第68話


 光量が抑えられているレストランの雰囲気は贅を尽くした内装ではないように見えるのに、
落ち着きと品をうまい具合に醸し出している。
 ニューヨークに来てからというもの、レストランに行く機会などほとんどない。
食事はたいてい自宅で食べるし、外で食べるときは弁当を用意している。
 だから一流レストランがどういったものなのかは、取材での知識しかなかった。
正確にいえば、レストランに行って美味しい食事にありつけるのは先輩方であって、
俺はというと先輩方が取材してきたものをまとめるだけである。
 そんな実戦経験皆無の知識しか持たない俺であっても、
このレストランの研ぎ澄まされたもてなしは理解できた。
 テーブルや調度品。そして肝心の食器類も、どれも一流のものであるはずだ。
機能と価格重視の俺なんかは一生買う事はないだろう。
 そもそも一生手にすることなんてないと思っていた高級食器であれど、使う機会があったら
手が震えてしまうかもしれないと思っていた。もちろん料理の事よりも食器の方が
気がかりで、味なんてわからなくなってしまう事だろう。
 まあ、これは言いすぎかもしれないけれど、身分不相応の物を手にするときは過度に
緊張する事はたしかである。
 けれど今日招待されたレストランは、贅を尽くした一流レストランのはずなのに、
俺に緊張を強いらせない。もちろんどの料理も味わった事がないくらい美味しかった。
 今夜の為に用意されたワインも名前だけは知っている某有名ヴィンテージものであり、
値段も聞く事を放棄したものではあるが、今夜の主役を祝う為なら、その価値に見合うワインだった。
 ………………まあそのワインもすでに空になり、似たような価格のワインがさらに2本空に
なっているのを横目で見ることになれば、目の前にいる二人にとってはワインの価値など
大したことではないのではないかと思ってしまうのだが。

曜子「ほんとあいつったら執念深いのよね。
   私の時だってあいつがいなかったらもっと上位にいってたはずなのよ」

かずさ「あたしは別に順位なんてどうでもいいかな」

曜子「そりゃああなたは春希くんにいいところを見せられたから満足しているでしょうけど、
   でも事務所の経営者としては、一位と二位とではぜんっぜん価値が違ってくるのよね。
   まあ、日本企業の食いつきは良かったら仕事の依頼だけは来ているから
   良しとしておきましょうか」

 かずさはジェバンニ国際ピアノコンクールにて、堂々の二位の成績を収めた。
母であり師匠であり、なおかつ所属事務所の社長でもある冬馬曜子が以前獲得した四位を
超える成績に、日本だけでなく世界中から注目されたのは、その卓越したピアノの才能だけで
なく、母子ともに人目を引くその容姿もあったことは本人たちも十分に認識していた。
もちろん二人ともピアノの腕を評価してほしいと思ってはいる。だけど、低迷する音楽業界で、
なおかつそれほど売れるわけでもないクラシック業界においては、
曜子さんはピアノの腕だけでは売れない事を理解していた。
なおかつ自分の事務所経営もあるわけで、使えるものは使う方針である。
 一方かずさとはいえば、気にしていない。それに尽きる。
どうしてかといえば、……なんといえばいいか、ピアノ以外に関しては他人の評価にまったくと
いっていいほど興味がない。本人いわく、俺がかずさに見惚れていれさえいれば満足だとか。
 そんな美女二人と庶民代表の俺の三人がコンクールの祝いを兼ねてニューヨークの
レストランで食事をしており、ここが日本でなくてよかったと心底思えていた。

かずさ「あたしは母さんの指示通りにピアノを弾いているじゃないか」

曜子「でも、日本国内の仕事だけは受けないじゃない」

かずさ「日本で仕事をしなくても、他にも依頼があるんだから問題ないだろ?」

曜子「今はそうかもしれないけど、日本のお客さんもしっかりと確保しないと、
   あとあと痛い目にあうのはあなたなのよ?」

かずさ「日本はいいんだよ。母さんだって日本を捨てて海外に出たじゃないか」

曜子「私はいいのよ」

かずさ「どうしてさ?」

曜子「だって、日本に帰れないわけではなかったもの。いつでも帰れたし、
   今も日本での仕事はしているわ」

かずさ「あたしだって日本に帰れないわけではないよ。
   ただ、今はピアノに集中したいんだ。ピアノと春希だけに集中したい」

曜子「かずさ……」

春希「まあまあ、今日はいいじゃないですか。今日はせっかくのかずさの二位入賞を祝う席
   なんですから、そういったことはよしておきましょうよ」

 俺は嘘を言っているわけではない。
たしかにこの場で日本のことを掘り起こして気分を暗くしたくないことはたしかである。
 でも俺としては、ジェバンニの前にニューヨークでかずさに会ったのを最後に、
最近までかずさに会えなかったのだから、できることなら楽しく食事をしたい。
ジェバンニ国際ピアノコンクール直前は、かずさがピアノに集中する為に会う事はよそうと
電話で話し合いをしていた。でも、コンクールを終えても会えないとは思いもしなかったのだ。
 一応ニューヨークでの約束通り独占インタビューの予定は入っていた。編集部もその予定で
紙面を確保してくれてもいた。麻理さんも俺と共にポーランドまで取材に行きもした。
 二人で取材をする為に、どれだけ根回しをしたことか。
 根回しといっても、コンクールだけに集中できるように他の仕事を入れられないように
しただけであるが。そもそも独占取材は冬馬曜子事務所が俺と麻理さんを指名しているので、
他の部員が行くわけにはいかない。それに今までの取材も俺と麻理さんが担当していたので、
ジェバンニという晴れ舞台で他の部員が行く事はありえなかった。
 だけど、そこは日頃から人の二倍以上の仕事をこなす俺と麻理さんを手ぶらでポーランド
に送り出してくれるわけもなく、
ジェバンニに集中できるように他の仕事を片付ける事が一番大変であった。

曜子「それもそうね」

かずさ「あたしは最初から日本での仕事の事はもちろん、仕事そのものの話なんかしたく
    なかったんだよ。やっと春希に会えたんだからな。あたしは春希だけを見ていたんだ」

春希「それは俺も同じだよ」

かずさ「はるきぃ」

春希「ジェバンニ二位入賞おめでとう」

かずさ「ありがとう春希」

曜子「でも、残念な事に二位になってしまったのよねぇ……」

 あっ、やばい。二位という言葉は禁句だった。
かずさは気にしてはいないようだけど、曜子さんはあくまで一位だと思っていたようだしな。

かずさ「母さん。もういいじゃないか。
    昨日のコンサートで母さんも気分が晴れたって喜んでいたじゃないか?」

曜子「それはそれよ」

かずさ「母さんがジェバンニの順位発表のあと、インタビューを全てすっぽかして
    ウィーン帰るなんて凶行をしたおけがで、世間のあたしへのイメージが
    悪くなったんだからな。あたしは母さんみたいにヒステリーじゃない」

曜子「なにを言っているのよ。そもそもあなたがインタビューを受けたとしても、
   いつもむすっとしているだけで、ほとんどしゃべらないじゃないの?」

春希「まあまあ曜子さんも、今日はめでたい席なんですから……」

曜子「たしかに、ニューヨークのコンサートに割り込んできた、一応今回の一位であった
   ロシア人は、その師匠とは違って礼儀がある女の子だとは思うわよ。でも、
   師匠が駄目ね。わざわざ実力差を知って嘆く為だけにニューヨークにまで来るなんて、
   とんだマゾヒストよね」

春希「演奏自体は無難だったって、演奏直後は曜子さんも誉めていたじゃないですか?」

曜子「そりゃあいい演奏を聴けたら評価はするわよ?」

春希「そうなんですか?」

 でも、さっきまで怒っていましたよね?
 なんて、無謀な事は聞きませんけど。

曜子「たしかに演奏は評価するけど、今回のコンサートの主役はかずさなのよ。
   しかもかずさの単独演奏だったはずなのに、
   必要もないゲストとしてあの娘が割り込んできたんじゃないのよ」

春希「それはスポンサーに文句を言って下さいよ」

曜子「まあ、そうなのよね。でも、そのおかげでかずさのほうが上だって、観客もわかったはずよ」

春希「…………そうですね」

曜子「あら? 春希君は私とは意見が違うようね?」

春希「そんなこと言ってないじゃないですか。俺はかずさの演奏がいつだって一番なんですよ」

曜子「あら? それってのろけ?」

春希「そうですよ。のろけでけっこうです」

曜子「言うようになったわね。成長したのねぇ」

春希「曜子さんと付き合ってたらいやでも成長しますよ。ジェバンニの順位発表のあと、
   うちとのインタビューもしないでウィーンに帰国してしまった大人げない人と
   比べれば、きっとすごい大人だと思いますよ」

曜子「あ、あれはしょうがないじゃない。勢いよ、勢い」

春希「その勢いのおかげで紙面に穴があきそうだったんですよ」

かずさ「あれは大変だったな。美代ちゃんなんて青白い顔をしながら母さんの後始末を
    していたもんなぁ。睡眠なんてほとんどできなかったとか、
    泣きながらあたしに愚痴を言ってきたんだぞ」

春希「あれはかわいそうだったな」

曜子「あれは、そうね。でも、あのあとしっかりとボーナスも出したし、休暇もあげたわよ?」

春希「でもその休暇も、すぐに返上させたんですよね?」

曜子「そ、それは……。ねえ、かずさ。今日の春希君、なんだか意地悪よ?」

かずさ「そう? あたしには優しいけど?」

春希「だれかさんが体調不良を理由に外に出なくなってしまいましたよね。コンクール後に
   企画されていた曜子さんのコンサートも体調不良を理由にキャンセルしましたし、
   美代子さんは後始末で大変だったようですよ。一応公式発表では体調不良ですけど、
   実際は怒りをピアノにぶつけ続けていて、観客には聴かせられない演奏だったとか。
   でもいいんじゃないですか? ジェバンニでの曜子さんの怒りは報道されて
   いましたし、その時の感情だだ漏れの演奏を聴きたいっていう人も多かったと思いますよ?」

曜子「ねえ、かずさ。やっぱり春希君、意地悪すぎるわ」

 こういうときだけかずさに頼らないでくださいよ。しかも、弱々しい姿の演技までして。
 誰が曜子さんに演技指導したかはこの際不問だ。
 …………家に帰ったら、千晶にお説教だな。
 でも、最近千晶の帰りが遅いんだよなぁ。公演前だからしょうがないか。
……はぁ、だったらお説教じゃなくて弁当の差し入れでもするしかないよなぁ。

曜子「でも、しょうがないじゃない。あの娘の師匠は、
   私とかずさの師匠でもあるフリューゲル先生とも因縁があるのよ」

かずさ「でもそれって、一方的に向こうがライバル視してたんじゃないのか? フリューゲル
    先生があの男のことを話すときも、べつに嫌っているようには見えなかったぞ。
    たしかに派閥争いばかりしないで教育の方に力を入れて欲しいとは言ってたけどさ」

曜子「ほらみなさい。それを嫌っているというのよ」

かずさ「でも、人に教える技術に関しては一流だって誉めてたと思ったけど?」

曜子「それは、フリューゲル先生が温厚な人だからよ。あの男が一方的に先生に
   つっかかってきて、私がジェバンニに挑戦した時もあの男ったら、
   私情をはさんで審査していたはずよ」

春希「たしか今回も審査委員でしたよね?」

曜子「そうよ。今回は私たちへの恨みだけじゃんくて、
   ロシアの政治事情が絡んでいたみたいだけど」

かずさ「どういうことだよ?」

曜子「あなたには話したと思うけど?」

かずさ「そうか? なんかいつも早口で文句ばっかり言っていたから、聞き流していたんだと思う」

曜子「あなたねぇ……」

 まあ、かずさの対応が正解なんだろうけど。

曜子「近年アジア勢の台頭でロシア、ポーランドが上位に食い込めないでいたのよ。
   だから強いロシアを世界に示す為に、今回なんとしても一位を取らせたかったらしい
   わよ。一応あの男もロシア人なわけだし、審査委員としての発言力も強いしね」

春希「その辺の裏事情は今夜はやめておきましょうよ。
   昨日のかずさの演奏を聴いたことで満足しておきましょう」

曜子「まあ、いいわ。春希君がそこまでいうんなら」

春希「ありがとうございます。それで、しばらくはニューヨークにいられるんですよね?」

かずさ「どうだったかな……。母さん?」

曜子「自分のスケジュールくらい自分で確認しておきなさいよ。……えっと二週間後には
   フランスでのコンサートがあるから、それには参加しないといけないわね。
   かずさもジェバンニで二位なわけだから、
   いくらなんでもいつも依頼を断るわけにはいかないのよね」

かずさ「はぁ……。二位になった事は悪くはないけど、コンサートツアーだけは面倒なんだよね」

春希「これも期待の新人を紹介する為にジェバンニが用意してくれたコンサートツアー
   なのだから、かずさもあまり邪険にするなよ」

かずさ「春希はいいのか?」

春希「なにが?」

かずさ「やっと会えるようになったというのに、あまり会えなくて」

春希「それは寂しいけど、ツアーは一年もやらないだろ?」

かずさ「そうだけど、やっと落ち着けると思っていたからさ」

春希「もうちょうっとの辛抱だって。それにツアーが終わっても、今度は世界を相手に演奏
   していくんだろ? だったら今と同じような感じになるんじゃないのか?」

かずさ「うっ…………」

 こいつめ。何も考えてなかったな。かずさらしいといえばかずさらしいけど、
ほんと演奏以外は駄目な奴なんだから。

曜子「ねえ、春希君。そのことなんだけど、考えてくれた?」

春希「専属のマネージャーのことですよね?」

曜子「ええそうよ」

春希「もう少し考えさせて貰っていいですか?」

曜子「いいわよ。でも、あまり待てない事は理解してくれているわよね?」

春希「わかっています」

曜子「ならいいわ」

たしかにはかずさには演奏だけを考えて欲しい。それに、演奏以外は駄目だっていうのもある。
 美代子さんは曜子さんの方で手が回らない。
ウィーンの方にも職員はいるけれど、かずさとうまくやっていけるかは未知数すぎる。
 かずさも丸くなったとはいえど、プライベートの方もかなり混ざったスケジュール管理を、
かずさが任せるとは思えない。
だとすれば、かずさが心を許した相手がマネージャーをするのが一番いいに決まっている。
 だけど…………。

かずさ「春希?」

春希「そんな顔するなよ」

 不安な顔をさせているのは俺のせいなのに、なにを言ってんだよ、俺は。

かずさ「……うん」

春希「悪い返事はをするつもりはないから」

かずさ「うん」

春希「でも、もう少し待ってほしいんだ」

かずさ「わかった。春希が納得する形で仕事についてほしいからな」

春希「ありがとう」

かずさ「それはこっちの台詞だから」







 武也あたりからすれば、冬馬と食事に行ったレストランと同じくらいお前が今住んでいる
マンションは足がすくむって言われそうな気がしてしまう。
 実際武也がニューヨークに来て、俺が住んでいるマンションをみた時に似たようなことを
言われている。
 お盆休みを利用して武也は一人ニューヨークまで俺に会いに来てくれた。依緒はというと、
日本にいる親友と温泉旅行だとか。
一応武也と依緒の仲はうまくいっているらしいが、お盆休みくらいは男は男同士。女は女同士
で楽しむべきだとか。いうまでもなく依緒の親友を気遣っての配慮なのは俺でもわかる。
 だけど、こうして遠く離れた地まで武也が会いに来てくれた事に俺は深く感謝した。
 千晶がニューヨークで本格的に活動することが決まった直後、
千晶は曜子さんの依頼によって俺と麻理さんと一緒に住む事になった。
 新米社員でもある俺からすれば、曜子さんが家賃を全てもってくれるという破格の条件に
歓喜しても誰も責められないはずだ。
しかもそれが編集部そばの超高級マンションであればなおのことである。
 というのは建前で、これも麻理さんのリハビリに関係していた。いつまでも俺とだけ一緒に
いるわけにはいかない。だから千晶の世話をしなけばいけないとしても、
麻理さんと千晶が一緒に暮らす事はプラスに作用すると思っていた。
 曜子さんが帰る前に、この雑居生活は千晶の発案だと聞いたときには驚いたものだが、
いざ一緒に住んでみればこれでよかったと思わずにはいられなかった。

曜子「千晶さん、出てきなさい」

 この家の主人がメイドを呼ぶがごとく曜子さんは千晶を呼び立てる。
 自宅マンションに帰って来て、曜子さんの最初の一言はこれだった。
 普段は俺と麻理さん。そして千晶が住んではいるが、部屋を借りているのは曜子さんで
ある。そして、曜子さんがニューヨークにいるときはホテル代わりにこのマンションを
利用するのは当然の流れでもあった。

千晶「なんでしょうか奥様?」

 急いで自室から出てきたであろう千晶の服装は乱れている。きっと寝ていたんだろうが、
それでも曜子さんのけっして大きくはない呼び声に反応して出てきたところは評価したい。
 俺としては、普段から俺のお願いも少しは聞いて欲しいと強く思ったが、
千晶を抑えつけるのもどうかとは思い、千晶矯正計画は今年何度目かのお蔵入りとなった。

曜子「奥様ってあなた。いつもは曜子さんとか、魔女とか魔王とか、あとは悪魔とか言って
   いるくせに、どうして今日に限っては奥様なのかしらね? どうみても後ろめたい事が
   ありますって言っているように思えてしまうわよ?」

 普段の千晶なら絶対にしないようなミスだ。
 本当に千晶は曜子さんに弱いよな。一応事務所の社長ってわけだけど、
千晶がそんな肩書を気にするわけないよなぁ。
つまりは、根っこの部分から曜子さんにはかなわないって思ってるのかもしれないよな。
 それでもいつもは馴れ馴れしすぎるほど曜子さんと仲がいいんだから、
よくわからない二人だよな。

千晶「滅相もない。今日はずっと部屋にこもって稽古してたんだから、
   なにもやらかしてはいないはず、だと思うかな?」

曜子「それが問題なのよ」

千晶「はい?」

曜子「今日取材だったでしょ?」

千晶「そだっけ?」

曜子「朝出かける前にも伝えたはずよ」

千晶「あぁ……、そんな事もいってたような」

春希「たぶん部屋にこもっていましたから、
   直接顔を見て言わなければ千晶には聞こえてなかったと思いますよ」

曜子「返事はあったわよ?」

春希「返事だけです」

曜子「なるほど、ね。私もよくやるわ」

千晶「春希っ。裏切ったわね」

春希「事実を言ったまでだ」

千晶「でもしょうがないじゃない。のりのりで稽古していたんだから、
   稽古中はそれ以外は見えないっていうかさ」

曜子「それならしょうがないわね」

春希「それでいいんですか? 取材があったのを忘れていたんですよ」

曜子「練習中だったのよ?」

春希「練習中であろうが仕事は仕事ですよね?」

曜子「だって、私だって取材だけじゃないけどピアノを弾いていて約束を忘れた事が何度もあるし……」

春希「美代子さんから聞いていますよ」

曜子「あらそう? だったら話が早いわね」

春希「それだけですまないから問題なんですよ。だれが後で謝りに行くと思っているん
   ですか? 今日の取材はうちの取材だったらから俺が後で千晶からコメント貰って
   おくことで話をおさめることができましたけど、
   これが他社の取材でしたら信用を失ってしまいますよ」

曜子「そこは春希君みたいなスタッフの腕のみせどころじゃない」

春希「そういうことをするためにスタッフがいるわけではないんですけどね」

千晶「まあまあ春希も家に帰ってきたばっかりなのに、
   そんなにもテンションあげなくてもいいじゃない」

春希「千晶っ。お前が言うなよ。お前が取材を受けなかったのが悪いんだからな」

千晶「さぁってと……。インタビューするんならちゃっちゃとやってよね」

春希「はぁ……。ほんとにもう」

曜子「というわけで、春希君。がんばってねぇ」





第68話 終劇
第69話につづく




第68話 あとがき

ようやくラストに向けて走り出したという感じでしょうか。
来週も月曜日に掲載できると思いますので、
また読んでくださると大変嬉しく思います。

黒猫 with かずさ派

このページへのコメント

曜子さんもかずさもマーティン・フリューゲルを先生と呼ぶなんて意外と敬意を払ってるんですね。
ゲームじゃ母子そろってただの口うるさい爺さん呼ばわりでしたが。
しかし春希曰く現代クラシック界の系譜に必ず出てくる歴史的偉人であるフリューゲルをライバル視して、ジェバンニ国際にも審査委員として影響力を及ぼすロシア人ピアニストとは、リアルと同じくロシア派の面々が力を持ってるんですね。

0
Posted by N 2015年10月21日(水) 01:15:21 返信

更新お疲れ様です。
正直ここに及んでかずさの専属になることに躊躇する春希には?という感じです。麻里さんのことがあるにせよ春希はかずさの側に居ることが出来る様にする為のこれまでの行動では?曜子さんも麻里さんの事は知っていますからもしかずさを裏切ることになれば春希は相当な報復をされるのでは。
次回も楽しみにしています。

0
Posted by tune 2015年10月19日(月) 18:25:19 返信

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

Menu

SSまとめ

フリーエリア

このwikiのRSSフィード:
This wiki's RSS Feed

どなたでも編集できます