第40話



春希「わかりましたよ。
   千晶の事は、あとで麻理さんの気が済むまでなんでもこたえますから。
   あとでつまらないって文句を言っても受け付けませんからね」

麻理「わかってるわよ」

俺はもう一度だけ念を押すと、
今度こそ覚悟を決めて俺達の今後の事を話すことにした。
やはり俺の表情も声も硬くなるわけで、麻理さんもきゅっと唇を軽く噛んで
覚悟を決めてくれたようであった。

春希「俺の今後の進路なんですけど、8月からのNY行きが決まりました。
   木曜日に編集長に呼ばれて許可を貰ったのですが、
   あとは書類上の手続きを済ませれば正式な許可が月末にはおりるようです。
   本当は木曜日に麻理さんに報告しようと思っていたのですけど、
   会って直接報告したかったので、報告が遅れてしまってすみません」

麻理「ううん、いいわ。以前NY行きの話が出た時にこうなるってわかっていたから。
   だって私が北原を育てたのよ。上が許可しないわけないじゃない」

春希「そういって下さるのは嬉しいのですが、過大評価しすぎですよ」

麻理「だったら、私の教育もその程度だったっていうことかしら?」

麻理さんは意地が悪い表情を浮かべながら笑いをこらえている。
今、麻理さんの心の中がどうなっているかなんてわかるわけがない。
そもそも俺の心の中でさえ俺本人が理解できていないのだから、
麻理さんの心情なんてわかるはずがなかった。
ただ、俺の心の中に住む彼女の心情だけは手に取るようにわかってしまい、
俺の心臓を鷲掴みにしてくるようで息苦しかった。

春希「それを言うのは卑怯ですよ。わかりましたよ、わかりましたっ。
   麻理さんの教育がよかったから、駄目な生徒もNY行きが叶いました」

麻理「なんか投げやりっぽい言い方が気にいらないけど、まあ、
   北原はもっと自分に自信を持った方がいいわよ。
   あなたは自分が思っているよりも周りのみんなは評価しているのだから、
   そのことを意識しないと北原は謙遜しているつもりでも、
   相手からしたらお高くとまってるって思われてしまうこともあるよね」

春希「ええ、そのへんの人間関係はこれからも学んでいかないといけないと
   思っています。
   なにぶん一人で突っ走ってしまう嫌いがありますからね」

麻理「そうね。今回も勝手にNY行きを決めたものね」

麻理さんは呆れた態度を装って、俺の出方を伺ってきていると思ってしまう。
どうしても俺は裏を読もうとしてしまう。
麻理さんの真意を見落とさないようにと、
俺の神経は過敏になっていたのかもしれなかった。
たった一度のミスが、永遠の別れにつながるとわかっているから。

春希「それだけは謝りませんよ。俺は正しい選択をしたって信じていますから」

俺がきっぱりと宣言すると、麻理さんの反撃の意思は徐々に消え去ってしまう。

麻理「正しいわけ、ないじゃない」

でも、意地の反撃だろうか。
麻理さんが小さく呟いた台詞は俺の心に深く突き刺さっていても、
俺は聞こえないふりをした。

春希「それに、もう今住んでいるマンションは引き払いましたし、
   すでにNY行きは動き出しているんですよ」

麻理「それはいくらなんでも早過ぎじゃないかしら?」

さすがの麻理さんでも、俺の行動の速さに驚きを隠せないでいた。
たしかにNYへ来るのは8月であるわけで、早すぎるといったら早すぎる。

春希「あいにく俺はお金に余裕がある大学生ではないんですよ。
   NY行きが決まったとしても、先立つものがなければNYで生活していけないですよ」

麻理「研修中って、お金でないんだっけ?」

春希「どうでしょうかね? 俺もNYへ行くことだけを考えていたんで、
   給料については全く調べていなかったです」

麻理「案外しっかりしているようで抜けているところもあるんですね」

そう言っている麻理さんも、研修については調べて、裏工作までしてくれていたのに、
肝心のNYでの生活たる給料については調べていないじゃないですか。
たしかに、そんなお金なんて些細な出来事かもしれないけど。

春希「お金じゃないですからね。
   それよりも、麻理さんはいつから俺の海外研修について考えてくれていたんですか?」

麻理さんは日本にいた時にすでに編集長や浜田さんに俺のNY行きについて根回しを
してくれていた。それも、俺が海外研修について気がつく前に。
どこまで先を見ているんだって、仕事面では当面追いつけそうもない速度で進んで行く
麻理さんを、俺は必至でその背中だけは見失わないように走り続けていた。

麻理「北原の海外研修自体は、秋くらいかしら。
   夏の終わりの人事異動で海外から戻ってきた部員を見て、
   北原も早めに海外でもまれてきた方がいいなって思ったのよ。
   ずっと私の下で働いて欲しいけど、それだけでは北原の為にはならないし。
   やっぱ環境を変えて、それも国まで変えて仕事に没頭することが必要なのよ。
   こればっかりは私の下では経験できないのよね」

春希「でも、編集長に根回ししてくれたのは別件でですよね?」

これだけははっきりとしておきたかった。
仕事の為に俺の海外行きを用意してくれていたのか。
それとも麻理さんの側にいられる為にNY行きを準備してくれていたのか。
前者であっても光栄なことではある。
だけど、俺としては麻理さんに必要だって思われたい気持ちの方が強かった。
俺は麻理さんの言葉だけでなく、その瞳を、その表情の変化を見逃さないように
意識を集中させていった。

麻理「ええ、そうよ。北原をNYへ呼ぶ為だけに編集長や人事に話を通しておいたわ」

麻理さんは俺の視線を真っ直ぐと受け止めると、毅然とした態度ではっきりと口にする。
その瞳には揺らぎはない。
今、麻理さんの言葉で、俺が必要だって言ってもらえた。
光栄すぎる。
たとえ偽善に満ちた俺の好意であっても、それが必要だと言ってくれた。
けっして交わることがない想いであっても、
いつか離れることが確定していても、
それでも今は必要だといってくれる麻理さんが愛おしく思えてしまう。

春希「ありがとうございますと、言ったほうがいいんでしょうね」

他に言葉が思い付かない。声に出して言っていい言葉が思い付かなかった。
声に出してしまった瞬間に、俺は罪に押しつぶされてしまう。
それは、麻理さんへの罰も執行されることと同義であった。
けっして麻理さんが悪くなくてもだ。

麻理「どうかしらね。お互いの利害が一致しただけだから、感謝の気持ちなんて必要ないわ。
   私がしたくてしただけなのだから、北原が気に病むことがらではないわ」

春希「それでも、言っておきたいんですよ」

俺はまだ麻理さんに必要ではないって烙印を押されていない事が確認できたのだから。
必要とされている喜びを、言葉を変えてでも伝えたいから。

麻理「そう? 
   だったらNYへ来ても、編集部のみんなが納得するような成果をあげることね」

春希「もちろんNYへ行かせてもらえるんですから、社の期待にはこたえますよ。
   慈善事業でNYへ行かせてもらえるわけではないのですから」

麻理「その覚悟があるのならば、問題ないわ」

もちろん麻理さんも理解しているはずだ。
仕事ではない、もう一つの重要な目的。
開桜社の仕事よりも重要で、日本での仕事を投げ出してでも掴み取ろうとした目的。
麻理さんの側にいるっていう、俺の意思を麻理さんは知っているはずだ。
でも、それは簡単には声に出す事は出来ない。
仕事と絡めて話していい内容ではなかった。
いくら俺を麻理さんが必要としていても、仕事に生きる麻理さんが、
仕事を大事にしている麻理さんが、仕事を利用してプライベートに便宜を図るなんて
やっていいことではなかったのだから。
もちろん何一つプライベートに便宜を図った事がないわけではない。
役得とでもいえばいいのだろうか、小さな便宜なら誰だって気兼ねなく受け取っている。
げんに俺だって年末に曜子さんのコンサートチケットを仕事の関係で貰った事がある。
だけど、今回のNY行きは別だ。
仕事の為ではなく、麻理さんの側にいる為だけにNY行きを手に入れた。
たとえそれが立派な大義名分があろうと、
当事者だけが知る実情は仕事とはかけ離れ過ぎていた。

春希「はい、頑張ります。それでですね、麻理さん」

麻理「ん? なによ改まっちゃって」

俺が醸し出す雰囲気ががらりと変わり、麻理さんは何事かと身構えてしまう。
まあ、その反応は当然だろう。
いくら佐和子さんからの強い要請があり、そして俺もそれを望み、
なおかつ麻理さんもきっとそれを望んでいようとも、
世間の目からすれば俺がこれからしようとしている行為はひもであるのだから。
いちおう俺の名誉を守る為に言葉を変えるとしたら、なんとか居候といえるかもしれないけど。

春希「あのですね、できれば今回俺が泊まる部屋を8月からも貸していただけると
   助かります。
   なにぶんお金の余裕もありませんし、海外生活も初めてで、
   このまま一人で住んでしまうと、海外生活に慣れるのだけで時間を費やしてしまい、
   仕事の方がおろそかになってしまいそうなんですよ」

建前すぎる建前を麻理さんに提示する。
誰の為の建前なのか。それはおそらく俺と麻理さんが、二人とも必要なのだろう。

麻理「それはかまわないわよ。部屋は余っているのだし、北原が使ってくれるんなら
   大歓迎よ。それに、北原が毎日食事を作ってくれるんでしょ?」

春希「それは部屋を貸していただけるのですし、当然作らせてもらいます」

麻理「だったら、食事を作ってもらう事が部屋代って事でいいわ」

春希「ありがとうございます。でも、光熱費とかは払いますから」

麻理「いいわよ、そんなのは。北原がいくら使ったなんてわからないし、
   料理を作ったときに発生する光熱費も私の為の分もあるわけだし、
   その辺は全て部屋代に含まれているって事にしましょ」

麻理さんは俺への反論を遮ろうと、理詰めで防壁を築いていく。
さすがの俺も、麻理さんの好意をむげにはできなかった。

春希「だったら食事の材料費だけは俺に出させてください。
   俺が料理を作るわけですし、俺が納得できる材料を選ぶ為には、
   自分でお金を出している方が選びやすいですからね」

と、せめてもの男のプライド?を守ろうとする俺は、
人間が小さいかもしれないと心の奥で思ってしまう。

麻理「北原がそのほうがいいっていうのなら、私はそれでも構わないわ。
   でも、私が必要だと思う食材は勝手に買わせてもらうわよ」

春希「もちろん麻理さんが必要とする食材を、俺が買う事を拒むなんてできませんよ」

麻理「それもそうね。あと、部屋を使う上のルールというか、生活する上での取り決めは、
   何か思い付いたときに決めていきましょう。
   実際引っ越してくるのは、・・・まだ先なのよ、ね」

最後の言葉は、一瞬言葉を詰まらせた麻理さんではあったが、
どうにか最後まで言葉を紡いだ。
やはり「まだ先」が本音だろう。
俺だってこのままNYに住みつく事が出来るのなら、喜んでそうさせてもらう。
それがたとえ「ひも」とののしられようと、
鈴木さんの指摘通り「麻理さんの部屋に転がり込む」行為であろうと、
麻理さんの側にいられるのならば、いくらでも俺は悪名を頂戴しよう。

春希「はい、8月からです」

麻理「うん、待ってる」

春希「はい、待っててください。それとですね、麻理さん」

麻理「うん?」

さて、今俺には2枚のカードがある。
どれを先に出すべきか。どれも麻理さんに伝えなければならないことだった。
一応一番の難関であるNY行きの報告と、NYでの生活の場の確保は済ませた。
とりあえずは、麻理さんがすんなり受け取ってくれそうな話題からするかな。
もしかしたら、最後に残した一枚の方がNY行きの報告以上にやっかいかもしれないけど。

春希「麻理さんの食事についてですけど、一つ試してみたい事があるんですよ」

麻理「それって、味覚障害についてよね?」

春希「はい」

麻理「そんなに怖い顔しなくてもいいわ。
   私は今の私も受け入れているんだから、上手に付き合っていくしかないのよ。
   だから、北原がそんなに力まなくてもいいの」

柔らかい口調で、仕事のミスを励ますように諭してくる。
しかし、そんな悲しそうな顔をして言うなんて卑怯だって言ってしまいそうだった。
麻理さんは、俺がそんなことを受け入れられないってわかっているのに。

春希「力んでなんていませんよ。俺は自分が出来る事をやるだけです。
   しかもこれは俺にしか出来ない事ですしね」

麻理「なにを企んでいるのよ?」

麻理さんは嬉しそうに呆れてた瞳を俺に向けてくる。
・・・・・・俺達はいまだに床に転がりながらも抱き合っているわけで、
俺の顔を至近距離から見ている麻理さんには、俺の表情を手に取るようにわかってしまう。
だから、俺の方も麻理さんの小さな表情の変化もわかってしまった。

春希「大したことではないですよ。ただ、一日2回電話するだけですよ。
   それに今は携帯のアプリやネット回線もあるわけですから、
   お金もあまりかからないと思いますしね」

麻理「何をしようっていうのよ?」

春希「簡単な事ですよ。麻理さんが食事をするときに俺と電話して、
   画像と音声をつなげるだけです。
   麻理さんの職場では無理でしょうけど、朝と夜の食事は自宅ですし、
   何も問題ないと思いますよ」

麻理「ネット回線でつないで一緒に食事をしようってこと?」

春希「ええ、まあ」

麻理「簡単な事って北原はいうけど、日本とNYとでは時差もあるし、
   私の食事の時間も決まった時間っていうわけではないのよ。
   しかも北原にも大学や仕事もあるから無理よ。
   最初は無理を通せるかもしれないけど、
   結局はタイミングが合わなくなって悲しい思いをするだけだわ」

春希「無理かどうかはやってみたにとわからないですよ。
   時差があったとしても、俺が起きている時間は普通の日本人の生活時間とは
   かけ離れていますからね。
   それに、俺が途中で投げ出すと思いますか?」

麻理「たしかにそうかもしれないけど、北原の生活が私に縛られることになるのよ」

春希「俺がそれをのぞんでいるんですから、麻理さんは俺に甘えてくれるだけでいいんですよ」

麻理「北原は、どこまで私を堕落させれば気が済むのよ」

呆れ果てた言葉とは裏腹に、麻理さんの顔からは笑顔がにじみ出ている。
そして、俺も麻理さんもほっとしている部分もある事がお互いに理解できていた。
この方法がどこまで効果があるかはわからない。
だけど、俺がNYまで来て、麻理さんと一緒に食事をしただけでも、
味覚は治ってはいないが気持ち悪くなって吐く事はなかった。
だから、テレビ電話であっても俺との接点があるのならば、
これ以上の悪化だけは食い止められるかもしれないと願ってしまう。

春希「お互い様ですよ。俺が最悪な時に救ってくれたのは麻理さんですよ。
   今こうしてNYにこれているのも、海外研修を認められたのも、
   それはすべて麻理さんが俺に手を差し伸べてくれたからです。
   もし今俺が麻理さんに対してやっていることが堕落と言うのでしたら、
   麻理さんが俺に対してやってくれた事は、堕落以上の甘やかしですよ」

麻理「甘やかしではないわ。でも、その行為には私の打算があったかもしれないのよ。
   北原を慰めてあげれば、もしかしたら私に振り向いてくれるかもしれないっていう
   女のエゴがあったかもしれないわ」

春希「エゴでいいじゃないですか。誰だって100%自分の為ではないことなんて
   できやしませんよ。たとえ慈善活動であっても、そこには自己満足が含んで
   しまいますからね。自分にやる気を起こせない行動なんて、土台無理なんですよ。
   逆に、強制的にやらせるにせよ、やはりそこには自分の為っていう成分が
   必ず入りますしね。もしやらなければペナルティーが課せられるとかの強制であったら、
   ペナルティーを避けたいという自己保身の為っていう理由が含まれます。
   だから、どんな行為であってもエゴは入って当然なんですよ」

麻理「ねえ、北原」

春希「なんです?」

麻理「どうしてなのかしらね?」

春希「え?」

麻理「どしてこんなにも理屈っぽくて、しかも、屁理屈とも言えるような論理を
   平気で人におしつけてけるのに、どうして私は北原を頼ってしまうのかしら」

春希「理屈っぽいのと屁理屈という部分については、素直に認めますけど、
   麻理さんが俺に頼ってくれるのには、理屈なんて必要ないですよ。
   ただそうしたいからそうするでいいじゃないですか」

麻理「そうね」

麻理さんは、俺の顔を見上げていた顔を下げると、ぱふっと俺の胸に顔をうずめてくる。
麻理さんが俺の胸に顔をうずめる行為も、俺が麻理さんを抱きしめている行為も、
理屈じゃない。
今の俺達には必要な事だって本能が欲しているからしているからにすぎない。

春希「そのままでいいんですけど、
   もう一つ麻理さんに言っておきたい事があるんですけど、いいですか」

麻理「別にいいわよ。どうせ私が拒んでも北原が強引に私を甘やかすだけなんだから」

麻理さんは、俺の言葉通りに抱きついたまま返事をしてくる。
そのせいで、その声はちょっとくぐもった音になってしまってはいるが、
拒絶の意思は一切含まれていなかった。
もはや白旗状態なのかなって思えてしまう。
俺が甘やかすから(麻理さん談)、麻理さんからすればとことん甘えてやるって
開き直ったのかもしれない。
でも、それでいいんだ。今麻理さんがすべきことは、俺を利用してでも
味覚障害を克服して、普通の生活を取り戻す事なのだから。

春希「ええ、存分に甘えてください。でも、今からいう事は、どちらかというと
   俺の方が甘えているのかもしれないですけどね」

麻理「ふんっ、口ではそう言っていても、結局は私が甘えている気がするのよね。
  まあ、いいわ。とりぜず言ってみて」

と、疑惑の目と共に麻理さんは顔をあげて、俺を優しく睨んできた。

春希「誤解ですよ。誤解って言いきれない部分も確かにありますけど、
   俺の方が麻理さんに甘えまくっていますよ」

麻理「じゃあ、早く北原春希の自称甘えを言ってみなさいよ」

春希「ええ、まあいいますけど・・・・・・。麻理さん、ちょっとすれてません?」

麻理「気のせいよ。もしそう思うのなら、北原に原因があるわ」

春希「そうですか・・・・・・。そう言う事にしておきますよ。
   で、ですね。俺が8月からNY行きがほぼ決まったと話したじゃないですか」

麻理「そうね」

春希「俺としては、研修が終わってもそのままNYに残りたいって思っているんです。
   もちろん大学を卒業しなければいけないので、いったん日本に戻りますけど、
   できることなら春からは日本の職場ではなくて、
   慣れしたしむ予定のNYの編集部でお世話になりたいと思っています」

俺からすれば大発表の一つではあったのに、麻理さんは驚く事はなかった。
もしかしたら麻理さんが俺のNYでの研修を考えていたように、
その後に俺がNY勤務を望む事も考えていたのかもしれない。
だって、麻理さんの容態が短期間で治ることなどあるわけないのだから。
麻理さんがそっと目を伏して、再び俺の瞳を覗き込んできたときには、
しっかりとした意思が込められていた。
本当にいいのか? 後悔しないかっていう確認を。
だけど、そんなのは今さらだ。
何度も後悔して、何度も思い悩んで、だけど選べないで、
だから俺は今ここにいる。
後悔なんて後付けの理由にすぎない。
そもそも人間は、正しい事のみを選択するなんて不可能なのだから。







第40話 終劇
第41話に続く








第40話 あとがき


なんか気が付けば4月になるんですよね。
物語の上では時間はなかなかすすんでいませんけど。
花粉の季節だけは早く過ぎ去ってほしいと祈りながら
物語を書いています。


来週も、火曜日、いつもの時間帯にアップできると思いますので
また読んでくださると、大変うれしいです



黒猫 with かずさ派

このページへのコメント

2015年明けて初めてこのゲームをやりあまりの感動にその他色々出ているコンテンツを片っ端からあさりこのサイトに至りました。ゲーム発表から数年経過し未だ続くかずさと春希のアナザーストーリーを作製し続ける作者様に感謝します。他の皆さんも仰られる様に麻里と春希のストーリーもハラハラし通しで中々良いのですが自分としては早くかずさと春希のラブストーリーに向かって欲しいところでもあります。ですが色々乗越えての二人だと分かってますのでこれからもお身体に気を付けて更新のほどお願い致します。毎週楽しみにしています!

0
Posted by Chickenビリヤニ 2015年04月02日(木) 05:33:44 返信

更新お疲れ様です。
これから麻里さんとの生活はとても甘いものになりそうな予感がしますが、一方で暫くかずさは登場しないだろうなあとちょっとばかり残念ではあります。次回も楽しみにしています。

0
Posted by tune 2015年03月31日(火) 08:09:23 返信

更新お疲れ様です。
いつも楽しみにしています。今後の展開が楽しみです。かずさがどう出てくるのか?伏線のNYでのコンテスト気になりますね。楽しみにしています。お疲れ様でした

0
Posted by バーグ三世 2015年03月31日(火) 04:52:48 返信

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

Menu

SSまとめ

フリーエリア

このwikiのRSSフィード:
This wiki's RSS Feed

どなたでも編集できます