第39話



麻理さんが落ち着きを取り戻すまで、俺は麻理さんから離れる事はなかった。
いや、正確に言うのならば、麻理さんが俺の腕の中から離れるまで
俺は麻理さんから離れる事はしなかったというべきだろうか。
最初のうちは、本当に吐き気がないか疑問だった。
だから真偽はわからないが、とりあえずやらないよりはやったほうがいいとの思いから、
俺は吐き気の軽減と精神の安定のために背中をさすることにした。
一応は麻理さんは気持ちよさそうに俺の胸に頬を擦りつけているわけで、
どのような効果によるものかはわからないが、効果自体はあったみたいではあった。
佐和子さんが以前NYへ来た時、食後に麻理さんの気分が悪くなったのを
直接見ているわけで、その情報通りならば、
今だって気持ちが悪い可能性が高いといえる。
ただその時は、麻理さんは気持ちを落ち着かせる為にヴァレンタインコンサートの時に
練習した俺のギターソロを録音したものを、精神安定剤の代わりとして曲を流していた。
俺のギターソロに精神安定剤としての効果があるのならば、
多少うぬぼれが含まれ過ぎているが、録音したギターソロよりは北原春希本人が
直接麻理さんの側にいる方が効果が高いといえなくはない。
そして、最初こそ精一杯麻理さんに尽くそうと背中をさすっていたが、
20分ほど過ぎようとする頃には、麻理さんは
温もりを手に入れたネコのように俺の胸の中で収まっていた。
そんな可愛らしくもある状態を見ては、頭を撫でてみたいという衝動が出ても
しょうがないじゃないか。
しかも、頭を撫でてみると、それこそネコそのもののように麻理さんは
気持ちよさそうに喉を鳴らした。
そして、俺の腕の中にいる麻理さんは、時計の針が正しいのならば、
もうすぐ一時間近く俺の腕の中でいる事になる。
その頃の俺はというと、自分の精神の安定を保とうと躍起になっていた。
実は言うと、麻理さんが精神の安定を取り戻そうと頑張っているときに、
俺の方も精神の安定を保とうと下心を消し去る努力をしていた。
こんな下衆男の精神と麻理さんの苦しみを比較する事自体がおこがましいが、
俺も男である以上腕の中に魅力的すぎる女性がいれば、
精神の安定が壊れるというものだ。
これが切羽詰まった緊急事態が継続しているのならば、俺だって麻理さんの調子を
気に病んでいられただろう。
けれど、1時間も経てば麻理さんの症状も改善しているように見え、まあ20分経過時
には症状は回復しているようにも見えたが、比較的俺の気持ちも軽くなり、
麻理さんの症状以外の事も考える余裕が出来てしまった。
だからこそ、俺の精神は崩れそうになっていた。
なにせ麻理さんは、魅力的すぎる女性であるのだから。
自他共に認めるワーカーホリックである為に仕事中心の生活を送ってはいるが、
その容姿は10人中9人は美人であると認めるほどの美しさと毅然さを
持ち合わせている。
痩せてしまった為に、元々細かった腰はさらに磨きをかけ、
ウエストが細くなった分胸の大きさがさらに際立つようになっている。
その可憐さと強さを両面を持った顔と、爆発的な魅力を醸し出すスタイルを
持っていれば、当然ながら俺の理性を削りとるには時間はかからなかった。
しかも、実際普段は何を着て寝ているかなどわからないが、
麻理さんが着ている衣服がパジャマではないといっても、
俺を空港まで迎えに来て時に来ていた外行きのしっかりと着込んだ服装ではない。
まあ、しばらく麻理さんの家に滞在するわけで、
もしかしたら普段何を着て寝ているかがわかるかもしれない。
念のために断っておくが、それは意図的に知ろうするわけではないので
俺にやましい気持ちがないと言い切れる。
さて、俺は今、腕の中にいる麻理さんを必要以上に感じ取ることができる状態でいる。
今着ているのは部屋着らしく、いくら春物の衣服だといっても、その女性らしい体つきを
十分すぎるほど俺の手や腕だけでなく、麻理さんと密着している部分全てが
薄い布地を通して知ってしまう。
だからこそ、頭の中でこうした言い訳をしまくっているのだが、
そろそろやばいくらいに切羽詰まってきていた。

春希「麻理さん、落ち着きましたか?」

俺は、ようやくというか、ぎりぎり平静を装える限界になってから麻理さんに声をかけた。
けっして全ての理性が削り取られることを望んでいたわけではない事は記しておく。

麻理「うん・・・、だいぶ良くなったみたい」

なんだか空港での出来事がデジャブだったのでないかと思いもしたが、
佐和子さんが言っていた麻理さんの精神のもろさと一致しだしていた。
やはり麻理さんの状態は、思っていた通りに危うかった。

春希「少し、話を聞いてもいいですか?」

今しかないわけではないが、後に延ばす内容でもない。
けっして避けられない道であった。

麻理「ええ・・・。でも、このままの状態で話してもいい?」

麻理さんは、俺をだきしめたまま、けっして顔をあげようとはしなかった。
もしかしたら、顔をあげられないほど苦痛に満ちた顔だった気もしたが、
俺にはそれを確かめるすべはないし、
どのような麻理さんであっても受け入れる覚悟ができていた。

春希「いいですよ。麻理さんが話しやすいようにしてください」

麻理「ありがと、北原」

春希「いいんですって。俺には遠慮なんかしないでくださいね」

麻理「お前が私を甘やかすからいけないんだぞ。
   甘やかすから、ここから出られなくなる」

こことは?と、一瞬疑問に思い、口に出そうとしたが、
どうにか口の中でとどめることができて、実際麻理さんに問いかける事はしなかった。
そんなの決まっているじゃないか。聞くまでもない質問であった。

春希「甘やかしてなんていませんよ。仕事の時の麻理さんと同じです。
   これが麻理さんに必要だから、俺がこうしているんです」

麻理「へ理屈言うなぁ・・・」

なんだか泣き声に近い声色だったが、どことなく嬉しそうでもあったので、
実際泣いてはいないのだろう。
そんなネコが甘えるような泣き声を聞くと、俺の保護欲はさらに高まることになる。
もう無理かもしれない。離れられないかもしれないと思ってしまう。
それは不可能だってわかっているのに、思わずにはいられなかった。

春希「へ理屈だろうと頭が固いって言われようが、必要だと判断したら躊躇しませんよ。
   だから麻理さんもしっかりと俺を利用してください」

麻理「北原も生意気になったものね」

春希「麻理さんの下についた時から言われ慣れていますよ」

麻理「たしかにそうだな」

ほんのわずかな瞬間だが、俺の言葉への同意を伝えるべく麻理さんが顔をあげてくれた。
それでも、俺の視線に気がつくとすぐさま顔を伏せられはしたが、
麻理さんの調子の方は安定に向かっているようには見えた。

麻理「まあ、いいわ。・・・それで話って言うのは、私が陥っている状態についてね?」

春希「はい」

麻理「北原が来るってわかった時点で全て隠さず話そうと決意していたから、
   何でも聞いていいわよ。今さらかっこつけたって意味ないし、
   それに、もう私の状態もさっき見せちゃったしね」

麻理さんが震える声で俺に宣言する。
全く平気ではないのに、平気なふりをしているのが
明らかすぎるほどに、声だけであってもわかってしまう。
だから俺は、慰めの言葉さえも省略して、本題に突入する。
いたわりの言葉が麻理さんを傷つけてしまうんじゃないかとか、
そういう事を考慮しての判断ではない。
ただたんに、俺が何を言えばわからなかったから、本題をいきなり切り出したと言えた。
それだけ今の俺には余裕がなくなっている。
今も現在進行形ではあるが、麻理さんの柔らかい体を意識してのとは違う、
別方面での余裕のなさであり、その性質は180度意味合いが異なっていた。

春希「それでは聞きますね。もし言いにくいことがあるのでしたら、無理には聞きません」

麻理「今さっき、なんでも話すって言ったわよ」

春希「全てを話すとは言っていましたけど、「今」すべてを話すとは言っていませんでしたよ」

麻理「それこそへ理屈よ」

麻理さんは、嬉しそうに心底呆れた声で俺を非難する。

春希「へ理屈だと思ってもらっても構いませんよ」

麻理「開き直ったわね」

春希「それが必要だと理解しただけですよ」

麻理「なるほど・・・」

麻理さんは、おでこを俺の胸にコツリと押し付けて同意を示した。

春希「では、聞きますね。俺が作った食事ですけど、味はありましたか?」

麻理「いきなりストレートにきたわね。OKよ。回りくどい聞き方よりもすっきりするし。
   ええ、味はいつもよりもだいぶ感じ取ることができたわ。
   でも、普通レベルとは言えないわね。
   そうね・・・、塩分なしの薄味ってところかしらね」

春希「ということは、どうにか味を感じられるというところでいいのですね?」

麻理「おそらく。今まで味覚の強さなんて考えもしてことなかったから、
   味の強さの表現を的確にはできないし、判断基準自体が曖昧なのよね」

春希「それは仕方がない事ですよ。俺だって意識する必要性がなければ気にも
   なりませんし。普段から自分がどうやって呼吸をしているかを
   考えてやっている人がほとんどいないのと同じですよ」

俺は、ここで言葉を一度止めたが、回りくどい言葉を避けるべく、付け加えるようにいった。

春希「何事も、病気にならなければわからないって事ですよ」

麻理「それもそうね」

俺は正解を引き当てたかはわからない。麻理さんの声色に変化はなかった。

春希「食事の後、吐き気はなかったのですか?
   胃を刺激しないよう、こってりしすぎないようには気をつけてはいたのですが」

麻理「まったく吐き気はなかったわ。
   自分でも驚いていて、自分の現金さには呆れてしまうのだけれど、
   北原がいるってことで舞いあがったのかしらね」

春希「男の立場からすれば、意識してくれることは嬉しい事ですよ」

麻理「そうかしら? 一歩間違えれば重度のストーカーよ」

麻理さんは、自分を貶めるかのように言い捨てる。
俺も考えなかったわけではない。
でも、麻理さんの場合は、普通のストーカーとは方向性が違っている。
俺へ向けるべき感情を、逆方向に、俺から離れるようにと向けていた。
だから俺は、麻理さんを逃さないように引き止める。
だからこそ麻理さんは、後ろ向きのまま背中を向けて俺と向き合ってくれている。
今の麻理さんは、精神の崩壊を起こさないぎりぎりの境界線上いるだけで、
麻理さんが仕事で鍛え上げた強力な忍耐力で堪えているにすぎないと思えた。
つまり、その境界線上にいる麻理さんの背中をちょっとでも押す行為があれば、
一気に麻理さんの抑えられた感情が心の奥から逆流し、
俺の手から麻理さんはいなくなってしまうだろう。

春希「そうですか? NYまでやってきた俺の方がよっぽどストーカーじゃないですか」

麻理「たしかに」

俺の切り返しに、麻理さんは小さく笑いを洩らす。
これはうけ狙いで言ったわけではなかった。本気でそう思っただけなのだが、
結果的には麻理さんの気持ちをほぐす効果があったのには助けられた。

春希「まあ、いいですよ。俺はしつこいんです。しつこくて、粘着質で、諦めが悪いんです。
   だから、麻理さんが根をあげたとしても、俺は諦めないですからね」

麻理「覚えておくわ」

春希「えっと、これは思い付きなんですけど、オムライスって麻理さんにとって
   印象深い料理ですよね。・・・俺を連想するような」

回りくどい言い方は避けようとはしたが、さすがに自分をアピールする発言には
俺の方がまいった。言っていて体が熱くなってくるのが自分でもわかってしまう。
ましてや、俺の心臓の側に顔をうずめる麻理さんには、
早まる鼓動がきっと知られているはずだ。

麻理「そうね。北原の言いたい事はわかるわ。
   だったら、オムライスなら一人でも食べられるのではないかって、
   私も思い付きはしたのよ。でも、どうしても違うのよね。
   最初は卵の半熟具合が悪いのかなって思ったり、チキンライスの味とかが
   原因かなとも考えたけど、やっぱり違うのよ。
   北原が作ってくれたというのが意味があるのであって、オムライスそのものでは
   ないのかもしれないわ」

春希「では、他の料理と比べての印象ではどうですか?
   他の料理よりも味が感じやすいとか」

麻理「オムライスの方が、拒否反応が強くなったと思うわ。
   私が色々な店でオムライスを買ってきたのが悪かったのかもしれないけど、
   食べれば食べるほど拒否反応が強くなっていったというか、
   北原のオムライスが神聖化でもしたんじゃないかって感じかもしれないわね」

春希「神聖化はいいすぎですけど、言いたい事はわかりますよ」

つまりは、俺のオムライスへのあこがれが強くなってしまったという事か。

麻理「だから、今では食べないようにしているわ」

春希「だとすると、俺がオムライスを作ったのも、案外ギャンブルだったんじゃないですか?」

麻理「それはないわよ。いくらオムライスに拒否反応を示してるといっても、
   それは北原以外のオムライス限定よ」

春希「それは作っている人間からすれば称賛とも受け取れますけど、
   あまり俺の料理を過大評価しないでくださいよ。
   どうも俺の周りには、俺の料理を甘く採点する傾向があるみたいで」

麻理「へぇ・・・。北原の料理を食べている子が、日本にいるんだぁ」

麻理さんの声に棘があったような気がしたのは、きっと俺の思いすごしだと思いこんだが、
あいにく俺を抱きしめる腕の力が強まった事だけはなかったことにはできなかった。
未だに顔をあげてはくれないので、その表情は見ることができないでいたが。

春希「友達ですよ友達。そいつったら進級に必要な単位を落としそうになってしまって、
   春休みだというのにお情けのレポートやってたんですよ。
   普段の俺がそいつの教育係を教授に任されていて、何度も何度もレポートとか
   講義の出席について注意していたのに、そいつったらいくら言っても
   しっかりしてくれなかったんですよ。
   それで案の定学年末になって慌てる事態になったんです。
   まあ、教授から教育係を任されていたのに、それでも進級に黄色信号を
   灯してしまった責任が俺にもある気はしますよ。
   でも、いくらサポートしても最終的には本人の頑張りようじゃないですか。
   それでですね。春休みだというのに俺は教授に頼まれて、
   そいつの監視役に任命せれたんです。
   そういう事情もあって、俺の部屋を提供した事もあって俺が料理を作るっことに
   なったんですよ。もちろん休みを返上してまでレポート手伝って、
   なおかつ料理まで作ってやったんですから、もしかしたら、
   俺の顔にまずいっていったら許さないって出ていたのかもしれませんね」

嘘つきほど饒舌になると言うが、この時の俺は、まさしく饒舌だったのだろう。
麻理さんに聞かれもしていない事を勝手にしゃべりまくり、
麻理さんにとっては苦しい言い訳に過ぎない話をしどろもどろに話してしまった。
せめてもの救いと言えば、麻理さんが顔をまだ上げていないので、
うろたえた顔を見られずに済んだことが唯一の救いだったのだろう。

麻理「もういいわ・・・」

春希「え?」

ゆっくりと顔をあげながら目元を指でぬぐっている麻理さんの顔には、
笑みが浮かべられていた。
麻理さんは、必死に笑いをこらえようとしていたが、うまくはいっていない。
むしろ俺の顔を見たことで、笑いをこらえる事さえも放棄してしまうほどだった。

春希「えぇっ?」

戸惑う俺をよそに、麻理さんは笑い続けていた。
俺としては、悲しみに苦しんでいる麻理さんを見ているよりは、笑いを止められずに
苦しんでいる麻理さんを相手にしている方がいいに決まっている。
それが俺のことをだしにして笑っていたとしてもかまいはしない。
むしろ麻理さんに笑顔を提供できたことに喜びさえ持ってしまうほどであった。

春希「笑いすぎですよ」

俺は、こまった顔を作って、麻理さんを軽く非難するふりをする。
けっして困ってなどいない。もちろん批難なんてしてやいない。
それは、俺の顔にも、俺の声にもそれは込められており、麻理さんもそれを理解していた。

麻理「ありがと、北原。だいぶ楽になったわ」

返ってきた言葉は、予想外のものであった。
落ちついた声色には、笑いも、悲しみも含まれてはいない。
いつもの前をしっかりと見定め、俺を導いてくれていた麻理さんがそこにはいた。

春希「俺は、なにもしていませんよ。ただ自分で墓穴を掘って、
   盛大に自爆しただけですよ」

麻理「そうなのか? だったらあとで、和泉さんとの春休みの出来事について
   しっかりと聞かせてもらおうかな」

春希「ははは・・・」

今度こそ冷や汗さえもでやしなかった。
出たのは乾いた笑いがかすかに漏れただけ。
鈴木さん、恨みますよ。本当に麻理さんに報告してるじゃないですか。
冗談だと思っていたのに、あんまりじゃないですか。
俺は、とりあえず鈴木さんのリスクランクを一段階引き上げ、
和泉千晶の一段階下に位置させた。今後の見通しはネガティブ。
今のままの状況では、さらなるリスクを生じさせる可能性があるとみられ、
和泉千晶と同一の格付けになる可能性が高いと評価を改めた。

麻理「その前に、私の今の状態と、北原の今後について話さないか?」

春希「はい」

俺に拒否する選択肢などなかった。どうやって話を持っていくか悩んでしたのだから。

麻理「でもその後で、和泉さんについても話してもらうわよ」

麻理さんは、やはり拗ねた感じでそう言い付け加えた。
その表情もあまりにも可愛らしすぎて、状況が状況ならば、悶絶していたはずだ。
ただし、一つだけ訂正すべきことがあった。
俺が思っているよりも、世の中は結構いい加減なのかもしれない。
俺が勝手に作った優先度など、麻理さんの中では、けっこう番狂わせを起こしているようだ。

春希「別に隠すような事でもありませんから、麻理さんが納得するまで話しますよ。
   でも、聞いても全く面白くないですよ。
   むしろ退屈すぎるくらい平凡な大学生のレポート作成だったんですから」

麻理「面白いか面白くないかは、私が決めるから問題ないわ。
   それに、北原がどんな大学生をやっているかも聞いてみたいしね。
   北原って、大学の事はあまり話さないじゃない。
   だから、聞いてみたかったというのもあったのかもね」

春希「そうですか? 本当につまらない学生生活ですよ」

麻理「それでもいいのよ」

春希「そうですか? 麻理さんが聞きたいというのでしたら話しますけど、
   本当に講義に出て、勉強して、時間があればバイトをしているだけなんですよ。
   そう考えると千晶の事が唯一面白みがある話なのかもしれませんね」

麻理「へぇ・・・、和泉さんって、千晶さんだったのね。
   やっぱり女性じゃない。鈴木のやつの誇張だと思っていたのに、
   本当に鈴木の言う通りだったのね。 
   だとすれば、余計に和泉さんについて聞きたくなってきたわね」

目を細め、鋭い視線を俺に向ける麻理さんは、
すでに編集部での麻理さんのレベルまで回復していた。
それが一時のやせ我慢であっても喜ばずにはいられなかった。
今回わずかな時間しか維持できなくても、次につながるはずだ。
笑い方さえ、気持ちの高め方さえ思いだしてくれさえすれば、
麻理さんならきっと再び笑顔を取り戻せるはずだ。
何度も何度も繰り返すリハビリが大変だって、苦しい事だってわかっている。
でも俺は、麻理さんの隣にいるって決めたからには、俺も一緒に苦しんで、
苦しみの一部を引き受ければいいと考えていた。






第39話 終劇
第40話に続く








第39話 あとがき


麻理さんが再登場したのはいいのですが、
かずさはいつ再登場するのでしょうか。
いちおうタイムスケジュール的には、ccとcodaの間なわけで、
かずさが登場していなくても問題ないはずだと、言い訳させてください。


来週も、火曜日、いつもの時間帯にアップできると思いますので
また読んでくださると、大変うれしいです



黒猫 with かずさ派

このページへのコメント

更新お疲れ様です。
麻里さん可愛い。かずさに良く似てますね。今後の展開が楽しみです。来週も必読ですね。

0
Posted by バーグ三世 2015年03月24日(火) 14:19:54 返信

更新お疲れ様です。
麻里さんの台詞の幾つかはそのままかずさに置き換えても違和感の無い物がありますね、やはりこの2人は似た所があるのでしょう。
春希が側にいる事で麻里さんがいつもの自分を取り戻しつつあるのは喜ばしいけれど完全に戻ったと判断した時、春希は次にどう行動するのか?今はまだ春希はそこまで考えてはいない様ですが果たしてどうなるのか?
次回も楽しみにしています。

0
Posted by tune 2015年03月24日(火) 03:27:01 返信

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