「ん、うぅん……」
「ちゅっ、んむぅ……」

 抱き合ったまま唇を重ね、舌を激しく絡める。
 息を吐くのももどかしいと、雪菜の手が春希の頬を包む。

「雪菜……」
「春希くん……」

 春希の手は雪菜の胸に伸び、柔らかく包み込んだ。

「ちょ、ちょっと春希くん、ここでは待って」
「やだ。待てない」
「駄目だよ。部屋に戻ってからならいいから」
「それじゃあ意味ないんだ。せっかく海に来たのに」

 それでも外でこのまま行為に至るのには抵抗があるのか、雪菜はせめてもの抗議をした。

「……どんな理由なの?」
「部屋に戻ったら雪菜が水着着てる意味ないじゃないか。海に来てるんだから浜辺に出てしたい。
 でも昼間だと人目に付くのは明らかだし、何より雪菜の水着姿を他の奴らに見せるのは許せない。だから今の時間の浜辺で水着の雪菜とする」
「……そんな理由?」
「……駄目、かな?」

 雪菜は一つ溜息を吐いてから、呆れたような表情で苦笑いをした。

「……もう、しょうがないなぁ」
「じゃあ、いいのか?」
「あ〜あ、わたしも甘いなぁ。かずさを甘やかすあなたを何も言えないよ」
「でもお前は俺を待ってくれた。俺を許してくれた。俺を……愛してくれた」

 雪菜の表情が穏やかになり、春希の頬を包んでいた手を首に回す。

「だって、それがわたしだもん。何があっても、何度でも、わたしはあなたを愛し続ける」
「そうだったな。俺に何度裏切られても、俺を信じて待ち続けてくれた」

 雪菜の胸を愛撫していた春希の手が、水着をたくし上げて直に触れ始める。雪菜は一瞬だけ身悶えしたが、抵抗はしなかった。春希の行動に呼応するかのように雪菜の手も下に下がり、春希の水着の上から触れ始める。

「雪菜……?」
「わたしも、したい……」
「分かった。じゃあ頼むよ」

 そう言って春希は仰向けに寝そべる。雪菜は春希の顔の上に跨るように覆い被さった。雪菜はそのまま春希の水着からそそり立つ一物を取り出し、両手で包み込みながら上下に動かしつつくびれの部分を重点的に擦る。
 春希も雪菜の水着をずらして秘裂を露わにし、入り口を優しく擦りながら指を差し入れる。
 ジワジワと押し寄せてくる快感に業を煮やしたかのように、二人は示し合せたかのように舌を這わせ始める。求めていた刺激を受けて、二人の興奮は一気に高まった。

「ん、うぐぅ」
「んむ、じゅっ……」

 春希の口内に雪菜から溢れる蜜が注がれ、春希の口の端から零れて顎を伝って砂に染み込んでいく。雪菜の口は唾液で溢れ、春希の一物を根元まで濡らしている。
 春希は雪菜の宝石を剥き出しにして舌を尖らせて突き、更に舌を中に忍ばせていく。雪菜も負けじと春希の先端に尖らせた舌を差し入れ、強弱を付けながら吸い付く。
 その動きは徐々に大胆になり、淫靡に潤った口元の音が二人の耳から興奮を伝える。

「じゅく、んじゅ、じゅるる……」
「んふぅ、れる、じゅっ……」

 雪菜の腰がくねくねと妖しく動き、溢れる蜜が春希の口元をドロドロに湿らせる。春希の腰もビクビクと跳ね、雪菜の口内に深く入り込んで喉に届かんとする勢いで暴れる。
 そしてついに決壊し、二人の口中にお互いの興奮の証が溢れ返っていった。

「んぐ、んぐ、んぐうぅ……」
「じゅる、じゅるる、じゅるる……」

 口の中に溢れた愛情を、喉を鳴らして飲み込んでいく。そして波が過ぎた後、雪菜はぐったりと春希の上に力なく身体を預けた。

「雪菜……」
「大丈夫。ちょっと待っててね」

 少しの間息を整えてから、雪菜は身体を起こして向きを変える、そして春希の上に跨ったまま、未だ硬度を保ったままの春希の欲棒に手を添え、捲れたままの水着の隙間から覗かせた秘所に宛がった。

「春希くん、いい……?」
「だからそれは俺の台詞なのに……。いいよ、そのまま……」

 春希は雪菜の腰に手を添え、雪菜の身体を沈めていく。雪菜も春希の胸に手を置いて、自分の身体を支える。
 やがて、二人の腰がゆっくりと密着する。一つ息を吐いてから、雪菜は腰を上下し始めた。腰を下ろして奥を突かれる度に雪菜は腰を震わせて刺激を春希に伝える。
 身体を前のめりにしたことで髪がばさりと落ちて春希の胸をくすぐる。口を半開きにしながら喘ぎ、頬を火照らせて赤く染めていく。
 春希は雪菜の腰に当てていた手を上に上げ、先程露わにした胸を鷲掴みにする。そのまま前のめりの身体を押し上げ、後ろに仰け反らせる。

「うああっ」

 仰け反ったことで春希が更に中に入り込み、雪菜の奥を震わせる。雪菜の手が後ろに回り、顎を反らして喘ぎ続ける。春希は雪菜の胸を揉みながらも腰を突き上げ続け、雪菜をより一層激しく求める。
 それだけでは足りないのか、春希は身体を起こして雪菜を正面から抱き寄せ、腰を動かしながらも唇を重ねる。

「んむぅ、ちゅっ、れる……」
「ふむ、くちゅ、じゅむ……」

 雪菜もすぐに応え、舌を絡めて唾液を交える。腕を春希の首に回し、身体を寄せて春希の動きに合わせて腰を振る。
 呼吸を整えようとして口を離し、二人の口を唾液の糸が繋ぐ。途切れて落ちそうになるのを見て二人はすぐさま唇を重ね、再び舌を絡める。
 その間も春希は雪菜の腰を抱き寄せながら突き上げ続ける。雪菜はその度に唇からくぐもった喘ぎを漏らし、唾液が口の端から零れて二人の密着した胸を湿らせる。

「うああぁんっ」

 そして耐え切れずに雪菜は唇を離して背中を仰け反らせる。春希は雪菜の腰に回していた手を尻に移して更に雪菜を高い位置に突き上げ、仰け反った反動で目の前に見えた乳首に吸い付いた。
 唇で吸い、舌で舐め、歯で甘噛みする。瞬く間に尖った乳首を味わいながらも春希は続けてもう片方に標的を移す。

「雪菜、美味しいよ……」
「あっ、ああっ。春希くん、食べてぇ。もっと、もっと食べていいんだよぉ……」

 雪菜も無意識のうちに春希の頭を抱え込み、髪を撫でながら春希のなすがままにされている。その無意識は春希の腰を両脚で抱え込み、引き寄せてしまっている。

「雪菜、水着、下ろしてくれ……」
「えっ、こんなんじゃ、わたし、無理だよ」
「お前のじゃなくて、俺の方。少し、動きにくいから……」

 確かに、春希の水着は先ほどの雪菜の行為で少し下ろされただけで、今の春希の動きを不自由にしてしまっている。春希の意図を汲んだ雪菜は春希が動きを止めた時に水着を春希の脚から完全に抜き取り、傍らに置いた。

「ありがとう、雪菜……」
「じゃあ、いっぱいわたしを愛してね」

 微笑む雪菜に笑顔を返し、春希は繋がったままの雪菜を砂浜に押し倒す。仰向けに寝転がった雪菜の横に両手を突いて春希が組み敷く。
 雪菜は手を春希の頬に当てて笑顔で一度頷く。春希は雪菜の唇に吸い付き、上から雪菜を突き始める。雪菜も両腕で春希の首を抱き締め、舌を絡めて唾液を交換しながら春希の動きに合わせて腰をくねらせる。
 雪菜にとって、このような愛し合い方は好きだった。春希が強く自分を求めてくれる、愛しているという実感が感じられるから。
 春希の思うがままに抱かれる、求められるままに愛される。春希の心の中にある自分に対するワガママ・欲情を正直にぶつけてくれているように感じられるから。

「雪菜、雪菜っ、雪菜ぁ……」
「ああっ、春希くん、春希くんっ、春希くぅん……」

 お互いを呼びながら、二人の動きも徐々に単調になっていく。春希はただ雪菜の中を行き来するだけのようになり、雪菜も春希を締め付ける力が強くなっていく。
 春希は唸り声を上げながら雪菜の胸を掴み、ただ乱暴に揉みしだく。雪菜の脚は春希の腰に絡み、離さないと言わんばかりに引き寄せる。

「春希くん、イく、イっちゃう、わたし、もう駄目ぇ」
「ああ、いいよ。俺も、もう……」

 水着を着崩しながら自分の腕の中でよがる雪菜がとても艶めかしく、春希はいよいよ限界を迎えようとしていた。
 これからはずっと自分だけが雪菜を愛せる、自分だけの雪菜なんだ、と春希の心の中にある裏切りと恋心、何度も繰り返した行為が浮かび、じんわりと染み込んでいった。

「あっ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
「うっ、くぅ、うああぁっ」

 そしてついに二人は絶頂を迎え、頭の中を白く染めていく。雪菜が春希を強く締め上げ、春希は何度も痙攣しながらドクッドクッと雪菜の中に放出する。
 雪菜も春希の愛情を受け止めながらも汗に塗れた身体をビクッビクッと震えさせた。

「あっ。ああっ、ああぁ、は、春希くぅん……」
「雪菜、雪菜ぁ……」
「いっぱいだよ。わたし、春希くんでいっぱいなんだよ」
「嬉しいよ、雪菜が俺で満たせて」

 春希が脱力して雪菜の上に倒れ込む。雪菜はそっと春希の背中を抱き締め、春希の温もりを受け止めた……。





 二人はとりあえずホテルの部屋に戻ることにした。身支度を整え、岩陰から様子を見てから歩き出す。

「……周りに聞こえなかったかな?」
「……まあ、それを考えるのは止そう」
「ええ〜っ。もしばれてたらどうするの〜?」
「そうなったら開き直るしかないって。誰もあからさまに指差してからかう真似はしないだろう?」
「うう〜、何か不安になってきちゃうじゃない」

 そう言いながらも雪菜の表情は解れている。腕を春希の腕に絡ませ、ギュッと抱き寄せる。

「雪菜……俺、頑張るよ」
「……いいんだよ?無理に頑張らなくても。これからはわたしがずっと一緒にいるんだから」
「だからだよ。雪菜がいてくれるから、“頑張らなくちゃいけない”じゃなくて“頑張りたい”って思える。どんな結果になっても、雪菜が俺の傍にいてくれる。だから俺は雪菜に甘えられる。そしてまた頑張れる……ってね」
「そうだね……わたしはずっとあなたの傍にいるよ」
「今までだってそうだったのに。どれだけ俺に裏切られても俺の傍にいてくれてたのに。俺を信じてくれてたのに。俺を……愛してくれてるのに」
「そうだよ。何があってもわたしはあなたを愛してる。ずっと、あなたに恋し続ける」

 雪菜の腕に、ギュッと力がこもる。春希はその力に雪菜の気持ちが込められていると感じ取った。

「たとえ、あなたと離れ離れになったとしても、わたしの気持ちは決して変わらない。ずっとあなたを想い続ける。あなたの幸せを……願い続ける」
「雪菜……」
「だってそれが、人を好きになること……恋するってことでしょう?人を……愛することでしょう?」

 こんなにも素敵な娘に愛されている。
 こんなにも強い人と共に歩いていける。
 こんなにも女性の魅力に溢れた雪菜を愛している。
 自分の傍らで歩き続けてくれる女性の真の強さを改めて知って、春希は心が温かくなった。

「ありがとう、雪菜。俺、これからは俺自身のために、そして……お前のために頑張る」
「……もう、大丈夫だよね?」
「ああ、俺は大丈夫だよ……雪菜が、いてくれるから」

 何が大丈夫なのか、雪菜に確かめる必要はなかった。春希の中に生まれた新しい一歩を踏み出すための決意を、確かに感じることができたから。





「あ〜あ、もう旅行も終わりかぁ」
「さあ、帰りましょうか」

 そして最終日、帰る日となった。
 部屋を出てからチェックアウトを済ませ、ホテルの玄関へと向かっていく。
 小木曽夫人と共に荷物を持とうと屈んだ母の傍らに春希がそっと歩み寄っていく。

「……俺が持つよ」

 少し強引な感じではあったが自分の荷物と共に母の荷物を持ちながら出口へ向かう春希の背中を見詰める母の姿を、雪菜は安堵の表情で見守っていた。

「……前に進んでいるようだな」
「ええ、そうね。始まったばかりだから、これからよね」

 小木曽夫妻も、そんな北原親子の風景を微笑みながら見送っていた。二人の間に、ようやく春の息吹が吹き込みそうな予感を漂わせているのを、確かに感じ取っていた。

「……雪菜、頑張れ」
「うん、頑張るよ。春希くんと、お母さんと三人で」

 今回の旅行で、様々な“頑張り”を発見した小木曽家だった。でも、どの頑張りであってもより良い未来へ進むための糧となれば決して無駄にはならない。
 今の春希達にはきっと明るい未来へ続く礎になる。雪菜はそう信じている。
 そのために雪菜は春希と共に生きていく。春希の傍で支え続ける。春希を愛し続ける。春希と共に生きるために続けた努力が自分を幸せにできたと信じているから。

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