まえがき

16 :名無しさんだよもん [↓] :2012/01/18(水) 19:33:40.01 ID:yospO/7f0 (1/27) [PC]
SS投稿しまーす。スレ4杯目の前、航空機の中でのお話。
冬馬邸は依然ハードル高し。



―Ladies and gentlemen, the seatbelt sign has been turned off,however,please keep your seatbelt fastened whenever you are seated.―
(皆さま、只今ベルト着用サインは消えましたが、飛行中の急な揺れに備え、おすわりの間はそのままシートベルトをお締めおきください。)

春希  「…ちょっと、落ち着いたみたいだ」
かずさ 「…飛行機が、か?おまえが、か?」
春希  「…両方」

…日本は、雪菜の国、は、もう見えなくなっていた。だから、どうしたってわけでも、どうしようも、もう、ないけれど。
でも、かれこれ数十分も醜態をさらしたおかげで、多少は気が紛れた、のかな。

かずさは、静かに微笑んでる。痛みと、幸せを感じさせる。
あの駅で、俺を選んだときのような、笑顔。

俺は、見ていられない。
だって…、綺麗で、馬鹿みたいで。
…たがが、はずれそうに、なるだろ?

春希  「なんだか喉が渇いたな。サービス、もうすぐだっけ」
かずさ 「もうお前のとこには来ないんじゃないか。離陸前にシートベルト確認しにきてたけど、結構引いてたぞ。ありゃもう、確実に乗務員のサカナになってるな」
春希  「やめてくれよ…。なんで客の立場でいじられなきゃいけないんだよ」
かずさ 「いじられるような真似してたからだろ?」
春希  「そりゃそうだけど、さ」
かずさ 「いいよ。あたしの分わけてやるから」
春希  「もらえないのはもう決定かよ…」

かずさ 「…なんなら、あたしが、さ、口移し、で…

乗務員 「ドリンクのサービスはいかがですか?」
かずさ 「!ひゃい!は、はい、いた、いただきます…」
春希  「…こちらも、お願いします…」

乗務員 「それでは、こちらをどーぞ。わたしのおすすめです。アップルジュース。んーでも、お酒の方がいいですかね?」
春希・かずさ 「いやいやいや、け、結構です」
乗務員 「そう?うん、それでは、素敵なお空の旅を。アップルジュース、おいしいですよ?
     …涙と彼女のキスの味には、かなわないと思いますけど♪」

春希  「…これで、お前も人のこといえなくなったな。なかよくサカナの仲間入りだ」
かずさ 「うるさいっ」

だから、おまえもあんまり、羽目をはずすなよ。




―The weather enroute should be generally good, but we might have a few choppy areas,So I do recommend you to keep your seat belt loosely fastened while you are seated against unexpected turbulence.―
(航路上の天候はおおむね良好ですが、ところどころ気流の悪いところを通過する可能性もございますので突然の揺れに備えてベルトは軽くお締めおきください。)

かずさ 「ったく、ほんとうに、なんなんだよさっきの乗務員は!」
春希  「まだいってんのかよ。いい人だった、んじゃないか?多分。態度はあれだ、親しみこもりすぎだったけど」

もらったアップルジュースを一気飲みし、機内食が運ばれてきても、まだかずさは憤慨していた。

かずさ 「あれが乗務員の乗客に対する態度か?ったく、せっかく、せっかく、…いいところ、だったのに…」
春希  「ま、まあ気を取り直してさ、この機内食なんか、結構いけるぜ?」
かずさ 「…どこがだよ、お前ほんとうに貧乏舌だな。こんなもん食えるか!」
春希  「ひとくちも手をつけてないくせに、よく言うよなお前は。野菜が多いからって、好き嫌いはだめだって何度もいってんだろ?」
かずさ 「おまえが勝手に和食の方選ぶからだろうが!」
春希  「こっちの方が栄養バランスとれてるの。体にいいの。だから文句いわずにちゃんと食え」
かずさ 「やだね。こんなもん食べるくらいなら空腹でいるほうがまだましだ」
春希  「っんっとうに。お前はなんでそうなんだ。あの部、屋、に…

あの、部屋に、いた、ときは。

かずさ 「…春希」

なんだよその顔…。さっきまで、怒ってたくせに。

春希  「っ、あの部屋にいたときはもうちょっと素直だったのに、なんでお前はそうなんだよ」
かずさ 「…だって、あれは、お前が作って、くれてただろ?」
春希  「!お、お前…。い、いや、レトルトで済ましてたときもあっただろ?」
かずさ 「それも春希が用意してくれたものだ」
春希  「それは、そうだけど…」
かずさ 「あたしは、お前が用意してくれたものだったら、何でも食べるよ?我慢して、食べる」
春希  「…嘘つけ。食べないものもあったし、文句も言いまくってたくせに」
かずさ 「文句はいうよ?お前貧乏舌だし、料理ヘタクソだし。それに、もしあたしに食べないものがあったとしたら、それはお前のサービスが足りなかったせいだ」
春希  「サービス、ってお前…」
かずさ 「さしあたって、これをあたしが食べるには、食べてやるためには、そうだな、何をしたらいいと思う?春希」
春希  「…お前、ワガママ全開だな…」
かずさ 「答えになってない。…さあ、どうしてくれるんだ?春希…」
春希  「…」

かずさ、お前、どういうつもりだよ。

春希  「…ほれ、…あーん」
かずさ 「…残念だな、春希。…不正解」
春希  「…え?」

なんで、そんな。

かずさ 「…そんなんじゃ、足りない、っていってんだ」
春希  「足りないったって、お前。これ以上、は…」
かずさ 「…そんなんじゃ、もう、足りないよ、春希…」

俺を、気遣ってるのか?
それとも…
どっちにしたって、今の俺たちには劇薬だって、ほんとうにわかってんのか?
俺が、おまえに逆らえないって、ちゃんとわかってんだろうな?

…箸に持っていた具材を口に咥え。
かずさの唇に、触れるか触れないか…。

かずさ 「…惜しかったな、春希」



―Please return to your seat. We're entering a pocket of turbulence.―
 (乱気流に突入しますので、お客様は席にお戻りください)

Haruki's side

春希  「…悪い、食ったら眠くなってきた。疲れもちょっと残ってるから、少し眠るわ」

かずさの食事に一時間ほど費やした後、俺はそういって目を閉じた。
…これ以上、かずさの誘惑に耐えられる自信がなかったから。
…一度自分を許してしまえば、かずさに溺れて、先が見えなくなる自信が、あったから。

それに。
雪菜、みんな。
俺は最低だ。

あれだけ最低な別れを、何度も、何度もしてきたってのに。
いまさら、別れを実感するなんて。最低にも程がある。
俺が、どれほどのものを失ったかを、いまさら。
馬鹿で、最低で、救いようがなくて。

でも、大丈夫。俺は、大丈夫。
これは、言い聞かせてるんじゃない。
わかってることだから。

もう俺は、この悲しみを「二度と手の届かないもの」して、扱える。

だって、かずさがそばにいるから。
かずさがいてくれればそれだけで…

せめて、夢は見ないように…

―In A Dream―

気づけば、雪原に立っていた。

そして、目の前には―


寒い。

ここは、寒い。

「ここだけじゃなくて、色々思い浮かんだんだよ」

寒い、寒いよ。

「おかしいよね…まだ色々あるんだよ?
 もっと楽しい場所、たくさんあるんだよ?」

もういい、もういいからやめてくれ。

「けど、どうしても、どうしても…
 この場所に、向かってしまっていたんだよ」

ごめん、ごめん。

「全部塗り変わっちゃったみたいだね。
 あなたとの思い出は、もうここにしかないみたいだね」

そんな、ことは。…その、通り、か。

「…別れの、中にしか」

ああ、ああ、

その通り、なんだ。



でも、寒い。

だから、寒い。

ここは、寒いんだ。

もうやめてくれ。

俺が間違えた。

知ってるんだ。

知っててこの道を選んだんだ。

ああ、なら、寒いのは、当然か。

このまま、凍えてゆけばいいのか。

この、もう俺には熱をくれない、もう俺のせいで熱をもらえない、雪の上で。




でも。

でも!

許されないのはわかってる。

でも

何か

あたたかな。




…あ、雪?




…粉雪が、舞い落ちて。




…あたたかな。




…俺に、熱をくれる。あたたかな。




「大丈夫…もう、大丈夫なんだよ、わたし。
 だって、みんながいるもの」

ごめん、ごめんな。

「家族も、友達も、会社の人たちも…
 みんな、わたしを支えてくれる、護ってくれる」

俺は、支えてやれない。

「だから、たとえどんな大きな傷だって
 いつか、塞がるよ」

俺は、癒してやれない。

「それじゃあね、春希くん…」

…ああ、

「お幸せ、に」

…雪菜…、幸せになるよ。


―Out of A Dream―

俺は、鋭い痛みに、跳ね起きた。

春希  「!!っつ!いっつ!!なに?!なに?!」
かずさ 「うるさい!周りに迷惑だろうが!何騒いでんだ!」
春希  「いやっ!顔が、つーか唇が痛、って、血?!」
かずさ 「うるさいうるさい!ぐだぐだいってないで手当てしてこい!」
春希  「いや!なにがどうなって…
かずさ 「どうでもいいし知ったこっちゃない!とりあえずさっさと洗面所いってこい!
     …その間、乗務員呼んどいてやるから」
春希  「あ、ああ。???」

なんなんだよ一体…





春希  「痛!ってこれなんだよ。…何かが食い込んだような…」

洗面所で顔を洗って、傷口を見てみると、唇にわけのわからない傷があった。道理でしゃべるたびに痛むはずだよ。
それにしても、犯人は、…もう既に特定してるんだけど。動機と、凶器は一体なんなんだよ。
本当に、どうして急にこんなわけのわからないことをするかなあ。

と、恨めしい思いでうんうんうなっていると、洗面所のドアがノックされた。

乗務員 「すいませーん。えーと、北原さーん。生きてますかー?」

…かずさ、なんでこの人だよ。さんざん罵倒してたくせに。
聞き覚えのある声に、多大なるめまいを覚えながらドアを開く。

春希  「…ええ、もとから命に関わるようなけがじゃないんで。というかあんまり大きな声ださないでください。他のお客さんに迷惑ですから」
乗務員 「わーお、お客様に叱られちゃった。しかも立場が全く逆な感じで。…でも、命に関わるようなけがじゃないんですか?ほんとにー?」
春希  「ちょっと唇にけがをしてるだけですよ。おかげでしゃべるたびに痛むんですから無駄にしゃべらせないでください」
乗務員 「…たぶん、ちーっとも無駄じゃないと思うよー?」
春希  「…え?」
乗務員 「そのけがができたわけ、知りたくない?」



―Please return to your seat. We're entering a pocket of turbulence.―
 (乱気流に突入しますので、お客様は席にお戻りください)

Kazusa's side

かずさ 「ったく、本当に寝こけやがって」

食事の後春希は、疲れてるからちょっと眠るといって、目を閉じてしまった。
その嘘は見破ってたけど、でも疲れてたのは本当だったらしい。今は、聞こえるか聞こえないかの、愛しい、寝息を立てていた。

かずさ 「お前は、さあ、あたしのこと、どう思ってんのか、な」

気遣いだとか、そんな見当違いのこと、思ってたんだろうか。そんなこと、これっぽっちも考えてないのに。
この想いが、お前の負担になるなんてこと、百も承知だってのに。

かずさ 「お前は、さ、やっぱりあたしのこと、何もわかってないよ」

雪菜は、彼女は、音よりも速い速度で、遠ざかっていった。
ここはまだ、ウィーンじゃないけど、もう日本でもない。

お前が、雪菜のこと、一生忘れられないってわかってる。
でも、もうお前は、一生、ずっと、ずっと、あたしのものだ。

…だから、もういいだろ?
あたしが、どれだけ我慢してきたと思う?
お前に生殺しにされて、どれだけ胸を焦がしたと思う?
あの部屋で、お前の胸に抱かれている間、どんなに幸せで、どれくらいの苦痛を必死で抑えていたと思う?

お前は、そんなの俺も一緒だ、って言うかもしれない。でも、それは認められないな。
…お前はあたしを愛してくれてる。それは、いい加減信じてるよ。
お前が、自分のことよりも、あたしのこと、愛してくれてる、ってこともな。
でも、お前のあたしへの想いは、あたしのお前への想いには、一生届かない。届かせてなんかやらない。
お前は、そんなの認めないだろうけど。

お前はほっといたら、向こうについてからも色々理由をつけて引き伸ばしかねないからな。
お前の詭弁にかなわないのは、わたしが一番よく知ってる。だから…。

だから、もういいよな?

春樹は、相変わらず、愛しく、寝息を立てている。

あたしはシートベルトをはずし、その頬に手を寄せ
二度目の間違いを、いや、二度目はきっと、間違いじゃない―

春希  「…ぅ、…ぁ、ぁ、ぁ」

でも、届く前に、春希の顔が、苦痛に歪んだ。



かずさ 「…春希?」
春希  「ぅ、ぁあ、ぅぅぅあ」

春希の頬に、とめどなく、流れていく。

春希  「ぅぅああ、ぃぅ、ぅ、ぅ…」
かずさ 「春希…」

何が、そんなに悲しいんだ?
何が、そんなに苦しいんだ?
心当たりはひとつだけど、でも、きっとたくさんあって。
あたしには、わからないよ。
でも。

春希  「…ぃぅぅ、うぁぁ、ぅ、ぅぅ…」

わからないけど、できることはある。

あたしは、春希の胸に手を当てて、髪から頬をなで。
顔を寄せて、春希の頬に舌をあて、春希の涙を、舐めとる。

春希  「…ぅぅ、ぅぁぁ、ぁぁ…」
かずさ 「…春希…」

春希…、泣いていいよ、あたしが慰めてあげるから。
お前の涙は、あたしが舐めとってあげるから。いつまでも。
いつか、泣く必要が、なくなるまで。

かずさ 「…」
春希  「…ぅ…ぁ」

春希が、少しづつ、少しづつ、落ち着いていく。
その間あたしは、春希の苦しみを漉しとって、取り込む。

なあ春希。いま、どんな夢を見てる?
あたしは、お前を癒せたかな?
少しは、お前の役に立てただろ?

だから、ご褒美をくれよ。
あたし、頑張ったよな?

だから、あたしに、その唇を―




かずさ 「…はる、き」
春希  「せ、つな」




―あたしのこころのなかで、なにかが割れる音が、した。
―春希は、もう、落ち着いたみたいだった。






―なら、もう、いいよな?







春希に口付ける。
あくまでも優しく。
いま起こしてやるつもりはさらさらなかった。

春希、これからも、お前が泣いていたら、いつだって慰めてやる。
お前の苦しみを、これからもずっと、取り除いてやる。

けど、いまのは、ぜったいに。




―春希この野郎!!

春希  「!!っつ!いっつ!!なに?!なに?!」

馬鹿が跳ね起きてうるさかったので、とりあえず追い出した。

あたしは、どたばたと洗面所の方に向かう馬鹿と目をあわさずに
視界にいれずに。





くそっ、くそっ、あの馬鹿!馬鹿!!馬鹿野郎!!!
ああそうさ!いつだって、いつまでだって、あの馬鹿を慰めてやるさ!

けど!
あたし以外の女の名前を!あいつの、名前なんかを!夢の中で呼びやがったら!

あの馬鹿が落ち着いた後で!
あの馬鹿の苦しみを舐めとってやった後で!

噛み付いてやる!!絶対許さない!!

二度と、いうなとは、言わない…、けど、けど!



―何度でも、噛み付いてやるからな!!!



―We're in turbulence―

春希  「…」
乗務員 「というのが、私の見てた一部始終。あなたたち、そのラブラブっぷりで機内の話題の的なんだから、そこらへん自覚しないと」
春希  「…覗きをしていい理由には、全くなってませんよ」
乗務員 「なーにが覗きですか、公共の場でやってるほうが悪いんでしょ。それにいーじゃん。私が見てたからこそ、こうやってあなたに伝えることができたんだから。彼女の献身っぷり」
春希  「…で、最後にあいつが噛み付いたのは?」
乗務員 「そこまでは私にはわかりません。本人に聞いてくださーい。でも、彼女がキスする前にあなたの唇が動いたのはみえたなー」
春希  「…あなたはアフリカの出身ですか?というか、どこから見てたんですか?」
乗務員 「えーと、三文字?の何かをいったんじゃないかな、あなたが。そこで彼女がピタッと止まってさ」
春希  「…そう、ですか」
乗務員 「…心当たり、ある?」
春希  「…ええ」
乗務員 「…なら、頑張んなさい!」
春希  「…はあ。まあ。」
乗務員 「なーによその感じ。いまどきあんな一途なコいないよ?もっとはりきって、しっかりつかまえなさいよ」
春希  「いえ、あなたに励まされてることが腑に落ちないだけなんですけど。でも、ま、ありがとうございました。いや、本当にありがとうございました。
     …おっしゃる通り、しっかりつかまえますよ。…二度と離れないように」
乗務員 「…そ。ほら、ガーゼとか、その他もろもろ。やったげよか?」
春希  「…持ってきていただいただけで十分です。まだ、使いませんし。
     …今から少しの間は、邪魔になるだけですから」


…かずさ!


乗務員 「…なによ。泣き顔がかわいいだけのコかと思ったら。…かっこいいじゃない」


…かずさ!!


俺が座席に戻ったとき、かずさは席にすわったままだった。
ひざを抱えて。ついでに、おれにそっぽを向いて。

春希  「…かずさ」
かずさ 「…なんだよ、馬鹿」

そんなことをしても、すぐにばれるのに。

春希  「…こっち向けよ」
かずさ 「…いやだ」

お前が、泣いていることなんて。

春希  「いいから、こっち、向いてくれよ」
かずさ 「…ぜったい、やだ」

俺は、かずさの頬に手を当てようとして―

―かずさに手をつかまれた。

…その手には、ピアニストの握力全開の、折れんばかりの力が、込められていて。

春希  「…かずさ、痛いよ。手も、…唇も」
かずさ 「!うるさっ

かずさが、文句を言うために、やっと振り返ってくれた。


そして、俺は、唇を―

春希  「ん…」
かずさ 「〜〜!」

―奪う。


かずさの頭を押さえ、驚きを唇で覆い隠し。

かずさ 「んんんんん〜っ、ん…あ、ん、んく…ん、ん〜っ!」

唇を舌でなめまわし、割り開く。…かずさの動揺なんて、まるで意に介しないまま。

かずさ 「ふむぅっ?ん、んぅ…ん、んぅぅぅぅっ」

歯の裏を、上あごを、舌の届くありとあらゆる場所を舐めまわし、かずさの舌を絡めとる。
俺の唾液を、血を、かずさの中に流し込む。飲み込ませる。

かずさ 「んんぅ、ちゅぷ、ん…んぅ、はぁぁ、あむ」

…そんな、一方的で、一歩も引かない、傲慢で、いやらしい、キスをした。




かずさ 「ぅ…ぅええっ…ふぅぇぇっ…ぅ…ぅ」
春希  「…かずさ…かずさ…、ごめんな…」
かずさ 「…うるさぃ…ぅ…ぅぇ…ばか…ばか!」
春希  「…ごめん…ごめん」
かずさ 「…はるき…はるきぃ…」
春希  「…かずさ…」
かずさ 「ん!んぅ…ん」
春希  「〜〜!」




…あの後、いい加減にしろと乗務員に「逆に」しかられたり、乗客に面白半分にはやしたてられたり、二度目の機内食に2時間かかったり、まあ色々あったけど。
今は、もう終わりに近づいた空の旅を、静かに満喫していた。

かずさ 「…なんだ、春希、眠いのか?」
春希  「…ああ、少し」
かずさ 「…心配すんな。またうなされてたら、あたしがなぐさめてやる。お前の苦しみを、あたしが舐めとってやる。
     …で、またお前が雪菜の名前を口に出したら、思い切り、噛み付いてやるから」
春希  「…最後のは、勘弁してくれないかな」
かずさ 「…馬鹿いうな。それで許してやるなんて、こんな心の広い女、世界であたしくらいだぞ?」
春希  「…そうかもな。…ごめんな」
かずさ 「…あやまるな。…ばか」

ウィーンは、もう、あと少し。かずさの国まで、あと、少し。

春希  「…なあ、かずさ」
かずさ 「…なんだ」
春希  「…俺も、そうなんだけどさ。やっぱりお前、駄目な女だよな」
かずさ 「…え」
春希  「…おまえのせいで俺、どんどん駄目になっていくよ」
かずさ 「は、るき?なん、で、なんでそんなこというんだよ」
春希  「…ちゃんとさ、我慢しようと思ってたんだけどな」
かずさ 「なに、を、なにをいってるんだ?春希、なあ!」
春希  「…でも、やっぱ無理みたいだ」
かずさ 「…やめろよ、やめてよ」

春希  「…なあ、かずさ」
かずさ 「!やめろっていって

春希  「…俺、今夜、お前を抱きたい」


かずさ 「…へ?!は?!え?」
春希  「…だめか?」
かずさ 「え、いや、お、お前、な、なにいって」
春希  「…だめ、か?」
かずさ 「だ!だめ、とかそういうことじゃなくて、だな、お、お前、そんな」
春希  「…だめ、か…」
かずさ 「!だめなわけないだろ、ばか!…う、いや、その…」
春希  「…いいのか?」
かずさ 「…な、んで、あたしが、断るんだよ。あたし、だって、あたしだって、ずっと、ずっと…」
春希  「…お前のせい、なんだからな?」
かずさ 「…なにが、だよ」
春希  「お前が、そんなにも、可愛過ぎるからいけないんだ」
かずさ 「〜〜〜!」
春希  「…わかってるんだよ。わかってたんだ。一度破ってしまえば、歯止めが利かなくなるって。
     だから、必死で我慢してたのに」
かずさ 「…」
春希  「…もちろん、けじめはつける。お前を護るために、俺はいるんだから。でも、それまでは…」
かずさ 「は、るき」
春希  「…お前を、ぐちゃぐちゃにしてやる」
かずさ 「っ!!!!」

もうすぐ、機は着陸態勢に入る。…依然、乱気流のまま。

あとがき


…やっと終わった。お目汚しとか色々すんませんした。(作者の使い勝手的に)
スーパー乗務員さんが登場するよ!

2012/1/28 作 再編
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