39 再会と贖罪の記者会見 ／ 2015年12月上旬
最終更新：
ushigara_neko 2015年02月14日(土) 00:16:38履歴
（ごめんなさい。33から38のお話はありません。32の次はこの39話になります）
＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊
12月10日、午前10時。西御宿パークフィアットホテル。
冬馬曜子オフィスが押さえた控え室。
「本日は、東亞テレビ様には、お世話になります。柳原朋アナウンサーには、お忙しい中、本日の司会をご担当いただき、ありがとうございます」
「ふん。本当に忙しいんですけど」
春希に頭を下げられた朋は、横を向いて、そう切り返した。
「悪いな……」
「だいたい、加害者を舞台に上がらせる時点で、危機管理がなってないですよねえ」
「春希くんは悪くないよ。できるだけ、大学の学園祭実行委員会に仕事を任せる方針でやってたんだから」
「それにしても、二人とも逃げられたでしょう？
雪菜に怪我でもさせてたら、私、北原さんのこと、許しませんでしたよ」
「当然だよな。ごめん」
「……まあ、思った程、怪我が大したことなくて、良かったです」
朋は、横を向いて頬を少し赤らめて言った。
「……ところで、こちらのブロンドの女性は？」と、春希は朋に訊く。
「ああ、うちの新人アナなんです。アシスタントしてもらいます」
「初めまして〜、私、エリザベスと申します〜」
「お母さんがイギリス人だそうです」と、朋は胡散臭そうに言った。
「巨乳だな……」と、かずさが言った。
「巨乳ね……」と、雪菜も言った。
「あの、突っ込みどころ満載なんだけど……」と、春希は言ったが、その視線は、一瞬、スーツの大きく開いた胸元に注がれてしまった。
�爛�スっ��
「痛っ」
察知したかずさが、春希の足を踏んでから言う。
「お前な……。スーツ着ようが、ウイッグ付けようが、カラコン入れようが、どこをどう繕っても、その胸は誤摩化せないぞ……」
「いえいえ、冬馬さんには負けますわ〜」
「あは、あはははは」雪菜の額に斜影がかかっていた。
「どうしても参加したいって、聞かないんですよ。どうも、被害者からの連絡が遅かったことをかなり根に持っているようで。
まあ、場の雰囲気が私の手に負えなくなったら、ちょっと助けてもらうつもりです」と、朋は言った。
「そうか……。では、よろしくお願いします、エリザベス」と、春希は言った。
「途中から、私と北原さんの熱愛宣言に切り替えて良いでしょうか〜？」
「お前、話をややこしくしたいだけなんだろ、そうなんだろ？」
＊ ＊ ＊ ＊ ＊
「それでは、冬馬曜子オフィスさんの方から、今回の傷害事件に関連し、記者会見をしていただきます。
私は、本日の幹事会社、東亞テレビのアナウンサーで、司会を務めます柳原朋です。
なお、本日の会見ですが、動画に関しては東亜テレビの独占契約としていますので、許可のない動画撮影はご遠慮ください」
会場には、二十組程度のマスコミが参加していた。
「では、冬馬曜子オフィスから、本日の出席者を紹介していただきます」
「冬馬曜子オフィスのマネージャー、清水早百合です。本日は、弊社の記者会見にお集りいただき、ありがとうございます」
「弊社の出席者を紹介します。
冬馬かずさです。
小木曽雪菜です。
最後に、北原春希マネージャーです。
では、私の方から、事件の経過について、報告します。
既に弊社のホームページに掲載しておりますが、お手元にお配りしている概要報告書の通り……。
…………。
……以上が、事件の経過、弊社の対応です。
なお、一部の悪質な飛ばし記事で、加害者と当社・北原との恋愛関係が噂されておりますが、全くの作り話であり、そのような事実はございません。
また、小木曽雪菜と加害者の業務上の関係ですが、小木曽と加害者との個人的な交友関係は全くありません。当社側、小木曽側から加害者に対して、恨みを抱かれるような振る舞いを行った事実もありません。
弊社からの説明は以上です」
「では、ご質問を受けます」と、朋が言った。
「なお、被害者の北原氏は、怪我を押して出席してますので、お手柔らかにお願いします。
では、最初に……、『週刊旭日芸能』さん」
「北原さんにお尋ねします。刺される直前に、北原さんは加害者に対して、何か言いかけた、という情報があるのですが、面識あったんじゃないですか？」
春希は答える。「直接の面識はありません。ただ、小木曽雪菜の仕事上の関係者として、写真とプロフィールを確認したことがあった、というだけです」
「何故、東京ではなく京都なんですか」
「加害者は、関西に実家があったと聞いてます」
「所属事務所に損害賠償と慰謝料を求めなかったということですが、何故ですか。従前から何かトラブルが存在していた、ということじゃないんですか」
「事件発生時には、既に元所属プロを解雇されてますし、責任は求められないと考えています。また、元所属プロと当社との間でトラブルは発生していません。
なお、調査の結果、彼女が負担できそうになかったので、賠償等は求めませんでした」
「では……、次に、『週刊満潮』さん」
「小木曽雪菜さんにお聞きします。デビューCDは、失恋の歌が多いですよね。私達は、去年の秋のドラマ『届かない恋』が、小木曽さんの高校時代の失恋を元に書かれたことを知っていますから、その時の失恋を元に書かれた歌だと思っていた訳です。
でも、本当にきつかったのは社会人になってから、婚約者に婚約を破棄されたことだったんですよね」
「ご質問の意図は何でしょうか？」と、雪菜は笑って言った。
「その元・婚約者というのが、今回被害に会われた北原マネージャーさんだというのは、本当ですか？」
「えっと……」雪菜は得意の愛想笑いをする。
「確かに、わたしと北原さんは、過去において、婚約というか、結婚を前提とした交際をしていたことは事実です」
雪菜に向かって、複数のシャッターが切られた。
「何故、別れることになったんですか？」
「それって、言う必要あるんでしょうか？」
「『週刊満潮』さん、今回の事件にあまり関係ないことは、控えていただけますか」と、朋が言った。
「ですがね、我々大衆が知りたいのは、加害者の動機や背景よりも、小木曽さんや、今の奥様である世界的ピアニスト・冬馬かずささんと、マネージャーで今回の被害者の北原さんが、どういう人間関係だったのか。
その人間関係自体に問題があったのなら、加害者にどういう影響を与えたのか。まあ、それが�狷擦覆蕕摸��瓩任△辰燭箸垢襪覆蕕弌�犯人の背景、精神状態とどう絡んでいたのか、絡んでいないのか、そこが知りたいんですよ。
つまり、事件そのものより、三人の恋愛模様の方に、興味が移ってしまってるんですよ。
特に、世界的ピアニスト、冬馬かずささんが、どうしてご友人の小木曽雪菜さんの元・婚約者と結婚されたのか。
もしも、ご友人の婚約者を奪ったというなら、相当スキャンダラスですからね」
「では、私から、説明します」
そういって、春希は、淡々と話し始めた……。
「小木曽雪菜、冬馬かずさと私の三人は、峰城大学付属高等部時代に出会いました。その頃の話は、瀬之内晶さんが脚本化し、昨年末に放映されたドラマ『届かない恋』の内容とほぼ同じです」
�犖�式にしたくなかったが、仕方ない。だが……��
千晶は、雪菜から聴いていただろう事実を、そのまま脚本化しなかった。特に結末は、千晶は千晶なりの想いを、最終話に結実させていた。
だから、卒業式の夜、かずさと初めて結ばれた夜と、翌日成田空港でかずさと別れた時の話は、絶対に話したくなかった春希は、その辺りの話をざっくり飛ばした。
「卒業後、冬馬かずさは、プロのピアニストを目指して、ヨーロッパへ。
私と、小木曽さんは峰城大学に進学し、紆余曲折を経て、三回生の頃に、交際を始めました。
冬馬には、三年前の冬に、ストラスブールで再会しました。翌年の来日コンサートで、私が当時勤めていました開桜社で独占インタビューを行うこととなり、私が担当となりました。
担当として、取材を重ねているうちに……」
�犖世辰討睥匹い函∪禳擇�ら言われているが、やっぱり言うのはきつい……��
「冬馬と交際するようになり、当時、内々で取り交わしていた、小木曽さんとの婚約を解消しました」
春希に対して、複数のシャッターが切られる。
「以上が経過です」
春希は、マイクを置く。
「おおっと、それだけかよ」
「お詫びはないのかよ、お詫びは」
「そうそう、詫びろよ」
……複数の、ヤジが飛んだ。
「今、発言されたの、どちらの会社の方ですか？」
雪菜がマイクをとり、静かに言った。
「何を勘違い、されてるんでしょうか？」
静かだが、相当に怒りを抑えているのが、びりびりと伝わるような声だった。
「…………」会場は静まり返る。
かずさが目を見開いて、雪菜を見ていた。
「北原さん……、春希くんとわたしの間に起ったことで、どうして関係のない方々に対して、春希くんが謝ったりしなきゃならないんですか？」
「ちょっと良いですか」
「はい、『週刊ポトス』さん」
「ですが、実際、小木曽さんは会社もお辞めになった上に、怪我までされたんでしょう？
小木曽さんのファンとしては、北原さんの口から詫びの言葉の一つも聞きたいんじゃないですかね」
「怪我って、何のことでしょう？」
「背中の傷のことですよ。あれは、北原さんとの別れ話が絡んでるんじゃないですか？」
「あれは……」かずさが小さく話そうとした。
「あの傷は、三人の話とは全く関係ないです」
雪菜は、かずさを一瞥もせず、上から被せた。
「じゃあ何故、あんなきわどいピンナップを、一枚目のアルバムに入れたんですか？」
「まあ、それなりに身体に自信があったからかなあ〜」
そう言って、雪菜は頬に右手の人差し指をおいて、微笑んだ。
記者連中の男どもが、少し「おおっ」とどよめいた。
「そ、そうなんですか……」
「そうなんです。……もっと見たいですか？」
「えっと、はい……」
「考えておきます」
雪菜と春希は、雪菜の怪我の話だけは、あまり明確にしたくなかった。できれば、うやむやにしたかった。
二人は、そう打ち合わせていた。
だが……。
「柳原さん、ちょっと良いかな」
かずさが、マイクをとった。
「えっと……」
「雪菜の、背中の傷のことだけど」
「ちょっと、かずさっ」
雪菜が止めにかかるが遅かった。
「あれは、あたしのせいで付いたんだ」
マイクを持つかずさに、シャッターが一斉に切られた。
「それはどういう意味ですか〜」
間髪入れず、記者席から質問が飛んだ。
「止めてっ」
立ち上がり、卓上に両手をついた雪菜が呻いた。
「2013年２月28日、あたしは雪菜と二人で会った。
あたしは、その時、雪菜に、春希を奪うことを告げた。
そのせいで、雪菜はショックを受けて……」
「違うっ！ もう止めて！」
雪菜が叫ぶ。だが、身動きができない。
「それで、雪菜は交通事故に会った。
雪菜の背中の傷は、あたしがつけたようなものだ」
「違うっ」
「違わないっ」
かずさも立ち上がり、春希を挟んで雪菜と対峙した。
「あたしは、春希を刺した人と、同じ加害者だ。
だから、罰を受けなければならない、と思ってる」
「違う違う違うっ。違うったら、違うよ！」
「違わないよ……、雪菜。
あたしが、何も罰を受けてないから、春希が罰を受けてしまったじゃないか」
かずさは、震える声で言った。
その悲しそうな瞳の中に、悲壮な覚悟を見つけた時、雪菜は気づいた。
自分がかずさと春希に仕掛けた罠。
作戦を完璧にするため、春希に背負わせた駄目押し。
2月28日と２月29日、一日違いの錯誤。
その真実を知った時、雪菜の想像を超えて、かずさがどれ程の呵責に苛まれたかを。
「何を、言ってるんだ、かずさ」
春希は、ようやく声を絞り出す。
「そうよ、馬鹿なことを言わないで」
「ふふふっ……」
かずさは、悲しそうな瞳のまま笑った。
「ここまで来て、お前達はまだ、あたしを庇うのか？
あたしには罰を与えないと言うのか？
お前達は、負う必要の無い罰で、二人して血を流したのに？」
「かず、さ……」
「ここに、お集まりの皆さんに、お願いがある」
かずさは、眦に涙を溜めながら、前を向いて言う。
努めて、明るく。
「あたしには贖罪が必要だ。
だって……、だって、あたしは、謝ることができない。
あたしがしたことは、あたし以外の誰が考えても、間違いだったのかもしれない。
でも、あたしにとっては、真実だったんだ。
ピアノを弾くことと同じ位、真実だったんだ。
だから、あたしは謝らない。春希にも、謝らせない。
だから、お願いだ。
誰か、あたしを罵倒してくれないか……。
あたしを罵って、くれないか……。
あたしを殴り飛ばしてくれないか……。
あたし……、このままじゃ、罪を償えないよ……」
何時しか、シャッターの音は消え、かずさの慟哭だけが響いた。
春希は、雪菜を見た。心から、悲しそうに……。
雪菜は天井を見上げて、大きな溜め息を付いた。
�爐�ずさの、ばか……。
わたしの馬鹿。ほんと、馬鹿だ。
こんなこと、言わせるつもりはなかった。
でも、かずさの純真さを考えれば、容易に想像できた。
なのに、かずさに、言わせてしまった。
こんなところで、言わせてしまった……。
わたしのせいだ……��
雪菜は、かずさの肩を抱いた。
かずさを、退席させるために。
その瞬間だった。
エリザベスが席を立ち、朋と春希の後ろをつかつかと通り過ぎて、かずさの横に立った。
そして、雪菜の手を払い、俯いて震えていた、かずさの首根っこを掴んだ。
「おい、止めろっ」
春希がそう言うが早いか、エリザベスはかずさの左頬を思いっ切り張り飛ばして、大きな声で叫んだ。
「冬馬かずさの大馬鹿野郎ぉぉぉぉぉおっ！」
徹底的に訓練された、腹の底から暴発する憤怒の声。
それは、マイクに拾われ、会場をびりびりと共振させた。
それはあまりにも突然すぎて、誰もシャッターを切ることができなかった。
エリザベスは、ウイッグを外した。そこには、見たこともない程、厳しい目つきをした千晶がいた。
「千晶ぃ……」
かずさは、震える声でその名を呼ぶ。
千晶は、かずさを強く抱きしめた。
そして、耳元で囁いた。
「何だよ、罪人振りやがって……。好い加減、腹が立つんだよ、てめーは。
何が贖罪だよ……。つまんないこと言うなよ。
もっとしっかり開き直れよ。
春希が刺されて弱気になったのは分かるけど……、そんな情けない顔、あたし達に見せんな」
「だって……、だってさ……、あたしのせいだ……、みんな、あたしのせいじゃないか……」
「お前のせいでなんか、あるもんか。……ばか」
「だって……」
「だってもクソもあるか。
良いか、仮にお前に責任があったとしても、だ。もっと違う責任の取り方があるだろう。
取り乱してどうする？
雪菜の想い、春希の想い、お前が背負わなくてどうする？」
「千晶ぃ……」
「それにな……、カメラの向こう側にはな、お前の音楽を好いてくれる、何万、何十万、いや……、お前の場合は世界中の何百万のファンの人がいるんだぞ。それなのに、こんなクソみたいな事件で取り乱してどうすんだ？」
「でも……でも……」
「じゃあ、あたしがお前に一生ものの罰を与えてやる。
重罰だぞ。
ピアノで、音楽で、世界中の人に感動を与えろ。
そして、雪菜を歌わせろ。
それが、生涯、いや、未来永劫、永遠にお前に課せられた罰、労役なんだよ」
「千晶……」
「分かってるんだろ？」
千晶は腕を解き、かずさの両肩を抱いて、正面から見つめた。
「どうだ？ これくらいの罰じゃ、満足できないか？」
「…………」
「も一発、欲しいか？」と、千晶は優しく言った。
「千晶、ごめん。もうそれ位にしてくれないか？」
春希は、千晶に話しかける。
「えっと……」
春希を振り返った時、千晶はすっと�猩太�千晶�瓩傍△辰拭�
「あ、あ〜。ごめんごめん。あ〜、すみません」
千晶は、頭を掻いて、へこへこと謝って席に戻った。
「なんで千晶さんが怒るかなあ……。三人を助けるために参加したんじゃなかったの？」
朋は、頬杖をついて言う。
「いや、まあ、そうだけど」
朋はマイクを持って立ち上がった。
「すみません。ご覧の通り、今回の事件で、冬馬さんも相当傷ついてまして……。
過去の話は、今の告白で、お許しいただけませんか。
他に、ご質問がなければ、終わりたいのですが……」
「『開桜グラフ』の杉浦です。当社から少し質問させてもらって良いですか」
「えっと……、どうぞ」
「すみません……。では、上司から質問させます」
小春の横に座っていた女が立ち上がり、サングラスとマスクを外した。
「久しぶりだな、北原。……さん」
「麻理さん……」
「麻理、さん？」
憔悴したかずさが、前を見た。
�爐△凌佑�、春希の言ってた、風岡麻理……。
何だよ、すっごい美人じゃないか……��
かずさの中に、見境のない嫉妬のオーラが陽炎のように立ち上った。それが、気持ちを少し高揚させた。
「冬馬さん……、落ち着かれましたか？」
「ああ……」
「じゃあ、少し質問して良いですか？」
「はい……」
「小木曽雪菜さんのファースト・アルバムに収められた曲について、質問します」
「えっ。あ、ああ」
「十曲中、六曲を作曲されてますが、最初は、作曲者名がクレジットされてませんでしたよね。何故ですか？」
かずさは、雪菜と春希の顔を見る。
雪菜は、笑って頷く。
「言っても良いよ」
「雪菜のファーストは、あたしの知らないところで、録音が進められたから……。
実はあたし、リリースされるまで、全く関与してなくて」
ええっ、という驚きの声が上がった。
「録音に関与していないって、どういう意味ですか？」
「ゴーストライトとか、名義を貸しただけとか、とか、そういう意味ですか？」
記者席から、複数の質問が出された。
「そういう意味じゃない。あたしが作った六曲は、あたしが高校生の頃、自宅のスタジオで録り貯めていたもの、だから」
「いわゆる、宅録ですよね」と、麻理は言う。
「ああ、はい」
「宅録であのクオリティーですか？」
「そう。それに、わたしが勝手に詩を付けました」と、雪菜は言う。
「で、冬馬曜子氏が、追加のアレンジを施したと」
「そう……。だから、あの曲達を作ったのはあたしだけれど、雪菜のファーストには、実質的に関与していない」
「ちょっと突っ込んで聞きたいのですが、良いですか？」
「あ、はい」
「一曲目の『優しい嘘』なんですけど、どういう時期に書かれたのですか？」
「『優しい嘘』は、高三の春頃、です」
「北原さんと出会った頃？」
「そう……」
「その頃は、どんなお気持ちで、学校生活を過ごしていたんですか？」
「あたしは、母さんに捨てられたと思い込んで、ピアニストになるのを諦めて、毎日、グダグダと過ごしていた。
高三になって、音楽科から普通科に移って、余計に投げやりになって……。
たまに学校に行けば、隣の席の委員長が口うるさく説教するわ、過干渉するわで、うんざりしていた。
けれど、段々、学校に行っても良いか、と、思い出していた頃……、です」
「その委員長というのが、北原さん？」。
「うん……」
「その頃から、北原さんに好意を持ってたのですか？」
「今から考えたら、そうかもしれない」
「『優しい嘘』は、歌詞は色々痛いですけど、曲は暖かい感じがしますものね」
春希と雪菜は、黙って、かずさを見ている。
「『氷の刃』は？」
「あの曲は……、高三の学園祭が終わって、ちょっと気落ちしていた頃に作った」
「気落ちしたのは、北原さんと雪菜さんが付き合いだしたから？」
「失恋して、暗い曲を作るなんて、痛い話だよな」
「じゃあ、『Twinkle Snow』は？」
「あれは、付属高等部卒業後、ウィーンに行くと決めた頃に書いた」
「開桜社さ〜ん、その話、長くなるの？」と、帝スポの記者が言った。
「黙って聞いてろ。おっと、聞いてて下さい」と麻理は言った。
「東亞テレビさんっ、放っといて良いんですかっ」
「良いの。あたしが面白いから」と、千晶が言った。
「いや、あんた関係ないだろ」
「良いの。黙って聞いてろ。はい。続けて、どうぞ〜」
「私が知っている経過を整理すると……」
麻理は話し始める。
「付属三年生の春頃から、冬馬さんは北原さんに好意を抱いていた。
北原さんも、冬馬さんに好意を抱いていた。
付属三年生の秋の学園祭で、バンドをするために、北原さんは小木曽さんに声をかけた。その後で、冬馬さんに声をかけた。
学園祭が終わって、こういう流れなら、北原さんと冬馬さんが交際するのかな、っと思ったら、北原さんは小木曽さんと交際を始めた。
でも、北原さんの心には、冬馬さんがいて、付属時代の終わりに何かあって、一旦、北原さんと小木曽さんの交際は終わった。
冬馬さんは、独りでウィーンに移住し、二人との関係も断った。
その頃までに、ファースト・アルバムの曲は書かれている。ということで、良いですか？ 冬馬さん」
「そう、だね」
「それから、三年間、空白期間があって、冬馬さんの不在の中、大学三回生の冬のヴァレンタイン・コンサートの後で、北原さんと小木曽さんの交際が始まったのが、四年十か月程前。
そして、冬馬さんの凱旋公演に絡んで、北原さんと冬馬さんの再会があって、その結果、北原さんが冬馬さんを選んで、ウィーンに移住したのが、二年九か月前。
その後、小木曽さんは冬馬曜子オフィスと契約して、二年の準備期間を経て、デビューした。
で、ファースト・アルバムの歌詞は、その準備期間、つまり、小木曽さんが一番辛かった時期に書かれている。
ということで、良いですか？ 小木曽さん」
「……はい」
「つまり、年月は異なるけど、お互い、かなり辛い時期に書いた曲と詩の組み合わせ、なんですよね、小木曽雪菜ファースト・アルバムに収められた曲は。
何故、そんな曲を歌おうと思ったんですか、小木曽さん？」
「わたしは……、親友として、かずさを愛してるし、かずさの曲を愛しています。
それに、春希くんも、元彼、というだけでなく、わたしにとっては、大事な親友です。
だから、二人にはどうしても日本に帰ってきて欲しかった。
そして、一緒に音楽活動をしたかった。
だから……」
雪菜はかずさを見た。かずさは、雪菜の方を向いて、雪菜をじっと見ていた。
「かずさが残していった曲で、失恋の歌を歌えば、かずさが帰ってくるんじゃないかって、思いました。かずさが帰ると言えば、春希くんも帰ってくる。
だから、かずさには一切相談せずに、企画を進めました」
「私、小木曽さんのCDは大好きなんですけど、あの甘酸っぱい曲達の詩が、そんなちょっと黒い目的を持っているとは思っていませんでした」
「そうでしょ。わたし、本当は黒いんです」
そう、雪菜は言い、笑って小首を傾げた。
誰が見てもうっとりする程、可愛い笑顔だった。
�狃个拭帖帖２薪抔�ても、この笑顔は凶悪��
小春は戦慄する。
�爐海譴蓮∨悗匹涼砲�騙される��
麻理は呆れた。
「……やっぱり可愛くて、甘酸っぱい女ですね。小木曽雪菜さんは」と、麻理は言った。
「ありがとうございます」
「で、作戦は成功したわけですね」
「はい。かずさと、春希くんには、嫌な想いをさせたかもしれませんが……」
「あたしと春希は、嫌な想いなんかしてないよ……。
そりゃ、驚いたり、悔しかったり、色々思ったけどさ」
「北原さんは、いかがですか？」
「私から申し上げるのもなんですが、小木曽雪菜は、つい最近まで、専門的な音楽の教育を受けていませんでしたが、私が日本を離れていた二年の間に、努力して、歌唱力はもちろん、作詞・作曲、楽器演奏の力を得て、デビューしました。
今ではご存知の通り、小木曽雪菜は、沢山の人に愛されています。
冬馬かずさは、母親から受け継いだ圧倒的な才能もありますが、毎日必ず十時間以上、一人でピアノに向かっています。人生の殆どを、皆様に良質な音楽を届けるため、ピアノに捧げています。
冬馬かずさと、小木曽雪菜という、素晴らしい才能を守るべき立場の私が、過去に二人を傷つける原因となったことや、今回の事件を未然に防げなかったことに、忸怩たる想いを感じています。
マネージャーとして、ファンの皆様には、二度とこのようなご心配をかけないよう、努めて参ります」
春希は立ち上がり、深々と頭を下げた。
「春希くん……、おじさん臭いよ」
「というか、胡散臭さも漂ってるぞ、春希」
�爐Δ襪気い吻瓩函⊇婀�は小声で言った。
「さて、困りましたね」と、麻理は言った。
「確かにもつれた三角関係かもしれませんが、現時点では、恋愛沙汰の事件として、我々が期待するようなネタは、もう出てきそうにないですね」
麻理は、さも困ったように言った。
会場は、静まり返った。確かに、エサはなかった。
過去には色々あったかもしれないし、これからも色々あるかもしれないが、今はお互いを尊重しているアーティストがいるだけだった。
「では、これ以上、ご質問がないようでしたら、予定の時間を過ぎてますので、終了しようと思いますが」
朋は話を閉めにかかった。
「すみません。もう他社さんから質問がないなら、当社からもう少し、質問してよろしいですか？」
会場内の殆どの記者達が席を立ちかけていた時、小春が手を挙げて言った。
「じゃあ、こは……、開桜社さん、手短にお願いします」
「開桜社の杉浦です。小木曽さんにお訊きします。
小木曽さんとしては、冬馬さんから、北原さんをもう一度奪い返す気は無いんですか？」
「ぶっ」安心して水を飲んでいた春希は吹いた。
「はぁ？」かずさは、小春を睨んだ。
席を立ちかけていた記者達は、再びカメラを用意する。
「えっ。まあ、その……」
雪菜は、少ししどろもどろになる。
「自分は、完全に身を引く、ということですか？」
「そうですね。えっと、そうですね……。
いえ、そうじゃありません」
「「えっ」」
かずさと春希は、雪菜を見た。
虚を突かれた二人に、一斉にフラッシュが焚かれた。
「きゃはははははは」
朋が身を捩って大笑いしていた。
「さすが……」と言って、千晶は笑わない目のまま口の端を上げ、「全く……」と言って、麻理は好敵手を見るような目付きをした。
「かずさには言ってあります。春希くんへの愛に手を抜いたら、何するか分かんないよって」
「お前な、ここでそれを言うかっ」
かずさは席から立ち上がり、雪菜を見て叫んだ。だが、雪菜は動じず、前を見て語る。
「だから、わたしは今の所、虎視眈々とかずさの隙を狙っているし、何時かかずさから、春希くんを奪い返すかもしれない」
「雪菜、お前……。
じょ、上等じゃないか。受けて立ってやるっ」
上気した頬をピンクに染めて、かずさは右手の人差し指を雪菜に突きつけた。
「北原さ〜ん、羨ましいですね〜」
記者席から麻理がヤジを飛ばした。
「うるさーいっ」
かずさは正面を向いてそう言ったが、その顔は、怒っているというより、少しイジラレて困っているようで、可愛かった。
その顔を収めようと、シャッターが押された。
�犇欧蹐靴つ�の美人だが、無愛想でつっけんどんで口が悪い�瓩班召気譴討い燭�ずさのイメージとは、だいぶ違った幼く可愛い顔だった。
「でも、そう言いながら」と、雪菜が切り出す。
「意外とすぐにでも別の人と恋愛して、あっさり結婚するかもしれません」
「えっ……」
春希は、小さく声に出し、雪菜を見つめた。
�爐叩△海里笋蹐Α帖牒�
かずさは、一瞬振り向いて、その瞬間をチェックしていた。
雪菜も目の端で、しっかりチェックしていた。
「どっちにしろ、わたしは次のアルバムで、過去のことに一旦、区切りを付けたいと思っています。
今は、かずさと春希くんとの共同作業に熱中しています。
喧嘩はしょっちゅうですし、歌っている中身に嘘が無いので、未だにお互い傷ついたりします。でも、緊張関係の中で、良いものを作っているという自負があります。
わたし達の人間関係のややこしさとか、想いの全てを、次のアルバムに注ぎ込んでいます。ですので、それを聴いていただいたら、こんな風に言葉で説明するような記者会見は、もう必要ないと思います」
「次のアルバムの題名は？」
「まだ、誰にも相談してませんが、『Not Love But Affection』にしようかなと思っています」
「愛でなく、情愛を、ですか」
「そして友情を」
「ふう」小春は一つ小さな溜め息をついた。
「三人が作り上げた渾身の二枚目を、一人のファンとして、楽しみにしています」
＊ ＊ ＊ ＊ ＊
再び、控え室。
「北原、お疲れさま」
「お久しぶりです、麻理さん。ニューヨークから、この記者会見のために帰って来たんですか？」
「いけなかった？」
「いえ、ありがとうございます」
「これ、お土産」
「なんですか、これ……」
「何って、エンパイアステートビルに登る自由の女神像だけど」
「…………」
「垢抜けてるだろ」
「……ありがとうございます」
「ところで、そこで睨んでる奥様を紹介してくれないか？」
「えっと……」
「冬馬かずさだ」
早百合が調達した冷えピタを左頬に貼ったかずさが、ぶすっと言った。
「お会いできて嬉しいです。失礼ながら、近くで拝見しても、本当に美人だわ」
「何言ってんの。あんたの方がよっぽど美人じゃないか」
�爐海鵑塀�が側にいて、よくもまあ、春希は揺れなかったものだ�瓩箸�ずさは思う。
「かずさ、年上だぞ。口の利き方を慎め」
「北原ぁ、年の話はするなと言っていただろう？」
「す、すみません」
「麻理さん、と呼んで良いか？」
「はい。どうぞ」
「麻理さん……、さっきは、取り乱して悪かった。
その……、助け舟、出してくれたのか」
「いえ。昔から、三人のお話には個人的興味があって」
「そうなんだ」
�爐劼腓辰箸靴董△海凌佑癲⊇婀�に気があったのか？
まさかな……��
「あなた達のストーリーに興味を持っているのは、瀬之内先生だけじゃないんですよ」
「麻理さん。あたしを先生と呼ぶのは止めてよ」
ウイッグをぐるぐる回しながら、千晶は言った。
「少し辛いかもしれないけれど、『届かない恋』以降の三人のストーリーについては、文章にしておいた方がいいんじゃないかな、と思うんですけど」
「それについては、ある程度、まとめてあるよ」と、千晶が言う。
「ただ、かずさの傷がここまで深かったとは、ね」
「……千晶の平手打ち、すごく痛かった」
「あ、ご、ごめんね」
「いや。すっきりしたよ。ありがとう」
「……そうか」
「雪菜さん」と、麻理は言う。
「はい」
「北原さん抜きで、かずささんと一緒に、千晶さんのまとめた文章について、お話しませんか？
出す、出さないは、別にして。
私は今晩、ニューヨークに帰りますけど、年末に一度、帰ってくるので、その時にでも」
「分かりました。わたしとしても、今日のかずさみたいなのは、困っちゃうから」
「雪菜……」と、かずさは話しかける。
「かずさの、ばか」
雪菜は、かずさに抱きついた。
かずさは、雪菜を受け止め、強く抱きしめる。
「ごめん……。今日は、また借りが増えちゃったな」
「何のことかな」
「いや……、何でもない」
「……ちょっと早いけど、お昼、食べに行こうか」
「うん」
雪菜は顔を上げ、振り返る。
「みんなっ、かずさがお昼、おごってくれるって」
「ちょっと、お前、何勝手なこと言ってんだよ」
「かずさが言ったのよ。怪我の話を蒸し返したら、おごるって」
「それはケーキだろっ」
「ね」
「……分かったよ。お昼はあたしのおごりだ。何処にでも連れてけ」
「やったー。さて、何処行こうか〜」
雪菜と五人の美女は、相談に入る。
「良いのか？」
春希が、かずさの横に並んで言った。
「お前の分は奢らないぞ」
かずさは、腕を組み、片目で春希を斜めに見て言う。
「はいはい」
「やっぱり、あたしは雪菜に勝てないよ」
「そうだな」
二人はそう言って、微笑んだ。微笑むことが、できた。
＊ ＊ ＊ ＊ ＊
「お前、まだ退院してなかったのか」
翌朝、武也は、営業の途中で、春希の病室を見舞った。
「明日、退院する予定だ。記者達もいなくなったし」
「ほい。今朝のスポーツ新聞、全紙。芸能面の見出しが、全部一緒」
「『小木曽雪菜、再略奪宣言』か……」
帝スポの芸能面を見ながら、春希は頭を抱えた。
各社とも、見出しはほぼ同じだが、写真は、小首を傾げて小悪魔のように可愛く笑う雪菜か、立ち上がり激高しているかずさの姿か、その二人に挟まれて右手で頭を押さえて俯いている春希含めて三人か、の三種類だった。
�爐�ずさが泣いてる写真がなくて、良かった��
「この一人で腹を抱えて笑ってる柳原に腹が立つ」
「まあ、いいじゃん。それで、明るい記者会見になったじゃねーか」
「まあな……」
「しかし、雪菜ちゃんのしれっとした発言と冬馬のキレ具合は面白かったな。11時台の東亜テレビのニュースの映像、あのシーンだったぞ」
「あれから、Twitter眺めてると、かずさに対する同情の声が結構増えてるんだ。全然、悪い女じゃないとか、実は凄く可愛い女なんだなとか、ひょっとして極度のツンデレ？ とか。
一方で、雪菜のことを、腹黒い女とか、恐ろしい子とか、呟く人が結構いて……。二枚目の売り上げに影響しないか、心配なんだ」
「それだけじゃないだろ。カッコいいとか、清々しいとか、あんな風に強い女になりたいとか、女性のツイはそういうのが多いだろ」
「まあな。そうか……、元々、雪菜の歌は女性に向けたメッセージが多いのに、ファースト・アルバムのビジュアルイメージが強過ぎて、男性ファンの方が多かったから、逆にファン層の拡大につながるかもな」
「……それ、雪菜ちゃん、計算していたとしたら？」
「えっ」
「一枚目は切ない別れの歌中心、二枚目は悲しみからの解放と再構築……、じゃあ三枚目、雪菜ちゃんは何を歌う？」
「……考えてなかったな」
「ばか。お前が書いたんだろ、あのデモ音源の最後に入ってた、『時の魔法』って歌の歌詞」
「えっ、そうだけど」
「あれじゃないのか、雪菜ちゃんが向かうとしてる先は。彼女は、絶望的に暗い暗渠を抜けて、明るい世界に出ようとしてるんじゃないの？
だから、そうなった時に、憂いを帯びた美人歌手、というレッテルで、暗い歌ばかり期待されて縛られたらやりにくいから、正しい目で見てもらえるよう、今から準備してるんじゃねーの」
「まさか、そんなことまで計算して……。
いや……、そうか。
加えて、カメラの前でかずさに素の顔をさせて……」
「無防備で一生懸命で可愛い女の姿、本当はめちゃめちゃ可愛いツンデレの冬馬かずさの魅力をメディアに提供したんだとしたら？」
「転んでも只じゃ起きないってか……」
「さあな」
「まるで、曜子さんみたいだ」
「親子みたいなもんだろ、あの二人は」
「そうか、杉浦と仕込んでたんだな。……そう考えると、麻理さんの質問も、予め仕込まれていたのかもしれないな」
「麻理さんて、小春ちゃんの横にいた超絶美人のお姉様？」
「ああ」
「ふーん。ま、考えられるんじゃねーの」
「やられたな……。完敗だ」
「おいおい、しっかりしてくれよ。近い将来の社長さん」
「……そうだな」
「しかし、俺、改めて思ったんだけどさ」
「何だよ」
「春希、お前、俺以外にも男の友人、もっと作った方が良いぞ」
「どういう意味だ」
「あのひな壇はなんだ？
右から、和泉千晶、柳原朋、小木曽雪菜、お前、冬馬かずさ、清水早百合。
おまけに記者席に杉浦小春と風岡麻理、……と。
美人ばっかじゃねーか。
お前はハーレムアニメの主人公なの？
中の人が松岡禎丞なの？ 内山昂輝なの？ 江口拓也なの？」
「ち、違うけど」
「ホント、付属時代はただの朴念仁だった春希がなぁ」
「まあ、武也の言ってることも分かるよ。
俺は、色んな女性に守られてしまってるんだな……」
「ばーか。分かってるなら、これからは、曜子さんとか、お母さんとか含めて、お前の周囲の女達を、今以上に守ってやれ。輝かせてやれ」
「そうするよ」
「ああ。お前の命を捧げるつもりでやれ」
「そうするよ。なあ、武也……。お前、今の仕事辞めて、うちのオフィスに入らないか。俺、日本でのオフィスの仕事、広げるつもりなんだ」
「お断りだ」
「アーティストは女性中心になると思うんだけど」
「余計にお断りだ。お客様以外に、俺に必要な女は一人だけだから」
「え……」
「そういうことだから、よろしく」
武也は右手で軽く会釈して、病室を出て行った。
目次 ／ 前回 ／ 続き
♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡
＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊
12月10日、午前10時。西御宿パークフィアットホテル。
冬馬曜子オフィスが押さえた控え室。
「本日は、東亞テレビ様には、お世話になります。柳原朋アナウンサーには、お忙しい中、本日の司会をご担当いただき、ありがとうございます」
「ふん。本当に忙しいんですけど」
春希に頭を下げられた朋は、横を向いて、そう切り返した。
「悪いな……」
「だいたい、加害者を舞台に上がらせる時点で、危機管理がなってないですよねえ」
「春希くんは悪くないよ。できるだけ、大学の学園祭実行委員会に仕事を任せる方針でやってたんだから」
「それにしても、二人とも逃げられたでしょう？
雪菜に怪我でもさせてたら、私、北原さんのこと、許しませんでしたよ」
「当然だよな。ごめん」
「……まあ、思った程、怪我が大したことなくて、良かったです」
朋は、横を向いて頬を少し赤らめて言った。
「……ところで、こちらのブロンドの女性は？」と、春希は朋に訊く。
「ああ、うちの新人アナなんです。アシスタントしてもらいます」
「初めまして〜、私、エリザベスと申します〜」
「お母さんがイギリス人だそうです」と、朋は胡散臭そうに言った。
「巨乳だな……」と、かずさが言った。
「巨乳ね……」と、雪菜も言った。
「あの、突っ込みどころ満載なんだけど……」と、春希は言ったが、その視線は、一瞬、スーツの大きく開いた胸元に注がれてしまった。
�爛�スっ��
「痛っ」
察知したかずさが、春希の足を踏んでから言う。
「お前な……。スーツ着ようが、ウイッグ付けようが、カラコン入れようが、どこをどう繕っても、その胸は誤摩化せないぞ……」
「いえいえ、冬馬さんには負けますわ〜」
「あは、あはははは」雪菜の額に斜影がかかっていた。
「どうしても参加したいって、聞かないんですよ。どうも、被害者からの連絡が遅かったことをかなり根に持っているようで。
まあ、場の雰囲気が私の手に負えなくなったら、ちょっと助けてもらうつもりです」と、朋は言った。
「そうか……。では、よろしくお願いします、エリザベス」と、春希は言った。
「途中から、私と北原さんの熱愛宣言に切り替えて良いでしょうか〜？」
「お前、話をややこしくしたいだけなんだろ、そうなんだろ？」
＊ ＊ ＊ ＊ ＊
「それでは、冬馬曜子オフィスさんの方から、今回の傷害事件に関連し、記者会見をしていただきます。
私は、本日の幹事会社、東亞テレビのアナウンサーで、司会を務めます柳原朋です。
なお、本日の会見ですが、動画に関しては東亜テレビの独占契約としていますので、許可のない動画撮影はご遠慮ください」
会場には、二十組程度のマスコミが参加していた。
「では、冬馬曜子オフィスから、本日の出席者を紹介していただきます」
「冬馬曜子オフィスのマネージャー、清水早百合です。本日は、弊社の記者会見にお集りいただき、ありがとうございます」
「弊社の出席者を紹介します。
冬馬かずさです。
小木曽雪菜です。
最後に、北原春希マネージャーです。
では、私の方から、事件の経過について、報告します。
既に弊社のホームページに掲載しておりますが、お手元にお配りしている概要報告書の通り……。
…………。
……以上が、事件の経過、弊社の対応です。
なお、一部の悪質な飛ばし記事で、加害者と当社・北原との恋愛関係が噂されておりますが、全くの作り話であり、そのような事実はございません。
また、小木曽雪菜と加害者の業務上の関係ですが、小木曽と加害者との個人的な交友関係は全くありません。当社側、小木曽側から加害者に対して、恨みを抱かれるような振る舞いを行った事実もありません。
弊社からの説明は以上です」
「では、ご質問を受けます」と、朋が言った。
「なお、被害者の北原氏は、怪我を押して出席してますので、お手柔らかにお願いします。
では、最初に……、『週刊旭日芸能』さん」
「北原さんにお尋ねします。刺される直前に、北原さんは加害者に対して、何か言いかけた、という情報があるのですが、面識あったんじゃないですか？」
春希は答える。「直接の面識はありません。ただ、小木曽雪菜の仕事上の関係者として、写真とプロフィールを確認したことがあった、というだけです」
「何故、東京ではなく京都なんですか」
「加害者は、関西に実家があったと聞いてます」
「所属事務所に損害賠償と慰謝料を求めなかったということですが、何故ですか。従前から何かトラブルが存在していた、ということじゃないんですか」
「事件発生時には、既に元所属プロを解雇されてますし、責任は求められないと考えています。また、元所属プロと当社との間でトラブルは発生していません。
なお、調査の結果、彼女が負担できそうになかったので、賠償等は求めませんでした」
「では……、次に、『週刊満潮』さん」
「小木曽雪菜さんにお聞きします。デビューCDは、失恋の歌が多いですよね。私達は、去年の秋のドラマ『届かない恋』が、小木曽さんの高校時代の失恋を元に書かれたことを知っていますから、その時の失恋を元に書かれた歌だと思っていた訳です。
でも、本当にきつかったのは社会人になってから、婚約者に婚約を破棄されたことだったんですよね」
「ご質問の意図は何でしょうか？」と、雪菜は笑って言った。
「その元・婚約者というのが、今回被害に会われた北原マネージャーさんだというのは、本当ですか？」
「えっと……」雪菜は得意の愛想笑いをする。
「確かに、わたしと北原さんは、過去において、婚約というか、結婚を前提とした交際をしていたことは事実です」
雪菜に向かって、複数のシャッターが切られた。
「何故、別れることになったんですか？」
「それって、言う必要あるんでしょうか？」
「『週刊満潮』さん、今回の事件にあまり関係ないことは、控えていただけますか」と、朋が言った。
「ですがね、我々大衆が知りたいのは、加害者の動機や背景よりも、小木曽さんや、今の奥様である世界的ピアニスト・冬馬かずささんと、マネージャーで今回の被害者の北原さんが、どういう人間関係だったのか。
その人間関係自体に問題があったのなら、加害者にどういう影響を与えたのか。まあ、それが�狷擦覆蕕摸��瓩任△辰燭箸垢襪覆蕕弌�犯人の背景、精神状態とどう絡んでいたのか、絡んでいないのか、そこが知りたいんですよ。
つまり、事件そのものより、三人の恋愛模様の方に、興味が移ってしまってるんですよ。
特に、世界的ピアニスト、冬馬かずささんが、どうしてご友人の小木曽雪菜さんの元・婚約者と結婚されたのか。
もしも、ご友人の婚約者を奪ったというなら、相当スキャンダラスですからね」
「では、私から、説明します」
そういって、春希は、淡々と話し始めた……。
「小木曽雪菜、冬馬かずさと私の三人は、峰城大学付属高等部時代に出会いました。その頃の話は、瀬之内晶さんが脚本化し、昨年末に放映されたドラマ『届かない恋』の内容とほぼ同じです」
�犖�式にしたくなかったが、仕方ない。だが……��
千晶は、雪菜から聴いていただろう事実を、そのまま脚本化しなかった。特に結末は、千晶は千晶なりの想いを、最終話に結実させていた。
だから、卒業式の夜、かずさと初めて結ばれた夜と、翌日成田空港でかずさと別れた時の話は、絶対に話したくなかった春希は、その辺りの話をざっくり飛ばした。
「卒業後、冬馬かずさは、プロのピアニストを目指して、ヨーロッパへ。
私と、小木曽さんは峰城大学に進学し、紆余曲折を経て、三回生の頃に、交際を始めました。
冬馬には、三年前の冬に、ストラスブールで再会しました。翌年の来日コンサートで、私が当時勤めていました開桜社で独占インタビューを行うこととなり、私が担当となりました。
担当として、取材を重ねているうちに……」
�犖世辰討睥匹い函∪禳擇�ら言われているが、やっぱり言うのはきつい……��
「冬馬と交際するようになり、当時、内々で取り交わしていた、小木曽さんとの婚約を解消しました」
春希に対して、複数のシャッターが切られる。
「以上が経過です」
春希は、マイクを置く。
「おおっと、それだけかよ」
「お詫びはないのかよ、お詫びは」
「そうそう、詫びろよ」
……複数の、ヤジが飛んだ。
「今、発言されたの、どちらの会社の方ですか？」
雪菜がマイクをとり、静かに言った。
「何を勘違い、されてるんでしょうか？」
静かだが、相当に怒りを抑えているのが、びりびりと伝わるような声だった。
「…………」会場は静まり返る。
かずさが目を見開いて、雪菜を見ていた。
「北原さん……、春希くんとわたしの間に起ったことで、どうして関係のない方々に対して、春希くんが謝ったりしなきゃならないんですか？」
「ちょっと良いですか」
「はい、『週刊ポトス』さん」
「ですが、実際、小木曽さんは会社もお辞めになった上に、怪我までされたんでしょう？
小木曽さんのファンとしては、北原さんの口から詫びの言葉の一つも聞きたいんじゃないですかね」
「怪我って、何のことでしょう？」
「背中の傷のことですよ。あれは、北原さんとの別れ話が絡んでるんじゃないですか？」
「あれは……」かずさが小さく話そうとした。
「あの傷は、三人の話とは全く関係ないです」
雪菜は、かずさを一瞥もせず、上から被せた。
「じゃあ何故、あんなきわどいピンナップを、一枚目のアルバムに入れたんですか？」
「まあ、それなりに身体に自信があったからかなあ〜」
そう言って、雪菜は頬に右手の人差し指をおいて、微笑んだ。
記者連中の男どもが、少し「おおっ」とどよめいた。
「そ、そうなんですか……」
「そうなんです。……もっと見たいですか？」
「えっと、はい……」
「考えておきます」
雪菜と春希は、雪菜の怪我の話だけは、あまり明確にしたくなかった。できれば、うやむやにしたかった。
二人は、そう打ち合わせていた。
だが……。
「柳原さん、ちょっと良いかな」
かずさが、マイクをとった。
「えっと……」
「雪菜の、背中の傷のことだけど」
「ちょっと、かずさっ」
雪菜が止めにかかるが遅かった。
「あれは、あたしのせいで付いたんだ」
マイクを持つかずさに、シャッターが一斉に切られた。
「それはどういう意味ですか〜」
間髪入れず、記者席から質問が飛んだ。
「止めてっ」
立ち上がり、卓上に両手をついた雪菜が呻いた。
「2013年２月28日、あたしは雪菜と二人で会った。
あたしは、その時、雪菜に、春希を奪うことを告げた。
そのせいで、雪菜はショックを受けて……」
「違うっ！ もう止めて！」
雪菜が叫ぶ。だが、身動きができない。
「それで、雪菜は交通事故に会った。
雪菜の背中の傷は、あたしがつけたようなものだ」
「違うっ」
「違わないっ」
かずさも立ち上がり、春希を挟んで雪菜と対峙した。
「あたしは、春希を刺した人と、同じ加害者だ。
だから、罰を受けなければならない、と思ってる」
「違う違う違うっ。違うったら、違うよ！」
「違わないよ……、雪菜。
あたしが、何も罰を受けてないから、春希が罰を受けてしまったじゃないか」
かずさは、震える声で言った。
その悲しそうな瞳の中に、悲壮な覚悟を見つけた時、雪菜は気づいた。
自分がかずさと春希に仕掛けた罠。
作戦を完璧にするため、春希に背負わせた駄目押し。
2月28日と２月29日、一日違いの錯誤。
その真実を知った時、雪菜の想像を超えて、かずさがどれ程の呵責に苛まれたかを。
「何を、言ってるんだ、かずさ」
春希は、ようやく声を絞り出す。
「そうよ、馬鹿なことを言わないで」
「ふふふっ……」
かずさは、悲しそうな瞳のまま笑った。
「ここまで来て、お前達はまだ、あたしを庇うのか？
あたしには罰を与えないと言うのか？
お前達は、負う必要の無い罰で、二人して血を流したのに？」
「かず、さ……」
「ここに、お集まりの皆さんに、お願いがある」
かずさは、眦に涙を溜めながら、前を向いて言う。
努めて、明るく。
「あたしには贖罪が必要だ。
だって……、だって、あたしは、謝ることができない。
あたしがしたことは、あたし以外の誰が考えても、間違いだったのかもしれない。
でも、あたしにとっては、真実だったんだ。
ピアノを弾くことと同じ位、真実だったんだ。
だから、あたしは謝らない。春希にも、謝らせない。
だから、お願いだ。
誰か、あたしを罵倒してくれないか……。
あたしを罵って、くれないか……。
あたしを殴り飛ばしてくれないか……。
あたし……、このままじゃ、罪を償えないよ……」
何時しか、シャッターの音は消え、かずさの慟哭だけが響いた。
春希は、雪菜を見た。心から、悲しそうに……。
雪菜は天井を見上げて、大きな溜め息を付いた。
�爐�ずさの、ばか……。
わたしの馬鹿。ほんと、馬鹿だ。
こんなこと、言わせるつもりはなかった。
でも、かずさの純真さを考えれば、容易に想像できた。
なのに、かずさに、言わせてしまった。
こんなところで、言わせてしまった……。
わたしのせいだ……��
雪菜は、かずさの肩を抱いた。
かずさを、退席させるために。
その瞬間だった。
エリザベスが席を立ち、朋と春希の後ろをつかつかと通り過ぎて、かずさの横に立った。
そして、雪菜の手を払い、俯いて震えていた、かずさの首根っこを掴んだ。
「おい、止めろっ」
春希がそう言うが早いか、エリザベスはかずさの左頬を思いっ切り張り飛ばして、大きな声で叫んだ。
「冬馬かずさの大馬鹿野郎ぉぉぉぉぉおっ！」
徹底的に訓練された、腹の底から暴発する憤怒の声。
それは、マイクに拾われ、会場をびりびりと共振させた。
それはあまりにも突然すぎて、誰もシャッターを切ることができなかった。
エリザベスは、ウイッグを外した。そこには、見たこともない程、厳しい目つきをした千晶がいた。
「千晶ぃ……」
かずさは、震える声でその名を呼ぶ。
千晶は、かずさを強く抱きしめた。
そして、耳元で囁いた。
「何だよ、罪人振りやがって……。好い加減、腹が立つんだよ、てめーは。
何が贖罪だよ……。つまんないこと言うなよ。
もっとしっかり開き直れよ。
春希が刺されて弱気になったのは分かるけど……、そんな情けない顔、あたし達に見せんな」
「だって……、だってさ……、あたしのせいだ……、みんな、あたしのせいじゃないか……」
「お前のせいでなんか、あるもんか。……ばか」
「だって……」
「だってもクソもあるか。
良いか、仮にお前に責任があったとしても、だ。もっと違う責任の取り方があるだろう。
取り乱してどうする？
雪菜の想い、春希の想い、お前が背負わなくてどうする？」
「千晶ぃ……」
「それにな……、カメラの向こう側にはな、お前の音楽を好いてくれる、何万、何十万、いや……、お前の場合は世界中の何百万のファンの人がいるんだぞ。それなのに、こんなクソみたいな事件で取り乱してどうすんだ？」
「でも……でも……」
「じゃあ、あたしがお前に一生ものの罰を与えてやる。
重罰だぞ。
ピアノで、音楽で、世界中の人に感動を与えろ。
そして、雪菜を歌わせろ。
それが、生涯、いや、未来永劫、永遠にお前に課せられた罰、労役なんだよ」
「千晶……」
「分かってるんだろ？」
千晶は腕を解き、かずさの両肩を抱いて、正面から見つめた。
「どうだ？ これくらいの罰じゃ、満足できないか？」
「…………」
「も一発、欲しいか？」と、千晶は優しく言った。
「千晶、ごめん。もうそれ位にしてくれないか？」
春希は、千晶に話しかける。
「えっと……」
春希を振り返った時、千晶はすっと�猩太�千晶�瓩傍△辰拭�
「あ、あ〜。ごめんごめん。あ〜、すみません」
千晶は、頭を掻いて、へこへこと謝って席に戻った。
「なんで千晶さんが怒るかなあ……。三人を助けるために参加したんじゃなかったの？」
朋は、頬杖をついて言う。
「いや、まあ、そうだけど」
朋はマイクを持って立ち上がった。
「すみません。ご覧の通り、今回の事件で、冬馬さんも相当傷ついてまして……。
過去の話は、今の告白で、お許しいただけませんか。
他に、ご質問がなければ、終わりたいのですが……」
「『開桜グラフ』の杉浦です。当社から少し質問させてもらって良いですか」
「えっと……、どうぞ」
「すみません……。では、上司から質問させます」
小春の横に座っていた女が立ち上がり、サングラスとマスクを外した。
「久しぶりだな、北原。……さん」
「麻理さん……」
「麻理、さん？」
憔悴したかずさが、前を見た。
�爐△凌佑�、春希の言ってた、風岡麻理……。
何だよ、すっごい美人じゃないか……��
かずさの中に、見境のない嫉妬のオーラが陽炎のように立ち上った。それが、気持ちを少し高揚させた。
「冬馬さん……、落ち着かれましたか？」
「ああ……」
「じゃあ、少し質問して良いですか？」
「はい……」
「小木曽雪菜さんのファースト・アルバムに収められた曲について、質問します」
「えっ。あ、ああ」
「十曲中、六曲を作曲されてますが、最初は、作曲者名がクレジットされてませんでしたよね。何故ですか？」
かずさは、雪菜と春希の顔を見る。
雪菜は、笑って頷く。
「言っても良いよ」
「雪菜のファーストは、あたしの知らないところで、録音が進められたから……。
実はあたし、リリースされるまで、全く関与してなくて」
ええっ、という驚きの声が上がった。
「録音に関与していないって、どういう意味ですか？」
「ゴーストライトとか、名義を貸しただけとか、とか、そういう意味ですか？」
記者席から、複数の質問が出された。
「そういう意味じゃない。あたしが作った六曲は、あたしが高校生の頃、自宅のスタジオで録り貯めていたもの、だから」
「いわゆる、宅録ですよね」と、麻理は言う。
「ああ、はい」
「宅録であのクオリティーですか？」
「そう。それに、わたしが勝手に詩を付けました」と、雪菜は言う。
「で、冬馬曜子氏が、追加のアレンジを施したと」
「そう……。だから、あの曲達を作ったのはあたしだけれど、雪菜のファーストには、実質的に関与していない」
「ちょっと突っ込んで聞きたいのですが、良いですか？」
「あ、はい」
「一曲目の『優しい嘘』なんですけど、どういう時期に書かれたのですか？」
「『優しい嘘』は、高三の春頃、です」
「北原さんと出会った頃？」
「そう……」
「その頃は、どんなお気持ちで、学校生活を過ごしていたんですか？」
「あたしは、母さんに捨てられたと思い込んで、ピアニストになるのを諦めて、毎日、グダグダと過ごしていた。
高三になって、音楽科から普通科に移って、余計に投げやりになって……。
たまに学校に行けば、隣の席の委員長が口うるさく説教するわ、過干渉するわで、うんざりしていた。
けれど、段々、学校に行っても良いか、と、思い出していた頃……、です」
「その委員長というのが、北原さん？」。
「うん……」
「その頃から、北原さんに好意を持ってたのですか？」
「今から考えたら、そうかもしれない」
「『優しい嘘』は、歌詞は色々痛いですけど、曲は暖かい感じがしますものね」
春希と雪菜は、黙って、かずさを見ている。
「『氷の刃』は？」
「あの曲は……、高三の学園祭が終わって、ちょっと気落ちしていた頃に作った」
「気落ちしたのは、北原さんと雪菜さんが付き合いだしたから？」
「失恋して、暗い曲を作るなんて、痛い話だよな」
「じゃあ、『Twinkle Snow』は？」
「あれは、付属高等部卒業後、ウィーンに行くと決めた頃に書いた」
「開桜社さ〜ん、その話、長くなるの？」と、帝スポの記者が言った。
「黙って聞いてろ。おっと、聞いてて下さい」と麻理は言った。
「東亞テレビさんっ、放っといて良いんですかっ」
「良いの。あたしが面白いから」と、千晶が言った。
「いや、あんた関係ないだろ」
「良いの。黙って聞いてろ。はい。続けて、どうぞ〜」
「私が知っている経過を整理すると……」
麻理は話し始める。
「付属三年生の春頃から、冬馬さんは北原さんに好意を抱いていた。
北原さんも、冬馬さんに好意を抱いていた。
付属三年生の秋の学園祭で、バンドをするために、北原さんは小木曽さんに声をかけた。その後で、冬馬さんに声をかけた。
学園祭が終わって、こういう流れなら、北原さんと冬馬さんが交際するのかな、っと思ったら、北原さんは小木曽さんと交際を始めた。
でも、北原さんの心には、冬馬さんがいて、付属時代の終わりに何かあって、一旦、北原さんと小木曽さんの交際は終わった。
冬馬さんは、独りでウィーンに移住し、二人との関係も断った。
その頃までに、ファースト・アルバムの曲は書かれている。ということで、良いですか？ 冬馬さん」
「そう、だね」
「それから、三年間、空白期間があって、冬馬さんの不在の中、大学三回生の冬のヴァレンタイン・コンサートの後で、北原さんと小木曽さんの交際が始まったのが、四年十か月程前。
そして、冬馬さんの凱旋公演に絡んで、北原さんと冬馬さんの再会があって、その結果、北原さんが冬馬さんを選んで、ウィーンに移住したのが、二年九か月前。
その後、小木曽さんは冬馬曜子オフィスと契約して、二年の準備期間を経て、デビューした。
で、ファースト・アルバムの歌詞は、その準備期間、つまり、小木曽さんが一番辛かった時期に書かれている。
ということで、良いですか？ 小木曽さん」
「……はい」
「つまり、年月は異なるけど、お互い、かなり辛い時期に書いた曲と詩の組み合わせ、なんですよね、小木曽雪菜ファースト・アルバムに収められた曲は。
何故、そんな曲を歌おうと思ったんですか、小木曽さん？」
「わたしは……、親友として、かずさを愛してるし、かずさの曲を愛しています。
それに、春希くんも、元彼、というだけでなく、わたしにとっては、大事な親友です。
だから、二人にはどうしても日本に帰ってきて欲しかった。
そして、一緒に音楽活動をしたかった。
だから……」
雪菜はかずさを見た。かずさは、雪菜の方を向いて、雪菜をじっと見ていた。
「かずさが残していった曲で、失恋の歌を歌えば、かずさが帰ってくるんじゃないかって、思いました。かずさが帰ると言えば、春希くんも帰ってくる。
だから、かずさには一切相談せずに、企画を進めました」
「私、小木曽さんのCDは大好きなんですけど、あの甘酸っぱい曲達の詩が、そんなちょっと黒い目的を持っているとは思っていませんでした」
「そうでしょ。わたし、本当は黒いんです」
そう、雪菜は言い、笑って小首を傾げた。
誰が見てもうっとりする程、可愛い笑顔だった。
�狃个拭帖帖２薪抔�ても、この笑顔は凶悪��
小春は戦慄する。
�爐海譴蓮∨悗匹涼砲�騙される��
麻理は呆れた。
「……やっぱり可愛くて、甘酸っぱい女ですね。小木曽雪菜さんは」と、麻理は言った。
「ありがとうございます」
「で、作戦は成功したわけですね」
「はい。かずさと、春希くんには、嫌な想いをさせたかもしれませんが……」
「あたしと春希は、嫌な想いなんかしてないよ……。
そりゃ、驚いたり、悔しかったり、色々思ったけどさ」
「北原さんは、いかがですか？」
「私から申し上げるのもなんですが、小木曽雪菜は、つい最近まで、専門的な音楽の教育を受けていませんでしたが、私が日本を離れていた二年の間に、努力して、歌唱力はもちろん、作詞・作曲、楽器演奏の力を得て、デビューしました。
今ではご存知の通り、小木曽雪菜は、沢山の人に愛されています。
冬馬かずさは、母親から受け継いだ圧倒的な才能もありますが、毎日必ず十時間以上、一人でピアノに向かっています。人生の殆どを、皆様に良質な音楽を届けるため、ピアノに捧げています。
冬馬かずさと、小木曽雪菜という、素晴らしい才能を守るべき立場の私が、過去に二人を傷つける原因となったことや、今回の事件を未然に防げなかったことに、忸怩たる想いを感じています。
マネージャーとして、ファンの皆様には、二度とこのようなご心配をかけないよう、努めて参ります」
春希は立ち上がり、深々と頭を下げた。
「春希くん……、おじさん臭いよ」
「というか、胡散臭さも漂ってるぞ、春希」
�爐Δ襪気い吻瓩函⊇婀�は小声で言った。
「さて、困りましたね」と、麻理は言った。
「確かにもつれた三角関係かもしれませんが、現時点では、恋愛沙汰の事件として、我々が期待するようなネタは、もう出てきそうにないですね」
麻理は、さも困ったように言った。
会場は、静まり返った。確かに、エサはなかった。
過去には色々あったかもしれないし、これからも色々あるかもしれないが、今はお互いを尊重しているアーティストがいるだけだった。
「では、これ以上、ご質問がないようでしたら、予定の時間を過ぎてますので、終了しようと思いますが」
朋は話を閉めにかかった。
「すみません。もう他社さんから質問がないなら、当社からもう少し、質問してよろしいですか？」
会場内の殆どの記者達が席を立ちかけていた時、小春が手を挙げて言った。
「じゃあ、こは……、開桜社さん、手短にお願いします」
「開桜社の杉浦です。小木曽さんにお訊きします。
小木曽さんとしては、冬馬さんから、北原さんをもう一度奪い返す気は無いんですか？」
「ぶっ」安心して水を飲んでいた春希は吹いた。
「はぁ？」かずさは、小春を睨んだ。
席を立ちかけていた記者達は、再びカメラを用意する。
「えっ。まあ、その……」
雪菜は、少ししどろもどろになる。
「自分は、完全に身を引く、ということですか？」
「そうですね。えっと、そうですね……。
いえ、そうじゃありません」
「「えっ」」
かずさと春希は、雪菜を見た。
虚を突かれた二人に、一斉にフラッシュが焚かれた。
「きゃはははははは」
朋が身を捩って大笑いしていた。
「さすが……」と言って、千晶は笑わない目のまま口の端を上げ、「全く……」と言って、麻理は好敵手を見るような目付きをした。
「かずさには言ってあります。春希くんへの愛に手を抜いたら、何するか分かんないよって」
「お前な、ここでそれを言うかっ」
かずさは席から立ち上がり、雪菜を見て叫んだ。だが、雪菜は動じず、前を見て語る。
「だから、わたしは今の所、虎視眈々とかずさの隙を狙っているし、何時かかずさから、春希くんを奪い返すかもしれない」
「雪菜、お前……。
じょ、上等じゃないか。受けて立ってやるっ」
上気した頬をピンクに染めて、かずさは右手の人差し指を雪菜に突きつけた。
「北原さ〜ん、羨ましいですね〜」
記者席から麻理がヤジを飛ばした。
「うるさーいっ」
かずさは正面を向いてそう言ったが、その顔は、怒っているというより、少しイジラレて困っているようで、可愛かった。
その顔を収めようと、シャッターが押された。
�犇欧蹐靴つ�の美人だが、無愛想でつっけんどんで口が悪い�瓩班召気譴討い燭�ずさのイメージとは、だいぶ違った幼く可愛い顔だった。
「でも、そう言いながら」と、雪菜が切り出す。
「意外とすぐにでも別の人と恋愛して、あっさり結婚するかもしれません」
「えっ……」
春希は、小さく声に出し、雪菜を見つめた。
�爐叩△海里笋蹐Α帖牒�
かずさは、一瞬振り向いて、その瞬間をチェックしていた。
雪菜も目の端で、しっかりチェックしていた。
「どっちにしろ、わたしは次のアルバムで、過去のことに一旦、区切りを付けたいと思っています。
今は、かずさと春希くんとの共同作業に熱中しています。
喧嘩はしょっちゅうですし、歌っている中身に嘘が無いので、未だにお互い傷ついたりします。でも、緊張関係の中で、良いものを作っているという自負があります。
わたし達の人間関係のややこしさとか、想いの全てを、次のアルバムに注ぎ込んでいます。ですので、それを聴いていただいたら、こんな風に言葉で説明するような記者会見は、もう必要ないと思います」
「次のアルバムの題名は？」
「まだ、誰にも相談してませんが、『Not Love But Affection』にしようかなと思っています」
「愛でなく、情愛を、ですか」
「そして友情を」
「ふう」小春は一つ小さな溜め息をついた。
「三人が作り上げた渾身の二枚目を、一人のファンとして、楽しみにしています」
＊ ＊ ＊ ＊ ＊
再び、控え室。
「北原、お疲れさま」
「お久しぶりです、麻理さん。ニューヨークから、この記者会見のために帰って来たんですか？」
「いけなかった？」
「いえ、ありがとうございます」
「これ、お土産」
「なんですか、これ……」
「何って、エンパイアステートビルに登る自由の女神像だけど」
「…………」
「垢抜けてるだろ」
「……ありがとうございます」
「ところで、そこで睨んでる奥様を紹介してくれないか？」
「えっと……」
「冬馬かずさだ」
早百合が調達した冷えピタを左頬に貼ったかずさが、ぶすっと言った。
「お会いできて嬉しいです。失礼ながら、近くで拝見しても、本当に美人だわ」
「何言ってんの。あんたの方がよっぽど美人じゃないか」
�爐海鵑塀�が側にいて、よくもまあ、春希は揺れなかったものだ�瓩箸�ずさは思う。
「かずさ、年上だぞ。口の利き方を慎め」
「北原ぁ、年の話はするなと言っていただろう？」
「す、すみません」
「麻理さん、と呼んで良いか？」
「はい。どうぞ」
「麻理さん……、さっきは、取り乱して悪かった。
その……、助け舟、出してくれたのか」
「いえ。昔から、三人のお話には個人的興味があって」
「そうなんだ」
�爐劼腓辰箸靴董△海凌佑癲⊇婀�に気があったのか？
まさかな……��
「あなた達のストーリーに興味を持っているのは、瀬之内先生だけじゃないんですよ」
「麻理さん。あたしを先生と呼ぶのは止めてよ」
ウイッグをぐるぐる回しながら、千晶は言った。
「少し辛いかもしれないけれど、『届かない恋』以降の三人のストーリーについては、文章にしておいた方がいいんじゃないかな、と思うんですけど」
「それについては、ある程度、まとめてあるよ」と、千晶が言う。
「ただ、かずさの傷がここまで深かったとは、ね」
「……千晶の平手打ち、すごく痛かった」
「あ、ご、ごめんね」
「いや。すっきりしたよ。ありがとう」
「……そうか」
「雪菜さん」と、麻理は言う。
「はい」
「北原さん抜きで、かずささんと一緒に、千晶さんのまとめた文章について、お話しませんか？
出す、出さないは、別にして。
私は今晩、ニューヨークに帰りますけど、年末に一度、帰ってくるので、その時にでも」
「分かりました。わたしとしても、今日のかずさみたいなのは、困っちゃうから」
「雪菜……」と、かずさは話しかける。
「かずさの、ばか」
雪菜は、かずさに抱きついた。
かずさは、雪菜を受け止め、強く抱きしめる。
「ごめん……。今日は、また借りが増えちゃったな」
「何のことかな」
「いや……、何でもない」
「……ちょっと早いけど、お昼、食べに行こうか」
「うん」
雪菜は顔を上げ、振り返る。
「みんなっ、かずさがお昼、おごってくれるって」
「ちょっと、お前、何勝手なこと言ってんだよ」
「かずさが言ったのよ。怪我の話を蒸し返したら、おごるって」
「それはケーキだろっ」
「ね」
「……分かったよ。お昼はあたしのおごりだ。何処にでも連れてけ」
「やったー。さて、何処行こうか〜」
雪菜と五人の美女は、相談に入る。
「良いのか？」
春希が、かずさの横に並んで言った。
「お前の分は奢らないぞ」
かずさは、腕を組み、片目で春希を斜めに見て言う。
「はいはい」
「やっぱり、あたしは雪菜に勝てないよ」
「そうだな」
二人はそう言って、微笑んだ。微笑むことが、できた。
＊ ＊ ＊ ＊ ＊
「お前、まだ退院してなかったのか」
翌朝、武也は、営業の途中で、春希の病室を見舞った。
「明日、退院する予定だ。記者達もいなくなったし」
「ほい。今朝のスポーツ新聞、全紙。芸能面の見出しが、全部一緒」
「『小木曽雪菜、再略奪宣言』か……」
帝スポの芸能面を見ながら、春希は頭を抱えた。
各社とも、見出しはほぼ同じだが、写真は、小首を傾げて小悪魔のように可愛く笑う雪菜か、立ち上がり激高しているかずさの姿か、その二人に挟まれて右手で頭を押さえて俯いている春希含めて三人か、の三種類だった。
�爐�ずさが泣いてる写真がなくて、良かった��
「この一人で腹を抱えて笑ってる柳原に腹が立つ」
「まあ、いいじゃん。それで、明るい記者会見になったじゃねーか」
「まあな……」
「しかし、雪菜ちゃんのしれっとした発言と冬馬のキレ具合は面白かったな。11時台の東亜テレビのニュースの映像、あのシーンだったぞ」
「あれから、Twitter眺めてると、かずさに対する同情の声が結構増えてるんだ。全然、悪い女じゃないとか、実は凄く可愛い女なんだなとか、ひょっとして極度のツンデレ？ とか。
一方で、雪菜のことを、腹黒い女とか、恐ろしい子とか、呟く人が結構いて……。二枚目の売り上げに影響しないか、心配なんだ」
「それだけじゃないだろ。カッコいいとか、清々しいとか、あんな風に強い女になりたいとか、女性のツイはそういうのが多いだろ」
「まあな。そうか……、元々、雪菜の歌は女性に向けたメッセージが多いのに、ファースト・アルバムのビジュアルイメージが強過ぎて、男性ファンの方が多かったから、逆にファン層の拡大につながるかもな」
「……それ、雪菜ちゃん、計算していたとしたら？」
「えっ」
「一枚目は切ない別れの歌中心、二枚目は悲しみからの解放と再構築……、じゃあ三枚目、雪菜ちゃんは何を歌う？」
「……考えてなかったな」
「ばか。お前が書いたんだろ、あのデモ音源の最後に入ってた、『時の魔法』って歌の歌詞」
「えっ、そうだけど」
「あれじゃないのか、雪菜ちゃんが向かうとしてる先は。彼女は、絶望的に暗い暗渠を抜けて、明るい世界に出ようとしてるんじゃないの？
だから、そうなった時に、憂いを帯びた美人歌手、というレッテルで、暗い歌ばかり期待されて縛られたらやりにくいから、正しい目で見てもらえるよう、今から準備してるんじゃねーの」
「まさか、そんなことまで計算して……。
いや……、そうか。
加えて、カメラの前でかずさに素の顔をさせて……」
「無防備で一生懸命で可愛い女の姿、本当はめちゃめちゃ可愛いツンデレの冬馬かずさの魅力をメディアに提供したんだとしたら？」
「転んでも只じゃ起きないってか……」
「さあな」
「まるで、曜子さんみたいだ」
「親子みたいなもんだろ、あの二人は」
「そうか、杉浦と仕込んでたんだな。……そう考えると、麻理さんの質問も、予め仕込まれていたのかもしれないな」
「麻理さんて、小春ちゃんの横にいた超絶美人のお姉様？」
「ああ」
「ふーん。ま、考えられるんじゃねーの」
「やられたな……。完敗だ」
「おいおい、しっかりしてくれよ。近い将来の社長さん」
「……そうだな」
「しかし、俺、改めて思ったんだけどさ」
「何だよ」
「春希、お前、俺以外にも男の友人、もっと作った方が良いぞ」
「どういう意味だ」
「あのひな壇はなんだ？
右から、和泉千晶、柳原朋、小木曽雪菜、お前、冬馬かずさ、清水早百合。
おまけに記者席に杉浦小春と風岡麻理、……と。
美人ばっかじゃねーか。
お前はハーレムアニメの主人公なの？
中の人が松岡禎丞なの？ 内山昂輝なの？ 江口拓也なの？」
「ち、違うけど」
「ホント、付属時代はただの朴念仁だった春希がなぁ」
「まあ、武也の言ってることも分かるよ。
俺は、色んな女性に守られてしまってるんだな……」
「ばーか。分かってるなら、これからは、曜子さんとか、お母さんとか含めて、お前の周囲の女達を、今以上に守ってやれ。輝かせてやれ」
「そうするよ」
「ああ。お前の命を捧げるつもりでやれ」
「そうするよ。なあ、武也……。お前、今の仕事辞めて、うちのオフィスに入らないか。俺、日本でのオフィスの仕事、広げるつもりなんだ」
「お断りだ」
「アーティストは女性中心になると思うんだけど」
「余計にお断りだ。お客様以外に、俺に必要な女は一人だけだから」
「え……」
「そういうことだから、よろしく」
武也は右手で軽く会釈して、病室を出て行った。
目次 ／ 前回 ／ 続き
♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡
タグ
このページへのコメント
シン様、コメントありがとうございます。
仰る通り、千晶のことが大好きです。
どうしても書きたくなってしまうんですよね。
なんだか、「おい、ド下手くそが、私の場面を書けよ、あくしろ」と言われているようで…。勝手な妄想なのですが…。
ごめんなさい。難産だったので上手く書けてないと思います（まあ、上手く書けてない所だらけなんですが…）。
うーん、今回の話は流石にちょっと茶番が過ぎる気がします。
まず千晶の登場が無理やりというか、朋の立場で正体不明の人間を局に通して新人アナとして捩じ込むのは
不可能でしょう。
そして記者会見の内容にしても流れが不自然ですし内輪でやるような事を公の場でやられても（特に千晶がかずさを平手打ちしてからの一連の流れ）世論の好感度は下がるだけなんじゃないかと思いました。
恐らく作者さんとしては千晶をクローズアップする場面が欲しかったんじゃないかなと想像しますがここでなくても良かったのではとも思います。
長文失礼しました。
tuneさま、ありがとうございます。
難産しました。千晶は出たいと言うだろうな、出るからにはどっちの側にいるかな、ひな壇にいるとしたら、まんまじゃおかしいよな、じゃあ変装するか。
でも、仕事は何…。ここが全然出てこなくて…。
でも、ある時突然、勝手に動いてくれちゃって…。千晶ありがとう。やっぱり千晶は、私の第二正妻です。
麻里さんはWA2の中で一番可愛い人なので、ちょい役でも、やっぱり出てもらわないと…。
妄想って、ホントに楽しいですね。
更新お疲れ様です。
エリザベスという人物の登場が唐突だったので最初は曜子さんの差し金かと思っていたら千晶だったんですね。十分考えられる事なのに気付けませんでした。
かずさの想いとは自分が原因で雪菜が怪我をする羽目になった事への贖罪だったのですね。下手をすると致命傷になりかねないのを雪菜や千晶、麻里さんが救ったという感じです。
いみじくも武也が春希に言った様に今回の話はWA2の主だった女性達が総出演という感じでしたね。いないのは依緒ぐらいでしょうか。春希は武也の言うとおりもっと男友達を増やすべきですねw。
次回でラストですがどんな形で締めくくるのか楽しみにしています。