性向に比べ債務者の支出性向の方が平均的に見て高い(だからこそ債務者になっている)。したがって、ネットで見ても、物価の下落は有効需要に負の影響を与える可能性が高い(日本経済新聞社編著 『経済学をつくった巨人たち-先駆者の理論・時代・思想』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、187頁)。
岩田規久男
債務デフレによる不況はバランス・シート不況とも呼ばれます(岩田規久男 『日本経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2005年、73頁)。
田中秀臣
負債デフレのような「予期せざる物価水準の減少」も、借り手から貸し手への資産の再配分を促し、投資を減少させる--ということもこのモデルで説明できる(田中秀臣 『ベン・バーナンキ 世界経済の新皇帝』 講談社〈講談社BIZ〉、2006年、134頁)。
若田部昌澄
当時、清算主義を徹底的にやったのが、ナチス登場以前のドイツでした。ドイツは家賃も含めて、名目賃金をどんどん切り下げた。(中略)そういったデフレ政策で国民は途端の苦しみを味わって、ナチスの台頭を許してしまいました(田中秀臣・野口旭・若田部昌澄編著 『エコノミスト・ミシュラン』 太田出版、2003年、120頁)。
岩田規久男
デフレが不況を伴うことが多い理由には次の三つが挙げられる。第一は、名目賃金の下方硬直性である。(中略)第二は、名目金利の下方硬直性である。(中略)第三に、物価とが下がれば名目の企業収益や地代・家賃は減少地価や株価の下落につながる(日本経済新聞社編著 『やさしい経済学』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、156-157頁)。
大竹文雄
賃金制度の設計には、人々の心理学的な特性や習慣形成効果を考慮することが必要であり、賃金引き下げの難しさもこういうところに原因がありそうである。物価の下落と不況が続いているなかで、賃金引き上げを行うことができない状況が長引くと、人々の勤労意欲が低下し、生活の満足度も低下してしまう(大竹文雄 『経済学的思考のセンス-お金がない人を助けるには』 中央公論新社〈中公新書〉、2005年、163頁)。
円居総一
借入資金の返済負担は、経済がデフレ状態にあっては、お金の価値が高くなることによって拡大し、企業のバランスシートは悪化する。設備投資も、実質金利が上昇すると予想される中では、控えられてくる。モノ余りの中で生産を抑制し、設備投資も抑制していくことになるからだ。成長産業であろうとなかろうとすべての産業でそうなるから、経済成長は落ち込み、成長産業や潜在的に成長が期待される産業への移行という、産業構造の調整も進まなくなる(円居総一 『原発に頼らなくても日本は成長できる』 ダイヤモンド社、2011年、144頁)。
飯田泰之
デフレが縮まっただけであれだけ景気がよくなったということは、おだやかなインフレになったらもっと回復します(勝間和代・宮崎哲弥・飯田泰之 『日本経済復活 一番かんたんな方法』 光文社〈光文社新書〉、2010年、194頁)。

反論

ウォルター・ブロック
その定義上、どケチは商品市場でお金を使うのではなく、資本市場でお金を投資するのでもないから、経済学的には、彼らの存在は通貨の流通量を減らす効果を持つ。市場で購入できる財やサービスの量が一定ならば、価格を決めるもっとも大きな要素は商品と通貨の関係だから、理論的には、どケチがいることによってモノの価格は下がっていく(中略)ケインジアンの屁理屈とは逆に、どケチではないふつうの人々にとって、あらゆるモノやサービスが安価に手に入るというのは大きな利益ではないだろうか(ウォルター・ブロック 『不道徳な経済学: 転売屋は社会に役立つ』 橘玲訳、早川書房〈ハヤカワ文庫NF〉、2020年、188-189頁)。
ウォルター・ブロック
価格の低下が不況を招く、というのも俗説である。二十世紀において、成功した商品の値段はずっと下がりつづけてきた。車やテレビ、コンピュータが最初に登場したときは、その価格は目の玉が飛び出るほどで、とても一般庶民が手を出せる代物ではなかった。技術革新によって値段が下がったことで、ようやく多くの消費者が購入できるようになったのである。言うまでもなく、この価格下落によって不況が引き起こされた、などということはない(ウォルター・ブロック 『不道徳な経済学: 転売屋は社会に役立つ』 橘玲訳、早川書房〈ハヤカワ文庫NF〉、2020年、189頁)。
白川方明
物価下落が起点となって景気を下押しする可能性は小さい(田中秀臣 『デフレ不況 日本銀行の大罪』 朝日新聞出版、2010年、28頁)
清水啓典
物価は貨幣量に比例するが、長期的に貨幣量は成長に影響しないのである。もし仮に貨幣が長期的にも経済を活性化させるのなら、どの国も貨幣を増やすだけで経済成長ができるるので、貧困に悩む国はないことになる(日本経済新聞社編著 『マネーの経済学』 日本経済新聞社〈日経文庫〉、2004年、91頁)。

実質金利と実質賃金

若田部昌澄
とりわけデフレは実質利子率と実質賃金の高騰を生み、企業収益を圧迫する。その結果、企業活動は停滞し、失業は増大する(岩田規久男編著 『昭和恐慌の研究』 東洋経済新報社、2004年、70頁)。
田中秀臣
しかしデフレ不況によって生み出された企業のリストラの要求に対して、既存正社員たちは組合などを通じて交渉力を発揮し、自らの待遇を悪化させるよりも新卒採用を減小させることを企業に要求する。このことは企業が支払う名目賃金を容易に切り下げることができないという「下方硬直性」を生み出してしまう。デフレ不況が深まるほどに名目賃金の下方硬直性(すなわち既存正社員の抵抗)は強まる。このため既存正社員の既得権が強まると同時に膨大な失業者、アルバイト・フリーター労働者層が生み出されてしまう(田中秀臣 『経済政策を歴史に学ぶ』 ソフトバンククリエイティブ〈ソフトバンク新書〉、2006年、23-24頁)。
田中秀臣
たとえば年二-四%程度のマイルドなインフレ状態であれば、社員の昇給に経営者はさほど苦労せずに済むでしょう。ところが、年一-二%のデフレに陥ると、人件費は事実上五%前後も増加してしまうことになります。これは経営者にとって大きな負担になるはずです。仮に年一-二%のデフレに陥ると、人件費は事実上五%前後も増加してしまうことになります。これは経営者にとって大きな負担になるはずです。今まさにデフレの真っ直中にあります。だから各企業とも、リストラを敢行したり、雇用システムそのものを見直さざるを得なくなっているわけです(田中秀臣 『雇用大崩壊 失業率10%時代の到来』 NHK出版〈生活人新書〉、2009年、85頁)。
田中秀臣
現在にようなデフレ不況下では、経営者側にコスト削減のインセンティブが強く働きます。ということは、リストラを実施して人件費を減らす一方、残った人への仕事量を増やしてくる可能性が高いということです。これはつまり、慣行化している「サービス残業」をさらに求めてくるということです。名目賃金が一定で労働時間が増加すれば、時間当たりの名目賃金は減少します(田中秀臣 『雇用大崩壊 失業率10%時代の到来』 NHK出版〈生活人新書〉、2009年、90頁)。

デフレギャップ

田中秀臣
デフレ・ギャップが恒常的に存在することで、失業は増加し、物価水準は減少し、成長率も減少し続けるのである(田中秀臣 『経済論戦の読み方』 講談社〈講談社新書〉、2004年、82頁)。
岩田規久男
他の事情を一定として、総需要が減少すると物価が下落し、国内総生産は減少する。総需要が増加する場合には物価が上昇し、国内総生産は増大する(岩田規久男 『マクロ経済学を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、1996年、26頁)。
岩田規久男
総需要も総供給の増加に追いつくように増えなければ、需要不足から不況になり、その不足が大きくなるにつれて、物価が持続的に低下するデフレ不況に陥る(岩田規久男 『スッキリ!日本経済入門-現代社会を読み解く15の法則』 日本経済新聞社、2003年、236頁)。
田中秀臣
現在の「デフレ不況」とは、総需要の減少によりこのデフレ・ギャップが拡大することで、失業や物価下落が生じている状態と考えていい(田中秀臣 『日本型サラリーマンは復活する』 日本放送出版協会〈NHKブックス〉、2002年、181頁)。
田中秀臣
この総需要の不足、すなわちデフレ・ギャップが解決されない限り、いくら潜在成長率を高めたとしてもデフレも不況も解消できません(田中秀臣 『デフレ不況 日本銀行の大罪』 朝日新聞出版、2010年、175頁)。
岩田規久男
社会全体の総需要は、財政・金融政策によって変化させることができる。この点を明らかにしたのは、ケインズである(岩田規久男 『マクロ経済学を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、1996年、38頁)。
田中秀臣
デフレ・ギャップが存在すれば、総需要を喚起する政策を用いて失業の解消を図る必要がある(田中秀臣 『経済論戦の読み方』 講談社〈講談社新書〉、2004年、82頁)。
野口旭
総需要を完全雇用総供給に一致させるとは、GDPギャップをゼロにするということです。それが、マクロ経済政策の目的です。というのは、GDPギャップをゼロにするということは、失業率を自然失業率に近づけつつ、インフレ率を適正な水準に安定化させるということにほかならないからです(野口旭 『ゼロからわかる経済の基礎』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、180頁)。

デフレスパイラル

松原聡
経済活動の規模が縮小するとともに、物価が継続的に下がっていく現象を「デフレ・スパイラル」といいます(松原聡編著 『日本の経済のしくみ (図解雑学)』 ナツメ社、2008年、34頁)。
アービング・フィッシャー
たとえば、「デフレ・スパイラル」を理論的に究明した最初の経済学者でもあるアービング・フィッシャーとE・L・フィスクの共著『如何に生活すべき乎』の訳業は注目すべきものである(田中秀臣 『日本型サラリーマンは復活する』 日本放送出版協会〈NHKブックス〉、2002年、138頁)。
岩田規久男
様々なモノやサービスの価格が低下すると、企業収益が圧迫されるため、企業はできるだけ支出を減らして経費を節約しようとする。これにより、企業のモノやサービスに対する需要が減るため、価格はさらに低下し、それが再び企業収益を圧迫し、設備投資を抑制する。リストラなどにより雇用が減ると、家計の所得も減少するため、消費も減少する。物価下落により実質金利が上昇し、企業の借入金返済負担が増大するので、企業の資金調達能力と危険負担能力は低下する。この結果、投資はさらに減少する。デフレスパイラルとは、以上のような一連の経済活動の縮小により、物価の下落と景気の悪化に歯止めがきかなくなる状況をいう(日本経済新聞社編著 『やさしい経済学』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、155頁)。
大和総研
GDPデフレーターが下落する一方で実質GDP増加している場合は、デフレとはいえますが、デフレスパイラルとはいえません。物価の下落が、常にデフレスパイラルに結びつくとは限りません。(中略)デフレスパイラルは物価下落の悪影響を鮮明に示す1つの現象ですが、物価下落が常に問題となるわけではありません(大和総研 『最新版 入門の入門 経済のしくみ-見る・読む・わかる』 日本実業出版社・第4版、2002年、97頁)。

デフレ下での成長

野口旭
デフレは本来その国がもっている潜在成長率や適正な失業率の水準から現実のそれを遠ざけてしまうということが普遍的にいえます。その意味では、デフレに適応せよなどというのは、愚の骨頂としかいいようがない(田中秀臣・野口旭・若田部昌澄編著 『エコノミスト・ミシュラン』 太田出版、2003年、54頁)。
若田部昌澄
通常はデフレと不況はセットになっています(田中秀臣・野口旭・若田部昌澄編著 『エコノミスト・ミシュラン』 太田出版、2003年、50頁)。
岩田規久男
インフレは国内総生産の増大を、デフレは国内総生産の縮小を伴うことは実際に少なくもない。そのため、インフレは好景気と結びつきやすく、デフレは不景気に結びつきやすい。しかしいつまでもインフレと好景気が、デフレと不景気が結びつくわけではない(岩田規久男 『マクロ経済学を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、1996年、28頁)。
岩田規久男
デフレ下でも景気循環がなくなるわけではありません(岩田規久男 『日本経済にいま何が起きているのか』 東洋経済新報社、2005年、187頁)。
岩田規久男
輸入の増加は短期的には景気を悪化させるが、長期的には次のような望ましい効果を発揮する。すなわち、安いモノ(原材料や消費財など)やより安くモノを生産できる機械などが輸入されると、企業は長期的には、以前よりも低い価格でモノを供給するようになる。これにより、長期的には物価が低下するので、人々や企業の購買力は増大する。そのため、短期的に減少した消費などの総需要は、長期的には増大に転じ、それに伴って実質GDPも拡大していく(岩田規久男 『マクロ経済学を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、1996年、60-61頁)。
岩田規久男
デフレとデフレ予想とを区別することが重要です。マクロ経済のパフォーマンスに影響を与えるのは、デフレではなくデフレ予想だからです(岩田規久男 『日本経済にいま何が起きているのか』 東洋経済新報社、2005年、187頁)。
大和総研
物価の下落率が同じ場合でも、それが需要の減少によって生じているケースと、生産性の向上など供給サイドの要因によって生じているケースとでは、意味合いが異なってきます(大和総研 『最新版 入門の入門 経済のしくみ-見る・読む・わかる』 日本実業出版社・第4版、2002年、94頁)。
浜田宏一
本当に価格が伸縮的な経済であれば、実物景気循環論が言うようにデフレになっても構わないわけですが、やはり賃金や物価は硬直的だから、デフレになると実質賃金が上がってしまいます。サプライサイドで見れば、つまり企業の立場から見れば、実質賃金んあるいはコストが上がってしまうので、これ以上雇えない、生産できないということになる。そこに問題がある。一-二%程度のインフレが起こって実質賃金が目減りすれば、企業が稼働時間を増やし、パートを増やし、若年労働者その他をもっと雇えるようになる。新たな雇用が増えて国民のパイが増えれば、いずれそれが国民全体に回ってきますから、今度は総需要増加の効果もあって国民全体のパイが増えて、またそれが需要を生むような好循環になる(田中秀臣編著 『日本経済は復活するか』 藤原書店、2013年、51-52頁)。
若田部昌澄
1873年から1896年までイギリス、ドイツ、フランス、アメリカなどの一定の国でデフレがつづいていましたが、なおかつ、実質でみると経済もプラス成長していた(田中秀臣・野口旭・若田部昌澄編著 『エコノミスト・ミシュラン』 太田出版、2003年、48頁)。
野口旭
デフレはほとんどの場合において、実物経済が不況状態に陥れるわけです。これは歴史的にはほぼ当てはまる。ただ、かなり例外的にみえる状況がないわけではない。そのひとつが先ほどの「ビクトリア均衡」といわれる時代と、もうひとつが少し前までの中国のデフレ状況です(田中秀臣・野口旭・若田部昌澄編著 『エコノミスト・ミシュラン』 太田出版、2003年、53頁)。
若田部昌澄
ただ「ビクトリア均衡」の時代に関しても、それほどいい状態ではなかったのも事実です。たとえばイギリスは大不況といわないまでも、相当停滞していて、資本は海外に投資され、移民も大量に発生しています。そしてそもそもどうしてデフレになったのかを考えなくてはならない。実際にデフレが止まったのは1896年ですが、その理由は金の供給が増えたからです。当時は金本位制ですから、基本的に金の保有量が貨幣量ということになります。その後、貨幣量が増えたことで、世界的に成長率は格段に伸びました。逆にいえば、デフレさえ起きていなければ、あれだけ技術革新が起きていた時代だから、本来はもっと成長を遂げていたはずです。(中略)この時代のデフレは「グローバル」ではまったくなかった。そしてこの時期に日本が経験したのは「企業勃興」と呼ばれるような、工業化の基礎を築くような爆発的好況です(田中秀臣・野口旭・若田部昌澄編著 『エコノミスト・ミシュラン』 太田出版、2003年、53頁)
若田部昌澄
それから19世紀後半というのは、デフレだったにもかかわらず経済成長していた時代でもあった。(中略)デフレが問題になる理由のひとつに、名目での給料とかが下がらないから、デフレになったときには実質で見た給料が高くなって、企業の収益が圧迫されるということがある。たとえば現在だったら、20万円の給料がデフレだからという理由ですぐに15万円に切下げられるなんてことはまともな雇用環境ではありえないでしょう。まず契約としてできないし、労働組合も黙っちゃいない。でも第一次大不況当時というのは、それができてしまった時代だった。まだ民主主義も揺籃期だしね。そのおかげで、需要が縮小するデフレ下でも経済成長が維持できたんじゃないかというのがひとつの考え方ではある(若田部昌澄・栗原裕一郎 『本当の経済の話をしよう』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2012年、193-194頁)。
若田部昌澄
このビクトリア朝期のデフレがどのような原因で終わったかについてはなんら言及がない。その原因は金産出量の増大である。そもそもデフレとなったのは金本位制のもとで成長する経済に対して貨幣供給量が少なかったからである(田中秀臣・野口旭・若田部昌澄編著 『エコノミスト・ミシュラン』 太田出版、2003年、152頁)。
田中秀臣、安達誠司
デフレは経済全体の景況が悪いということである。少なくとも企業業績が悪化する可能性が、マイルドなインフレの場合よりも数段も大きい(田中秀臣・安達誠司 『平成大停滞と昭和恐慌〜プラクティカル経済学入門』NHK出版〈NHKブックス〉、2003年、150頁)。
田中秀臣
デフレというのは物価が継続的に下落し、また人々がデフレを予想することで、経済全体の総需要(消費や投資)を低迷させるためである。このデフレを解消すれば、経済成長の伸びしろはかなりある(飯田泰之・田中秀臣・麻木久仁子 『「30万人都市」が日本を救う! 〔中国版「ブラックマンデー」と日本経済〕』 藤原書店、2015年、33頁)。

対策

田中秀臣
潜在的GDPより現実のGDPが低い場合、つまりデフレギャップがあるときには、普通の経済学の発想では、デフレギャップを埋めるために総需要の不足を解消しようとします(高橋洋一・田中秀臣 『日本経済再起動』 かや書房、2020年、172頁)。
清水啓典
長期的にデフレも基本的には貨幣的現象だといわれる(日本経済新聞社編著 『マネーの経済学』 日本経済新聞社〈日経文庫〉、2004年、94頁)。
岩田規久男
貨幣供給量の増大による総需要の増大が総供給の増加を上回る状態が続くと、持続的な物価上昇というインフレーションが始まる。つまり過大な貨幣供給量の増大はインフレにつながるのである。(中略)貨幣供給量の持続的な減少が続くと、総供給が総需要を上回る状態が続く。このような超過供給の状態が続くと、持続的な低下が生ずるだろう。この持続的な物価の低下をデフレという(岩田規久男 『経済学を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、1994年、196-197頁)。
若田部昌澄
需給ギャップによる説明と貨幣による説明は、決して相反するものではありません。貨幣が足りないというのは、モノが余っているということです。「貨幣が足りない」というのと「モノが余っていて需給ギャップがある」というのは、同じことを別の言い方で説明しているだけだといえます(若田部昌澄 『もうダマされないための経済学講義』 光文社〈光文社新書〉、2012年、164頁)。
FRB
この報告書は、「デフレを事前に予測することは不可能であり、デフレのリスクがあればインフレを恐れず、従来の枠組みを超えた政策で対応すべき」と提言しています(田中秀臣 『デフレ不況 日本銀行の大罪』 朝日新聞出版、2010年、99-100頁)。
田中秀臣、安達誠司
デフレ克服はきわめて短期間で実現可能なものだからである。一九三〇年代の日米の物価水準をみると、物価水準の底から対前年比+-〇%に相当する水準に上昇するまでに要した期間は、日本で一一カ月、米国で7カ月と、両国とも1年かかっていない(田中秀臣・安達誠司 『平成大停滞と昭和恐慌〜プラクティカル経済学入門』NHK出版〈NHKブックス〉、2003年、154頁)。

対策についての議論

田中秀臣
物価水準がマイナスをつづけるの2年間待ってから、さあデフレ対策をやりましょうなんていう本末転倒な話になる(田中秀臣・野口旭・若田部昌澄編著 『エコノミスト・ミシュラン』 太田出版、2003年、51頁)。
若田部昌澄
話を簡単にするために、この世には、貨幣の市場と、モノやサービスの市場しか存在しないということにしよう。貨幣に対する需要が超過しているとき、モノやサービスの市場は超過供給(需要不足)になっているはずだよね。(中略)この状態がデフレなんだね(若田部昌澄・栗原裕一郎 『本当の経済の話をしよう』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2012年、182-183頁)。
ハイマン・ミンスキー
デフレを抑止する機能をふたつ特定しました。ひつつは、中央銀行の機能です。(中略)中央銀行が適時に資金を市場に供給するようになり、貨幣不足によるデフレを阻止できるようになったのです。デフレを抑止するもうひとつの機能として、ミンスキーが特定したのは、政府支出でした。(中略)ミンスキーは、政府支出の大きさがデフレを起こしにくくしているのだと考えたのです(中野剛志 『レジーム・チェンジ-恐慌を突破する逆転の発想』 NHK出版〈NHK出版新書〉、2012年、147-148頁)。
宮尾龍蔵
インフレ誘導による過剰債務企業への援助は利潤を生まない非効率企業の整理・淘汰を再び先送りする。デフレ克服に必要なのは、企業の過剰供給解消というサプライサイド政策だ(田中秀臣・安達誠司 『平成大停滞と昭和恐慌〜プラクティカル経済学入門』NHK出版〈NHKブックス〉、2003年、112頁)
中野剛志
非効率な企業や人材が多く存在するから、国民経済全体が非効率なのではなく、デフレだから非効率なのです。言い換えれば、企業や労働者が効率的であるかどうかは、彼らの生産能力が高いか否かではなく、十分な需要があるか否かによって決まるというわけです。「非効率部門を淘汰せよ」と言う論者は、原因と結果を取り違えているのです(中野剛志 『レジーム・チェンジ-恐慌を突破する逆転の発想』 NHK出版〈NHK出版新書〉、2012年、81頁)。
インフレ期待の醸成
若田部昌澄
サージェントによれば、政府の戦略あるいはレジームに変更があれば、民間経済主体は必ず、それに対応して、消費率、投資率、ポートフォリオなどを選択するための戦略ないしルールを変更すると考えられる。というのは、民間経済主体にとっての最適な選択は、政策当局が将来的にインフレを許容するような行動をすると予想されるか、あるいはそれを許容しないと予想されるかで、消費、貯蓄、投資等に関する企業や家計の意思決定は、大きく異なってくる(岩田規久男編著 『昭和恐慌の研究』 東洋経済新報社、2004年、30頁)。
飯田泰之、岡田靖
こうしたレジーム転換に伴う行動の変化を検出させるためには、重要な政策転換が民間経済主体の予想形成に明確な変化を引き起こしていることを示す必要がある。昭和恐慌が、レジーム転換の結果であるなら、「金本位制からの離脱と、それによって可能となるマクロ経済政策の転換」がそろった段階で、予想インフレ率の明確な変動が検出されるはずである。これが、予想インフレ率の推計が、政策レジームの変化を検出するために重要な役割を果たすと考えられる理由である(岩田規久男編著 『昭和恐慌の研究』 東洋経済新報社、2004年、188-189頁)。
円居総一
貨幣とモノとの関係においては、貨幣の価値が大幅に上昇(貨幣量が)することにほかならないから、デフレは本質的に貨幣的現象として捉えられる。その解消策が、第一に、貨幣供給の拡大によるマイナスのインフレ期待の払拭となるのは、当然の話でもあろう(円居総一 『原発に頼らなくても日本は成長できる』 ダイヤモンド社、2011年、152頁)。
岩田規久男
デフレ予想が定着している限り、予想実質金利の上昇と資産価格の低下により、経済はいつまでたってもデフレから脱却できない。こうして、デフレ予想が定着すると、設備投資が停滞するため潜在成長率も低下するが、実際の成長率はデフレ・ギャップの存在のために、その低下した潜在成長率すら実現できず、失業率は上昇する。このように考えると、昭和恐慌からの脱出の歴史から学ぶべき教訓の第1は、デフレ下では、まず、デフレ予想を払拭してインフレ予想の形成を促す経済政策が不可欠だ、ということである(岩田規久男編著 『昭和恐慌の研究』 東洋経済新報社、2004年、281頁)。
根岸隆
将来は物・サービスの価格がさらに下落するだろうとのデフレ期待が強まれば、投機的動機から貨幣の需要が増え、中央銀行がいくら貨幣の供給を増やしても、金利は下がらない。いわゆる流動性の罠に陥るのである(中略)ケインズが主張したように、期待の重要性はいくら強調しても強調しすぎることはないのである(日本経済新聞社編著 『マネーの経済学』 日本経済新聞社〈日経文庫〉、2004年、42頁)。
田中秀臣、安達誠司
デフレ脱出は、デフレ・ギャップの縮小よりも、デフレ予想の転換がより重要であることがわかる。つまりデフレ・ギャップという溝を埋めなくとも、人々の期待が反転するだけで景気回復が見込めるわけである(田中秀臣・安達誠司 『平成大停滞と昭和恐慌〜プラクティカル経済学入門』NHK出版〈NHKブックス〉、2003年、90頁)。
飯田泰之
ユニクロやマクドナルドが値下げをすると、確かに「値段の平均」である物価は下がる。物価が下がれば確かにデフレだ((飯田泰之 『世界一わかりやすい 経済の教室』 中経出版〈中経の文庫〉、2013年、218頁)。
飯田泰之
ユニクロもマクドナルドも自由な経済取引をしているだけ。だけど、それがデフレという深刻な事態をを引き起こしている。(中略)仮に、ユニクロやマクドナルドの値下げを止めるために政府にできることがあるとするならば、「値下げが損、値上げが得という経済環境・インセンティブを作ってあげる」ことだよね。その「値下げが損な経済環境」とは、しっかり給料をもらえ、将来不安がなく安心して消費をできる社会だ。みんな「安ければよい」とは考えなくなる。それが、緩やかなインフレの状態なんだ((飯田泰之 『世界一わかりやすい 経済の教室』 中経出版〈中経の文庫〉、2013年、220頁)。
金融政策
清水啓典
デフレの解消には、こうした流通速度の低下を補って余りある貨幣量の増加が必要だとの声が増えている(日本経済新聞社編著 『マネーの経済学』 日本経済新聞社〈日経文庫〉、2004年、95頁)。
岩田規久男
物価上昇率と貨幣供給(マネーサプライ)の増加率との間には高い相関関係が存在する(岩田規久男 『マクロ経済学を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、1996年、163頁)。
田中秀臣
たとえ名目金利がゼロであっても、中央銀行がマネーサプライ(貨幣供給量)を増加させる必死の努力を通じてインフレ期待を作り出すことができれば、それまでデフレ期待の下で高止まりしていた実質金利が低下し、総需要を刺激することになるのです(田中秀臣 『デフレ不況 日本銀行の大罪』 朝日新聞出版、2010年、79-80頁)。
白川方明
このとき同総裁はアメリカのFRBの政策にも言及し「FRBは流動性の供給を大きく拡大しているが、にもかかわらず物価を押し上げる力は乏しいのではないか」と述べています。つまり「FRBの政策はデフレ対策としてあまり効果を上げていない」と評価したわけです(田中秀臣 『デフレ不況 日本銀行の大罪』 朝日新聞出版、2010年、29頁)
財政政策
中野剛志
議論している公共事業の意義は、建設された土木施設の有効利用についてではありません。あくまで、土木施設の建設という経済行為そのものが、需要不足を解消し、物価の下落を止めるというところにあります。(中略)デフレ時には、タヌキや熊しか通らない道路のような、まったく無駄な施設を造る公共事業であっても、デフレ・ギャップを埋めて、恐ろしいデフレを止めるという意味では有効です(中野剛志 『レジーム・チェンジ-恐慌を突破する逆転の発想』 NHK出版〈NHK出版新書〉、2012年、150-151頁)。
中野剛志
もちろん、誤解を避けるために言えば、無駄な施設を造るよりも、必要な施設を造った方が良いのは間違いありません。それでも、デフレ時には、穴を掘って埋めるだけの公共投資であっても、全くやらないよりははるかにましなのです(中野剛志 『レジーム・チェンジ-恐慌を突破する逆転の発想』 NHK出版〈NHK出版新書〉、2012年、152頁)。
岩田規久男
デフレが続くかぎり、政府支出を減らしたり増税したりすれば、かえってデフレを加速してしまいますから、政府支出は減らさず、支出の中身を需要を増やす効果の大きい分野に振り分けるといった考慮が必要です(岩田規久男 『日本経済にいま何が起きているのか』 東洋経済新報社、2005年、151頁)。
賃金の引き上げ
若田部昌澄
デフレで実質賃金が上がっているところに、さらに最低賃金を上げたら、雇うことに慎重になってしまいます。(中略)おそらく最低賃金を上げるぐらいでは、例えばデフレ不況を解消するほどの需要にはならないのではないか。悪い効果のほうが大きいわけです(若田部昌澄 『もうダマされないための経済学講義』 光文社〈光文社新書〉、2012年、202頁)。
野口旭
インフレのときには物価以上に賃金が上がるケースが多いので、必ずしもインフレは困りものと断定してしまうことはできません(野口旭 『「経済のしくみ」がすんなりわかる講座』 ナツメ社、2003年、94頁)。
野口旭
インフレと賃金の上昇は同時に起こるわけではなく、賃金の上昇が少し遅れるというタイムラグがあるのが一般的です(野口旭 『「経済のしくみ」がすんなりわかる講座』 ナツメ社、2003年、95頁)。
岩田規久男
名目賃金率とインフレ率が同時に同じスピードで上昇するようになると、もはや実質賃金率が上昇しなくなるため、いったん増加した労働供給量は減少に転じ、統計的には失業率が上昇する。かくて、失業率が上昇しているのにインフレ率も上昇しているというスタグフレーションが発生する(岩田規久男 『マクロ経済学を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、1996年、167頁)。
スタンプ紙幣
シルビオ・ゲゼル
ゲゼルはデフレから脱却する手段として、お金に賞味期限をつけるという画期的な方法を提案しました。(中略)「スタンプ紙幣」は紙幣に賞味期限のついたスタンプを押して使用します。賞味期限があるので、誰も必要以上にお金を貯め込むことはしません。世の中でお金がたくさん使われて、その結果経済活動の活性化と適度なインフレーションがもたらされると考えられるのです(門倉貴史 『必ず誰かに話したくなる経済学』 PHP研究所、2016年、129頁)。

デフレの歴史

若田部昌澄
古代中国もデフレの恐怖が蔓延していて、『漢書』という2000年ほど前の経済政策書をみると、デフレがいかに民の生活を阻害するかが記してある(田中秀臣・野口旭・若田部昌澄編 『エコノミスト・ミシュラン』 太田出版、2003年、54頁)。
若田部昌澄
欧米諸国では一八七三年から一八九六年まで、物価が下落傾向にありました。(中略)金本位制の国では貴重な金の供給量が制約されるので、貨幣の供給量も制限されます。現実には、当時のアメリカは年平均一・五%のデフレです(若田部昌澄 『もうダマされないための経済学講義』 光文社〈光文社新書〉、2012年、148、158頁)。
若田部昌澄
アメリカでは、ブライアンが一八九六年、一九〇〇年の大統領選挙で負けて、同時にデフレも終息に向かいます。一九〇〇年時点では、ほとんどデフレも終わりにさしかかっていました(若田部昌澄 『もうダマされないための経済学講義』 光文社〈光文社新書〉、2012年、160頁)。
田中秀臣
第1次世界大戦後になると、金本位制に復帰した国のほとんどが「金本位制の足かせ」と言われるデフレ不況に直面した(田中秀臣 『ベン・バーナンキ 世界経済の新皇帝』 講談社〈講談社BIZ〉、2006年、138頁)。
ベン・バーナンキ
現FRB議長のベン・バーナンキ(元プリンストン大学教授)の研究で明らかになったんだけど、一言で言うと、金本位制を早く捨てた国ほど、ダメージも軽くデフレからの立ち直りも早かったんだね。バーナンキの研究を基に整理すると、金本位制への対応によって、物価の変化は四つのグループに分けることができる。金本位制に復帰していなかったか、いち早く1931年までに離脱したスペイン、オーストリア、ニュージーランドは物価の下落も軽微で回復も早かった。1931年に離脱した日本、イギリス、ドイツなど傷は比較的軽微だった。1932年から1935年まで離脱が遅れたアメリカ、イタリア、ベルギー、ルーマニアではデフレが長引いた。アメリカでは4年近くもデフレが終息しなかったんだ。1936年でも金本位制にしがみついていたフランス、オランダ、ポーランドでは、景気が底を打ったのは1935年のことで、社会もかなり不安定な状態になってしまった(若田部昌澄・栗原裕一郎 『本当の経済の話をしよう』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2012年、197-198頁)。
田村秀男
経済全体の総合価格指数である「デフレーター」の推移を追うと、大恐慌の米国は二九年から四年間で二五%下落したあと、一四年間もかかって四三年に二九年当時の水準に戻った(麻木久仁子・田村秀男・田中秀臣 『日本建替論 〔100兆円の余剰資金を動員せよ!〕』 藤原書店、2012年、210頁)。
加藤寛
地域通貨は特定地域内で循環流通する通貨である。オーストリアのヴェルグルという町で一九三二年、デフレ対策としてこの通貨が導入され画期的効果をあげたという歴史的事実がある。(中略)他地域の模範として定着するはずであったが、中央通貨令によって禁止された(日本経済新聞社編著 『マネーの経済学』 日本経済新聞社〈日経文庫〉、2004年、211-212頁)。
森永卓郎
アメリカの二〇〇一年一〇-一二月期のGDPデフレータ(GDP全体の物価)は、ほぼ五〇年ぶりにマイナスになりました(森永卓郎 『日本経済50の大疑問』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、27頁)。
国際通貨基金(IMF)
国際通貨基金(IMF)によれば、2007年のチャドの消費者物価上昇率は、マイナス8.8%で、正真正銘デフレである(ただし、00-07年の平均インフレ率は3%程度)(原田泰・大和総研 『新社会人に効く日本経済入門』 毎日新聞社〈毎日ビジネスブックス〉、2009年、137頁)。

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