第13話





9-2 春希 開桜社前 1/11 火曜日 



麻理さんに仕事の終わりと帰りの挨拶を済ませると、俺は急ぎビルをでる。
留守電を確認すると、千晶からいつでもいいから電話をくれとのこと。
要件は既にメールでも伝えてあるので、メールでもいいかなと考えはしたが、
電話が欲しいとのリクエストがあるのならば、電話がいいのだろう。

千晶「もしも〜し、春希。もしかして、私からの電話無視してない?
   ちっとも電話に出てくれないじゃない」

開口一番文句とは。しかも、この前俺が言ったことさえも忘れてるし。

春希「前にも言ったよな。電話に出られない状況だから、電話に出ないんだ。
   電話に出られるんなら、すぐに出てるさ」

千晶「そう? 私からの電話に反応して、すぐに出るって、
   春希にもかわいいところがあるじゃない」

あぁ、もうっ。ちっとも話しが進まない。いきなり話の脱線とは、恐るべし。

春希「もう本題に入っていいか?」

ここは心を鬼にして、話を切り出すべきだな。
俺は、感情を込めずに、事務的に切り返した。

千晶「あ、いいよ」

ほんとめげない奴。厭味も通じないのかよ。って、わかってて受け流している節もあるか。

春希「コンサートの件だけど、ピアニスト見つかったぞ」

千晶「まじで? 冬馬かずさの出演交渉成功したんだ?」

春希「冬馬かずさ本人は出ないよ。でも、音源だけは確保した」

千晶「えらいっ、春希。音源だけでも大したものだよ。
   これでコンサートも無事出演できるね」

春希「ギターとピアノだけだけどな。ヴォーカルの方は、どうなったんだよ?」

千晶「ああ、ヴォーカルねぇ・・・・・・」

こいつ、俺が聞かなきゃ、すっとぼけようとしたな。

春希「どうなってるんだ? ヴォーカルがいないだなんて、ライブ成立しないぞ」

千晶「大丈夫だって。あと、もうちょいだから。もう少しで、いい感触掴めそうでさ」

春希「そうか? だったら、お前を信用して待つとするよ」

千晶「ありがと、春希。愛してるぅ」

春希「やめろ。気軽に愛してるなんて言うべきじゃない」

千晶「えぇ〜。・・・・・・私は、本気と思ってもらっても、いいんだけど」

春希「だったら、なおさらやめろ」

一瞬垣間見た千晶の女の顔。声だけなのに、妙に現実味を帯びた声に、背筋が凍る。
女を感じさせない女友達だったはずなのに、一瞬だがそれを忘れるほど
俺に近づいてきてる感じがして、思わず飛びのきそうになってしまう。

千晶「ま、いっか。でね、その音源って今から聞きたいんだけど」

春希「悪い。これからギターの練習なんだ。明日は大学行くし、講義のあとでいいか?」

千晶「それでいいよ。そういえば、春希、今日大学来てなかったでしょ」

春希「お前も大学行ってないだろ」

千晶「え? 私は春希と違ってまじめ君だから、大学に行ってるって」

春希「俺が知っている和泉千晶は、まじめからは遠く離れた存在なんだけどな。
   それに、お前が大学に来てないから、明日は大学に来るように伝えてくれって
   メール来てたんだけどな」

千晶「え? それは・・・・・その」

春希「お前は、課題も出していないし、このままだと進級も危ういぞ。
   明日俺も一緒に行ってやるから、明日はちゃんと大学こいよ」

千晶「うぅ〜ん・・・・・・。こっちもちょっと忙しくてさ」

春希「できる限り俺もサポートするから、一緒に進級しようぜ」

千晶「そう?」

俺がサポートを申し出た途端に明るい声を出しやがって。
してやったり顔をしている千晶が目に浮かぶよ、まったく。

千晶「だったら、一緒に進級してあげようかな」

春希「あげようかなじゃない。進級するのは、自分のためだろ」

千晶「今日はお説教はいいからさ。・・・・・・ま、いっか。進級するから、
   講義の後、冬馬かずさの音源聴かせてね」

春希「講義の後、俺の家で聴かせてやるよ」

千晶「じゃあ、カレーでいいから」

春希「は?」

千晶「だから、食事はカレーでもいいって、言ってるの」

春希「だから、なんで音源聴くのが、カレーになるんだよ」

千晶「それは、春希だから?」

俺を何だと思ってるんだ。俺は、千晶の飼い主ではない。
そもそも俺が飼い主だったら、しっかり勉強させて、進級が危ういとか
そういう状況にはさせやしない。毎日しっかり大学で勉強させて、
課題も提出期限ぎりぎりではなくて、余裕を持って提出させるはず。

千晶「お腹がすいてたら、冬馬かずさの演奏に集中できないし、
   これからのことだって、ちゃんと考えられなくなるでしょ。
   やっぱ、腹ごしらえして、脳にしっかり栄養与えないと」

春希「あぁ、もう。わかったから、カレー用意しておくよ」

千晶に甘いってわかってるけど、いつの間にか千晶のペースにさせられてしまう。

千晶「やった。そうこなくっちゃ。春希、愛してるよぉ」

春希「はい、はい」

今度の愛してるは、いつもの女を感じさせない千晶でほっとしている自分がいる。
もしかしたら、さっきの千晶は聞き違いかもしれないと思えてもくる。
だけど、聞き違いなんて、あろうはずもないくらい、
しっかりと俺の脳には千晶の声がこびり付いていた。










9-3 春希 春希マンション 1/11 火曜日 





教授の元に千晶を連行し、長々とためになる話をしてくれたというのに、
千晶はすでに教授の努力を忘れ去っている。
今千晶が夢中になっているのは、大盛りによそわれたカレーライス。
俺が大学に行く前に作っておいたものだが、このままの勢いでいくと
二杯目に突入しそうだ。

春希「演奏聴かなくていいのか?」

千晶「ん?」

俺に呼ばれた千晶は、スプーンを置き、一口水を飲んでから、俺に向き合う。
話しながら答えないところをみると、存外育ちがいいのかもしれない。
でも、・・・・・・・今までもそうだったか?

千晶「もうちょっとで食べ終わるから、あと少しだけ待ってよ。
   しっかり栄養取ってからじゃないと、演奏に集中できないでしょ」

春希「まあ、時間もあるし、ゆっくり食べろよ」

現在午後3時。どう多く時間をみつくろっても、ギターの練習までには聴き終わる。
聴かせる部分は『届かない恋』だけでいいんだし。
ほかにも何曲か収録されてはいたけど、それは誰にも聴かせたくはない。
曜子さんと一緒に聴いたというのに、人目を気にせず号泣してしまった。
心を鷲掴みにされる感覚というのだろうか。
丸裸のかずさが俺の心に入り込み、それと引き換えに俺の心を全てもっていかれる。
気がついたときには魅了されていて、心地よい脱力感が俺を支配していた。

千晶は、返事の代りにスプーンを持ち上げ、食事に取り掛かる。
俺は、そんな千晶の食事の風景を眺めつつ、ほんのひと時の仮眠へと落ちていった。

千晶「春希。春希ったら。起きてよ」

春希「ごめん。寝てた?」

千晶「うん。気持ちよさそうに熟睡してた」

春希「まじで? 今何時?」

掛け時計をみると、午後3時30分。あれから30分しか経ってはいない。

春希「少ししか寝てないじゃないか」

千晶「そう? でも、いくら呼んでも起きないから、DVDの準備しておいたよ。
   これでいいんだよね?」

スプーンではなく、TVのリモコンをもつ千晶は、再生ボタンを押す。
TV画面には、色あせないかずさが演奏に入ろうとしていた。
演奏が始まると、千晶の顔色が変わる。今まで見たことがない表情に鳥肌がたつ。
かずさの演奏に触発された部分もあるが、俺の視線はかずさではなく、
千晶に注がれている。別に、女としての千晶に興味があったのではない。
千晶の圧倒的な存在感が俺の目を引きつけてしまったのだ。
けれど、得体のしれない存在であるはずなのに、妙に引き付けられ、
そして、どこか懐かしい感じを醸し出していた。

千晶「もう一回見ていい?」

演奏が終わると、千晶は俺の返事を聞く前に、最初から聴きなおす。
俺もアンコールを断るつもりはなかったので、黙って千晶を見続ける。
いや、まだ千晶を見ていることができることに感謝さえしていた。
もう少しで何か分かりそうなのに、掴むことができない。
千晶の目線。瞬き。呼吸したときの胸の動き。ピアノに合わせて揺れ動く肩や
なめらかに踊る指先。
あと少し。あともう少しで、なにかが・・・・・・・・・。

千晶「ありがと、春希。これでいけるって・・・・・って、春希?」

突然目の前に俺を覗き込む千晶を認識して、思わず後ろに倒れそうになる。
どうにか片手で支えて難を逃れることができたけれど、
面白そうに俺を見つめる千晶に、もう少しで掴めそうだった感覚が霧散してしまった。

春希「もういいのか?」

千晶「うん。でも、これのコピー貰えるんだよね? もう一度聴きたいし、
   ヴォーカルの子にも必要だしさ」

春希「それは構わないけど、CDの方だけな。映像が入ってるDVDは遠慮してくれ。
   もう一度見たいんなら、俺のところにきたらいつでもみせてやるからさ」

千晶「ふぅ〜ん。自分の大切な彼女は、誰にも見せたくないってことかな」

春希「誰にもって、お前に見せているだろ。・・・・・・・・、まあ、
   外に出したくないっていうのもあるかもな。
   CDの方も、ヴォーカルの子以外、誰にも渡すなよ。コピーは厳禁だからな。
   お前を信用して渡してるんだから、頼むな」

千晶「そこまで言われちゃ、春希の信用に応えないとね。
   でも、ライブの時、DVDの映像もあったほうが盛り上がるんだけどなぁ」

春希「そりゃ今話題の冬馬かずさが出てきたら、盛り上がるさ。
   でもさ、冬馬かずさという名前で聴いて欲しくないんだ。
   冬馬かずさの演奏そのものを聴いて欲しいのかもな」

千晶「そっか。じゃあ、もし観客が冬馬かずさの演奏そのものが聴きたいっていったら
   DVDの映像も流してもいいってこと?」

春希「そうなるかな。そんなこと無理だろうけどさ。もしできたのなら、
   流してもいいよ。ま、仮定の話は置いておいて、ベースやドラムの方
   なんとかしないか?」

千晶「え? いらないでしょ」

春希「ピアノとギターだけでやるつもりなのか?」

とんでもない提案に俺の声も大きくなってしまう。
だって、かずさのピアノはともかく、その相棒が俺のギターだけって、
釣り合いがとれないだろ。

千晶「そのつもり。というか、前から考えてたけど、今日冬馬かずさの演奏聴いて
   確信した。だって、冬馬かずさは、北原春希しかみてないでしょ。
   だったら、ベースやドラムなんて雑音にしかならないって。
   ううん。もしかしたら、ヴォーカルさえもいらないのかもしれないけど・・・・・・」

千晶の鋭すぎる指摘に、言葉を失う。
たしかに、かずさの演奏は他の音色を寄せ付けない。
かずさのピアノそのもので、完成された曲を形作っている。
でも、うぬぼれかもしれないけど、
仮にピアノの音色に申し訳程度に寄り添うことができる音色があるとしたら、
俺のギターだけかもしれないって、思ってしまった。
だって、かずさが俺を呼んでいる気がしたから。
俺の中に入り込んだかずさが、俺にギターを弾いてくれって呼びかかけていたから。

春希「千晶がそうしたいんなら、それでいいんじゃないか。
   俺は雇われの身だし、それに、俺やヴォーカルがいなくても
   ピアノだけでも観客を沸かせられる気もするしな」

千晶「そだね。圧倒的すぎるかも。下手なヴォーカル連れてきたら、
   あっという間にのまれるね」

春希「なあ、ヴォーカルの子は、本当に大丈夫なのか?」

千晶「大丈夫だって。これ聴いたら、きっとうまくいくから」

春希「千晶が大丈夫っていうなら、信じるよ」

千晶「じゃあさ、カレーもう一杯おかわりしていい?」

元気いっぱいに空の皿を突きだす千晶に、俺は苦笑いを浮かべ、受け取るのであった。
本当に大丈夫なのか?
大丈夫だと思うんだけど、なんか心配になってしまうのが千晶の特性かもな。
俺は、もう一皿棚からとりだし、自分の分のカレーをよそって、
夜からの練習に備えることにした。

春希「そうだ。忘れるところだった。千晶に頼みがあったんだ」

千晶「ん?」

千晶は、カレーをパクつきながら俺を見つめてくる。

千晶「なぁに?」

春希「話す時くらい、食べるのはよせって」

千晶「だって、美味しいんだもの」

春希「すぐに終わるから、ちょっとくらいいいだろ」

千晶「春希がそこまで言うんなら」

千晶は、いやいやスプーンを置き、豪快にコップの水を飲み干す。
そして、水のお代わりとばかりに俺にコップを差し出す。
俺は、コップを受け取り、水を入れに行くついでに、自分の要件を千晶に伝える。

春希「ライブのチケットなんだけどさ、4枚手に入らないか?
   どうしても欲しいんだけど、もう手に入らないらしくて」

千晶「お、サンキュ」

水のお代わりを受け取った千晶は、コップをテーブルに置くと、その代わりというべきか
スプーンを手に取る。

千晶「うん、4枚だったら大丈夫。それだけ?」

春希「それだけだけど」

千晶「じゃあ、もう食べてもいい?」

春希「いいよ・・・・・・・」

俺の要件、ちゃんと千晶の頭に入ってるのか?
カレーにしか興味がないんじゃないかって、心配にはなるけど、
俺が作ったカレーをこんなにも美味しそうに食べてくれるのは、なんかうれしかった。
とりあえず俺も、エネルギー補給といきますか。
もう半分以上食べ終わっている千晶を横目に、
俺も大きく口を開いて食べ始めるのであった。









9-4 春希 冬馬邸地下スタジオ 1/11 火曜日 




今日から一人での練習なわけなのだが、カメラで見られていると思うと
指に力が入ってしまう。
たとえ曜子さんに見られていなくても、コンサートまでの時間もないわけで、
気合の入らない練習などする気は毛頭なかった。
しかし、妙に視線を感じてしまう。
カメラ慣れしていないということを差し引いても落ち着かない。
二時間ほど練習をしたころ、休憩がてらに水を飲む。
スタジオを見渡すと、かずさのことばかり思いだしてしまう。
この前は曜子さんと一緒だったし、感傷に浸る時間などはなかった。
スタジオに一人でいる今、誰も俺の追憶を邪魔する者などはいない。
ただ、かずさがいたころと同じものは、このスタジオ自体とピアノのみ。
もしかしたら、ピアノも別物かもしれないけど、かずさがいたという事実のみで
俺がかずさを思い出すには十分すぎるほどであった。

さて、そろそろ練習に戻ろうかと、ペットボトルをテーブルに置くと、
これもまた新しく設置されたパソコンが目に留まる。
そういえば、何か質問したいことがあれば、このパソコンを使ってメールしてほしいって
言ってたよな。今日が初日だし、挨拶もかねてメールしてみようかな。
まあ、あの曜子さんがどんなメールを送ってくるかの方が気になるんだけど。
もし、あの性格に似合わず、几帳面なメールが来たら、それはそれで貴重かもしれない。
案外、対外的な性格とは違い、内面は几帳面で計画性にすぐれているのかもと、
あれこれ夢想していると、すぐさま返事のメールが届く。

春希「え? 早すぎないか。ということは、今、リアルタイムで見ているってことか?」

俺は、おそるおそるカメラに目を向ける。じっとレンズを見つめると、
その向こうの曜子さんの瞳が俺を見つめている気がして恥ずかしい。
何をとち狂ったのか、俺は、カメラに向けて手を振ってみる。
やばい。練習を始めるときも緊張してたけど、しっかりと見られていると分かった今の方が
断然緊張している。なにやってるんだよ、俺。手なんか振っちゃって。
と、脳内でぼやいていると、再びメールの受信音が鳴り響く。
俺の肩がピクリとふるえる。カメラからの視線を気にしつつ、
パソコンのカーソルを最新のメールにあわせ、内容を表示させる。

曜子(カメラに手を振って、ふざけている暇があるんなら、とっとと練習しろ。
   お前はいつまで休憩しているつもりだ)

春希「あっ」

勢いよく振りかえり、思わずカメラを見てしまう。じっとカメラを見ていると
また何かメールがきそうなので、すぐにパソコン画面に視線を戻す。
やっぱり見てるんだ。もう一度メールを読み返すが、怒ってるのか?
なにが几帳面なメールかもだよ。リアルの曜子さん以上に口が悪いじゃないか。
もしかしたら、面と向かって話す時は、目の前に相手がいる分セーブしているのかもな。
メールだと相手の顔が見えないし、曜子さんの本心がストレートに出てしまって・・・・・。
ゆっくりと休憩している暇なんてないか。とりあえず、最初に来たメールを確認して、
練習に戻ろう。

曜子(練習だというのに、なにを緊張してるんだ。今はあたしだけが見てるだけだけど、
   本番ではたくさんの観客が見てるんだぞ。今のままでは先が思いやられるな。
   でも、あたしはお前の敵じゃない。お前を見守っている味方なのだから、
   緊張などせずに、胸を借りるつもりで練習に励むといい)

曜子さんは、最初から練習を見ていたのかもしれないな。
味方か・・・・・。そうだよな。せっかく練習を見てくれるって言ってくれたんだし、
駄目なところをばんばん指摘してもらう方がいいに決まってる。
変にかっこつけて、緊張なんかしてたら時間がもったいないし、曜子さんにも申し訳ない。
俺は、感謝のメールの代りに、ギターを手に取り、練習へと戻っていった。











10-1 春希 冬馬邸からの帰り道 1/12 水曜日 午前8時頃






練習が許された約束の午前8時よりも10分早い時刻に俺は冬馬邸の門を出る。
そろそろハウスキーパーさんがやってきて、掃除が開始されるかもしれない。
親切でスタジオを貸してもらっているんだ。掃除の邪魔などしたくはない。
本音を言えば、時間ぎりぎりまで練習していたかったけど、
曜子さんの信頼を裏切りたくはない。
俺は、自分が持ち込んだゴミだけはまとめて、冬馬邸をあとにした。





通勤通学の時間ともあって、人も多い。身が入りすぎた練習で体力を減らしまくった俺には
満員電車は少々こたえる。人と波に揺られること数分。自宅への最寄り駅に着いた俺は、
これから大学に向かうであろう生徒と共に電車を降りた。
ちょっと前までの俺だったら、大学をさぼってギターの練習したり、
バイトに行ったりなんかしてしなかったよなぁ。
俺の本質が変わったわけでもないし、要は優先順位が変わっただけ。
今は、ギターとバイト。これに全力を注ぎたい。
じゃあ、ギターとバイト。どっちの優先順位が高いのか?
・・・・・・・・・それは、答えを出すのが怖いので、考えないようにした。
俺は、大学へと向かう生徒たちの流れに身を任せて、自宅へと進んで行った。
そういえば、麻理さんの誕生日パーティーするって約束していたけれど、
正月に電話したまま、あれっきり何も計画立ててないな。
たしか、イチゴがのってるケーキだっけ。
麻理さんがNYに行く前に、しっかりとお祝いしたいな。
俺は立ち止まり、人の波に逆らう。
急に立ち止まったために、訝しげに俺を見つめて過ぎ去っていく人々を見送る。
どこか人の邪魔にならないところは・・・・・・。
それに、人に聞かれてしまうのも。
さすがに朝の通学時間ともあり、一人になれる場所などはない。
どこを見渡しても、大学生やら高校生がひしめいていた。
しょうがない。急いで家に戻るか。
そうすれば、始業前に麻理さんと電話できるかもしれないしな。
いくら始業前といっても、
麻理さんに始業前なんか存在しないきもするけど。
俺は、練習の疲れなど忘れ、軽い足取りで家へと急いだ。






第13話 終劇
第14話へ続く

このページへのコメント

読者は知ってるけれど、キャラクターは知らない。キャラクターは知ってるけれど、読者は知らない。
全て著者の都合ですが、必ずしもうまくいくとは思いません。
個人的には、どの著者の意図であっても半分も読者には届きませんし、表現もできないと思っています。
それでかまわないし、好き勝手読者が想像してしまうほうが、楽しみがあるなと考えています。
つまり、春希気が付けよと、突っ込みを入れたい!

0
Posted by 黒猫 2014年09月09日(火) 02:47:21 返信

かずさ厨のくせにあの文面でメールの送り主に気づかないとはw
いや気づいてないフリをしてるだけでしょうか。ある意味春希らしかったです。

それとかずさの演奏を観察し、春希のカレーをパクつく千晶も千晶らしくてかわいかったですね。

0
Posted by N 2014年09月02日(火) 22:13:41 返信

ボーカルの件での千晶の態度や曜子さんらしからぬメールの文面は普段の春希なら気付きそうな気がしないでもないですが(曜子さんがあたしという言葉は使わないでしょう)その辺はギター練習に夢中で細かいことまで考えている暇が無いから気付いていないと思っています。真実を知った時の反応が見ものですね。次回も楽しみにしています。

0
Posted by tune 2014年09月02日(火) 03:44:13 返信

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