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TRPGで使えそうな雑学
8.セティ - 19/05/06 03:03:32 - ID:sLcXl2/9MQ
●騎士の変遷
中世ファンタジーの花形である「騎士」ですが、ごく初期の騎士と呼べる存在は、古代ローマ帝国における「カタフラクト」と呼ばれる重装騎兵です。カタフラクトは剣や槍、弓矢を装備し、馬には装甲が施されましたが、重すぎる装備のせいでほとんど制御できず、「最初に弓で敵を攻撃して戦列を崩す」「槍を構えて突撃蹂躙」「終戦」という流れで運用していました。要するに突撃は最後の一回だけです。
中世になると突撃専用のランスが開発され、ファンタジーではお馴染みの「騎士」となります。最初の頃はカタフラクトと同様に決戦兵器として活躍しましたが、長槍を持ったパイクやクロスボウを装備した弩兵の戦列の前では標的でしかなく、最終局面での突撃の出番もどんどん減ってきました。特に、農民が職にあぶれて傭兵化して弩兵が増えてくると、騎士は完全に出番を失いました。ヨーロッパでは弩兵と槍兵により、騎兵が一旦消えてしまいます。
弩兵はやがてマスケット銃を扱う銃兵となり、銃の先に槍の刃を取り付けて槍の代用が可能になると、銃剣装備のマスケット銃を装備した戦列歩兵が完成し、軍団は戦列歩兵だけになります。しかし、敵も味方も銃兵だけになると、対騎兵用の槍の扱いがお粗末になり、また騎兵での突撃の有効性が現れました。
ヨーロッパでも掃討用の軽騎兵が少しばかり再起用されましたが、もっと大々的に使い始めたのが、ポーランド(ヨーロッパとロシアの間付近)のフサリアと呼ばれる有翼重騎兵です。これは中世の騎士の強化バージョンみたいなもので、非常に長くて軽いランス(5m以上)を用いて、昔のように突撃戦術を取りました。しかもフサリアの突撃は一度ではなく何度も行われました。それを可能にする陣形戦術や補給システムが構築され、数倍の戦列歩兵軍団相手に勝利した実績をいくつも残した、最強の騎兵として存在しつづけます。ヨーロッパの騎士は早々に寿命が来ましたが、ポーランドではちゃんと騎士が生き残っていたのです。
しかし、やがて初期の対歩兵戦車や連射式の銃が現れると、騎兵はただの座高が高い標的でしかなくなり、今度こそ本当に滅亡します。ただし、第二次大戦中も偵察や補給部隊の運送で騎兵自体は活躍していました。戦場から騎士が完全にいなくなったのはそんな大昔ではなく、割と近世の話なのです。
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