最終更新: sharpbeard 2015年04月28日(火) 12:51:47履歴
やがてディナーが終わりに近づき、冬馬曜子オフィス側から事前に提案のあったクリスマスプレゼント交換の時間となった。
「では、メインイベントにしましょうか。
皆様、今年一年いい子にしていたかずさにプレゼントをよろしくお願いします」
「子供扱いすんな。
あー。みんな、こんな日に呼び出してゴメン。
メリークリスマスということで、こちらからもプレゼントがあります。これからもよろしく」
皆が色とりどりのプレゼント袋をかずさに渡した
「メリークリスマス。かずさ。これ、雪菜と一緒に選んだよ」
「メリークリスマス。これはソースケとわたしから」
「メリークリスマス。かずささん。社長とわたしからです」
「メリークリスマス。かずささん。ニューヨークでのお礼も兼ねまして贈らせていただきます」
かずさからもプレゼントとして、リボンのついた封筒が渡された。
プレゼント交換が終わるとかずさはバリバリと包装を破りはじめた。
「なんだこれは? 鍋つかみか? こないだもらった鍋には鍋つかみがついてなかったからちょうどいいな」
とぼけるかずさに春希はわざわざ説明を返した。
「手袋だよ。冬のヨーロッパも内陸の方は乾燥するだろ。手を傷めないように選んだよ」
「別にそんなヤワな手はしてないが、ありがたく頂いておくよ」
吉松夫婦のプレゼントはマフラー、曜子と美代子からはカーディガンだった。これからの長期遠征に向け、衣類をプレゼントに選んだ者が多かった。
麻理のプレゼントは携帯枕や爪切り等のトラベルグッズの詰め合わせであった。これも長期遠征を考えてのことだろう。
「どうも。ありがたく使わせてもらうよ」
プレゼントをもらったかずさは満足した反面、段々寂しげな表情になってきた。プレゼントが旅行者向きだった事に気付き、余計に日本を離れる事を意識してしまったのかもしれない。
ディナーの最後のケーキを平らげて、かずさはため息と共に言った。
「はあ。日本ともしばらくお別れか…」
「しばらく、ね。
でも、まずは自分が初めて自分で取ってきた仕事に目を向けなさい。
イスタンブールでサイさんのお世話になるのはけして悪い仕事でも楽な仕事でもないわよ」
「うん。そうだね」
かずさは気を取り直して今日の会を締めた。
「みんな。今日はクリスマスの中、いろいろ励ましに来てくれてありがとう。編集長と先生は引き続き向こうでもよろしく。春希も帰ってきたらまたよろしく。麻理さんも機会があればまた」
「みなさん。これからも娘をよろしくお願いします」
複合文化施設「Kaikomura」エントランス
ディナーを終えた面々はエントランス付近で皆それぞれ別れていった。
「では、良いお年を」
「さようなら、先生」
吉松夫婦を乗せたタクシーが建物前を走り去っていった。
そして、かずさも曜子や美代子と共にタクシーに乗り込んだ。
最後に、春希はかずさに別れを告げた。
「これで、ほんとうにしばらくお別れだな、かずさ。良いお年を。とりあえず、トルコでの成功を祈ってるよ」
かずさはタクシーの窓から顔を出し、春希に返事をしようとした。
「それじゃあ、春希…あのな…」
ここでかずさは言葉を詰まらせてしまった。
ディナーの前日、曜子が春希について、かずさに注文づけたのは一つだけだった。
『最後はとびきりの笑顔で見送ってやれって?』
『そう。オトコって単純よ。例えそれまでいろいろもめてたとしても、最後に笑顔一発キメてあげさえすれば、いい印象で次に会ってくれるものよ。
どうせ、ギター君に対して突っかかるな、バカ娘、とか言ったとしてもムダだろうから。最後だけキチンとしておいてくれればいいわ。今回はともかく、後々付き合うことになるコだから』
『はいはい。営業スマイル0円用意しておくよ』
曜子のアドバイスを聞いたかずさは、春希だけのために鏡の前で前日から『最高の笑顔』の準備をしていた。
しかし、それを春希に見せることはできなかった。
たった数ヶ月離れるだけなのに。また会うことができるのはわかりきっているのに。こんな短い別れなのに。
『これで、ほんとうにしばらくお別れだな』
改めて春希の口から聞いてしまった。たったそれだけのことでさっきまでの余裕ある態度が吹き飛んでしまった。
笑顔を作ろうとした顔の筋肉は凍りつき、涙腺は溢れる涙を押さえきれなかった。
「あ…」
ついに涙が一粒、眦から流れ落ちてしまった。
かずさは窓を閉めた。
ブロロロ…
「あっ。かずさ…」
春希が呼び止める間もなく、かずさを乗せたタクシーはクリスマスの夜の街に消えてしまった。
「ゴメン、母さん。しくじった」
タクシーの中で涙を拭う娘をみつつ、曜子は呆れ半分にひとりごちた。
「しくじったって、あんたねぇ…
これがワザとじゃないんだから。わが娘ながらそら恐ろしい子…」
「どうした、北原?」
「あ、麻理さん。どうも」
春希は何とも言えない思いでしばらくエントランスに立ち尽くしていたが、麻理の声で我に帰った。
麻理は不思議そうな声をつくって聞いた。
「ひょっとして、東エントランスが閉まってるから帰り道がわからなくなったか?」
「いえ。それは何とか…」
おぼつかない返答を返す春希の背中に向けて、麻理は手を振り上げた。
ばしっ。
「いてっ!?」
抗議じみた表情と共に振り返った春希に麻理は軽く激を飛ばした。
「しっかりしろよ、北原。これで明日からアンサンブルの副編集長代理補佐心得見習いだ。お前の同級生が世界で羽ばたいているようだが、負けていられないぞ」
「負けるとかそんなんじゃなく、ただ…」
「何にせよ、今日の仕事が終われば、明日の仕事が待っている。…まあ、私は休暇中だかな。さあ、帰るぞ」
「はい…」
かずさが心配でも、今の自分にできるのは自分の道を歩むことだけ。
春希は麻理に促され帰ることにした。
「帰りは? 地下鉄か?」
「いったん西住坂です」
「私の宿も近いな。途中まで歩くか」
近くの路上
帰り道、春希は麻理に聞いた。
「そう言えば、食事の途中で自分がワイン選んだとき、曜子社長や先生に笑われましたけど、あれ、何ででしょう? 自分、何か変なワイン選びました?」
麻理は困った顔をしつつ答えた。
「あ、ああ。あれか。
『シャトー・マルゴー』は一級ワインで、確かに奢ってもらうには高いワインだな。だが、問題はそこではなかった」
「? と、言いますと?」
「日本ではこのワインは、映画化された某恋愛小説のラストシーンで出てきたワインとして有名だな。許されない不倫関係に堕ちた恋人たちが最期に飲んだワインとして知られてしまっている。ワインにとっては迷惑な話だが。
普通なら気にも止めないだろうが、取材対象との密通が疑われてる男のチョイスとしては、ちょっと冗談きつかったんじゃあないか?」
「だあああ!」
春希は頭を抱えてその場にしゃがみこんでしまった。
麻理はそんな春希に哀れむように声をかけた。
「いや、たまたま先週末その映画の地上波再放送あったりと間が悪い要素もあったとは思う」
「い、いや。待ってください! 麻理さん。
『取材対象との密通が疑われている』って話はどの辺まで…」
何せ、曜子はともかくベレンガレアまで笑っていたのだ。まさか…
「ふう。まあ、今後の為にも知っておいた方がいいな。
少なくとも曜子社長、先生、吉松編集長は知っている。社内でタレ込んだのが誰かはわからないが、よりによって本部長等ミーティングでその話が出てしまったらしいから、我が社の本部長、編集長の大半の耳には入ったな」
「そんなに…」
「若いとはいえ幹部候補の話は結構重い話だからな。
だが、社としてはお前を大事にしてるから安心しろ。
こんな事を言ってはなんだが、冬馬曜子オフィスは色々『前科持ち』だし、お前任せが悪かったと上の方もわかってる」
「いえ、まあ…」
「あとは…グラフでは編集長と浜田で止めている。だが、一般社員の間でどれくらい噂が広まってるかはわからない。
ま、担当外れたとはいっても、人の噂も七十五日耐えるしかないな」
「はは…」
グラフの鈴木のような人物に聞かれたら…
『愛の三角劇場Ver.2』を上演する鈴木の姿が目に浮かび、春希は軽い頭痛を覚えた。
弱る春希を何故か冷たい目で見ながら、麻理は抑揚のない声で言った。
「お前が気にしなければいけないのは、むしろ奥さんの方との事じゃないのか?
仕事として連れてきた私が言うのも何だが、今日もクリスマスだというのに冬馬かずさの会食に来てしまって、奥さん怒るだろう」
春希はそれについては大丈夫といった表情で返した。
「前もってあいつには言ってあるから大丈夫です。あいつはわかってくれてますから、かずさの事で雪菜が怒ることはないです」
それに対して麻理は一瞬顔をひきつらせたが、すぐからかうように返した。
「本当に大丈夫か? プレゼントやケーキ買い忘れたとか言ってももう店は開いてないぞ?」
「ケーキは雪菜が焼いてます。プレゼントはお互いに社交ダンスの舞台衣装を贈ることになっていて、自宅に準備済みです」
「ふん…仲の良い理解ある出来た奥さんでごちそうさま、だな…独り者の私にはうらやましいよ」
「どうも」
幸せそうに照れる春希を見て、麻理は心の中にあるものを飲み込んだ。
「では、この辺で。またな。北原」
「はい、麻理さん。また」
麻理は駅の近くで小路に入り、春希と別れた。
麻理と別れた春希が雪菜に帰宅時間を知らせるべく携帯を取り出した時のことだった。
がらんっ
麻理の消えた小路のほうで何かが崩れる音がした。
「!?」
異常を感じた春希は携帯を閉じ、小路に駆け出した。
<目次>/<前話>/<次話執筆中>
「では、メインイベントにしましょうか。
皆様、今年一年いい子にしていたかずさにプレゼントをよろしくお願いします」
「子供扱いすんな。
あー。みんな、こんな日に呼び出してゴメン。
メリークリスマスということで、こちらからもプレゼントがあります。これからもよろしく」
皆が色とりどりのプレゼント袋をかずさに渡した
「メリークリスマス。かずさ。これ、雪菜と一緒に選んだよ」
「メリークリスマス。これはソースケとわたしから」
「メリークリスマス。かずささん。社長とわたしからです」
「メリークリスマス。かずささん。ニューヨークでのお礼も兼ねまして贈らせていただきます」
かずさからもプレゼントとして、リボンのついた封筒が渡された。
プレゼント交換が終わるとかずさはバリバリと包装を破りはじめた。
「なんだこれは? 鍋つかみか? こないだもらった鍋には鍋つかみがついてなかったからちょうどいいな」
とぼけるかずさに春希はわざわざ説明を返した。
「手袋だよ。冬のヨーロッパも内陸の方は乾燥するだろ。手を傷めないように選んだよ」
「別にそんなヤワな手はしてないが、ありがたく頂いておくよ」
吉松夫婦のプレゼントはマフラー、曜子と美代子からはカーディガンだった。これからの長期遠征に向け、衣類をプレゼントに選んだ者が多かった。
麻理のプレゼントは携帯枕や爪切り等のトラベルグッズの詰め合わせであった。これも長期遠征を考えてのことだろう。
「どうも。ありがたく使わせてもらうよ」
プレゼントをもらったかずさは満足した反面、段々寂しげな表情になってきた。プレゼントが旅行者向きだった事に気付き、余計に日本を離れる事を意識してしまったのかもしれない。
ディナーの最後のケーキを平らげて、かずさはため息と共に言った。
「はあ。日本ともしばらくお別れか…」
「しばらく、ね。
でも、まずは自分が初めて自分で取ってきた仕事に目を向けなさい。
イスタンブールでサイさんのお世話になるのはけして悪い仕事でも楽な仕事でもないわよ」
「うん。そうだね」
かずさは気を取り直して今日の会を締めた。
「みんな。今日はクリスマスの中、いろいろ励ましに来てくれてありがとう。編集長と先生は引き続き向こうでもよろしく。春希も帰ってきたらまたよろしく。麻理さんも機会があればまた」
「みなさん。これからも娘をよろしくお願いします」
複合文化施設「Kaikomura」エントランス
ディナーを終えた面々はエントランス付近で皆それぞれ別れていった。
「では、良いお年を」
「さようなら、先生」
吉松夫婦を乗せたタクシーが建物前を走り去っていった。
そして、かずさも曜子や美代子と共にタクシーに乗り込んだ。
最後に、春希はかずさに別れを告げた。
「これで、ほんとうにしばらくお別れだな、かずさ。良いお年を。とりあえず、トルコでの成功を祈ってるよ」
かずさはタクシーの窓から顔を出し、春希に返事をしようとした。
「それじゃあ、春希…あのな…」
ここでかずさは言葉を詰まらせてしまった。
ディナーの前日、曜子が春希について、かずさに注文づけたのは一つだけだった。
『最後はとびきりの笑顔で見送ってやれって?』
『そう。オトコって単純よ。例えそれまでいろいろもめてたとしても、最後に笑顔一発キメてあげさえすれば、いい印象で次に会ってくれるものよ。
どうせ、ギター君に対して突っかかるな、バカ娘、とか言ったとしてもムダだろうから。最後だけキチンとしておいてくれればいいわ。今回はともかく、後々付き合うことになるコだから』
『はいはい。営業スマイル0円用意しておくよ』
曜子のアドバイスを聞いたかずさは、春希だけのために鏡の前で前日から『最高の笑顔』の準備をしていた。
しかし、それを春希に見せることはできなかった。
たった数ヶ月離れるだけなのに。また会うことができるのはわかりきっているのに。こんな短い別れなのに。
『これで、ほんとうにしばらくお別れだな』
改めて春希の口から聞いてしまった。たったそれだけのことでさっきまでの余裕ある態度が吹き飛んでしまった。
笑顔を作ろうとした顔の筋肉は凍りつき、涙腺は溢れる涙を押さえきれなかった。
「あ…」
ついに涙が一粒、眦から流れ落ちてしまった。
かずさは窓を閉めた。
ブロロロ…
「あっ。かずさ…」
春希が呼び止める間もなく、かずさを乗せたタクシーはクリスマスの夜の街に消えてしまった。
「ゴメン、母さん。しくじった」
タクシーの中で涙を拭う娘をみつつ、曜子は呆れ半分にひとりごちた。
「しくじったって、あんたねぇ…
これがワザとじゃないんだから。わが娘ながらそら恐ろしい子…」
「どうした、北原?」
「あ、麻理さん。どうも」
春希は何とも言えない思いでしばらくエントランスに立ち尽くしていたが、麻理の声で我に帰った。
麻理は不思議そうな声をつくって聞いた。
「ひょっとして、東エントランスが閉まってるから帰り道がわからなくなったか?」
「いえ。それは何とか…」
おぼつかない返答を返す春希の背中に向けて、麻理は手を振り上げた。
ばしっ。
「いてっ!?」
抗議じみた表情と共に振り返った春希に麻理は軽く激を飛ばした。
「しっかりしろよ、北原。これで明日からアンサンブルの副編集長代理補佐心得見習いだ。お前の同級生が世界で羽ばたいているようだが、負けていられないぞ」
「負けるとかそんなんじゃなく、ただ…」
「何にせよ、今日の仕事が終われば、明日の仕事が待っている。…まあ、私は休暇中だかな。さあ、帰るぞ」
「はい…」
かずさが心配でも、今の自分にできるのは自分の道を歩むことだけ。
春希は麻理に促され帰ることにした。
「帰りは? 地下鉄か?」
「いったん西住坂です」
「私の宿も近いな。途中まで歩くか」
近くの路上
帰り道、春希は麻理に聞いた。
「そう言えば、食事の途中で自分がワイン選んだとき、曜子社長や先生に笑われましたけど、あれ、何ででしょう? 自分、何か変なワイン選びました?」
麻理は困った顔をしつつ答えた。
「あ、ああ。あれか。
『シャトー・マルゴー』は一級ワインで、確かに奢ってもらうには高いワインだな。だが、問題はそこではなかった」
「? と、言いますと?」
「日本ではこのワインは、映画化された某恋愛小説のラストシーンで出てきたワインとして有名だな。許されない不倫関係に堕ちた恋人たちが最期に飲んだワインとして知られてしまっている。ワインにとっては迷惑な話だが。
普通なら気にも止めないだろうが、取材対象との密通が疑われてる男のチョイスとしては、ちょっと冗談きつかったんじゃあないか?」
「だあああ!」
春希は頭を抱えてその場にしゃがみこんでしまった。
麻理はそんな春希に哀れむように声をかけた。
「いや、たまたま先週末その映画の地上波再放送あったりと間が悪い要素もあったとは思う」
「い、いや。待ってください! 麻理さん。
『取材対象との密通が疑われている』って話はどの辺まで…」
何せ、曜子はともかくベレンガレアまで笑っていたのだ。まさか…
「ふう。まあ、今後の為にも知っておいた方がいいな。
少なくとも曜子社長、先生、吉松編集長は知っている。社内でタレ込んだのが誰かはわからないが、よりによって本部長等ミーティングでその話が出てしまったらしいから、我が社の本部長、編集長の大半の耳には入ったな」
「そんなに…」
「若いとはいえ幹部候補の話は結構重い話だからな。
だが、社としてはお前を大事にしてるから安心しろ。
こんな事を言ってはなんだが、冬馬曜子オフィスは色々『前科持ち』だし、お前任せが悪かったと上の方もわかってる」
「いえ、まあ…」
「あとは…グラフでは編集長と浜田で止めている。だが、一般社員の間でどれくらい噂が広まってるかはわからない。
ま、担当外れたとはいっても、人の噂も七十五日耐えるしかないな」
「はは…」
グラフの鈴木のような人物に聞かれたら…
『愛の三角劇場Ver.2』を上演する鈴木の姿が目に浮かび、春希は軽い頭痛を覚えた。
弱る春希を何故か冷たい目で見ながら、麻理は抑揚のない声で言った。
「お前が気にしなければいけないのは、むしろ奥さんの方との事じゃないのか?
仕事として連れてきた私が言うのも何だが、今日もクリスマスだというのに冬馬かずさの会食に来てしまって、奥さん怒るだろう」
春希はそれについては大丈夫といった表情で返した。
「前もってあいつには言ってあるから大丈夫です。あいつはわかってくれてますから、かずさの事で雪菜が怒ることはないです」
それに対して麻理は一瞬顔をひきつらせたが、すぐからかうように返した。
「本当に大丈夫か? プレゼントやケーキ買い忘れたとか言ってももう店は開いてないぞ?」
「ケーキは雪菜が焼いてます。プレゼントはお互いに社交ダンスの舞台衣装を贈ることになっていて、自宅に準備済みです」
「ふん…仲の良い理解ある出来た奥さんでごちそうさま、だな…独り者の私にはうらやましいよ」
「どうも」
幸せそうに照れる春希を見て、麻理は心の中にあるものを飲み込んだ。
「では、この辺で。またな。北原」
「はい、麻理さん。また」
麻理は駅の近くで小路に入り、春希と別れた。
麻理と別れた春希が雪菜に帰宅時間を知らせるべく携帯を取り出した時のことだった。
がらんっ
麻理の消えた小路のほうで何かが崩れる音がした。
「!?」
異常を感じた春希は携帯を閉じ、小路に駆け出した。
<目次>/<前話>/<次話執筆中>
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このページへのコメント
ラストが気になります‼
Codaでは雪菜Trueに向かう二人を海の向こうから後押しした麻理さんですが、CCで雪菜の存在に気づいた際「彼女いるんじゃないか!」と毒づいてみせるなど、クールな才媛の影に隠れた嫉妬深さも魅力的ですよね。
海外のかずさたちの話の前に麻理さんの話を少し入れさせてもらいます。
ラストまではまだまだ、、、100話以降かなと思いますので、ゆっくりお楽しみ下さい。
更新お疲れ様です。
このssの中では春希と雪菜が結婚していて一応の決着はついていても、かずさのみならず麻里さんもまだ未練が残っている感じですね。
ラストがとても気になります。次回を楽しみにしています。