第62話




麻理「まあいいわ」

 曜子さんに似てきたのではないだろうか?
 麻理さんも曜子さんも見た目は若々しくて、
同世代の女性と比べるのがかわいそうなくらいなんだよな。
 でも中身は魔女って感じで、ある意味内面が外面ににじみ出てしまったとも言えるか。

麻理「ねえ、春希?」

春希「なんでしょうか?」

麻理「今、失礼な事を考えていなかったかしら?」

 半眼で睨んでくるその美しすぎる人は、俺の心を覗いているようで……。

春希「いいえ、そのような事はないと思いますよ」

麻理「そうかしら?」

春希「ただ、麻理さんは年齢の事を気にしているみたいですけど、俺がからすれば気に
   する必要がないくらい綺麗で、しかも活動的だなって思っていただけですよ」

麻理「ほんとうにそれだけかしら?」

春希「それだけですよ」

 なおも半眼で俺の黒眼の奥を覗き込んでくる魔女は、俺をとられて離してはくれない。
 これこそが曜子さんばりの魔女っぷりなんだろうけど……、
これ以上こんなことを考えていると、本当にやばそうだな。

麻理「まあいいわ。そう言う事にしておくわ」

春希「ありがとうございます」

麻理「お礼をしてくるなんて、やっぱり後ろめたい事を考えていたのね」

春希「……あっ」

 やっぱり曜子さんレベルの魔女じゃないですか。

麻理「まあいいわ。それに、春希が綺麗だって誉めてくれたのだから、それだけで満足しておくわ」

 今度こそこの話題は終わりのようで、
俺をからかって大変満足しましたという顔を俺に見せつけてくる。
 その笑みを見てしまうと、これも悪くはない関係だと思えてしまう。
むしろ今後も続けばいいとさえ思えてしまった。
 それほど穏やかで、かけがえのない時間であった。

春希「その……年齢の事を話題にした後で悪いのですが、麻理さん。誕生日おめでとうございます」

麻理「いつか言われると思っていたけど、ありがとうと言っておいた方がいいのかしらね」

春希「誕生日を共に祝う事が大事じゃないですか。佐和子さんだって仕事がなければ
   ニューヨークに来る予定だったのですから。あとで電話くらいは来るかもしれませんね」

麻理「佐和子は……、その、ね。仕事は……」

春希「なんですか?」

 どうも麻理さんの様子がおかしい。
 先ほどまでの曜子さんばりの態度が一変してしまっている。
今や曜子さんにからかわれている時のかずさ並みにうろたえていた。
 ……両方見られてラッキーとか思ったら、
さっきみたいに心を読まれてしまう気もするからよしておこう。

麻理「……はぁ。いいわ。どうせあとで佐和子がわざとばらしてしまうでしょうから、
   私の口から言っておくわね」

春希「はぁ……? 麻理さんがそうしたいのでしたら」

麻理「佐和子は日本で一人悲しく正月を迎えているわ」

春希「急に仕事が入ったのですからしょうがないじゃないですか。それだけ責任がある
   ポジションについたわけですし。ただ、管理職も辛いとか言ってましたから、
   こういうときは大変ですよね」

麻理「管理職も辛いと言っていたのは本心でしょうけど、仕事は休みよ」

春希「ほんとうですか? 休みがとれるようになってよかったですね。それでしたら
   ニューヨークにきてもらえばよかったじゃないですか。それともサプライズで
   ニューヨークにくるとかですか? いや、俺にサプライズしても意味ないか……」

 どうもさっきとは違うため息を深々と麻理さんがついていた。
 どこかでみたことがあるため息で、
きょとんとしている俺を見るほどテンションが下がっていくようでもあった。

麻理「違うわよ。佐和子は最初から急な仕事なんて入っていなかったのよ」

春希「はぁ……」

麻理「まだわからないのかしら?」

春希「予定通り休みが取れて良かったですよね?」

麻理「それだけなの?」

春希「あとは、どうしてニューヨークに来なかったんですかね? 来る予定でしたよね?
   ……あっ、麻理さん。佐和子さんと喧嘩したんですか? 早く謝ったほうがいいですよ。
   いや、麻理さんが悪いという意味ではなくてですね。喧嘩はどちらかが一方的に悪いと
   いう事はないんです。たとえ佐和子さんの方に非があるとしても、麻理さんの方から
   歩み寄ってですね。仲直りをすべきです。それに、今日はちょうど元日ですから、
   新年のあいさつを口実に電話することもできるじゃないですか。
   今電話とってきますね。ちょっと待っててください……」

麻理「あっ、春希っ。電話はいらないから」

 勢いよくソファーから立ちあがった俺を麻理さんは慌ててひき止めようとする。
 振り返ると、麻理さんが手にしていたグラスの中の水が波打ち、こぼれそうになっていた。
だから俺は手を伸ばしてグラスを抑え、水がこぼれるのを防ごうとした。
 けれど、俺の行動に驚いたのか、今度は麻理さんの体自体が揺れ動いてしまった為に、
なかなかグラスの中の水の揺れは収まりそうになかった。
 そういうわけでというのだろうか。俺は緊急処置として麻理さんの腰に手を回し、
麻理さんの体を固定させる。
これでどうにかグラスの水をぶちまけるという新年早々からの水害を回避できた。
ただ、俺の腕の中にいる麻理さんの状況はというと、平穏であるとは言えないようであったが。

春希「大丈夫ですか?」

麻理「……えぇ」

 体が熱い。おそらく麻理さんもだろうけど、新年早々何をやっているんだっていう状況だ。
 ここに佐和子さんがいたら何を言われるか簡単に想像できてしまう。
 ここにきて、俺はようやく佐和子さんが何故ニューヨークにこなかったかを理解する。
 だから麻理さんは電話する必要がないっていったのか。
 つまり佐和子さんは、麻理さんと俺を二人っきりにする為にこなかったのだろう。

春希「早合点してすみませんでした。佐和子さん。気を使ってくれたのですね」

麻理「えっ。……えぇ、そうよ」

春希「それなのに俺ときたら……」

麻理「春希らしいとも言えるから気にしていないわ」

春希「本当に新年早々お騒がせしてすみませんでした」

麻理「別にいいわよ」

春希「そうですか?」

麻理「ええ、そうよ」

 そして麻理さんは、新年早々俺の心臓を鷲掴みする発言を囁いてきた。

麻理「それに、新年早々春希に抱きしめてもらえたもの。幸先のいい一年になったわ」

春希「あっ……」

 俺は今の状況に気が付き、逃げるように麻理さんから身を離そうとするが、
今度は麻理さんの腕によって俺は拘束されてしまった。

麻理「駄目よ」

春希「麻理さん?」

麻理「誕生日プレゼント。これでいいわ。もうちょっとでいいから、私だけを抱きしめて」

春希「麻理、さん……」

麻理「ね? お願い。少しだけでいいから」

春希「わかりました」

麻理「ありがとう」

春希「でも、麻理さんが手に持っているグラスだけはテーブルにおいてくださいね」

 麻理さんは俺の腰にまわした腕をほどくと、手に持っていたグラスをテーブルに置く。
そして言葉通り俺に抱きついてくるのかなと待っていたが、いっこうに動く気配はなかった。
 顎をあげ、麻理さんの瞳の先には俺がいるはずなのに、瞳だけは俺を捉えはするが、
体全体で抱きしめてはこない。
 怪訝に思って真意を探ろうと麻理さんの瞳を覗きこむが、
あいにく俺には相手の気持ちを読む能力は著しく欠けているようである。
むしろ麻理さんの瞳に吸い込まれそうになり、そのまま細い腰を抱き寄せたいほどであった。

麻理「春希……」

春希「はい」

麻理「誕生日、プレゼント。…………くれないのかしら?」

春希「あっ……」

 そういうことか。麻理さんから求めるのでなく、ましてや偶然でもなく、
俺の方から抱きしめて欲しいってことか。俺からのプレゼントであるわけだし。
 だったら最初から言って下さいよ、というべきではないことくらいは俺でもわかる。
だから俺は、返事の代りに麻理さんの体を抱き寄せ、光沢が織り込まれた黒髪に顔をうずめた。

春希「誕生日、おめでとうございます」

麻理「ありがとう、春希」

春希「こうして誕生日を祝えてよかったです」

麻理「去年は色々と迷惑をかけてごめんなさい」

春希「そんなことはないですよ。俺の方がたくさん麻理さんに頼っていますから」

麻理「でも、今年も迷惑をたくさんかけてしまうと思うわよ?」

春希「俺は迷惑だと思っていませんよ。むしろ俺を頼ってくれて嬉しく思っているほどです。
   だからこの大役、他の誰であっても譲る気はありませんからね。
   それが佐和子さんであっても」

麻理「そう……。ありがとう」

春希「だから、ありがとうは俺の方なんですって」

麻理「そう、ね……。でも今は、ありがとうと言わせてほしいわ」

春希「麻理さんが望むなら」

麻理「ありがとう」

春希「どういたしまして」

麻理「それと、これも一緒に祝っておこうかしら」

春希「何をですか?」

麻理「春希のニューヨーク支部勤務内定を。……しかも、このまま私の部下。幸せすぎて怖いわ」

春希「幸せすぎるという事はないと思いますよ」

麻理「そうかしら?」

春希「幸せなんて、幸せになろうと足掻いた人間のみが得られるものですよ。何もしないで
   願うだけでは幸せにはなれません。ましてや、幸せになろうとさえ願わない人間は、
   ずっと暗い闇の中で停滞するだけですから」

麻理「どうしてそう思うのかしら?」

春希「俺が幸せになろうとしてこなかったからです」

麻理「……春希」

春希「でも、今は大丈夫ですよ。幸せになりたいと思っていますから」

麻理「ほんとうに?」

 俺の胸に埋めていた顔をそのまま上にあげて見上げてきた麻理さんの表情は、
心から俺の事を心配している事が見受けられる。
 人の事を心配するよりも自分の事だけを大切にしなければならない状態であるのに、
麻理さんはどうしようもない俺をいつだって見捨てないでくれてきてくれた。
 日本で立ち直れたのは麻理さんのおかげだ。
だからこそ俺は、幸せになりたいと思った。北原春希を幸せにしないといけないと決意した。

春希「本当ですよ」

麻理「嘘なんてついていないわよね?」

春希「麻理さんに嘘をついてもすぐにばれるじゃないですか。だから麻理さんの前では
   いつも正直になれるんです。虚勢を張る必要もなくなったんですよ」

麻理「虚勢を張る事はなくなったかもしれないけど、頑張りすぎるところは変わらないのよね」

春希「その辺は根っからの性分ですから。
   自分を構成している根っこの部分は、そう簡単には変えられませんよ」

麻理「それもそうね」

春希「俺は、幸せになってはいけないと思っていました」

麻理「……春希。幸せになってはいけない人間なんていないわ」

春希「俺の悪友もそう言ってくれていましたよ。だけど、当時の俺は聞く耳を
   持たなかったんです。というよりも、幸せになる事が怖かったともいえますね」

麻理「どうして怖かったのかしら?」

春希「傷つけた人がいるんです。大切にしていた人を傷つけたんです。それも酷い裏切りで」

 麻理さんは俺から視線をそらさず、真っ直ぐとした瞳を俺に向けてくれていた。
 高校時代にあった事は、麻理さんには説明してあった。
だから、俺の言葉が意味する事はすぐにわかったはずだ。
 そして、北原春希という人間をそばで見てきてくれた人間であるば、
その北原春希がどう行動するか、どう行動してきたかを理解してくれる。

麻理「大切な人を傷つけた事は罪よ。でも、だからといって春希が一生幸せになってはいけない
   という理由にはならないわ。もちろん春希だって傷ついたからそれで十分よ、なんて
   甘い慰めはしないわ。罪を償ってきたからそれでいいじゃない、とも言わない。
   だって、いくら罪を償おうとしても、結局は自己満足だもの。傷つけた結果は消えないわ」

春希「……そうですね」

麻理「でも、傷ついた人もいつまでも傷ついたままではないわ。その人も、その人の力で立ち
   あがるわ。時間がかかるかもしれないし、周りからの協力が必要かもしれない。
   いつかはその人も、自分から幸せになろうと思わなければならないわ。傷ついても
   また幸せになろうとしない人間は、幸せにはなれない。
   そして今回の出来事においては、春希は手助けをする立場ではなかっただけよ」

春希「俺が側にいたら、また傷つけてしまいますからね」

麻理「それも考えすぎよ。どんな人間であっても、人を傷つける事はあるわ。それに、春希が
   もう一度その子を本気で幸せにしたいと望んでいたのなら、側にいたはずよ。
   でも、そうはしなかった」

春希「俺には他に幸せにしたい人がいましたから」

麻理「そうね。ようは、自分から行動しない人間は救われないって事よ。幸せになるうと
   しない人間は幸せにはならないし、傷を治そうとしない人間も傷はいえない。だから
   というわけではないけど、傷つけてしまった加害者も、傷つけた事実を忘れては
   いけないけど、幸せになってもいいはずよ。これが刑事事件にもなってしまう加害者・
   被害者の関係までいってしまうと私の理論は破綻してしまうけど、友人・恋愛くらい
   なら通用するはずよ。だって、人って思っているよりタフだもの」

 麻理さんの言っている事はわかる。麻理さんが必死に俺を励まそうとしている事が
伝わってくるから。
 麻理さん本人も、ちょっと反論を挟まれたらたじろぎそうな論理を組み立てているって
わかっているはずだ。ましてや、恋愛関係のもつれで体を壊してしまった麻理さんが
いるではないですか、なんて俺は責めるつもりもない。

春希「もう大丈夫ですよ」

麻理「そう?」

 なおも心配そうに見つめてくる瞳に、俺は安心させたくてしょうがなかった。
 なにせ麻理さんが幸せになる為には、この不安を解消させなければならないから。

春希「俺が幸せになってほしいと願う人間は、かずさと麻理さんです。
   でも、二人とも俺が幸せにならないと幸せになれないって駄々をこねるんですよね」

麻理「人聞きが悪いわね」

春希「でも、事実ですよね?」

麻理「……そうだけど、ちょっと心外かな」

 口をとがらせて不満を述べるその姿が愛らしくて、
だからこそ俺はこの人を幸せにしたいと強く望んでしまった。
 日本にいる彼女を不幸にしたことについて、武也たちは心のどこかで俺を裏切り者だと
今でも思っているはずだ。
ましてや、麻理さんとかずさを幸せにしたいと選んだ事を恨むかもしれない。
 武也は納得してくれるかもしれないが、依緒はきっと許せないだろう。
 だけど、俺が幸せにできる人なんて限られている。しかも、かずさと麻理さんの二人を
同時に幸せにすることなんて不可能に近いとさえ思えてしまう。
 だからこそ俺は、今手にしている二人を幸せにすることだけを選んだ。
他を切り捨ててでも、今手にしている二人だけはと願ってしまった。

春希「でも事実ですよね?」

麻理「そうだけど……」

春希「だったらいいじゃないですか。俺はもう不幸自慢をするのはやめたんです。
   幸せを掴むことだけを考えることにしたんですよ。それが難しい事だとしても、です。
   だから俺はこの手を離しません」

 そう麻理さんの耳元で告げると、腰にまわしていた腕に力を込めた。
 麻理さんからの返事はない。だけど、俺の腰にまわされた腕の力が強まった事は、
肯定の意味なのだろう。
そして俺達はちょっとの間抱き合った後、一人掛けのソファーで二人のんびりと正月を過ごした。







8月上旬


 開桜社に入社してもうすぐ半年。ニューヨークにやってきて1年。
 それに加えて、開桜社でバイトを初めて麻理さんの下で働くようになった期間を加算して
しまうと、もはや新入社員とはいえないのではないかと自分でも思ってしまう。
東京にいる編集部の先輩方なんて、遠慮せずに新人という名の名札を剥がしてきそうだ。
 もちろんそれはニューヨークでの編集部でも同じで、編集部での俺への対応は容赦なく、
これが普通の新入社員の扱いかと同期新入社員が怖がるほどである。おそらく数年後には
同じような対応をされるのだろうと怖がっているのだろう。
 ただ僭越ながら俺も一言言ってあげたい。偉そうな先輩風を吹かせるつもりもないけれど、
数年後と言わず、半年後、遅くても来年には同じような対応になっているはずだと言って
あげたかった。企業もいつまでも新人に優しくしていられるほど余裕があるわけではない。
 力がない社員はそれ相応のポジションに送られてしまうし、使える社員はこれもまた
それ相応のポジションに送られる。どちらのポジションが幸せかは人それぞれであろうが、
企業が優しくしてくれるのは、厳しいようだが使える人間のみである。
 そんな環境で働いてはいるが、また、アメリカだからというわけでもないが、
俺も休日はしっかりととるようにしている。
 まあ休日といっても今日は土曜日で、自宅で仕事をする日であるのだが。
 というわけで、俺も麻理さんも今日は自宅で仕事をしていた。
 自宅への連絡は基本メールがだが、携帯にかかってくることもしばしばある。
ただ、携帯にかかってくるという事は緊急事態の場合が多いわけで、
今も携帯の着信音を聞いた瞬間俺も麻理さんも身を固くした。
 ところが、麻理さんが携帯を手に取ると携帯の呼び出し音は鳴らされてはいない。
 不審に思って俺を見てくるが、携帯の呼び出し音はまだ鳴り続けていた。
 そこで俺の携帯電話を見る。どうやら俺の携帯電話が鳴っていたようだ。
 そもそもこれが平日ならば驚きはしない。俺が担当している仕事もあるわけで、
俺に直接かかってくる事もある。
 しかし土曜日の自宅での仕事は、俺は麻理さんの仕事のサポートのみであり、
俺の直接の上司は麻理さんであるわけで、
俺に何か伝える事があるとしたら麻理さんは携帯ではなくて口頭で伝えてくるはずだ。
 もちろん他の仕事に関しての連絡もあるかもしれないが、そもそも俺に指示を出すのは
麻理さんであるので、俺に聞くよりは麻理さんに聞いたほうが確実だ。それに、
編集部にいない俺に聞くよりは、編集部にいる他の部員に聞く方が早いとも言えた。
 いつまでも電話に出ないで待たせるわけにもいかないので携帯の表示を見ると、
知らない番号が表示されていた。

春希「お待たせしました。北原です」

女性「冬馬曜子事務所の夏目ジュリアと申します。
   開桜社の北原春希さんの携帯でよろしいでしょうか?」

春希「はい、そうです。どのようなご用件でしょうか?」

 電話からは流ちょうな英語を話す女性の声が聞こえてくる。
美代子さんじゃないんだな。ウィーンの方にも事務所があるらしいし、ウィーンからなのか?
 それにしても綺麗な英語を話す人だな。
 ニューヨークにきて、色んな地域からくる人間と話す機会があり、方言とまではいかないが
英語の話し方の違いくらいはわからるようになってきた。といっても、
俺の英語もつたないせいか、ニューヨークにきたばっかりのころは何度も聞き返されるレベル
ではあったが。もちろん麻理さんによる英才教育のおかげで、スパルタ教育ともいうが、
二週間もしないうちに解決はした。
 俺は冬馬曜子事務所の名を聞いて、すぐさま電話がかかってきた理由を考えてしまった。
 冬馬曜子事務所からの電話ならば、きっとかずさがかかわってくる。
それ以外は考えられないと言ってもいい。
 しかも、かずさからとなると、それなりに気持ちの整理というか心構えも必要なわけで。
 だから、俺の声には緊張がにじみ出てしまった。
 俺は電話の向こう側にいる女性に意識が向かってしまい、
麻理さんが不安そうな顔をしているのを、俺は気づくことなどできないでいた。
 麻理さんが俺の声の変化に気がつかないわけなんてないのに。




第62話 終劇
第63話につづく




第62話 あとがき


久しぶりに作っただけで全く手を出していないプロットを見てみたら、
作った本人さえ覚えていない現実……。
来週も月曜日に掲載できると思いますので、
また読んでくださると大変嬉しく思います。

黒猫 with かずさ派

このページへのコメント

更新お疲れ様です。
かずさが居たら激怒しそうな場面ですね。まあ居たとしたら麻里さんもここまでの事はしないでしょうけれど。
そうなると後は春希が麻里さんとの甘い生活にちゃんとケジメを付けられるかどうかでしょうか?
次回も楽しみにしています。

0
Posted by tune 2015年09月07日(月) 07:01:59 返信

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