第51話



8月中旬


 俺が住む家を編集部に隠す通すわけにもいかず、俺が麻理さんと一緒に暮らしている事は
開桜社ニューヨーク支部の編集部では公然の秘密でもなく、普通に受け入れられいた。
 アメリカでは日本よりもシェアハウスが一般的である事も起因しているし、
それが男女の同居であってもとくに問題なく受け入れられていた。
 しかも、なぜか俺と麻理さんとの師弟関係はニューヨークの職場でも知れ渡っており、
そのような師弟関係があるのならば一緒に住む事に変なさぐりをいれてくる者などはいないようだ。
これが日本だったら開桜グラフの先輩方が一晩くらいの飲み会では離してはくれないだろう。
 でも、悪い気はしない。苦笑いよりも懐かしさが込み上げてきてしまった。
 普通の社会人なら休日である日曜の午前。俺は掃除機を手にもくもくと掃除を進めていた。
日本にいた時には考えられないくらいの規則正しい生活が始まり、最初のうちは物足りなく
なるのではないかと懸念に思っていた。しかし、そもそも扱う言語が日本語から英語になった
わけで、物足りないどころかこれ以上の仕事を抱える事は不可能だという事態に陥っている。
 一応土曜日も仕事はあるが、自宅での仕事日となっている。まあ、日曜日も麻理さんからの
ビジネス英語講座があるわけで、ある意味日本と同じような忙しい日々を過ごしていた。

麻理「北原ぁ。バスルームの掃除終わったけど、リビングの方はどうかしら?」

春希「あともう少しですね」

麻理「掃除機だけ?」

春希「ええ。掃除機はもうすぐ終わりますので、あとは拭き掃除だけです」

麻理「そう。だったらあとは私が拭き掃除しておくわね」

春希「お願いします」

 バスルームの掃除を終わらせてきた麻理さんの言葉に甘えて俺は掃除機を片付けに行く。
そのときちょうど洗濯気が動いていないのを確認した俺は、自分の洗濯をすべく洗濯ものが
つまっている籠を自室から持ってくると、俺は洗濯機の準備に取り掛かった。
 俺は洗濯ルールにのっとり、洗濯機の覗き穴からタオル類が入っている事を確認すると、
洗濯機のふたを開け、洗濯し終わったタオルなどを取りだそうとした。
 今日はちょっと多いかな? さすがに毎日洗濯できないしな。えっと、
この前洗濯したのって……、昨日じゃなかったか?
 俺は昨日の記憶をたどるのに集中し、手元はオートでタオルを取り出していった。

春希「あっ……」

麻理「どうしたの?」

 思いのほか大きな声をあげてしまい、麻理さんが覗いてくる。
 これが初めてだというわけでもないのに、声をあげずに蓋をしていればお互い気まずい
想いをしなかったはずだった。だけどどうしても耐性がつくはずもなく、
俺は呆然と麻理さんの表情がうっすらと赤く染まっていくのを見ているしかなかった。

麻理「あっ……」

春希「すみませんでしたっ!」

 二人で暮らしているわけで、お互いどうしても一人暮らしの時の癖が出てしまう。
それは俺もそうだが、俺よりも長く一人暮らしをしている麻理さんはなおのこと男性と一緒に
くらしているという危機意識が薄くなってしまう。
 つまり、お互い危機意識を忘れてしまう為に今回のようなハプニングが起こってしまう。
 洗濯機の中には麻理さんの洗濯ものが入っていた。もちろん普段から気をつけはしている。
それでも油断してしまい、先日も同じような事態を起こしていた。まあ、前回は麻理さんが
俺の洗濯ものを目撃しただけで、麻理さんのショックを別にすれば、俺の洗濯ものを見られて
もそれほど恥ずかしくはないので、今回の比較対象にはならない。
 一応俺がこの家に越してきたときにいくつかのルールを決めはした。
洗濯も数少ないルールのうちの一つである。
 ルールの数が少ないのは、お互いが気を使えばいいと思っている事と、
あとは実際暮らしてみないとわからないということに起因する。
 洗濯のルールはいたってシンプルで、各自の衣類は自分で洗い、
タオルなどの共有物は気がついたほうが洗うであった。
 ニューヨークでの洗濯事情では、自宅に洗濯機があるのは珍しい。
コインランドリーに行くか、アパートに備え付けのランドリールームを使うのが一般的
といえる。麻理さんのように時間がない人は業者に頼むという方法もある。
 だから最初は麻理さんも業者に頼んでいると思っていた。しかし、初めてこの家に来た時に
麻理さんが言っていたが、「やっぱり洗濯は自分でしたいのよね」だった。
 こうして真っ白になっている新天地で麻理さんの現状を一つ一つ塗りつぶされていくたびに
俺が大いに影響を与えている事を知ると、嬉しさと後ろめたさが毎回せめぎ合ったいた。

春希「いっ! ……ぁっ」

麻理「どうしたの北原? なにかあった?」

春希「え? いやそのですね」

麻理「ん? あっ、洗濯機もう終わったのね」

春希「ええ、まあ、そうですね」

麻理「じゃあ北原のも洗ってしまいなさいよ」

春希「そうさせてもらいます」

麻理「あっ……」

 麻理さんの困惑と羞恥心が混じった声とその視線に俺は自分の現状を思い出してしまう。
一度は緊急回避的手段で手に握っている品を洗濯機の中に戻そうとはした。
 けれど、麻理さんが思いのほか早くやって来てしまったわけで、
俺の思考はその場でストップしてしまっていた。

春希「……」

麻理「北原?」

春希「……」

麻理「北原っ」

春希「はっ、はいっ」

 フリーズしていた俺の脳は、麻理さんの呼び声で強制的に再起動される。
どうやら再び思考をストップさせていたようだ。
 数々の修羅場をくぐってきた武也に、俺は今こそアドバイスを貰いたい。
 武也からすれば修羅場未満の事態かもしれないが、
俺にとっては修羅場以上に遭遇したくはない事態であった。
 なにせ、…………前科持ちだもんなぁ。

麻理「できることなら手に持っている下着を離してもらえないかしら?」

春希「すみませんっ」

 硬直していた手を開くと、俺の手から黒い布地が洗濯機の中へと舞い戻っていく。
 できる事なら、麻理さんに見つかる前にしておきたかったものだ。

麻理「別にいいのよ。私だって洗濯機の中に北原の洗濯ものが入っているのを
  知らないであけたことだってあるわ」

春希「俺のは別にいいですよ。いや、むしろ変な物を見せてしまってすみません」

 男の下着と女性のとでは次元が違うだろっ。
それを今力説なんかしたら墓穴を掘りそうだからしないけど。

麻理「別に変なものだなんて思っていないわよ。女も男も下着をつけるものだし、
  それを洗濯するのは当然でしょ?」

春希「たしかにそうなんですけど、今は論点がずれていません?」

麻理「そうかしら?」

春希「そうですよ。だから一緒に暮らし初めてすぐに洗濯のルールを作ったじゃないですか」

麻理「そのルールは北原が一方的に決めた事じゃない。私は別に一緒に洗濯してもよかったのよ」

春希「駄目ですよ。俺が麻理さんの下着を触ることなんてできませんよ。
  一応モラルの面でという意味でですよ」

なにを補足説明してるんだよ。そんなモラル云々なんて麻理さんだって聞かなくともわかるだろっ。
 しかし、なにを勘違いするかわからないというか、俺に関してだけはどうしても小さな意思
疎通の齟齬も発生させたくはなかった。それが腫れ物に触るような扱いであろうと、過保護だ
と言われようと、どうしても麻理さんの精神状態を俺は信じきることができないでいた。

麻理「だから言ったじゃない。洗濯は私の分担にすれば問題ないって。
  だって北原は私が北原の洗濯ものを触る分には問題ないのよね?」

春希「ええ、まあ。麻理さんが俺の下着を触っても問題ないというのでしたら」

麻理「その辺は全く問題ないわよ」

春希「だけどですねぇ……」

 ほんと、なにを馬鹿な事を言ってるのっていう顔をしないでくださいよ。
俺の方が我儘を言っているようにみえるじゃないですかっ。
 そりゃあ実家には千晶という珍獣がいて、女性の下着が干されていても慣れましたよ。
だけど、どうしても同じ布っきれだとは思えない。千晶の物と麻理さんの下着とでは、
どうしても意識が違ってきてしまう。
 その辺を理解してくださいよ。
……千晶の洗濯物の扱いで、麻理さんと千晶が言い争っていた事は思い出したくもないが。

麻理「一緒に暮らしているんだし、助け合いよ。それに北原も仕事が今の生活に慣れるのに
  四苦八苦しているじゃない。わざわざ別々に洗濯するとなると時間も倍以上かかって
  しまうわ。しかも白いものと色ものを分けて洗うとなるとさらに時間がかかるわけだし。
  別に水道料金とか電気代を気にしているわけではないのよ」

春希「その辺の料金の無駄遣いは再考すべき点ですが、資源の無駄遣いでもありますよね。
  それに、麻理さんが指摘したように、時間的デメリットはたしかにいたいです」

麻理「でしょう」

 俺に姉はいないが、もし姉がいたらこんなふうに言いくるめられてしまうのではないかと
思ってしまう。両手を腰に当て、自分の主張が正しいと胸を張っていうその麻理さんの姿が、
なんだか微笑ましくて、俺は諭されている最中だというのに喜びが沸きあがってきてしまった。

春希「そうですね」

麻理「北原?」

春希「いえ、なんでもないです。……俺も少し神経質になってたかなって思いまして」

 やばかった。姉に怒られて喜んでるって気がつかれなくてよかった。
そんな性癖ないはずだけれど。

麻理「そう? じゃあ、洗濯は私が当番でいいわね」

春希「はい、お願いします。ではお風呂場は今まで交代で掃除していましたが、
  これからは俺が掃除当番という事でいいですね?」

麻理「それはかまわないけど、北原は料理もしてくれているし、
  お風呂掃除は今まで通りに交代制で構わないわよ」

春希「いえ、麻理さんも料理手伝ってくれるじゃないですか」

麻理「手伝っているというよりは邪魔をしている気がするのよね」

春希「そんなことはないですよ。最初の頃よりは動きがスムーズになってきましたし、
  俺も似たようなものですよ」

麻理「でも、しっかりと料理が板についてきたじゃない」

春希「それは麻理さんよりも長く経験を積んできたからにすぎませんよ」

麻理「でも、今は邪魔している部分も多いわけだから、やっぱりお風呂掃除は私がやるわ。
  でも、私の料理の腕が上がったとしたら、そうしたらその時お風呂掃除の当番を考えましょう」

春希「わかりました」

 きっとその頃に事態が変わってお風呂掃除の当番再考なんて忘れてはいるんだろうけど、
俺はこの先も麻理さんの勢いに負け続けているのだろうという事だけは確信できた。
 別に嫌だってわけではない。むしろ負ける事にすがすがしささえ感じている。
 それが将来麻理さんを傷つける時限爆弾になろうと、俺達は見ないふりを演じ続けていた。







9月上旬 かずさ



 春希の側にいられないのは寂いしいけど、やっぱ一日中ピアノに向かっていられるこの環境
だけは母さんに感謝している。もちろん母さんには言わないけど。
 まあ、あれだな。今なら母さんが一人海外で頑張ってきた心情も、そして高校生になる
あたしを一人残して海外に出て行ったことさえも、ほんのちょっとだけだけど理解できる
かもしれない。
 ほんのちょっと、ほんのわずかだけだけど、理解できてしまう。
 それがいい傾向なのか、それとも人生踏み外しているかはわからない。
きっとピアニストとしては正しいのだろうし、一般の人からすれば、そう、日本にいるで
あろう彼女みたいな普通に高校生やって、大学でのびのび頑張って、そして就職して家庭を
作っていく、いわゆるまっとうな人生を望むのならば、あたしが選んだ道は間違っているのだろう。
 もちろんピアニストであってもまっとうな性格の持ち主もいる。
 けどやっぱ、母さんと似たような臭いがする彼ら彼女らを見ていると、
どうしても普通とは思えなくなってしまっていた。

曜子「ねえ、かずさ」

かずさ「娘の部屋に入ってくるならノックくらいしたらどうだ」

 いつものようにノックもせずに母さんがあたしの寝室に入ってくる。
 別にやましい事をしているわけでも、なにか隠さなければならないものなんてないから
いいんだけど、それでもやっぱ年頃の娘でもあるわけで、
そこんとこわかっててやってるんだからかなわない。

曜子「あら? ノックしたわよ」

かずさ「聞こえなかったけどな」

曜子「ノックしたわよ。あなたと暮らし始めたばかりのころはね」

かずさ「だったらその習慣を今も続けて欲しかったものだな」

曜子「あらぁ? でもね、あなたが返事しなかったのよ。私がノックしても一度として返事を
  した事がなかったじゃない」

かずさ「当然だろ?」

 あたしの切り返しに母さんは目を丸くする。本当にわかってないのかもしれないって、
娘として本当にこの母親の常識を疑ってしまった。
……社長に常識を求めるのはよしなさいって美代子さんが真顔を言ってたけど、うん、まあ、
やっぱあたしの母親なんだなって納得してしまうのはやばい傾向かもしれなかった。

曜子「どうして?」

かずさ「だってノックじゃなくて「入るわよ」って呼びかけながらドアを開けていたじゃないか。
  たしかに呼びかけるのもノックのうちかもしれないよ。でも、そのノックであっても、
  あたしの返事を待ってからドアを開けるものじゃないのか」

曜子「細かい事はいいじゃない。ただでさえ親子のスキンシップが少ないのに、部屋まで
  こうして会いに来ただけでも喜んでもらいたいものね」

 あたしが何を言っても言いかえしてくるんだよな。あたしもあたしでむきになってしまう
ところがあるのも悪いけど、それでも母親だったら娘に折れてくれてもいいじゃないか。
それこそ良好なスキンシップの一部じゃないのかよ。

かずさ「わかった。わかったよ。……で、何の用?」

 ここは大人のあたしが折れるべきだな。だって、面倒だし。

曜子「ん? えっと、……そうそう。ニューヨーク行きの事よ」

かずさ「ああ、あれね。そろそろホテルの予約取ろうと思ってたんだ。あと練習の為の
  スタジオも借りようと思ってるんだけど、どこかいいとこ知らない? ホテルはどうにか
  なりそうなんでけど、さすがに練習スタジオの方はなかなか探せなくてさ」

曜子「あなた、今頃になってホテルと練習用のスタジオを探しているの?」

かずさ「そうだけど?」

 今まで大人の対応をとってきたあたしであってもさすがに母さんの馬鹿にしたような、
呆れたような、……いや、百パーセントあたしのことを馬鹿にしているし、呆れてもいる顔を
みて、あたしの理性はあと少しで吹き飛びそうのなってしまう。
 きっとあたしの目はつり上がり、高校の教室だったらたった一人を除いてけっしてあたしに
近づく事もない雰囲気を醸し出しているっていうのに、この母親は……。
 どうして人の怒りに無頓着なんだよ。

曜子「もう9月よ9月。そしてコンクールは10月よ。わかってるの、かずさ?」

かずさ「わかっているから一カ月も前に予約しようとしているんじゃないか」

 あたしの優等生的発言に、あろうことか母さんはため息で返事を返してくる。
 ぴくりとあたしのこめかみが震えたのはこの際無視だ。怒ったら負け。
この人に常識はないんだから、あたしがしっかりしないと。

曜子「あなた大丈夫? ほんっとピアノ以外は全く駄目ね」

かずさ「どういうことだよ?」

曜子「いくら来年のジェバンニの前哨戦の位置づけになっている腕試しの
  コンクールといっても、みんなジェバンニにあわせて練習してきているのよ」

かずさ「わかってるよ、そんなこと」

曜子「わかってないわ。わかってないから練習場の確保もできていないんじゃない」

かずさ「どういう意味?」

曜子「みんな本気だってことよ。いくら本番が来年のジェバンニだろうと、ここで好成績を
  残せないようなら来年も駄目って事よ。だからみんな必至だし、練習場の確保だって
  しっかりと準備をしているの。あなたみたいに直前になって探し出すなんてありえないわ」

かずさ「えっと、そのさ」

曜子「なに?」

かずさ「ううん、なんでもない」

 さすがのあたしも母さんのいっていることがわかってくる。別に母さんはあたしを馬鹿に
していたわけではなかった。
 馬鹿だったのは、もしかしてたあたし、なのかもしれない。
 だって、母さんのいう通りピアノ以外はてんで駄目で。

曜子「しかもニューヨークよ。あなたニューヨークに詳しいわけでも、ましてや現地で
  サポートしてくれる親しい人がいるわけでもないのでしょ。まあ、ウィーンでも
  引きこもりのあなたに手を貸してくれる人なんてフリューゲル先生くらいかしらね」

母さんが言ってる事は、ほんとうに悔しいけど、正しい。ピアノに関しては妥協しない人だ。
 あたしもピアノに関しては最大限この人を尊敬しているし、目標にもしている。
 でもあたしは、この人を追いかけるためのスタート地点にさえたてていないって
実感させられてしまう。
 いくらピアノがうまくても、それだけで母さんが今の地位を築き上げたわけではない。
 ウィーンに来て、むりやり母さんのコンサートの事前準備に連れて行かれた時は途中で
逃げ出そうとさえ思っていた。
 だって会議を見ていても理解できないし、まあピアノに関してならわかるけど、
でも、スポンサーやら演出なんてものはさっぱりだ。でも、何度も連れられて行くうちに、
ピアノのコンサートは一人では成功させられないってわかってしまった。
 そういやこんな事も言ってたっけ。

曜子「演奏家はパトロンとまではいかないまでも、自分をサポートしてくれる人や企業が
  いなければ演奏さえさせてもらえないのよ。突き抜けた才能があればいいって思うかも
  しれないけど、その才能も、その才能を買ってくれる人がいなければ成功しないわ。
  だって、その才能で買い手の心を動かさなければいけないのよ。それはもちろんお金が
  からんでくるけど、無愛想な態度をとっていたらせっかくの演奏も駄目になってしまう
  わよ。まあ、ね。演奏家は一応どこでも演奏できる分いいかもしれわね。この前私の
  スポンサーになってくれてる企業の人と話していたんだけど、F1? あの車の」

かずさ「モナコに行った時の?」

曜子「そうそう。クルーザーでF1観戦できるっていうから行ってみたけど、
  つまらなかったわよね。ちょこっとしか見えないし」

かずさ「母さんは途中で飽きちゃって話に夢中だったじゃないか。たしかF1よりもカジノに
  夢中だった気がするけど」

曜子「そうそう。カジノね。……まあカジノは楽しかったけど、あの見ていてもつまらない
  F1? あのドライバーになる為に億単位の、しかも二桁の億の持参金がいるんだって。
  笑えちゃうわよね」

かずさ「でも、トップドライバーはそうでもないんだろ?」

曜子「そうらしいわね。でも、ほとんどが持参金しょってくるそうよ。……ねえ、かずさ。
  わかる?」

かずさ「なにがだよ」

曜子「私は自動車レースのことなんてからっきしわからない。きっと私が馬鹿にしているF1
  も、仮にも世界最高峰のレースらしいから、そのレースに出場しているドライバーも
  突き抜けた才能をもっているのでしょうね。でも、この持参金をもってくるドライバーが
  多いって事はね、お金がないけど突き抜けた才能を持ったドライバーもF1には
  出場できないけどたくさんいるってことだとは思わない?」

かずさ「かもしれないけど、あたしは……」

曜子「これだけは覚えておいてちょうだいね、かずさ。あなたは、今は、ピアノだけに
  打ち込んでいていいわ。むしろピアノだけをみていなさい。でも、ピアノで成功する為
  にはあなたをサポートしてくれる人がいなければ成功しないという事を忘れないで頂戴ね」

 あまかった。今頃になって思い出す事じゃない。
 あたしの理解できることなんて子供じみた小さな理解だ。
 でも、あたしがピアノだけを弾いていればコンサートが成功するなんて事は絶対にないって
ことだけは理解できた。
 だから今回のコンクールも、実際ピアノの良しあしで判断されるとしても、コンクール前の
準備も今後行われるコンサートと同じように事前準備が重要だったんだ。
だからこそ母さんはあたしにそれを強く指摘してきたんだ。
 母さんの口調がいつも通りすぎて、あたしはついはむかってしまったけど。




第51話 終劇
第52に続く



第51話 あとがき


ようやくかずさが動き出し始めたわけですが、
ピアノのコンクールについては詳しくないのが痛いところです。
とりあえず架空の都市ニューヨークだと思って下されば助かります。


来週も月曜日に掲載できると思いますので、
また読んでくださると大変嬉しく思います。

黒猫 with かずさ派

このページへのコメント

更新お疲れ様です
すぐに読みました。かずさ始動。次回も楽しみです

0
Posted by バーグ三世 2015年06月24日(水) 02:00:47 返信

更新お疲れ様です。
春希と麻里さんの共同生活はお互いの役割り分担をキチッと決めようとするところ等初々しい始まりですね。その一方でそんな2人の住むNYでかずさのコンクールがあるというこの作品のお約束ですがコンクールの前か後に春希とかずさのもしくはそこに麻里さんを交えての展開があるのでしょうか?
次回も楽しみにしています

0
Posted by tune 2015年06月22日(月) 17:58:16 返信

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