千晶True後の話です。



 千晶は今日も春希の部屋でなにやら奇妙な練習をしていた。
「…ハマの二つは唇の軽重、開合さわやかに、あかさたなはまやらわ、おこそとのほもよろを、一つへぎへぎに、へぎほしはじかみ、盆豆、盆米、盆牛蒡、摘立、摘豆、摘み山椒、書写山の社僧正、米のなまがみ、粉米のなまがみ、こん粉米の小なまがみ…」

 出張準備をしていた春希は気になって千晶に聞いた。
「なんだそれ? お経か何かか?」
「ぶーぶー。知らないの? これは『ういろう売りの口上』といって、江戸の物売り口上の一つ。
 ういろうは滑舌の薬だから、役者やアナウンサーの必需品。古来よりこの口上は早口言葉の練習用として重宝されているのです」

 そうして千晶は引き続きその口上の練習を続けた。
「繻子緋繻子、繻子、繻珍、 親も嘉兵衛、子も嘉兵衛、親嘉兵衛子嘉兵衛、子嘉兵衛親嘉兵衛、 古栗の木の古切口。 雨合羽か、番合羽か、貴様の脚絆も皮脚絆、我等が脚絆も皮脚絆、 しっかわ袴のしっぽころびを、三針針中にちょと縫うて、縫うてちょとぶんだせ…」

 春希は呆れ顔で出張用の鞄を持つと千晶に言った。
「それじゃ、行ってくる。金曜日には戻るよ」
「行ってらっしゃーい」




 金曜日に戻ってきた春希は千晶にお土産を開けた。
「はい。猫柳総本家の冷やしういろう」
「わお! さっすが春希! わたしの大好物わかってる!」
「そりゃ、出張前にあれだけ熱心に『ういろう売りの口上』ヘビロテされればわかるよ…欲しいなら口に出して言ってくれよ」
「何言ってんの。口にしなくてもわかってもらえるのが嬉しさ100倍なんじゃん」

 そう言って千晶はういろうを大きく一切れ切り取ると、それを口にくわえて春希に差し出した。
「ほら春希。最初の一口どうぞ。あーん」
「………」
 春希は無言のまま口移しのういろうを受け取った。

 このあと無茶苦茶セッ

このページへのコメント

かずさや雪菜に比べるとCCの三人の誰かとの方が過去に縛られない分、ごく普通の恋人同士という感じで良いですね。かずさや雪菜が嫌いという訳ではないですが。

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Posted by tune 2014年04月06日(日) 17:20:14 返信

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