WHITE ALBUM2 SS まとめwiki

年が明けて暫くして、やっと皆の都合が合ったので今日は新年会である。
今回は、春希たちの結婚式の段取りの打ち合わせも兼ねてとのことだったので、この時期一番忙しい朋の都合に合わせたのである。
なにしろ、イブの放送以来人気が一気に沸騰してあちこちから引っ張りだこになってしまい、やっとのことで時間が取れたのだった。
参加者は春希と雪菜、かずさ、朋、武也、依緒。いつものメンバーである。
出だしは普通の新年会のように始まったが、１時間ほどして話題は結婚式の余興の話になった。
「いくらＴＶカメラが入るからといっても、やっぱりなにか素人っぽい盛り上げがほしいのよね」
司会担当の朋が議題を進行していく。
あれこれと意見が出たがまとまらなかったので、武也が冗談交じりに
「やっぱり雪菜ちゃんはみんなのアイドルみたいなものだから、それをかっさらっていく春希を１発殴れる権利ってのを商品にしたゲームとか？」
「おいおい、やめてくれよ…」
春希が呆れて言うが、酒が入っているので他の皆はその話題で盛り上がっていってしまう。
「う〜ん、そうよねぇ、わたしの為に殴られてくれる春希くんってのも見てみたいかなぁ」
「雪菜ぁ…」
「でもやっぱり駄目よ、だって大切な旦那様なんだから、ただで痛い思いをさせるのはいやよ」
雪菜の助け船に春希はほっとした。そんな春希を見て武也が
「まあ、ＴＶで下手なシーンが放送されても困るから、あまり突拍子もないことはやめといて、二人の出会いから今までの足跡を辿るとか…は絶対無いか。
当日、時間の都合で出席できない友人とかからのビデオメッセージを面白おかしく紹介するとか、都合のつく時間だけの飛び込みスピーチとか？」
そんな話で盛り上がる中、春希の携帯が鳴った。席を外した春希は戻ってくると申し訳無さそうに
「ごめん、どうも会社でトラブルがあったみたいですぐに行かなくちゃならなくなった…」
そう言うとあとは任せると雪菜に告げて店を出て言った。
春希が出ていくと雪菜の表情が変わった。
「さっきの話なんだけど、実はわたしから武也くんに頼んで言ってもらったの。春希くんには一部内緒にしておきたかったから、今の呼び出しも偽装なの」
そう言うとさらに深刻な顔をして
「実は探している人がいるの。峰城大で一緒だった友近君なんだけど、今どうしているか誰か知らない？」
「え？」
雪菜の言葉に明らかに動揺して声を出してしまった朋は直後に失敗したと思ったが、他の皆の注目は同じように声を出したかずさに集まった。
かずさが言葉を続けたからだった。
「友近って、○○商事の友近浩樹のことか？」
ありえない人物からの発言に雪菜は驚いて聞き返した。
「なんでかずさが友近君のこと知ってるの？だって私たちが彼と知り合ったのはかずさがウィーンに行っちゃってからだよ？」
「いや、たまたま向こうで知り合ったんだよ。だって空港で…」
かずさはあの時のことを話した。あの遠い空の下での出来事を。
「そっかぁ、そんなことがあったんだぁ。」
雪菜は溜息交じりにそう言うと、目を閉じてその情景を思い浮かべているようだった。
「あいつ、それはすごく大切なものだって頑として譲ってくれなかったんだ。結構古そうなミュージックプレーヤーだったのに。
でも、ついこの間気がついたんだけど、あいつが持ってたのって実は理奈さんの限定モデルだったんだ。全米デビュー１０周年記念の…」
「えっ！理奈さんの？」
朋が立ち上がって言った。
「柳原、そんなところで反応するなよ…。ああ、そうだよ。この間その友近と理奈さんと３人で合ったあとで気がついたんだけど、たしかにあの青い限定モデルだったと思う」
「この間っていつ？何で理奈さんと会うの？」
朋の勢いに呆れたようにかずさは答えた。
「１か月ぐらい前かな。理奈さんが『届かない恋』に関係したエピソードが知りたいって言ってきたから、
それならってその話をしたら是非会いたいって。仕方がないから理奈さんと二人であいつの会社に訪ねて行ったんだ」
「緒方理奈と冬馬かずさが揃って訪ねてくるって…、その会社の人びっくりしたんじゃない？」
依緒が呆れたように言った。
「とにかく、その友近君に連絡を取りたいの。春希君に内緒で」
雪菜はまわりの皆をぐるっと見渡すと静かに話しだした。
「春希君と友近君に仲直りしてもらいたいの。もう二人とも十分落ち着いただろうから。何よりも春希君にとって友近君は大切な友達であるべきなんだから。
だから依緒と武也君にお願いしてさっきの話を出してもらったの。途中から春希君には外れてもらえるように仕組んで…。
実は、大学卒業直前に一度友近君に声をかけられたことがあるの。その時に言ってたわ、お金は必ず返すからって。
春希君は受け取らないと思うよって言ったら、結婚祝いとして皆の前で渡せば受け取るかもしれないって。
でも、今のままでは友近君は披露宴に呼べないから、飛び込みスピーチにして皆の前で仲直りしてもらうの。
ただ、ちょっと問題があって、二人が仲直りするためには……」

そして、春希には真実が告げられないまま、この企画が決定した。