目が覚めた時、ただただ絶望感だけが俺を支配していた。
以前の様に、絶叫を上げることは無かったが、逆に何も考える気力も湧き上がらなかった。
一応、今まで見た夢をノートに書いたものの、それだけだった。
いつもの様に反省をすることはできなかった。
ただ、窓からボーっと空を眺めていただけだった。

このままじゃ、何時間経っても変わらないな…

そう思い、とりえあず気分転換にでもなればと考え、街中に出てみた。
年末のためか、街中には活気が溢れていたが、特に俺は影響を受けなかった。
何となく、目的も無しにブラブラしていると、

雪菜「あ、春希くんだ」

春希「雪菜…」

俺を悩ませている人の一人に出会った。


…………
……


出会いは何となくではあったが、気がつけば俺と雪菜は喫茶店にいた。

雪菜「そうなの〜。年末のお節料理の材料の買い込みって毎年大変なんだよ〜」

春希「そっか。確かに小木曽家はそういったところに拘ってそうだよな」

雪菜「うん。お母さんが特にね」

一応、俺は普段通りに雪菜と会話できていたつもりだったが、

雪菜「それで、春希くん、どうしたの?」

春希「どうって?」

雪菜「どこか辛そうなんだけど、大丈夫?」

春希「っ!!!」

あっさりと見破られていた。

雪菜「今は普段通りに見えるけど、さっき会った時の春希くん、いつもと違って見えたよ」

春希「そ、そうかな…?」

雪菜「何か悩み事?」

春希「悩み事というか、何と言うか…」

悩み事であることに間違いは無いが、悩みの種となっている要因の一人に相談するというのは如何なものだろうか?
でも、下手なことを言うと、あっさりばれる可能性がある。
一応、嘘はつかない範囲で、でも肝心の内容はぼかして言ってみるか

春希「うまく言えないけど、大きな失敗をしちゃってへこんでいるところかな。」

雪菜「大きな失敗?それって、人間関係?」

春希「ま、まぁ、そうなるかな…。そ、それで、その失敗を元に反省しなければならないんだけど、反省する気力も無い…って感じかな?」

雪菜「うーん、それって取り返しがつかないことなの?」

春希「い、いや、そんなことは無いんだけど、ただ、前に反省したことを反映した結果がまた大きな失敗を起こしたっていうか」

雪菜「よく分からないんだけど、それって前にした反省が間違っていたってことじゃないの?」

春希「え?」

雪菜「だって、一度だけの反省で物事が簡単に進むなんてあまり無いよ?わたしだって、料理とかよく失敗するし」

春希「あ…」

雪菜「失敗の度にさ、反省をして活かせばいいんじゃないのかな?」

春希「……」

雪菜「って、こんな話は本当は春希くんの専売特許でしょ?もう!」

春希「そうだな…」

そうだ。雪菜の言う通りだ。
今はあの最悪の夢を見ることができたんだから、反省しなくてはならない。
それに反省した内容が間違っていたなんてことは良くあることだ。
でも、そこで落ち込んで何もしないと何にもならない。
いつもの俺なら、そういった正論をすぐに思いつくはずだ。
それを気付かせてくれたのが、他ならない雪菜だったなんてな…。

春希「あ、ありがとう…雪菜、おかげで少しだけ元気が出た」

雪菜「いえいえ、どういたしまして」

と、笑顔になった雪菜がまぶしすぎて、つい本音を少しだけ言ってしまった。

春希「雪菜ってさ、太陽の様だよな」

雪菜「え?な、何を言って…」

俺の言葉に慌てふためく雪菜だった。

春希「なんていうか、暖かくて、でも厳しいところもあってさ、雪菜のおかげでもう少しだけがんばろうって気になったよ」

雪菜「も、もう!おだてても何もでないよ〜!」

と顔を赤くする雪菜を、ついつい可愛いな〜と思ってしまう自分がいた。


結局、俺が悩んでいた内容について具体的な言及をして来なかったのは、雪菜が気を遣ってくれたからだと気付いたのは、家に帰ってからだった。


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