汎用TRPG「ガープス(GURUPS)」について、だべったりつづったりする所。 魔法関連ルールの編集者募集中!

ベーシックセット』第20章「インフィニット・ワールド」より。

第20章:インフィニット・ワールド(CHAPTER TWENTY INFINITE WORLDS) B497P/2B177P

 インフィニット・ワールドは背景設定の一例ですが、それだけに止まりません。プレイヤーにとっては、ほとんどあらゆる種類のキャラクターを作りだすための枠組みであり、GMにとってはジャンルをまたいだ冒険を展開していく助けになるでしょう。
 インフィニット・ワールドのような多元宇宙を使うかどうかは、自由に選択できます。次元を渡る冒険を認めたくないGMは、それを出来ないことにしてかまいません。ブラスター使いの魔術師がナチの超人兵と渡りあう状況を、誰もが楽しめるとは限らないでしょう……。
 とはいえ、やり方はほかにもたくさんあります。多くの世界がこれから発見されるのを待っており、孤立している世界も少なくありません。他の次元の存在にまったく気づいていない世界でキャンペーンをはじめ、ある時点(何か月あるいは何年か遊んだ後)で、自分たちの世界が数多くの一つに過ぎなかったことに気づくようにしてもかまわないのです。もう1つの世界に渡る方法を見つけたり、次元をまたぐ陰謀に気づき、インフィニティ・パトロールに迎え入れられる……。そして、すべてが変わっていくのです。

目次


キャンペーン(THE CAMPAIGN) B498P/2B178P

[[キャンペーン>インフィニット・ワールド#THE_CAMPAIGN]]
 1995年、物理学博士であるポール・ヴァン・ザント教授(Dr. Paul Van Zandt)は最初の実用次元転送機を開発し、それを使って後にベータ地球、あるいは単にベータとして知られるようになる時間軸を訪れました。彼はみずからの発見を隠し、実験を続けました。6か月後、謎めいた火災でダートマスにあった彼の研究所は焼失。そののち、彼は教職を辞め、“コンサルタント”会社を設立します。
 実のところ、ヴァン・ザントは単に学会や、初期の計画に大金を投じていた国防省の目の届かないところで実験を続けようとしたのです。その後の数年で彼は理論に磨きをかけ、さらに23の世界と接触、6つの“もう1つの地球”を個人的に訪れていました。また、信頼のおける協力者を密かに募り、後のインフィニティ・アンリミテッドの前身にあたる中核グループを作りあげました。さらに、次元間貿易によって実験資金を稼ぎだす、ホワイトスター・トレーディング社を設立しました。
 1998年の2月、ヴァン・ザントはみずからの実験結果を公表同時にホワイトスター・トレーディング社パラクロニック・ラボラトリーインフィニティ・ディベロップメントを含む子会社をインフィニティ・アンリミテッドに合併し、世間の耳目を集めました。さらに、ヴァン・ザントは次元旅行に興味を持つ政府や企業に対し、みずからの設計機器のライセンス許諾を申し入れたのです。
 当然のように、各国の政府はなりふりかまいませんでした。合衆国議会は、ただちにあらゆる次元技術の国有化と機密化を進めるべく動きだし、日本、ヨーロッパ、中国、ロシアの各政府はそれらの技術の国際管理と抑制を求めました。
 翌日になって、ヴァン・ザントは、非公開の国連安全保障理事会の開催を求めました。そこでの発言の内容は知られていませんが、各国政府は、一定の制限内で、彼の申し出を受け入れることにしました。
 インフィニティ・アンリミテッドは、国連安全理事委員会の常任理事国を公式パートナーとする企業になりました。ヴァン・ザントはCEOの座に留まったものの、安全保障委員会が指名した官僚が重役会に名を連ねることになりました。そして、インフィニティ・アンリミテッドの特許状は、基礎技術を厳格にその管理下に置くよう書き改められたのです。
 ヴァン・ザントは、インフィニティ・アンリミテッドがほぼ自己資金で活動していく――つまり初期資金の投入以後は、次元技術の許諾がもたらす利益によって“やっていかざるを得ない”ことを示唆し、予算の問題を決着させました。そして、そうすることで――その当時はほとんど気づかれることなく――鍵となる勝利を勝ち取っていたのです。多くの政治家は、インフィニティが国連の限りある資金を消耗させないことを歓迎し、またそのことによってインフィニティの力を制限できると信じていました。国連はおろか、世界を見渡しても、次元技術に秘められた真の力――“無限の世界、無限の富”――を理解していた者は、ほとんどいなかったのです。
 インフィニティは、ヴァン・ザントが“インフィニティ・パトロール”と呼ぶことにこだわった独自の警備組織も手に入れました。最初、その規模は小さく、任務もインフィニティの探索チームや設備の防衛に限られていましたが、やがてその役割と実力は劇的に増大していくことになります。
 経済や政治が枝分かれしていくことについては時間をかけて理解されていったものの、地球が潜在的に無限の広がりを持つ可変世界のなかに存在しているという事実の暴露は、人類が持つ信念を根底から揺さぶりました。科学や宗教、そしてアイデンティティの本質までもが、疑問の対象になってしまったのです。しかし、事態にすぐに適応した者もおり(それ以外の人々は、いまだ対応できていませんが)、その多くが好機をつかみました。
 ほどなく、勇敢な探索者グループが次元探査を開始。彼らは、インフィニティ・アンリミテッド社が危険なファースト・コンタクト任務のために雇い入れた、特務侵入部隊の先兵(“タイム・スカウト”のエリート)に率いられていました。これによって何十もの世界との貿易が開始され、無人の“もう1つの地球”にある手つかずの鉱床から天然資源が流入しました。そして、“ホームライン”として知られるようになった世界では、最悪の工業廃棄物そして、最も環境汚染の度合いが激しい工業そのものまでを、もはや人の手に負えなくなった死せる世界へ送りこむことで、その環境を回復しはじめていきました。そのあいだも政治的な策謀が絶えることはありませんでした……が、ホームライン世界の経済は絶望的な状況を乗り越えていきました。
 ヴァン・ザントは、「私は残りの人生を旅と研究に捧げようと思う。もう、はんだごてを握ることはないだろう」こう言い残すと、ただちに現役を退きました。
 その後のわずかな期間、少なくともホームラインにとっては、理想郷のような世界がはじまったかに思えました。しかし、多元世界のリンゴから、1匹の虫(ワーム)が顔をのぞかせます。理想郷とはかくあるべきという独自の理念によって、異なる現実を拡大させる文化、“セントラム”が登場したのです。
 無限の世界が、無限のトラブルを意味することになったのは、まさに突然のことでした……。


コラム:インフィニット・ワールド用語集(Infinite Worlds Glossary) B498P/2B178P

[[インフィニット・ワールド用語集>インフィニット・ワールド#Infinite_Worlds_Glossary]]

コラム:世界間条約(The Interworld Treaty) B499P/2B179P

[[世界間条約>インフィニット・ワールド#The_Interworld_Treaty]]
 国際連合加盟国のほとんど(すべてではありません)は、世界間条約を批准しました。これは、大国と小国間の利害の折衷案です―それは、ビジネスの面においても(ヴァン・ザントとアメリカの不安定な協定でも守られています)、国連と政府の官僚にとっても同じことです。世界間条約によって、“新植民地”ラッシュを阻止する枠組みが作りだされました。政府による次元を越えた軍の展開能力は制限され、文化をまたいだ災厄を引き起こさない範囲で、特定世界の商業開発が認められ(かつ規定され)ています。
 条約による最も重要な効果は、権力の大半をインフィニティ・アンリミテッドに集中させたことです。その一方で、調査やバランスに関する一定の権限は国連安全保障理事会に――より限られた範囲では国連事務総長にも与えられています。条約は、その機能を果たしています……少なくとも、ときおりは。

コラム:闇のインフィニティ(Dark Infinity) B499P/2B179P

[[闇のインフィニティ>インフィニット・ワールド#Dark_Infinity]]
 ヴァン・ザントは、どのようにして世界の超大国を彼の言葉に(ほぼ)同意するよう説得したのでしょう。インフィニット・ワールドの設定のなかでも“大きな秘密”の1つです。次のような可能性があります。

陰謀(Conspiracy):
[[陰謀>インフィニット・ワールド#Conspiracy]]
 インフィニティ・アンリミテッドは、何世紀ものあいだ権力の道を支配してきた、広範かつ無慈悲な陰謀の道具です。インフィニティの興隆は、何世紀をも費やした準備がようやく成就した証なのです。しかし、勝利したのは誰でしょう?背後にいるのは“イルミナティ”でしょうか?

時を越えた脅威(The Menace from Beyond Time):
[[時を越えた脅威>インフィニット・ワールド#The_Menace_from_Beyond_Time]]
 世界の指導者たちが屈服した理由は、“ヴァン・ザントが彼らに見せたもの”にあります。パニックを避けるために、このことは伏せられていますが、おそらく事実はどこからか漏れてしまうでしょう。真実がどのようなものであっても、人類が数多くの世界にまたがって存在しているという事実は非常に重要です。GMが、超宇宙を侵略する“新勢力”を登場させたいのなら、たくさんの展開が考えられます。

機械仕掛けの超神(Deus Ex Paramachina):
[[機械仕掛けの超神>インフィニット・ワールド#Deus_Ex_Paramachina]]
 ヴァン・ザントが、一般に知られている以上の存在だとしたら? より進んだ別の時系列からの訪問者だとしたら? 隠退したさすらいの神だとしたら? あるいは、四王国を追われた無頼のテクノマンサーだとしたら? インフィニティセントラムが、お互いにほとんど差のない超次元学を発展させたことは奇妙に思えます。これは、仕組まれたことなのかもしれません。もしそうなら、誰がそれを企てたのでしょう? 闘争こそが目的だったのでしょうか? さもないとなにか悪いことが起きたのでしょうか? ひょっとしたら、セントラムインフィニティと同盟すべき存在なのかもしれません……。


無限の世界(AN INFINITY OF WORLDS) B500P/2B180P

[[無限の世界>インフィニット・ワールド#AN_INFINITY_OF_WORLDS]]
 インフィニティは数百のパラレルワールドを知っています。それらは8次元空間中に、ほとんど予測不可能におもえるパターンで広がっています。それらの世界はいくつかの「エネルギー・レベル」、あるいは「量子」に割り当てられています。同じ「量子」にある世界を訪れるのは簡単ですが、異なる「量子」にある世界に到着するのは困難です。
 ホームライン量子5(Q5)にあります。インフィニティはQ4とQ6には比較的容易に到達できます。Q3とQ7には困難です。Q2以下、Q8以上には到達不可能です。
 セントラムはQ8にあります。彼らはQ7とQ9には比較的容易に到達できます。Q6とQ10には困難です。Q5以下、Q11以上には到達不可能です。
 既知の世界は以下のように分類されます。
 超次元科学者の見解は、異なる地球は「無限に」存在するが大部分は到達できない場所にある、ということで一致しています。その無限が「どの程度大きい」かについてはまったく一致していません。ホームラインの技術もセントラムの技術も、無限に存在する世界のほとんどに到達することができません。しかし、それはそこにあるのです……どこかに。
 インフィニティセントラムが到達できるすべての「量子」に、未発見の時間軸があるのはほぼ確実です。最初の10年の探検の後、新発見は1年に10の安定した割合に落ち着いています。「インフィニット・ワールド」によくある誤解は、どのような可能性もどこかのパラレルワールドには存在するに違いない、というものです。もちろん、これは真実“かもしれません”。インフィニティが可能性のあるすべてのパラレルワールドに到着するまで、これを否定するのは難しいでしょう。しかし、もし世界が無限に存在するとしても、存在しない可能性が多くあるかもしれません。ある物理学者がそれについてこう説明しました。「あなたは無限個のリンゴを持つことができる――でも、オレンジは1個としてないのだ」

異なる世界の分類(CLASSES OF ALTERNATE WORLDS) B500P/2B180P

[[異なる世界の分類>インフィニット・ワールド#CLASSES_OF_ALTERNATE_WORLDS]]
 インフィニティ・アンリミテッドは以下のように異なる世界を分類します。
無人(Empty) B500P/2B180P
[[無人>インフィニット・ワールド#Empty]]
 世界上に知的生命体はいません。開発は自由です。典型的な使用法は植民地化(ふつう最善の世界で)、工業化(ふつう悪い世界で)、狩猟保護地域(有史以前のものを含みます)、調査(時間軸全体が動物園、科学研究所などに割り当てられます)。「災害世界(Disaster worlds)」は、ときとして開発可能です。廃棄物処理場としてのみですが。他のものは科学的用途のために保存されます。

歴史残像(Echoes) B500P/2B180P
[[歴史残像>インフィニット・ワールド#Echoes]]
 これらの時間軸にある地球(すべて量子6にあります)は、歴史上の“既知の”コースを正確に辿っているようにみえますが、ホームラインの歴史がたどったようには進みません。これらの世界は、用心深く控えめな研究や観光旅行には向いています――しかし、もし“歴史改変された”場合、他の量子にシフトして「並行」になります。セントラムは単に自分自身の次元に近づける計画の一環として、それを実行しようとしています。

並行(Parallels) B500P/2B180P
[[並行>インフィニット・ワールド#Parallels]]
 これらの宇宙の地球は、ある点で歴史の“既知の”コースから分岐しました。インフィニティセントラムも、時間と人材が許す限りほとんどのそのような世界に進入します。貿易、開発、征服などは、「量子」を変更する危険なしに可能です。
 こうした世界に対するホームラインの一般的な目的は“慈悲深く導く”ことです。戦争から、特に大量破壊兵器による戦争から遠ざけます――そして、あまり慈悲深くはないのですが、それを保証するために次元旅行を発見させません。多くの人々がこれに反対しますが、誰もがたどりつく首尾一貫した唯一の代案は“干渉しない”というものです。この考え方はつまり、パラレルワールドのヒトラーがダッハウ(最初の強制収容所)についての命令を下したとしても、干渉しないということです。これは少しやりすぎです。

アンカー(Anchors) B500P/2B180P
[[アンカー>インフィニット・ワールド#Anchors]]
 アンカー歴史残像に似ていますが、とても安定しています。なぜかは誰にもわかりませんいくつかの理論では、量子アンカーは他のものがこれから分裂した“オリジナルの”異なる世界だったことを示唆します。量子6のある世界で大きな変更が量子シフトを引き起こさなかったとき、最初のアンカーが発見されました。Q6に6個存在しますが、激烈な戦場です……シフトが発生する危険がないので、繊細な注意なしで次元戦争を戦うことができるからです。


近接並行(CLOSE PARALLELS) B500P/2B180P

[[近接並行>インフィニット・ワールド#CLOSE_PARALLELS]]
 近接並行というのは、ある過去の時点のホームラインに似ていますが、小さな違いがあるものです。以下のような例があります。

ベータ地球(Earth-Beta):
[[ベータ地球>インフィニット・ワールド#Earth-Beta]]
 最初に発見された並行です。ほとんどの点で2004年のホームラインと似ていますが、次元移動の秘密は発見されていません。

●チェロキー(Cherokee):
 この世界では、現在1930年です。チェロキー国はアングロ人の侵入に対して生き残ることに成功し、より強力になりました。オクラホマで石油が発見されると、チェロキー国は土地と富を維持しました――大手石油会社のビジネスは現在インディアンに支配されています。

●ホリー(Holly):
 音楽愛好者の夢の世界です。バディー・ホリーの飛行機は墜落しませんでした。その世界では現在1989年です。ホリーとリッチー・ヴァレンスはどちらもまだロックを歌っています(ザ・ビッグ・ボッパーは政界入りして、今は議会にいます)。他の数名のスターも、それほど自己破滅的ではない生活を送っており、まだ生きています。しかし、エルヴィスはやはり死んでいます。またモンキーズはスーパーグループになり、スティーヴン・スティルスがメンバーに加わっています。

私たちの世界はどれ?(Which One Is Ours?) B500P/2B180P
[[私たちの世界はどれ?>インフィニット・ワールド#Which_One_Is_Ours]]
 ホームラインは明らかに“私たちの”現代社会ではありません。決定的なちがいは、1990年代の超次元技術の発見です。しかしインフィニティは21世紀初頭の地球を2つ発見しました(ホームラインのちょうど20年後)。そこは超次元技術を発見していないことによって「分離」していました。さらにいくつかが他にもあるのは確実です。これらの世界の技術はホームラインより少し遅れているだけなので、インフィニティの基本的な政策は密かに観察するというものです。
 GMが望めば、これらの近接している並行世界のうちのどれかが「私たちの世界、私たちの時間」かもしれません――あるいは少なくとも、それに非常に似ている世界でしょう。

私はどこにいますか?(Where Am I?) B501P/2B181P
[[私はどこにいますか?>インフィニット・ワールド#Where_Am_I]]
 次元旅行者は、近接並行に住んでいるもう1人の自分(若かったり、年寄りだったりもします)に出会うことができます。これはそちらになりすまして、潜入破壊活動ができるかもしれないチャンスです。しかし、感傷やナルシズムが客観性を奪いかねず、「もう1人の自分」に手を貸したりするなど、影響を及ぼしてはならないという規則を破ることにつながる危険があります。


より遠い並行(FARTHER PARALLELS) B501P/2B181P

[[より遠い並行>インフィニット・ワールド#FARTHER_PARALLELS]]
 これらの世界は近接並行よりもかなり分岐しています。いくつか例を挙げます(特に記されない限り、いずれも量子5)。

●アッティラ(Attila):
 モンゴル人の侵入は西洋・イスラム教文明を破壊しました。ユーラシアおよびアフリカ北部は、好戦的な遊牧民族に支配された森林と草地です。都市文明は日本と南アメリカにいくつか存在しています。

●キャンベル(Campbell):
 SF編集者のジョン・W・キャンベルは、その経歴の早い段階において交通事故死しました。そのため、多くのSF作家が才能を開花させませんでした。結果、SFはスペースオペラ以降、あまり発展していません。明らかに、これによって科学と技術に興味を持つ学生の数が減りました。そのため第二次世界大戦終了後、科学的な発達は停滞しています。

●コーンウォリス(Cornwallis):
 今は1984年です。アメリカ独立戦争は失敗して、フランス革命も起きませんでした。この世界は保守的で、貴族による君主制によって支配されたTL6です。しかし新しい革命が計画されています……。

●ガーンズバック(Gernsback):
 TL(6+2)の「テクノ・ユートピア」です。ニコラ・テスラはアン・モーガン(財界人J.P.モーガンの娘)と結婚しました。モーガンの資金援助を受けて、テスラの天才は「放散パワー」のような発明によって世界を変えました。トランジスタや現代のエレクトロニクスは知られていません。しかし原子力、光線銃、飛行船、エアカーは一般的です。第二次世界大戦はありませんでした――世界学術審議会によって導かれた国際連盟が統治しています。ガーンズバックはセントラムインフィニティとの間の密かな戦場です。どちらもガーンズバックの財産を狙っています(不幸なことに、その技術の多くは他の現実世界では機能しません)。量子7。

●ジョンソンズ・ローマ(Johnson’s Rome):
 西暦1206年ですがローマ帝国はいまだ完全で、活発で、退廃的です。ジョンソン超次社はここを休暇スポットとして開発しています。企業は、帝国を乗っ取るために組織的な贈賄と潜入を行なっています。これはすでに巨大な利益を得ています。この企画の一部では、公開拷問と最も残忍な形式の剣闘士戦闘は禁止されていますが、他の退廃的なローマのアトラクションはまだほとんどそのままです(他にも多くの娯楽用時間軸があります。これはもっとも成功したものの1つです)。

●ミッドガルド(Midgard):
 TL4の世界です。ヴァイキングはビザンティウムを征服し、キリスト教世界を打倒するためにその富(およびギリシア火薬の秘密)を使用しました。現在西暦1412年です。北欧人にとって南北アメリカの発見、植民地化、略奪の大航海時代の夜明けです。量子7。

●明-3(Ming-3):
 私たちの世界では、中国は15世紀に世界の探検を中止しました。明-3では、そうしませんでした。現在西暦1859年です。中国(現在TL5)は世界帝国を支配しています。量子7。

●千年帝国(The Thousand-Year Reich):
 ナチが第二次世界大戦に勝利する、というSFによくある悪夢の歴史はQ4とQ5に5つ知られています。国連はインフィニティの支援を受けて工作員を募集し、枢軸政府を転覆させるという望みをもって“初期”の世界2つ(現地の日付で西暦1952年と1961年)に工作員を送り込みました。さらに2つの世界で時代が進んでいます。1つは西暦1970年で、もう1つは西暦1988年です。これらは注意深い観察下にあります。1988年の世界は、実際には1970年のものよりも遅れています。ナチが日本を核兵器で破壊し、ヨーロッパと北米の多くの主要都市を失った第三次世界大戦が起こりました。5番目の、そして最も心配なナチの世界は「ライヒ-5」です。詳しくは517ページを見てください。


怪しい並行(WEIRD PARALLELS) B501P/2B181P

[[怪しい並行>インフィニット・ワールド#WEIRD_PARALLELS]]
 「怪しい並行」は多くの点でホームラインに似ていますが、類似性を信じるのは難しいほど奇妙な違いもあるもう一つの世界です。
 超次元物理学者によれば、これらの類似性は「往来可能な量子レベルにときどき見つかる以上、そうでもなければ存在しえない世界だから」ということです。

●トカゲ合衆国(United States of Lizardia):
 インフィニティによって最初に発見された怪しい並行世界です。「ユナイテッド・ステイツ・オブ・リザーディア」略してUSLがホームラインにおける呼称です。その住民はそれを地球と呼びます。いくつかの点で、たしかに21世紀の地球に似ています……哺乳動物が支配者にならなかったという点を除いて。住民は、二足歩行する恐竜の末裔のトカゲ人です。最も強力な国家は合衆国に似ており、北米を占拠しています。インフィニティの潜入局は密かにこれを研究しています。

●オリハルコン(Orichalcum):
 伝説的なアトランティス帝国が、英雄時代のギリシアおよびエジプトの近くに存在します。大西洋の島国で、その住人は神の祝福を受けており、多くの技術に熟練しています――これには驚異の金属オリハルコンの扱いを含みます。ここはTL1TL2のもう一つの地球で、量子6にあります。


死んだ世界(Dead Worlds) B501P/2B181P
[[死んだ世界>インフィニット・ワールド#Dead_Worlds]]
 「死んだ世界」というのは、生命が発達しなかったもう一つの地球です。ある場合には、太陽と地球の距離が異なっていたり、あるいは月がなかったりします。死んだ世界には呼吸できる大気がありません。十数以上のこうした世界が知られています。鉱物資源のために開発することはできます。また、人間が住むのと同じ世界で維持するには不適切すぎる廃棄物用の、便利なゴミ捨て場にもなります。


神話並行(MYTH PARALLELS) B501P/2B181P

[[神話並行>インフィニット・ワールド#MYTH_PARALLELS]]
 ある種の並行世界はホームラインの神話やフィクションに相当します――あまりにも、それらに似すぎています。そのような世界においては、ロビン・フッドがノッティンガムの保安官に対してゲリラ戦を行なう実在の人物かもしれません。あるいは人魚が実在して、よく見かけられるかもしれません。最も論理的な説明は、何人かの作家が実際に超能力者か、異世界跳躍者だったということです。
 ほとんどの「神話」並行は、研究者以外は立ち入り禁止です……ただし「ノッティンガム」とよばれる世界を除いて。インフィニティの研究者は、ロビン・フッドは誰もが考えていたよりずっと“リアル”だったことをかなり早く決定しました。この世界は今や次元旅行の目的地として一般的です。


地獄並行(HELL PARALLELS) B502P/2B182P

[[地獄並行>インフィニット・ワールド#HELL_PARALLELS]]
 「地獄並行」は、大災害や大虐殺を受けた悲惨なほど多数の世界をあらわす一般的な用語です。危険が継続しているため立ち入り禁止のところもありますし、開発や研究のために閉じられているところもあります。
核戦争(Nuclear War) B502P/2B182P
 20を超える“黙示後”の地球が知られています。放射能汚染された死んだ地球、核の冬に包まれて死につつある世界、また人類が石器時代まで後退した世界などが含まれます。ほんの僅かな世界では、放射線が若干異なる働きをみせ、戦争に生き残った人々の進化を加速しています。これらの世界は2つを除いて立ち入り禁止です。そしてある世界――ラグナロク――では、インフィニティのスカウトが戦争の10年後に到着し、約20,000人の生存者が放射性降下物シェルターおよび隔離された基地で肩を寄せ合っているところを発見しました。懸命な人道的努力の結果、これらの生存者は無人の時系列に輸送されて、自立を支援されています。
病気(Disease) B502P/2B182P
 少なくとも4つのもう一つの世界において、病気が人類を一掃、あるいはほぼ一掃しました。そのうち3つは意図的な細菌戦争によって人口が減りました。これらは厳密に立ち入り禁止です。座標は秘密です(それには充分な理由があります。2つの世界で、最初に到達したスカウトは万全の準備を行なったにもかかわらず死亡しました)。4番目の世界はアリアン(Ariane)と呼ばれています。そこは西暦1915年に突然変異体のインフルエンザに襲われ、99.9%以上が死亡しました。そのウィルスはTL8の医学で完全に制御可能です。アリアンは植民地化されており、略奪され、開発されています。ときとして、TL2の生存者の集団と小競り合いがありますが。
宇宙的大災害(Cosmic Catastrophe) B502P/2B182P
 約100年前に、量子7にあるルシファー-1(Lucifer-1)に非常に巨大な隕石が激突しました。残った人間の文明の跡はほとんどありません。火山活動が継続したため、ほとんどの地域において空気が呼吸できなくなりました。
 ルシファー-3はさらに劣悪です。地球(と恐らく数百光年以内のすべての世界)の表面は、近くの超新星やガンマ線バースターからの放射線によって殺菌されました。ホームライン人は、そのTL7の人類の文明の廃墟を組織的に漁って残った美術財宝や精練された原料を探しています。
 タフト-3(Taft-3)においては、大規模な太陽面爆発が発生して生殖能力が奪われ、文明が徐々に崩壊しました。
生態学的災害(Ecological Disaster) B502P/2B182P
 いくつかの世界は、そこの人間や他の住民の手によって過剰に産業化したり、不注意な開発によって荒廃したかのように見えます――いくつかは最近、いくつかはずっと以前に。レーニン-2(Lenin-2)では、これが地球温暖化、洪水、悪天候、大規模飢饉に結びつきました。現在では僅か数百万人ほどの生存者がTL3で生きています。
その他の地獄への道(Other Roads to Hell) B502P/2B182P
 他の世界は種々様々の、より異常な災害を受けました。

●ドレクスラー(Drexler):
 “グレイグー”のナノマシンが文明(と最初のスカウト)を滅ぼしました。

●リヴァイアサン(Leviathan):
 人類は海中の文明に対する勝ち目がない戦いをしています。

●スティール(Steel):
 人類は2010年代に知性をもつ機械を開発しました。それは増殖して、ほとんどの人間を根絶やしにしました。今は2026年です。戦争によって破壊された終末後の地球はいくつかのゾーンに分割されています。そこは競合する人工知能――ゾーン・マインド――によって支配されています。ほんの少数の人間だけが抵抗しています。さらに悪いことに、競合するゾーン間の軍拡競争は迅速な技術開発(現在TL9です)に拍車をかけています。セントラムインフィニティは、少なくとも1つのAIが超次元技術を研究しているのではないかと心配し、秘密裏に人間の抵抗勢力を支援すべきかどうか討議しています(別々に)。


法則を破る世界(WORLDS THAT BREAK THE RULES) B502P/2B182P

[[法則を破る世界>インフィニット・ワールド#WORLDS_THAT_BREAK_THE_RULES]]
 私たちが“正常”と考える物理法則が働かない世界も少数あります。これらの中でもっともよく知られているのは、次元旅行自体が違ったように機能する宇宙です。例えば、ホームラインセントラム転送機が作動できる、既知の数少ない時間軸です。一方でコヴェントリー(514ページ)は転送機以外によっては、いかなる手段でも到達することができません。
 超次元学とは全く関係のないところで違う世界もあります。例えば超科学が重力制御や超高速移動のような、物理的に“不可能”なことを可能にする宇宙です。ある場合には、生物学が異なるように働いて、非常に小さな人間や巨大な動物が存在することが可能になります。
 また、いくつかの世界はさらに奇妙です。“単純な機械”よりも複雑な技術は機能しない時間軸があります。そこでは人工的な放電装置を生産することができないからです……しかし自然の放電は正しく機能します。これは科学者を狼狽させています。物理法則は、どうやってそうした違いに“感づく”のでしょうか? 最もよく知られている例はラスティックです。これは異世界跳躍者によって発見されました。もし運搬機でそこにたどり着いていれば、戻ってくることはできなかったでしょう。
 超能力が存在する世界(インフィニティは精神を読むことができる者がいる世界は、すべて警戒しています、理由は明らかでしょう)もあります。同様に、少数ですが魔法が機能する世界もあります……しかし、いつも同じようにではありません。そうした世界はエリートの研究者や工作員以外には閉ざされており、その存在は秘密です。しかし避けられない噂もあります。例えば、パトロールの工作員が魔法の宇宙を訪れるのは、より有効に使える魔法を学習したからだと信じられています。
 近頃、スカウトはますます多くの「法則を破る」世界を発見しています――おそらく、ほとんどの「近接並行」世界はすでに見つけてしまったからでしょう。それとも、何かが現実に起こっているのでしょうか。GMは必要であれば、そうした世界をどんどん作ってください! 例を2つ挙げます。

マーリン(Merlin):
[[マーリン>インフィニット・ワールド#Merlin]]
 1945年までは近接していた並行世界でした。そのとき最初の原子爆弾の実験がニューメキシコで行なわれ、巨大で永久的なベインストーム――破滅の嵐――を作り出しました。その結果、アメリカ南西部はマナが濃い地域となり、北部および中央アメリカのほとんどを含む地域でマナの濃度が並になりました。この魔法の降下灰は「超常的な」生物が登場するきっかけとなりました。合衆国はインフィニティさえ恐れさせる魔法科学の超大国になります。マーリンTL7TL8のもう一つの地球で、量子3にあります。

●イールス(Yrth):
 数年前、インフィニティ異世界跳躍者によって偶然発見された量子サルガッソ(「置き去りにされた!」520ページ参照)の世界です。彼は多くの冒険を行ない、魔法の品物を発見して、そこから脱出しました! イールスはTL3の“中世ファンタジー”世界です。そこでは強力な魔法が確実に機能しています。エルフ・ドワーフ・ゴブリン・ドラゴン、その他神話的な種族が存在しています。人間が支配していますが、その世界の伝説によれば、もとから存在していた種族ではないということです。インフィニティは、ベインストームがイールスに人間社会の構成員を連れて行ったに違いないと信じています――ホームラインの中世、あるいは中世の歴史残像世界から。


ポケット多元宇宙(POCKET MULTIVERSES) B503P/2B183P

[[ポケット多元宇宙>インフィニット・ワールド#POCKET_MULTIVERSES]]
――「いいか、家に戻れば、おれは神だ」(“You know, back home, I’m a god.”)

 「ポケット多元宇宙」というのは1組の緊密に結びついた次元世界のことで、住人と超物理法則を共有しています。
 典型的なポケット多元宇宙は、1つの基本となる物理的現実世界(もう1つの地球があるかもしれません)と、魔法的存在や精霊が住む1つ以上の異次元や相互浸入次元世界によってできています。しばしばこれらの次元を包む「間隙」があります。
 ポケット多元宇宙の多くには、強力で全能の神に等しい存在がいます。そうした存在の多くは、自分の領域に結びつけられており、そこを出ることができません――少なくとも、力の多くを置いていかなければ。しかし、その多元宇宙の“外側”からもたらされた魔法や技術は、これらの神やそのしもべが移動することを可能にするかもしれません。まれに、ポケット多元宇宙は他の次元を“吸収”して、神の領域の中に持ち込むかもしれません。
 ポケット多元宇宙の簡単な例としては、パラレルワールドの地球を含む通常の物理世界です。相互浸入次元として重なった精神世界があります。そして2つの異次元世界が存在します――天国と地獄です。このシステムでは、死んだ人は“本当に”その罰や報酬として世界を移動します。幽霊と精霊はその世界の間を漂います。天使と悪魔は実在します。おそらく世界の創造者が存在することでしょう。
 インフィニティの研究者は、ポケット多元宇宙での行動が複雑で、困難であり、危険だと考えています。超次元技術はこれらのシステムの中で必ず機能するとは限りません!
関連:「支配領域



次元旅行(INTERDIMENSIONAL TRAVEL) B503P/2B183P

[[次元旅行>インフィニット・ワールド#INTERDIMENSIONAL_TRAVEL]]
 異世界間の旅行のカギは、「超次元転送機」(時系列の間で物質を移動させることができる装置)と、「超次元運搬機」(そのような輸送を実行する装置)です。異世界間の移動には、他にも科学技術によらない手段があります。

超次元運搬機(PARACHRONIC CONVEYORS) B503P/2B183P

[[超次元運搬機>インフィニット・ワールド#PARACHRONIC_CONVEYORS]]
 「超次元運搬機(parachronic conveyor)」は次元間を移動するための乗り物です。いくつかの異なる形式がありますが、どれも超次元フィールドジェネレーターパワーシステムコントロールシステムを含む密閉型の船体を持っています。

船体の種類(Hull Type) B503P/2B183P
[[船体の種類>インフィニット・ワールド#Hull_Type]]
●カプセル型(Capsule):
 標準的な超次元運搬機は密閉された箱です。秘密工作のために偽装されるかもしれません――例えば小屋、幌馬車、納屋、公衆電話ボックス、トレーラーなどです。

●移動可能型(Mobile):
 動く乗り物として機能する超次元運搬機があります。これらはふつう1〜20トンの重さがあります。より大きいデザインや小さいデザインもあります。

●"モボット”型(Mobot):
 無人でロボットコントロールされた乗り物です。これらはまだ実験段階です。ホームラインはまだ実際にしっかりした人工知能を搭載することができていません。

超次元フィールドジェネレーター(Parachronic Field Generator) B503P/2B183P
[[超次元フィールドジェネレーター>インフィニット・ワールド#Parachronic_Field_Generator]]
 運搬機のジェネレーターは「同量子」「1量子」「2量子」の航続距離を持っています。まだこれを超える航続距離の運搬機を開発した者はいません。
 さらにジェネレーターには「収容重量」が存在します。輸送できる最大の質量です。運搬機(ジェネレーターを含みます)と積み荷の合計質量は、この限界を安全に超えることはできません。
 運搬機の費用の大部分を決定するのはジェネレーターの能力です。これは通常、非常に高くなります。しかし、すべてが電子回路の代金というわけではありません――費用のほとんどはライセンス料です!

●同量子運搬機(Subquantum Conveyors):
 これは同じ量子レベルにある目的地に飛ぶことができます。基本の価格は1千万$です。収容重量が1トン増えるごとに1千万$と5キロ増えます。LC合法レベル)2

●1量子運搬機(Quantum Conveyors):これは同じ量子レベルにある目的地に飛ぶことができます。さらに転送機の助けを借りれば、隣接する量子レベルに移動できます。基本の価格は2千万$です。収容重量が1トン増えるごとに1億5千万$と5キロ増えます。LC1。

●2量子運搬機(Two-Quantum Conveyors):
 1量子運搬機と同じですが、転送機の助けを借りれば2量子レベル離れた世界に移動できます。2量子の跳躍は常に注意が必要です! 基本の価格は3千万$です。収容重量が1トン増えるごとに3億$と15キロ増えます。LC0。


パワーシステム(Power System) B503P/2B183P
[[パワーシステム>インフィニット・ワールド#Power_System]]
 1回の跳躍には収容重量1トンあたり200kJのエネルギーが必要です。これを1回のパルスで伝えなければなりません。超次元フィールドジェネレーター用の典型的なパルスパワーシステムは1kJあたり50$と2.5キロかかります。

コントロールシステム(Control System) B503P/2B183P
[[コントロールシステム>インフィニット・ワールド#Control_System]]
 運搬機は2種類のコントロールシステムのうち1つを持っています。

●固定式(Fixed):
 運搬機は2つの特定の世界の間だけを跳躍することができます。その座標は回路に組み込まれています。オペレーターはこれらの設定を変更することができません。この種のシステムは、ふさわしいライセンスを持っている企業・個人ユーザーが入手可能な運搬機によくみられます。LC2。

●プログラム可能式(Programmable):
 運搬機はその航続距離内にある任意の世界に跳躍することができます。これを実行するため、オペレーターはその誘導装置に座標を手動で入力しなければなりません。これらのユニットは遙かに厳しく管理されます。LC0。

コラム:次元座標(Parachronic Coordinates) B504P/2B184P
[[次元座標>インフィニット・ワールド#Parachronic_Coordinates]]
 いくつかの異なるタイプの超次元的エネルギーレベルによって、その世界の「次元座標」が決定されます。これらの中で最も重要なものは「T-ガンマ力(T-Gamma force)」です。それは整数の形でもたらされます。
 T-ガンマ力の公式は、たった2つの数字からできています――実際には数百あるのですが、2つしかないと考えてください。ホームラインの公式はおそらく5+0=5です。したがって、それは量子5にあります。ベータ地球近接並行)の方程式は4+1=5かもしれず、やはり量子5です。次の関連世界は3+2=5であるかもしれません。これらのよく似た公式は同じ結果(5)を与えます。したがって、関連する世界はホームラインの近くにあるだけでなく、ホームラインに似ています。
 しかし世界によっては25÷5=5という公式や、-5×-1=5という公式をもっているかもしれません。それは非常に異なる方法で5を与えます。そのような世界は量子5に存在しますが、非常に異なっています。
 同じ推論を使うと、量子7に存在するがホームラインに非常に似ているような並行世界は、7+0=7という公式を持っているかもしれません。

運搬機の操作(Conveyor Operation) B504P/2B184P
[[運搬機の操作>インフィニット・ワールド#Conveyor_Operation]]
 支援を受けていない超次元運搬機は、同じ量子内の時間軸に跳躍することしかできません。長距離の運搬機が異なる「量子」に跳躍するためには、超次元転送機の支援を必要とします(後記参照)。安全な跳躍のためには、運搬機とその積み荷の全積載物重量は、フィールドジェネレーターの限度を超えることができません。典型的な運搬機は、それ自身の質量を引いた後に250~1000キロの搭乗者と積み荷を輸送することができます。
 運搬機の跳躍は、1回のパルスで非常に多くのエネルギーを必要とします――これは、TL8乗り物用発電システムが供給できる以上のものです。必要なパルスパワーシステムは、運搬機の質量のおよそ半分を必要とします。それは1回の跳躍に充分なエネルギーを伝えることができますが、その後充電しなければなりません。ほとんどの運搬機は、30分でエネルギーを補充することができる燃料電池を搭載しています。これは跳躍した“直後”には、運搬機が戻ることができないということを意味します!
 運搬機は「現在地」と「目的地」の正確な次元座標をプログラムする必要があります。もし運搬機が道に迷うと、困ったことになります。乗組員はどこに行かなければならないかは知っているかもしれません。しかし、現在位置からそこに到着する方法がわからないのです。新しい宇宙の座標を見つけることは、何年もの努力を必要とする巨大な研究計画に匹敵します。インフィニティセントラムも、数百の宇宙についての次元座標をファイルに持っています。ホームラインでは、大部分が公に利用可能ですが、一部(閉じた世界や、セントラムによって支配されていると分かっているもの)は秘密になっています。
 次元座標は、“超次元航路(parachronic course)”を計画するために、運搬機が現在いる時空の物理的位置と共に使用されます。現実の場所(例えばニューヨークのタイムズスクエア)と次元座標の組み合わせ(例えばホームラインからベータ地球)ごとに、異なる“ジャンププログラム”が必要です。インフィニティ・アンリミテッドでは、商用のIポートから特定時空の同じ位置に向けてあらかじめ設定されたプログラムを、約500$で売っています。“カスタム・ジャンププログラム”(例えばタイムズスクエアからではなく、クイーンズにあるあなたのガレージから出発する)を作成するには、スーパーコンピュータを使用して5〜10日間かかります……費用は百万$から2千万$です。この理由から、まっとうな大半の旅行者はIポートを使用します。
 出発に先立って、運搬機の操作者は現地の状況と運搬機の現在質量に応じて、最終的な跳躍調整を行なわなければなりません。太陽ニュートリノ、宇宙線密度、現地の電場・磁場および同様の要因はすべて、跳躍に影響を及ぼしかねません。優秀な操作者は10分間くらいで調整します。操作者はこれより多くの時間をかけたり、少ない時間ですませてかまいません。こうした時間が跳躍の技能判定に与える影響は「時間の消費」(328ページ)を見てください。
 最後に操作者は“跳躍ボタン”を押します! これによって運搬機のジェネレーターが活性化されます(跳躍が転送機を必要とする場合はその代わりに“準備ボタン”を押します。転送機のフィールド照準が合わせられると、運搬機はすぐに跳躍します)。運搬機は消滅し、異世界の同じ場所に再び現れます。


超次元転送機(PARACHRONIC PROJECTORS) B504P/2B184P

[[超次元転送機>インフィニット・ワールド#PARACHRONIC_PROJECTORS]]
 「超次元転送機(parachronic projector)」は、1量子運搬機や2量子運搬機が、異なる量子レベルに移動できるようになる装置です。これは設備に囲まれて閉鎖されたような形の“台座”からできています。これを使って、運搬機を送り込んだり帰還させたりするための設定をします。
 転送機のサイズは、どれだけの質量を移動させるかによって決まります。ヴァン・ザントの最初の転送機は、巨大な研究所をいっぱいにしました。現代のもっとも巨大な転送機は、300トンを一度に動かすことができます。ほとんど都市の1ブロックを占領しています。“平均的な”転送機は、小さな講堂を一杯にするほどのハードウェアを必要として、2トン移動させることができます。
 転送機を操作するにはかなり多くのエネルギーを必要とします。これは非常に高価につきます。しかし巨大な転送機については、「転送する質量あたりの費用」は充分に低くなるので、気にするまでもありません穀物や鉱石のような比較的価値の低い品物を移動させる場合であってもです。
 転送機は非常に高価です。インフィニティは2トンの容量をもつ最も単純な装置の設置に1億Sの標準価格を設定しています。価格はそこから上になります。そのため政府、風変わりな億万長者、大企業だけが自分用の転送機を持つ余裕があります。しかし、いったん買えば人々や品物を輸送する費用は比較的安いので、転送機は日常的に毎日十数回の転送を行ないます。

転送機の操作(Projector Operation) B505P/2B185P
[[転送機の操作>インフィニット・ワールド#Projector_Operation]]
 転送機運搬機を送りこむためには、運搬機転送機の台座におかれて「準備」状態になければなりません。プログラム済み、動力が供給されている、などです。
 運搬機を帰還させるためには、転送機量子の差が2つ以内である特定の宇宙に狙いを定めなければなりません。目的となった宇宙で、“準備”している運搬機転送機の台座と同調した地点を占めている場合、転送機はそれを帰還させます。次元間の“リアルタイム”通信は不可能であるため、回収作業はあらかじめ時間を設定するなどの方法に頼らなければなりません。例えば、侵入調査を行なう遠征隊は念のため、転送機を24時間おきに作動させるように設定するかもしれません。もし戻りたいと思わなければ、運搬機に動力を供給しなければよいのです。
 もし運搬機が、機能していて調整済みのフィールドジェネレーターを持っていれば、量子レベル差1つの宇宙(例えば量子5から4や6、あるいはその逆)に運搬機を送り込んだり、帰還させたりするのは比較的簡単です。
 量子差レベル2つ(例えば量子5から3や7、あるいはその逆)に運搬機を送り込んだり、帰還させたりするのは困難です。調整済みで機能しているフィールドジェネレーターを持っている運搬機では充分ではありません。転送は特殊な事情の下でのみ可能です。それは約4時間前にならないとわかりません(毎時間3Dしてください。7以下の目が出ると、4時間以内に1時間だけ窓が開きます)。「転送機」にあるコンピュータと設備だけがこの予想を行なうことができます。運搬機の中にいるものは、拾い上げられる準備をして待つ以外に選択の余地がありません……そして待ってください……待つことだけです。


操作と事故(OPERATIONS AND ACCIDENTS) B505P/2B185P

[[操作と事故>インフィニット・ワールド#OPERATIONS_AND_ACCIDENTS]]
 運搬機が跳躍する場合、旅がどのように行なわれたか、オペレーターの〈電子機器操作/次元移動機器〉技能に対して判定してください。転送機によって支援された移動の場合、転送機のオペレーターと運搬機のオペレーターの両方が判定を行なわなければなりません。

修正:装備がダメージを受けていれば-3かより悪い修正。電磁的な障害があればペナルティ:激しい雷雨や太陽面爆発なら-2~核爆発による電磁パルスなら-6(電子機器を「電磁シールド」してもこの修正を避けることはできません――これは装備へのダメージではなく、環境による影響だからです)

 成功すれば、運搬機は即座に開始地点の宇宙で消滅して、目的の宇宙の同じ地点に再登場します。失敗すると、運搬機のオペレーターか転送機のオペレーターかどちらかでも何かがうまくいかなかったことになります! ふつうは、転送は行なわれます……しかし、計画通りにはいきません。1Dしてください(量子レベル差2なら2D)。そして操作の失敗度をこれに加えます。もし運搬機転送機の両方の判定に失敗したときには、両方の失敗度を加えてください! もし運搬機が過積載のときには、結果に1かそれ以上加えてください。それから、結果を以下の表で見てください。
出目+αエラー種類内容
2:タイミングエラー
(Timing error):
移動には、“外部”から見て1D分かかります。このタイミングエラーと船の完全な消失とを区別する方法はありません。したがって、遅れが発生すると万一の場合に備必ず安全警備体制をとることになります。これが超時オペレーターが胃潰瘍を作る原因です。*
3:タイミングエラー
(Timing error):
移動には、転送される側と外部の時間両方とも1D分かかります。*
4:タイミングエラー
(Timing error):
移動には、“外部”から見て4D分かかります。*
5:タイミングエラー
(Timing error):
移動には、転送される側と外部の時間両方で4D分かかります。*
6:位置エラー
(Positional error):
運搬機は1D×30センチ低い位置か、一方にずれて現れます。運搬機転送機に些細なダメージが与えられますが、乗客や積み荷にはダメージはありません(よほど壊れやすいものなら別ですが)。†‡
7:反響エラー
(Resonance error):
船は現れて、それから消えます。元いた所に再び現れます。やり直すことは可能ですが、技能に-1の修正があります。†
8〜9:フィールド強度エラー
(Field-strength error):
放電によってすべての人員に1D-2の焼きダメージを与えます。シールドされていない電子機器はすべて一時的に使用不能になります。大修理を行なうまで、運搬機のフィールドジェネレーターを使用することはできません。†
10:位置エラー
(Positional error):
運搬機は非常に高い位置に現れます。落下によってすべての乗客と壊れやすい積み荷は1Dの叩きダメージを受けます。運搬機のジェネレーターは破損します。小修理を行なうまでは技能に-3されます。†‡
11:重度の位置エラー
(Severe positional error):
10と同じですが、落下のダメージは2Dです。そして運搬機のジェネレーターは大修理を行なうまで使用することができません。†‡
12:照準エラー
(Focus error):
運搬機はどこか意図しない場所に現れます。地理的には同じ場所に現れますが、無限に存在する時間軸のうち、いずれかに現れる可能性もあります。1Dしてください。1〜3なら、正しい量子レベルだが違う時間軸にあることを意味します。4〜5なら隣接した量子レベルです。6は2レベル離れた量子レベルです。その位置を推定するためには、インフィニティ(あるいはセントラム)でコンピュータによる計算を数日、数週間、あるいは数ヶ月続けなければなりません。それまでの間、戻るための方法はありません。もし転送機を使用している場合、1Dして2以下の確率で“何か”がランダムな別次元から現れて台座の上に到着します。空気かもしれませんし、瓦礫かもしれません。人工物や生物かもしれません……そして、危険なものかもしれません。緊急時でない限り、研究者が1D日間かけてデータを集める間、その転送機はオフラインの状態にされます(望みは、いつの日か制御可能な「アイテム借用転送機を建造するというものです)。†‡
13:座標エラー
(Matrix error):
運搬機は粉々になって到着します――完全に破壊されます。穀物、鉱石などは影響をうけませんが、他の積み荷は殺されるか破壊されるかしてしまいます。GMはPCに対してはこの結果を“回避”したいと望むかもしれません(12か14で書かれている通りに扱ってください)。†
14以上:完全な混乱
(Utter confusion):
あと2回判定して、その両方を適用します。もし新しい結果のどちらかが14以上だったときには「興味ぶかい次元災害」(以下)を見てください。†

「*」:理論的には異世界間の移動時間は0です。理由は知られていませんが、ときとして旅行時間がより長くかかるように見えます。またときとして、旅行者にとっては移動は一瞬ですが、外の世界にいる人々の視点から見ると時間がかかる場合があります!

「†」この結果が出たときには1Dします。1か6の時にはなにも起こりません。2〜5のときには、この表のタイミングエラー(2〜5番)の結果も同様に発生します。

「‡」このエラーは運搬機が固体の内部に現れることを意味するかもしれません。その場所に元々あったものは単純に消滅します。それがどこに行ったかは、誰にも説明できません。つまり、転送機の台座の上や、それが照準を合わせている範囲内に立つことは、非常に愚かであるということを意味します! あなたは消滅するかもしれません。さらに悪い場合、あなたの“一部”が消えるかもしれません!

興味ぶかい次元災害(Fascinating Parachronic Disasters) B505P/2B185P
[[興味ぶかい次元災害>インフィニット・ワールド#Fascinating_Parachronic_Disasters]]
 先の表で14の結果を2回連続で振ったときには、2Dして下記の表を見てください。これらの結果のうちいくつかは、生きている積み荷を想定しています。無生物の積み荷を送るときには、ふり直してください。
 表の結果のうちいくつかは、超次元科学の法則を破っているように見えます。また、表のほとんどはインフィニティでは起こっていません……今のところは。こうしたできごとに伴う危険といえば、即座に研究者の集団が現れることです――残ったすべての設備を手に入れて、目撃者が半死半生になるまで質問責めにするでしょう。
出目+α内容
2:船の内部の時間では、移動には数百年、あるいは数千年かかります。外の世界ではそれほど時間は過ぎません。生物が生きていることはほぼありえません。塵となって砕けて到着するかもしれません! GMはPCを全滅させるのではなく、代わりに一時的な変異を与えることにしてもかまいません――例えば若返るなど。治療方法の探索は、面白い冒険になるでしょう。
3:乗客の“精神”は非常に長い時間を経験します。しかし“肉体”の時間はまったく経過しません。乗客は-3DCP分、ふさわしい精神的な不利な特徴を獲得します。GMが乗客の個性に合わせて決定します(これは、インフィニティで2回起こりました)。
4:シグナルエラー。生物は安全に到着します……全員の精神が違う肉体に入っていることをのぞけば。これは永続するかもしれませんし、1D日で終わるかもしれません。精神交換の効果は「精神転送」(284ページ)を見てください。
5:タウ因子エラー。船は“鏡像”として現れます。鉱石は影響されません。食料は食べられません。生きている乗客は「食事制限」と「特殊な生理反応」の不利な特徴を得ます。生き延びるためには特殊な食事が必要です。もし彼らがホームラインから遠く離れているときには、すべての〈生存〉判定に-5の修正があります。(GMの手がかりから)何が起こったかわかったときには、この修正は-2まで減ります(これはインフィニティで2回起こっています。また迷った運搬機の乗組員が、「友好的な」環境で餓死した2つのケースもこれを疑われています)。
6:カエルエラー。船は小さなカエルの雨、あるいは他の奇妙な“怪現象”のなかに到着します(これは6回起こっています。そして4人のインフィニティ研究者がそれについて説明しようとして発狂しました)。
7:バイオフィールドエラー。積み荷のうち生きていないもの(運搬機を含みます)はすべて分解するか、他の地点に移動します。結果、旅行者を身動き取れなくさせたり、立ち往生させたりします。これは、転送機の台座に到着したところだったのか、あるいは他の場所をおとずれたところだったのかによって決まるでしょう。
8:生物はみな短いテレパシーを経験します。乗客はそれぞれ20CP分のテレパシー能力を得ます(第6章「超能力」参照)。詳細はGMがランダムに割り振ります。これは1D日間続きます――個別に振ってください(これは2回起こりました……インフィニティが把握している限り)。
9:船は1D分の間をおいて“2回”現れます(これは1回発生しました。幸運にも、乗組員がいない運搬機でした。最初の積み荷を途中まで降ろしたところで、第二の運搬機が最初のものと置き換わりました。これはある種の“鏡”効果による複製だったのでしょうか?それとも別の時間軸から訪れたのでしょうか。乗組員がいたらどうなっていたのかはわかりません。それも複製されたのでしょうか?)
10:積み荷や運搬機セントラム(元々セントラムのものであればホームライン)に属する、非常によく似たものに入れ替わります。
11:積み荷や運搬機は思いもよらない他の次元間旅行種族に属する、非常によく似たものに入れ替わります。
12:積み荷や運搬機は完全に未知の次元旅行文化に属する積み荷や運搬機と入れ替わります。質量は同じですが、それ以外のものは何一つ同じであるとは限りません!


コラム:次元検知器(Parachronic Detectors) B506P/2B186P
[[次元検知器>インフィニット・ワールド#Parachronic_Detectors]]
 「次元検知器」とはやってくる跳躍を検知できる装置です。そのためには、跳躍と同じ世界にいなければなりません。また跳躍が有効範囲内(以下参照)で行なわれなければなりません。操作者は〈電子機器操作/センサー〉技能の判定を行なってください。成功すれば手がかりが得られます。範囲内に複数の検知基地があれば、数パーセントの誤差内で跳躍者の位置を三角法によって決定できます。
 センサーはさらに跳躍による世界への干渉を記録します。1時間分析して〈物理学/多元物理学〉判定に成功すれば、その跳躍の源が明らかになります運搬機転送機、あるいは“変則的”なもの(例えば呪文)そして前にいた世界の量子レベルがわかります。1日作業して-5で判定すれば、前にいた世界が識別できます(研究者がその世界になじみがあれば)。
 インフィニティ・パトロールによって、もっともよく持ち歩かれるポータブルユニットは56万$かかり、重量は28キロです。それは大きなバックパックのサイズで、有効範囲は1000メートルです。より大型のモデルは、有効範囲1500メートルあたり100万$と100キロです。
 インフィニティセントラム時間軸を支配しようとする場合、標準的なやりかたは長距離の検知器ネットワークを展開させることです。しかし費用が高くつくために、完全にカバーされた世界はほとんどありません。費用対効果が最もよいのは、主な中心区域近くでのみ展開することです。

ダメージをうけた運搬機(Damaged Conveyors) B506P/2B186P
[[ダメージをうけた運搬機>インフィニット・ワールド#Damaged_Conveyors]]
 跳躍に失敗したり、事故、破壊工作、攻撃などは、みな運搬機にダメージを与える可能性があります。船体によって、運搬機は銀紙ほどの強さしかもたないかもしれませんし、戦車と同じくらい頑健かもしれませんしかし、DR突き抜けたダメージがあれば、6分の1の確率で繊細な超次元機器部分に影響を与えたとみなします。
 ダメージの詳細よりもドラマ的な影響のほうが重要です。目安として、これはふつうは運搬機の能力を減少させます。運搬機は依然として機能しますが、すべての〈電子機器操作/次元移動機器〉判定に-3かより悪いペナルティがあります。
 “深刻な”ダメージ(GM判断)は運搬機を完全に使えなくするかもしれません。修理がなされるまで、同じ量子レベル内での跳躍もできませんし、転送機がそれを帰還させることもできません。事実上“座礁した”のです。

迷った運搬機(Lost Conveyors) B506P/2B186P
[[迷った運搬機>インフィニット・ワールド#Lost_Conveyors]]
 運搬機は様々な理由で完全に道に迷うことがあります(つまり、予定通りに到着しないこと)。これは結局の所“操作ミス”と“不運”によるものです。
 もしホームラインの誰かが転送機運搬機を帰還させようとしたり、それが自力で帰ってくると予想していたなら、消失は直ちに気づかれるでしょう。
 運搬機ホームラインから別の場所に行く予定だった場合、消失に気づくまでの時間は船の種類によって決まります。主な基地への定期的な補給船が消失した場合、もう一方の側からメッセージ・カプセルが送られることで、できるだけ早く報告されるでしょう。しかし調査ミッションで消失したら、気づくためには数日から数週間かかるかもしれません。
 運搬機の消失に気づくのが早いほど、回収の可能性も高くなります。インフィニティ・アンリミテッドコンピュータは、運搬機の正確な質量と容量まですべての変数を考慮に入れて、その問題にとりかかります。ときどき、コンピュータはどこに現れたかを予測することができます。もし運がよければ、それは地図に載っている居住可能な時系列です。しかし、そうでないこともあります。
 ときとして、コンピュータは地図にない場所を予言します。実際、このようにして発見された新しい時系列もいくつかあります。それでも、全く新しい時系列にランダムに飛ばされることは、大いなる冒険になる一方で、大半の搭乗者にとっては回避したいと思われる旅行でしょう。

迷う/移動する時系列(Lost/Moved Timelines) B507P/2B187P
[[迷う/移動する時系列>インフィニット・ワールド#Lost_Moved_Timelines]]
 これは操作ミスではありません。もし起こった場合、オペレーターに頭痛を起こさせます! 「時系列シフト」(518ページ)を参照してください。

パラドックス(Paradoxes) B507P/2B187P
[[パラドックス>インフィニット・ワールド#Paradoxes]]
 パラドックスは発生しません。なぜなら次元旅行は真のタイムトラベルではないからです。しかしながら「歴史残像」――ホームラインの歴史を複写する時系列で、できごとの流れを変えるような介入があると、量子シフトを引き起こす場合があります。よくても費用がかかる迷惑、最悪の場合災害がおこります。「時系列シフト」(518ページ)を参照してください。
 これは創造的ではあるものの、まさにひき続く悪夢だと言われています。もし類似歴史の並行世界の1つがホームラインの過去に何かの形でなっていて、訪問者がそれと気づかずに変更したらどうなるでしょう? まだ、それは起こっていません……しかし。


自然の超次元現象(NATURAL PARACHRONIC PHENOMENA) B507P/2B187P

[[自然の超次元現象>インフィニット・ワールド#NATURAL_PARACHRONIC_PHENOMENA]]
 次元を横切って起きる、めったに見られない“自然の”現象がいくつかあります。

ベインストーム(Banestorms) B507P/2B187P
[[ベインストーム>インフィニット・ワールド#Banestorms]]
 「ベインストーム」は、範囲内にいるものすべてを別次元へと移動させる、地域的な現象です。この現象は多くの場合丸い形をしており、サイズは数メートルから数キロまで変動します。大気を備えた惑星では、厚い霧の峰、不可解な雷雲、重く激しい雷雨といった形をとる傾向があります。それはゆっくり現れて(例えば、霧が出てきて光をすべて遮ります)、急に消え去ります。
 ベインストームが消えると、その半径内にいるもの全員も消えます。こうした“乗客”はどこか別のところに再び現れます。超次元運搬機と異なり、ベインストームは必ずしも本来の次元の位置に相当する空間へと乗客を輸送するとは限りません。いくつかの地理的な位置が、収集所、あるいは配達先として“好まれる”ように見えたりします。こうした場所はしばしば名声を得ます――例えばバミューダ・トライアングルのように。
 これを除けば、一貫したパターンというのはほとんどありません。いくつかの世界では、他の世界よりベインストームが現れやすい傾向もあるように見えます。またある世界では、特定の場所が異常に敏感なようです。複数のベインストームが同時に襲うこともあります。研究者たちは、ベインストームに少なくとも2つの特定の型があることを知っています。

 双子のベインストームは2つの次元にある物質を交換します。地上の大規模なベインストームは、異世界間の地形を交換することもあります。
 永続的なベインストームは、ある“物理的現実”世界の地域を、2つの次元が共有して混ざっている1つのものに変形させます。これはしばしばマナの濃度に影響をおよぼし、周囲数百キロから数千キロにわたってそれを増加させます。

 何がどのようなベインストームを起こすのかを知っている者はいません。以下のような理論が考えられます。

ベインストーム魔法的なものである」(Banestorms are magical)
 ベインストーム魔法的な性質をもっていると示唆する証拠がいくつかあります。しばしば神託によってベインストームを予測することができます。強力な儀式魔法によって、ベインストームを呼び出すことさえできます。しかし、魔法でもそれを制御することはほとんどできないように見えます……。

ベインストームは科学的なものである」(Banestorms are technological)
 超次元科学技術によって確かにベインストームを検知できます。「次元検知器」(506ページ)は、ベインストームが現れる1D分前に“狂い”はじめます。超次元科学技術によってベインストームを起こすことができるかは、激しく議論されています。超次元技術研究所(512ページ)は「超次元爆弾」を使用して、人工のベインストームを作成することが可能かもしれないと信じています――しかし、もしそれで起こせたとしても、彼らはその事実を認めないでしょう。いくつかの理論では、どのような超次元技術を使用してもベインストームは強まるだろうし、引き起こすこともできるかもしれない、と述べています。また、その技術は超次元でなくてもよいと示唆する証拠もあります。ある世界(マーリン)においては、最初の核爆発が永続的なベインストームを引き起こしました。

ベインストームは生きている」(Banestorms are alive)
 ベインストームは生物だと信じている研究者もいます!


リアリティ震動(Reality Quakes) B508P/2B188P
[[リアリティ震動>インフィニット・ワールド#Reality_Quakes]]
 時系列シフト(518ページ)とは異なり、「リアリティ震動」は現実を書き直し、その確立している歴史を変更して、ある世界の過去をひっくり返してしまう次元震動です。これはふつう気づかれることはありません。ただし以前の過去の断片(「現実の破片(reality shards)」)はしばしば残ります。奇妙な記憶、不可解な健忘、特異な人工物として存続します――特に「破砕帯(fracture zone)」において顕著です。これは二つの歴史が分岐を始めた中心点の名前です。「現実の破片」は人間であることもあります――伝説的人物、謎の見知らぬ人、世界をまたにかけていく「複製された」個人。非常に強力なリアリティ震動は、ときとして1つの世界の過去と未来を変更します。そして近くの並行世界に現実の破片をばらまくのです。

次元門(ネクサス・ポータル)(Nexus Portals) B508P/2B188P
[[次元門>インフィニット・ワールド#Nexus_Portals]]
次元門」というのは、1つの次元から別の次元に結びつく穴です。これは普通丸い形をしており、直径は10メートル以下です。光はどちらの側からも通過します(つまり、あなたは目的地を見ることができます)。運搬機と同じように、門を通ることで、空間を移動することなく現実間を移動します。
 ほとんどの門は往来可能です。あなたは入って、そこから自由に戻ることができます。しかし、一方通行のものもあります。入ることはできますが、去ることはできません。もし一方通行の門に身体の一部や物を入れたとしたら、引き戻すことはできません――あなたやその物を向こう側に押し込むまでは、突き刺さったままです。
 門にはさらに以下のように分類されます。

●開いている(Open):
 門はいつでも存在しており、自由に旅ができます。

●周期的(Periodic):
 門はときどき現れます。満月ごとに、一世紀に一度……など。もし往来可能な場合、逆側も同じ周期です。

●鍵がかかっている(Locked):
 門はある特定の“鍵”がないと現れません――鍵はふつう、魔法・技術的な人工物です。次元検知器異世界跳躍者はその存在を知ることができます。

●召喚できる(Summonable):
 門は召喚されたときだけ現れます。これは特殊な行動を必要とします。簡単な行動かもしれませんし(特定の物体に触る)、複雑な行動かもしれません(特定の神聖な短剣を使用して、生け贄の血をささげる)。そうした門の多くは、召喚してから僅かな時間しか存在しません。

●変動する(Variable):門は3つ以上の現実を結んでいます。目的地はランダムかもしれませんし、(鍵や行動で)選択できるかもしれません。もし2人が同じ場所に行こうと望んだら、手をつないで通り抜けなければなりません!

●隠されている(Hidden):
 隠されている門は目に見えません――あなたはそこにあると気づかないまま通り抜けることができます。こうした門はしばしば一方通行です! 次元検知器は隠されている門を、通常の100分の1の有効範囲で検知できます――これは、その門が実際に次元を横断するために使われたときだけです。異世界跳躍者は、隠された門が視界に入ったとき、知力判定に成功すれば検知できます。

シフト領域(Shiftrealms) B508P/2B188P
[[シフト領域>インフィニット・ワールド#Shiftrealms]]
 一部の地形(あるいは、数少ない人工建造物)には、現実から“外れて”いるものがあります。それは世界の間をランダムであったり、一定の周期で移動します。こうした「シフト領域」は出現して、完全に消えることもあります。あるいは元からある現実世界に重なっていたり、入れ替わったりします。大きさは一部屋から世界全体までさまざまです。研究者は、これによって不思議な消える島(アヴァロンやハイ・ブラゼル)や迷いの森の伝説を説明できると信じています。


コラム:次元ハイウェイ(Dimensional Highways) B508P/2B188P

[[次元ハイウェイ>インフィニット・ワールド#Dimensional_Highways]]
 「次元ハイウェイ」は次元間にまたがって繋がっている道です。次元ハイウェイの歴史の研究は、それが古代の直線路や牧草地の線に沿っていることをしばしば明らかにします。道に沿った地点に、次元門が存在しています。これは通常周期的であるか、あるいは鍵がかかっています。そして道自体と同じほどの幅をもちます。道はある次元に存在する門で終わっており、次の次元の門で再開するのかもしれませんあるいは元の次元で同様に続いており、伸びた後で3番目の世界に向かう別の門に通じているのかも。誰が道を造ったのでしょうか?それは誰にもわかりません……。


コラム:インフィニティの世界分類(Infinity’s World Classes) B509P/2B189P

[[インフィニティの世界分類>インフィニット・ワールド#Infinity_s_World_Classes]]
 インフィニティはそれぞれの時系列を、公式に以下のように分類しています。
自由(Open)
 この世界は訪問も植民地化も自由です。
保護(Protectorate)
 この世界はインフィニティ・アンリミテッドが国連の保護・管理下にある、人の住む並行世界です。世界の状態によって、限定的な交易や接触が可能なこともあります。
調査(Research)
 この世界は調査用に確保されています。こうした世界の多くは並行です。以下のような種類があります。
  • 例外(Anomalies):興味深くはあるが、明らかに危険というわけではない物理法則の変形が見られます。
  • 文化保護地域(Cultural Preserves):この世界は、他の似たような時系列に介入したときの影響を判断するため、“コントロール下”に残されています。
  • 自然保護地域(Nature Preserves):興味深い野生生物が見られる世界です。例えば恐竜……あるいはドラゴンなど。
  • 原始的(Primitives):青銅器時代かより以前の人間が住んでいる並行世界(これらの世界に対するより多くの開発を認めろ、という圧力が継続してかかっています)。
閉鎖(Closed)
 この世界はごく少数の選ばれた研究者や潜入局のエージェントを除いては、誰に対しても絶対に“立ち入り禁止”です。それらの世界が主にホームラインにとっての潜在的な危険をもっているからです。インフィニティは、これらの世界の存在も秘密にしておこうとします。その理由は以下の通りです。
  • 地獄並行(Hell Parallels):制御不能の疾病、ナノテクノロジー禍、理解不能な力、などによって人口が減った時系列。502ページ参照。
  • 先進的で攻撃的(High-Tech and Aggressive):もし現地の人々が次元旅行について知れば、この世界は明らかに危険です。ナチに支配された「ライヒ」の並行世界がよい例です。
  • 謎の力(Mysterious Forces):魔法がどこにでもある世界、超能力が広く普及している世界、一般的に「スーパーパワー」という見出しを付けられる能力がある世界など。
  • 人間以外の知性(Nonhuman Intelligence):異星人が支配生物である時系列
  • 超高度技術(Ultra-Tech):その世界がホームライン(やセントラム)よりも先進的である場合、その文化が良性に見えても、危険であると考えられます。ここでの研究者の目的は、もちろん現地の科学を(逮捕されずに)学習することです! 恒星間旅行を実現した地球は、これまで発見されていません。
  • 交戦地帯(War Zone):この世界はインフィニティセントラム、あるいは異なる現地勢力同士の大規模な戦闘が行なわれている場所です。

 上記のカテゴリーのうちどれにも入らない、“特別な”閉鎖世界が少数あります。例:住民が突然縮み始めた謎の並行。そうしたものは通常、それだけで充分な理由として閉鎖されています。



インフィニティ・アンリミテッド(INFINITY UNLIMITED) B509P/2B189P

[[インフィニティ・アンリミテッド>インフィニット・ワールド#INFINITY_UNLIMITED]]
 一般に“インフィニティ”と呼ばれるインフィニティ・アンリミテッドは多国籍企業で、ホームライン世界は、これを通じて超次元技術を発展させ、支配しようとしています。巨大で豊富な資金を持つ組織であり、必ずしも効率的とはいえませんが、有能な組織です。
 インフィニティは、国際連合世界間評議会(国連安全保障理事会の常任理事国から構成)と自身の取締役会の双方の支配下にあります。役員の半数はインフィニティ株主から選出され、残り半数は評議会が任命しています。
 インフィニティはあらゆる超次元用の装備を有し、それを取り締まる権限をもっています。他の組織がこうした装備を作りだすには、インフィニティの許可が必要です。転送機を使用するときには、必ずインフィニティの直接監督下で行なわねばならず、また特許使用料を支払わねばなりません。インフィニティは認可を受けていない運搬機転送機を押収し、破壊する権限を持っています――しかし実際には、この権限はそうした機器がホームライン世界で活動する主要勢力が所有していた場合に限られます。
 インフィニティは、あらゆる時系列の監督者を自認していますが、実際にその覇権は、Q4、Q5、Q6までにしか及んでいません。インフィニティの系列組織は、新たな時系列の調査や潜人を独占しています。また、インフィニティ多元世界の“正当な守護者”として、ホームラインの他の組織に――政府や企業や個人にさえも――他の時系列の開発権を貸与してます。実際、インフィニティはみずからをTL6未満の世界の所有者と見なしており、より高い文明レベルの世界との接触を制限、あるいは禁止しています。
 さらに、次元外の干渉者たちはどこかの世界にもぐりこみ、それを利用するときには、そこに暮らす人々の生活の改善を考えて行動すべきだと主張しています。しかし、この主張は非常にあいまいに解釈されるのがしばしばです……。
 そうした政策を推しすすめるインフィニティの能力は強力ですが、けっして絶対的なものではありません。新たな世界を発見し独占すれば、多大な利益をあげられるという、それだけの理由によって、数多くの勢力も秘密裏に時系列を探索し、利用しようとしているのです!
 インフィニティは多くの関係組織を有しており、それぞれが異なる任務を負っています。緊密な協力に努めていますが、対話の決裂や低レベルの内紛も知られていないわけではありません。加えて、インフィニティがいかに慎重に人員を迎えいれようとしても、セントラムからの侵入者、政府機関や企業のスパイ、ただの泥棒などがまぎれこんでしまう可能性を抱えています外部に敵がいなくとも、常に冒険の種はあるのです。

インフィニティ・ディベロップメント(ID)(INFINITY DEVELOPMENT) B510P/2B190P

[[インフィニティ・ディベロップメント>インフィニット・ワールド#INFINITY_DEVELOPMENT]]
 この国連とインフィニティの合同組織は、時系列に存在する“貿易領域”を分配する任務を負っています。新たな世界の商業開発が許可されると、参入を希望する者はIDに入札を行なわねばなりません。考慮されるのは現金だけです。入札者はまた、その時系列の環境や人々をいかに守り、保安を行なうかなどを説明しなければなりません。外時系への設備設置は、常にIDの官僚組織やIコップ、あるいはその双方の監査の対象になります。ホームラインの他組織の多くは、インフィニティが結果的に他の時系列を"所有”していることに強硬に反発していますが……それが現実でもあります。

コラム:外時系からの人員調達(Crosstime Recruitment) B510P/2B190P

[[外時系からの人員調達>インフィニット・ワールド#Crosstime_Recruitment]]
 ホームラインと“セントラム”の超次元組織はしばしば外時系の地元の人々を雇いいれますが、その際には表向きの組織を活用します――外時系の人々は自分たちが超次元の雇い主のために働いていることにはまったく気づきません。事実、「秘密」を外時系の人々に漏らすことは重大な犯罪なのです。しかし、インフィニティ・パトロールは、ある程度、才能のある外時系人を雇う権利を持っています。セントラムの類似組織、インターワールドも同様の権限を持っています。
 外時系からの人員調達は、その才能が組織に大きな利益をもたらすと判断された場合のみと考えられています。外時系人を雇い入れた現場の工作員は、調査委員会においてその行為の正当性を証明しなければなりません。現実には、どこまで認められるかは状況によります。ただし、異世界跳躍者(518ページ参照)は例外です。彼らは非常に貴重な人材であり、出身がどこであれ、彼らを雇うためには努力を惜しみません。
 一方、個人的な理由で人員補充が行なわれる場合もあります。たとえば、外時系に送りこまれたタイム・スカウトが才能のある外時系人と恋に落ち、相手の女性を雇いいれるのに自分の力を利用することがあります。そうした事例では、インフィニティは優秀な工作員をつなぎとめるため、力を貸すこともありますが……たいていは違反者を軍法会議にかけ、恋人たちの両方をコヴェントリーに送りこんでしまいます(514ページ参照)。
 インフィニティ・パトロールはすべての新人に訓練と教化を施し、注意深く観察しながら、彼らが信頼に足る人物であることを確認します。出身世界にあくまでも忠誠を誓いつづける者こそ、真に信頼できる人材なのです。

ISWAT(ISWAT)
[[ISWAT>インフィニット・ワールド#ISWAT]]
 世界間特殊工作部隊(Interworld Special Weapons and Tactics)、またはISWATは特殊任務を担う、インフィニティ・パトロールの精鋭部隊です。閉ざされた世界や怪しい並行世界、ポケット多元宇宙での活動に特化し、世界全体の運命を左右する緊急、かつ隠蔽可能な任務を担当します。
 ISWATの隊員数は非公開で、少人数のチームで活動しています。なかには高度な訓練を受けたIコップや特殊部隊の兵士もいますが……特殊な才能を見込まれて採用された外時系人が多くを占めます。多元世界から引き抜かれた著名な歴史上の人物や神話上の存在魔術師超能力者、超人、人外のもの(アンデッドを含む)、堕天使、改宗した悪魔、引退した異教の半神――さえ含まれているという噂も絶えません。そして、こうした噂の多くは真実なのです。
 ISWATの任務には3つの共通点があります。“自由と平和”という漠然とした理想に身を投じること、任務に対する愛、そしてチームの構成員に対する非常に堅固な忠誠心です。2冊のルールブックの巻末に挙げられた8人のキャラクターは、ISWATの1チームを構成しています。そうしたチームは、非常に自由度の高い冒険を行なえる理想的なパーティです。
 セントラムにもISWATのような組織はあるのでしょうか?なかなかよい質問と言えるでしょう……。


インフィニティ・パトロール(INFINITY PATROL) B510P/2B190P

[[インフィニティ・パトロール>インフィニット・ワールド#INFINITY_PATROL]]
 インフィニティ・パトロールは、インフィニティの"実働”組織です。理屈の上では、国連からの委任によって運営される民間の保安組織です――国連が過去に戦後処理のために雇ってきた、さまざまな請負組織(ときによっては武装している)に似ていると言えるでしょう。しかし実質的には、インフィニティ・パトロールは、インフィニティの支配下にある超国家的な準軍事組織なのです。
 ホームライン世界におけるパトロールの司法権は、インフィニティの私有地域内に厳しく制限されています。しかし、彼らは国内の警察と国際刑事警察機構の双方とも緊密な連携をとっています。ホームライン以外の世界では、手の届く範囲で影響をおよぼしていますが、大国の存在する世界ではその権力は制限されています。パトロールは多くの時系列に非常に薄く広がり、監視の目を光らせています。
 インフィニティ・パトロールは1万の現場工作員と、その他5万の雇用人を擁する巨大組織で、多国籍組織の特徴を帯びています。準軍事組織の「Iコップ」は、元警察官や軍の経験者などを雇い入れ、「潜入局」は冒険者やあらゆる種類の科学者(地質学者、人類学者、生物学者など)を招聘しています。いずれにおいても、全員が厳しい心理テストや忠誠心のテストに合格しなければなりません。こうしたテストは狂信的な国粋主義者や犯罪者、過激派など、組織を裏切る危険分子を排除することを目的としています。たいていの場合、事前の試験は効果をあげますが――別の組織に忠誠を誓う者や隠れた目的をもつ者が、パトロールにまぎれこんでいるのも間違いない事実です。
 パトロールの現場工作員は探検家や研究者、兵士などですが、職種を問わずパトロールの2つの主要部門のいずれかに属します。

●介入局(Intervention Service):
 介入局は一般には「Iコップ」として知られており、パトロールのなかで保安と諜報活動を担う部門です。その第一の任務は、インフィニティによる統制を強化し、セントラムの潜入を迎え撃つことです。介入局は、司法部、治安部、内務部、特殊任務部などの10部門で構成されています。

●潜入局(Penetration Service):
 新しい時系列の探査と開放を担当する“タイム・スカウト”です。また、遭難した運搬機の探索と救出にもあたります。ほとんど知られていない、かつ最も危険な任務の1つに、時系列をまたぐ情報収集活動があります。潜入局には、接触部、残像監視部、諜報部、探索救助部など、8つの部門があります。


インフィニティ・パトロールの任務(Infinity Patrol Missions) B511P/2B191P
[[インフィニティ・パトロールの任務>インフィニット・ワールド#Infinity_Patrol_Missions]]
 インフィニティ・パトロールには、次のような多くの任務があります。

●強制執行(Enforcement):
 ホームラインの政府や企業、個人が、時系列の住民から搾取したり、資源を浪費したり、軍事目的で傭兵や装備を運び入れたりするなど、不法利用する事態が起こるのは避けられません。Iコップがいかに目を光らせようと、常にこうした事態は発生します。しかし、パトロールはそれを阻止する努力を続けています。これは介入局の司法部の管轄にあたりますが、“新たな”時系列に招かれざる客が存在する場合などは、潜入局の工作員が最初に気づくこともしばしばです。
 許可なしでの時系列への侵入が発見されると、Iコップはただちに行動を起こします。「秘密」が破られる危険があるときは、侵入をただちに断ち切る手立てが講じられます……しかし、そうでない場合は、末端の兵だけでなく全体を一網打尽にするために、敵の組織に逆侵入を行ないます。経験豊富なタイムツアー社のガイドや、引退した隊員が任務を帯びて、相手組織に接触を試みるのです。

ホームラインの保安(Homeline Security):
 介入局の保安部は次元をまたぐホームラインへの侵入を監視し、阻止するのが主な任務です。潜入局の諜報部――そして大国の諜報組織――とも密に連携を取りあって、脅威を察知し、未然に防ごうとしています。この任務の主要な部分は、運搬機転送機を常に監視することです。

外時系の保安(Outtime Security):
 インフィニティの方針の柱は――徹底した管理下にないかぎり――ホームライン以外の時系列に(そして、当然セントラムにも)次元旅行を利用させず、その存在さえ知らせないことです。潜入局は、次元旅行の技術(あるいは、その他の次元航行の手段)に達しようとしている時系列を監視しています。一方、介入局は個人や政府が法規を犯さないよう監視し、違反した者を処罰します。必要に迫られれば、「秘密」保持のために極端な手段に出ることもあります(514ページ「「秘密」の保持」参照)。

セントラムに対する防衛(Defense vs. Centrum):
 これには、セントラムのスパイへの対諜報活動や、敵の情報を収集する諜報活動などがあります。他にも、パトロール内で最も“ロマンチック”な任務――妨害工作から歴史残像を守る任務――があります。潜入局と介入局が協力して、これらの任務にあたります。潜入局は監視や諜報活動、対諜報活動を担当し、介入局はセントラムの活動が察知された時点で、それを阻止すべく積極的な警察活動や特殊任務を担当します。

●救助活動(Rescue):
 次元旅行者が、さまざまな理由で時間内に帰還できないことはよくあります。運搬機のヒューズが飛ぶようなささいな事故から、恐竜に喰われたり、無法者に捕らえられたり、魔女狩りで火炙りにされるといった悲惨な事態まで、さまざまな要因が考えられます。また、歴史に干渉して時系列シフトを引きおこす可能性もあります(518ページ参照)。そのため、旅行者が帰還の手立てに失敗した場合、パトロールが救助活動に乗り出します。

 派遣されるメンバーは、だれが――どこで遭難したかによって決まります。“安全”な時系列上なら、潜入局の新米のトラブルシューター2人が道具一式を持って救出に向かうだけかもしれません……しかし、それでも万一に備えて武装は怠らないでしょう。危険な時系列なら、大勢のIコップを載せた、武装運搬機が送りこまれるでしょう。
 いずれにしても、パトロールにとっては、「秘密」の保護が最優先です。したがって、行方不明の旅行者を生還させることより、失われた運搬機の回収や破壊のほうが優先されることもあります!
 そのため、インフィニティに所属していない一団が行方不明になった場合、すぐにはパトロールが呼ばれないこともあります。こうした事態に備えて、タイム・ツアー社をはじめ次元旅行を行なう企業の多くは、自分たちの部隊を備えています。他の政府も独自の保安部隊を有しており――なかには他の部隊よりはるかに優秀なものもあります。また、極端な場合には、ISWAT(510ページ)が救援要請を傍受し、ひそかにその任務を肩代わりすることもあります。
 救助任務は、危険も含んだ良い冒険になるでしょう。さらに、それが歴史残像で発生した場合、予期せぬ量子シフトが引きおこされる可能性もあります。

潜入任務(Penetration Missions) B511P/2B191P
[[潜入任務>インフィニット・ワールド#Penetration_Missions]]
 多くの試行錯誤はあるものの、数の上ではいくつもの新しい時系列が発見されています。新たな時系列には、まず高精度の化学、生物センサーを備えたロボットが送りこまれます。人間の生活には適さないため、その後、二度と訪れることのない時系列も数多くあります。しかし、その時系列が安全だと見なされると、次には人間が送りこまれることになります。
 最初の偵察任務はまず内部に侵入し、周囲を探索し、その時系列が居住可能かどうかを確かめ――そして居住可能なら、誰をあるいは何を居住させるかを決めることです。居住が不可能だと判明した場合、潜入局はそれを植民用などの用途に分類し、インフィニティ・ディベロップメントに引きわたします。
 しかし、居住可能な時系列はそのまま潜入局の管轄となり、細心の注意を払って調査が進められます。最初の偵察で求められるのは、文明レベルの大まかな判断と記録された言語のサンプルを持ち帰ることだけです。それ以降のチームは訪問するたびに、少しずつ情報を集めようとします。その時系列が既知の並行世界や歴史時期のいずれかに類似している場合、経験豊かな工作員が即座に派遣されることもあります。そうでなければ、探索は慎重に段階を追って進められます。その時系列の科学技術が高ければ高いほど、探索もより慎重に行なわねばならないのです。
 隅々まで調査され尽くした時系列だけが、タイム・ツアー社などの組織に開放されます。通常、それらはセントラムの工作員が侵入できない、量子レベル4(Q4)や量子レベル5(Q5)に存在します。ただし、厳密な監視の下、量子レベル6(Q6)の特定の歴史残像世界も観光地として解放されています。

●新しい世界の命名(Naming New Worlds):
 新しく発見された時系列には、その次元座標を基にしたコード番号が与えられます。研究者たちは、調査過程の自然な流れとして、時系列をいくつもの非公式な名称で呼びますが、やがて1つの名前が定着し、それが公式の名称となります。

時系列調査の冒険(Penetration Adventures):
 新しい時系列の最初の調査を題材にすれば、1つの冒険やキャンペーンを組み立てることができるでしょう。それが高い科学技術を有する時系列だったり、類似した並行世界でないならなおさらです。冒険の導入のひとつとして、新聞を手にするというのがあります。たとえば、ナチスが第二次世界大戦で勝利した世界を少しずつ調査していく状況を想像してみてください……そして、時代は1960年なのです。


「奇跡の人々」(MIRACLE WORKERS) B512P/2B192P

[[奇跡の人々>インフィニット・ワールド#MIRACLE_WORKERS]]
 「奇跡の人々」は非営利で、インフィニティの“慈善”面となる組織です。国連の多くの救援活動機関と密接な連携をとっています。外部からの寄付や、インフィニティの他部門から技術許諾による莫大な資金援助を受けていますが、すべての場所で救援活動を行なうには時間も資金も常に不足しています。さらに、時系列シフトの発生を防ぐため、「奇跡の人々」は歴史残像世界での救援活動を厳禁されており、それが働く者たちにとって大きな不満の種となっています。
 「奇跡の人々」は営利を目的としていませんが、無償の奉仕活動を行なっているわけでもありません。たとえば、災害の被災者たちをどこかへ移住させる場合、被災者たちには何らかの見返り――たいていはインフィニティの他の任務への助力――が必要です。それでも、救助の対価としては、そうした契約は公平以上のものといえるでしょう。
 「奇跡の人々」は、ワクチンや解毒剤、食糧などによって状況を変えられるような場合、そうした物資を提供します。このとき、最も困難なのは、その活動の証拠を隠すことです。インフィニティがただ侵入し、占拠するだけの少人口の時系列なら話は違いますが、それは稀なことです。


超次元技術研究所(パララボ)(PARACHRONIC LABORATORIES) B512P/2B192P

[[超次元技術研究所>インフィニット・ワールド#PARACHRONIC_LABORATORIES]]
 インフィニティの純粋な研究組織で、超次元技術を発展させ、ホームラインにおける次元旅行の科学的理解を深めることに全力を挙げています。インフィニティは、"パララボ”で開発された試作装置のテストを、傘下組織の工作員に頼むことがあります。もし、旅行者が新たな運搬機の重大な事故を生きのびれば、パララボの研究者たちは調査にかかりきりになり……その事故を、もう一度ゆっくりと再現するよう求めてくるかもしれません。



外部組織(OUTSIDE ORGANIZATIONS) B512P/2B192P

[[外部組織>インフィニット・ワールド#OUTSIDE_ORGANIZATIONS]]
 政府、私設の区別に関係なく、多くの組織が運搬機を利用しています。理屈の上では、こうした装置はすべてインフィニティの監督下にあり、Iコップはいつでも監査を行なうことができます。しかし、運搬機は頻繁に虚偽の"遭難”報告がなされ、秘密裏に利用されています。あるいは、単に工作員や従業員の裏切りによって盗まれることもあります。これは、パトロールにとって常に頭痛の種となっています。
 インフィニティ以外では、30以上の組織が独自の転送機を所有しています。幸いなことに、これらは取り締まりがたやすく、どの転送機にも常勤でパトロールの監視チームがついています。

国際連合(THE UNITED NATIONS) B512P/2B192P

[[国際連合>インフィニット・ワールド#THE_UNITED_NATIONS]]
 国際連合は、公式上はさまざまな形でインフィニティを監督する立場にあります。しかし、ホームラインではその“管理”はゆるく、インフィニティが国連から隠している多元世界ではさらに緩くなります。もっとも、国際連合は、異世界での人道的な救援活動といった任務では、インフィニティの施設をほとんど自由に利用することができます。
 国際連合の加盟国は、別宇宙での自分たちの類似地域に介入されるのには反発することが多く、国連による多元世界への介入は、大きく異なる並行世界や、"類似世界”の国際連合が生き残り発展するために行なわれる場合がほとんどです。国際連合は常に、2〜4つの異なる時系列に積極的に介入しています。


政府(GOVERNMENTS) B512P/2B192P

[[政府>インフィニット・ワールド#GOVERNMENTS]]
 いくつかの国家(とくに中国、フランス、ドイツ、日本、ロシア、イギリス、アメリカ)は、“公に”目立った超次元能力を持ち、独自の転送機運搬機を多数所有しています。これらの政府はインフィニティから永久貸借権を受け、採掘や廃棄物処理、研究などを行ないつつ、"植民”用の世界を維持しています。
 政府との関係でインフィニティにとって最大の問題は、インフィニティの課した制限に抜け穴を見つけだすべく、政府が絶えず“存在しない”秘密の活動を続けていることです。運搬機を秘密裏に製造することは可能で、現に製造されています。また、主要国が秘密の調査や武器のテスト、外時系世界の搾取、さらには戦争までをも目的とした、超次元能力を密かに持っているのはまちがいありません。Iコップが、ホームライン出身と思われる高度な訓練を受けた工作員に遭遇することは珍しくありません。ときには、それを証明することさえ可能なのです。
 転送機を秘密裏に製造することも可能ですが、ホームライン世界ではまだそれを実行している国はないとされています――インフィニティはすでに、それらの検知手段を持っているという推測も流れていますが、まだそうした事実は知られていません。現在のところ、ホームライン以外の場所で製造された転送機は稼動していません。


研究財団(RESEARCH FOUNDATIONS) B512P/2B192P

[[研究財団>インフィニット・ワールド#RESEARCH_FOUNDATIONS]]
 インフィニット・ワールドは、科学の研究にとって実り多い世界です。科学者はまったく損なわれていない生物群だけでなく、何種類もの災害で完全に壊滅した世界を研究することができるのです。インフィニティは、ほぼあらゆる“非破壊的”研究を認めています。ゆえに“偉大な成果が約束される”などと計画書に言葉巧みに記されていれば、おそらく科学による多少の破壊など許されてしまうでしょう。
 これまで歴史や社会に関する研究が、群を抜いて多く行なわれてきました。歴史的な並行世界は、「もし〜だったら」という興味深い無数の疑問への答えを示してくれます。また、歴史残像世界はホームライン自体の過去を垣間見せてくれる――少なくともそう思える――のです!
 数多くの遠征隊が、調査研究のためにそうした世界に送りだされていますが、彼らは厳しい規制に縛られています。並行世界の「秘密」を厳守しなければならず、時系列シフト(518ページ)に巻き込まれて“遭難”しないよう、残像での歴史を変えてはならないのです。


次元を渡る賞金稼ぎ(CROSSTIME BOUNTY HUNTERS) B512P/2B192P

[[次元を渡る賞金稼ぎ>インフィニット・ワールド#CROSSTIME_BOUNTY_HUNTERS]]
 “リチャード.Z.ホーン。総額10億ドルのコンピュータ詐欺で逮捕。保釈中に失踪、タイム・トラッカー社の運搬機を強奪し、コーンウォリスで姿を消す。Iコップは放置された運搬機を発見、1週間の捜索ののち“とくに危険はない”として、ホーンの追跡を断念した。しかし、ホーンには100万$の賞金がかけられ、タイム・トラッカー社からも報奨金が支払われる。わたしはその両方を手に入れるべく……"

 数百におよぶ既知の並行世界には、逃亡者が身を潜める場所が数多くあります。Iコップ歴史残像世界の保安や安定を脅かす、あらゆる人物を追っています。しかし当面、インフィニティの覇権に明白な脅威とならない者まで追いかけるほど、人員に余裕はありません。そうした案件のいくつかは、FBIなどの諜報機関の超次元担当部門が取り扱っています。それ以外の事件の多くは、フリーランスの賞金稼ぎが引き受けます。
 インフィニティから、次元を渡る賞金稼ぎのライセンスを受けるには、厳重な身元調査に加え、適切な経験が求められます(パトロールの元隊員は優遇されますし、タイム・ツアー社のような信頼のある次元渡航会社での実績も有利な材料となるでしょう)。単独で仕事を行なう賞金稼ぎや、私設の諜報機関のために働く者もいます。そうした機関のなかで最も大きく、成功を収めているのが、インディアナ州に拠点を置くインフィニット・ジャスティス社です。


企業(CORPORATIONS) B513P/2B193P

[[企業>インフィニット・ワールド#CORPORATIONS]]
次元をまたにかけた開発は、大きな利益を生み出す可能性を秘めています。ホームライン世界によって、無数の事業が営まれています。

ホワイトスター・トレーディング社(White Star Trading) B513P/2B193P
[[ホワイトスター・トレーディング社>インフィニット・ワールド#White_Star_Trading]]
[[ホワイトスター社>インフィニット・ワールド#White_Star_Trading]]
 ポール・ヴァン・ザントによって設立されたホワイトスター社は、異世界間貿易会社の草分けにして、おそらく最大規模の企業です。ヴァン・ザントは、1つの世界との交易による利益で、初期の開発の大半を行なってきたのです。
 現在、ホワイトスター社は数百の次元に拠点を有していますが、表面上はどれも一般の事業を装っています。なかには、1日わずか数十kg程度の珍しい商品――たとえば、発売されたばかりのホリーのCDを1箱とか、伝書鳩のつがい1組など――を扱うだけの小さな拠点もあります。他には、穀物や鉱石を毎日、何百トンと運ぶ拠点もあります。荷を積みこまれた運搬船は地上から見えない位置まで移動したのち、異世界間の跳躍に移ります。
 ホワイトスター社は、以前はインフィニティの一部門でしたが、独占禁止法の取り決め(および競合会社の反対)により、法的にも財政的にも切り離されることになりました。いまもなおインフィニティとは“良好”な関係にあり、そのことが小規模な競合会社の不興をかっています。

その他の貿易会社(Other Traders) B513P/2B193P
[[その他の貿易会社>インフィニット・ワールド#Other_Traders]]
 あらゆる規模の多数の企業が、次元貿易によって利益を上げつつあります。ホームラインで安価な品は他所では概して珍重され、その逆もまた真なのです。しかし、ここでも「秘密」は守られねばなりません。
 新たな時系列が開放されると、貿易会社の代理人がまず現地に赴き、新たな商品や市場を調査します。なかには奴隷や麻薬を扱う違法の会社もありますが、それ以外はパトロールにとって得がたい味方となります。
 ホワイトスター社が異世界間貿易を牛耳っていますが、1社が独占するにはあまりにも多くの事業が転がっています。最大規模の企業の1つにタイムトラッカーズ社があります。ここで訓練を受けた運搬機のオペレーターは、さまざまな事業に駆り出されています。

タイム・ツアー社(Time Tours, Ltd.) B513P/2B193P
[[タイム・ツアー社>インフィニット・ワールド#Time_Tours_Ltd]]
 “今日が火曜日なら、きっといまは1066年だな”

 超時技術を利用する“独立系”会社のなかでは、タイム・ツアー社は群を抜いて有名です。その事業内容は、観光客を並行時系列に案内し、スリルに満ちた探検を体験させることです。旅の目的は単純な観光に限られません。最も人気を集めているのが、“真の大物”を求めるハンターにとってこたえられない挑戦――〈恐竜狩り〉です。インフィニティ・パトロールは旅行客が帰還するたびに、公式の“税関手続き”を行ないますが、旅行先の世界に特別な危険が発見されていないかぎり、ほぼ形式的なもので済まされます。
 タイム・ツアー社での労働には、危険がつきものです。雇用者は組織化され、装備を整え、さまざまな時系列の探検を先導せねばなりません。その仕事には観光客をトラブルから守ることも含まれています……ほとんどの観光客は適切な服装もわからず、言葉も不自由。さらに、故郷にいる人々のためにいい写真を撮ろうと、“軽騎兵の突撃”(クリミア戦争のバラクラバの戦いにおける英国軽騎兵の突撃)のただ中へのこのこと出ていくことさえあるのです。そのため、タイム・ツアー社は、“文化汚染”を未然に阻止するため、あるいは汚染されてしまったものを修復するため、あらゆる行動の権利を有しています――当然、払戻金なしに旅行を中止することも認められています。
 タイム・ツアー社にもいくつか競合会社がありますが、事業内容に差はありません――もっと規模が小さく、しばしば見かけ倒しのこともあります。なかには観光旅行ではなく、休暇を提供する企業もあります。そうした企業は興奮より贅沢を売りにしています。なかでも最も有名なのが、ジョンソンズ・ローマ社です(501ページ)。

採掘会社(Mining Companies) B513P/2B193P
[[採掘会社>インフィニット・ワールド#Mining_Companies]]
 大規模な事業の多くは、無人の時系列から鉱物資源をただ掘りだすというものです。インフィニティから貸与される採掘権のほとんどは、それ以外に利用価値のない世界に対するもので、多くは人工的な補助装置なしには人が居住できない世界です。しかし、そこには手の届く多くの富が眠っています……そして、欲深い採掘者たちは、“居住可能”な時系列でも密かに盗掘を行なっています。

廃棄物処理会社(Waste-Disposal Companies) B513P/2B193P
[[廃棄物処理会社>インフィニット・ワールド#Waste-Disposal_Companies]]
 放射性廃棄物、毒物、バイオハザードなどの有害物は、居住惑星に貯め置くのは危険すぎまたそうしてならないものでです。インフィニティは、荒廃しきった世界――真の地獄である世界――にのみ、廃棄物の破棄を許可しています。……また、廃棄物の処理を行なう会社には、廃棄物を転送機の位置に安全に送り届けるよう、あらゆる予防策を取るよう要請しています。

大富豪(THE VERY RICH) B513P/2B193P

[[大富豪>インフィニット・ワールド#THE_VERY_RICH]]
 ほんの一握りではあるものの、大富豪のなかには、趣味のために個人で運搬機を所有している者がいます。こうした人々のほとんどは、成功を収めた旅行者や収集家ですが、なかには“退行した”世界での権力闘争を楽しもうとする物好きもいます。こうした運搬機の乗組員は、すべてインフィニティの従業員で――表向きには、こうした道楽の目に余る悪行を防ぐためとされています。


超次元の植民地(CROSSTIME COLONIES) B513P/2B193P

[[超次元の植民地>インフィニット・ワールド#CROSSTIME_COLONIES]]
 インフィニティは、美しい無人の世界をいくつも、植民用に開放してきました。いくつかの企業がそうした世界の貸与を受け、それを開拓者たちにさらに貸し与えています。
 植民世界を支援する政府もあります。ほとんどの植民世界は、単に過剰人口の救済策として利用されているだけですが、アメリカが支援する5ヵ所、イギリスが支援する3ヵ所、フランスと日本が支援するそれぞれ1ヵ所では、“もう一つの社会”を築きあげる慎重な試みが行なわれています。そのうちの1つ「ウフル」はアメリカからの独立さえ宣言し、それを勝ちとることに成功しました。
 また、不法に運搬機を所有している政府や企業などの組織が支援する“秘密”の基地や植民地も存在します。そのうちいくつかは既知の時系列上に隠され、それ以外のものは目下インフィニティには知られていない世界に存在しています。これらは、特別な目的(採掘や貿易、研究など)を持つものは少なく、多くはあらゆるものからひたすら逃れようとする者たちが居住しているに過ぎません。
 植民世界は文明レベル4から、現在と遜色のないレベルまでさまざまです。

莊園世界(The Manor Worlds) B515P/2B195P
[[莊園世界>インフィニット・ワールド#The_Manor_Worlds]]
 数少ない非常に裕福な自然愛好家あるいは、プライバシーを重んじる者たちは、「荘園世界」に住んでいます。各荘園世界は、数千の私有地に分割されています。もしあなたが個人で運搬機を購入したり、貸与を受けられるほど裕福なら、ハワイやオザーク、サントロペ、ジャマイカなどを個人で所有することもできるでしょう……しかも、運搬機を使えば、たちどころにホームラインへ通うことができるのです!


コラム:「秘密」の保持(Keeping the Secret) B514P/2B194P

[[「秘密」の保持>インフィニット・ワールド#Keeping_the_Secret]]
 インフィニティセントラムは敵対関係にありますが、1つだけ共に同意する事柄があります。それは、超次元技術の秘密は自分たちで独占しつづけるべきだ、という点です。この機密事項――すなわち「秘密」――を知った“外時系人”は、内部に雇い入れられるか、評判を貶められるか、消されてしまいます。
 高度な訓練を受けたインフィニティの人員は、次元航行の秘密を守らねばなりません。実際これまでも、外時系人と接触の可能性がある工作員は、「秘密」をその地の信仰体系にあう作り話として用意してきました。「秘密」が明るみに出るような事態はすべて、ありふれた出来事として説明できるにこしたことはありませんしかし、それが不可能な場合は、進歩した科学技術をもつ者が次元間を往き来していると感づかせるより、魔女や妖精やUFOを見たと思わせるほうが好ましいでしょう。
 一方で、観光客が並行世界に乗りこむと、誰かがうっかり口をすべらす危険は少なくありません……。

消去剤(Eraser)
[[消去剤>インフィニット・ワールド#Eraser]]
 外時系の人間が訪問者の出現や消失を見てしまった場合や、ホームラインの科学技術が利用される現場を目撃した場合、最善の解決法は記憶を消してしまうことです。“消去剤”は、インフィニティセントラムの双方で利用されている、便利な記憶喪失の薬物です。これを使用された者が効果を免れるには、生命カ-3の判定に成功しなければなりません。失敗すると意識不明に陥り、覚醒したときには、直近の5D+45分間の記憶が完全に消えています。消去剤には錠剤、注射液、気体の三種類があります。また、過剰摂取しても、悪い副作用はないと考えられています。インフィニティ・パトロールは、この薬物をコップや民間の保安要員、許可を受けた航時活動に従事するガイドなどに配布しています。これは非売品であり、許可を受けた使用者は、入手したり投与した量を厳密に管理しなければなりません。しかし、闇市では一回分が平均500$で流通していることが明らかになっています。LC2。

最後の手段(Extreme Measures)
[[最後の手段>インフィニット・ワールド#Extreme_Measures]]
 多くを知りすぎた者がいて、消去剤でも問題が解決されず、そしてその人物が雇い入れるのに適さない場合、「秘密」の漏洩に対処するためにトラブルシューターが召喚されます。その人物の信用を貶める、知覚をねじ曲げるといった汚い手段から、目撃者の全滅と確たる証拠の完全な湮滅を目的とした奇襲攻撃まで、さまざまです。しかし、セントラムなら処刑されるような場合でも、インフィニティでは目撃者の失踪を好みます。誘拐し……コヴェントリーへ送りこむのです。

コヴェントリー(Coventry)
[[コヴェントリー>インフィニット・ワールド#Coventry]]
 コヴェントリーは、人類が繁栄しなかった量子レベル3の多元世界で、他にはない重要、かつ有用な性質を備えています。つまり、支援のない運搬機異世界跳躍者もそこに入ることも、そこから出ることもできないのです。その理由はいまだ不明です。コヴェントリーに入るには、ホームラインから転送機の支援を受けた運搬機を使うしかありません。
 Iコップコヴェントリーを使って、“知りすぎた者”を隔離しています。たとえば、ホームラインの活動を偶然目撃してしまった外時系人、法規を破ったホームライン人などで、なかには超次元技術に近づきすぎたとパトロールから警戒され、他の時系列から連れてこられた科学者もいます。インフィニティに所属していた不満分子まで、コヴェントリーに送りこまれます!それ以外にも、時間を渡る災害から救出され、自発的に定住した者もいます。
 コヴェントリーでは、あらゆる種類の冒険が可能です。たとえば、知りすぎた者を追放するという考え自体に反対する雇い人たちが、インフィニティの方から救出を支援する、などです。コヴェントリーの世界そのものは、文明レベル4の牧畜世界ですが、文明レベル8の医療技術を備えています。

倫理上の問題(Ethical Problems)
[[倫理上の問題>インフィニット・ワールド#Ethical_Problems]]
 インフィニティセントラムが一個人としてはともかく集団として外時系人を、人権をもつ“真の”人間以下の存在と見ていると結論するのは、決して不当ではないでしょう。インフィニティの宣伝部門はそうした考え方を公にしないよう努めていますが、外時系人コヴェントリーに送りこむたび、Iコップホームライン世界の“優越性”を匂わせます。さらに、外時系内での戦争で、数千の凄惨な死者を記録した歴史作品が撮影されるときには、映画製作者が外時系の人間とはホームラインの娯楽のための操り人形であると強調してみせます。



敵対組織(ADVERSARIES) B515P/2B195P

[[敵対組織>インフィニット・ワールド#ADVERSARIES]]
 インフィニティは、外時系の脅威に対するホームラインの中心となる守護者です。現在、そうした脅威として唯一知られているのが、異世界間跳躍の文化を持つ敵対者「セントラム」です。実際には、ほかにも多くの危険が存在していますが……インフィニティホームラインが恐慌に陥るのを憂慮して、そうした危険の存在を隠し続けています。

セントラム(CENTRUM) B515P/2B195P

[[セントラム>インフィニット・ワールド#CENTRUM]]
 「セントラム(Centrum)」は、ホームライン以外の人類の既知の時系列のなかで、独自に超次元技術を発展させた唯一の存在であり、ホームライン最大の敵です。「セントラム」の工作員は、インフィニティ・パトロールに対して次元をまたいだ策謀を仕掛けてきます。彼らがインフィニット・ワールドの完全な覇権を手に入れるまで、それが止むことはないでしょう。
 セントラムは、英仏連合帝国を祖に持つ世界政府です。両方の世界に存在した最後の歴史的人物の1人にアリエノール・ダキテーヌ(アキテーヌのエレオノール。1122?~1204。フランス王ルイ7世の妃、離婚後イングランド王ヘンリー2世の妃)がいます。この女性は連合帝国を打ち立てて安定させ、20年以上にわたって統治しました。帝国は発展拡大し、1700年以前のヨーロッパや1850年以前のアフリカやアジアを支配しました。アメリカ大陸への植民は、ごく当たり前のやり方で行なわれました。インディアンの部族は奴隷にされ、あるいは滅ぼされてしまったのです。
 1902年、連合帝国は世界規模の内乱によって崩壊します。貴族階級は腐敗し、もはや征服するものがなくなると、互いを攻撃しはじめました。そして、技術階級や軍部の人間が、その戦争を巧みに操ろうとしました。彼らは高度な教育を受け、信頼もされ、奉仕の訓練を受けていましたが、そのときすでに爵位をもつ主人たちに侮蔑の念をいだいていたのです—50年後、彼らが世界政府を再建したとき、そこには彼らの思想が映しだされていました。それが“セントラム”と呼ばれる、徹底的に組織化された実力社会なのです。
 セントラムの支配者たちは科学と秩序、そして力そのものを重んじます。子どもたちは絶えず能力を試され、その才能と成果によって、訓練や昇進が決定されます。
 哲学的にセントラムインフィニティの根本的な違いは、人の住む世界の扱い方にあります。セントラムは中央集権によってすべての世界を支配することを望み、複数の次元に広がる単一の世界間国家を創りだそうとしています。セントラムによる征服は、まずどこかの世界に潜入し、その政府をできるだけ安上がりに転覆させ、それを乗っ取るというやり方ですそして、その技術を向上させ、指導的立場の人々をセントラムに送りこんで教育を施し、思想を植えつけます。教化の期間が終了すると、セントラムに送りこまれた外時系人たちはその市民になりたいと望むようになります。ただ、現在のところ、そうした準備が“完了した”と判断された世界はまだありません。
 セントラムは文明レベル8中期の社会です。ホームライン同様、数十年前に超次元技術を編みだしています。

言語(Language) B515P/2B195P
[[言語>インフィニット・ワールド#Language]]
 生粋のセントラム人は、きつい訛りのある英語の一方言を母国語としています。セントラムは、二世代前に母国語以外のすべての言語を消し去りました。最近に至るまで、訓練された言語学者すら存在しませんでした――必要そもそも、とされなかったからです!
 まさにそれが原因で、セントラムは英語以外の言語を使用する世界や地域への侵入に、大きなハンデを抱えています。現在では、言語習得方法の実験が急ピッチで進められています――しかし、目下のところ、たとえば日本語を流暢に話せる者は、生まれついてのセントラム人のなかには存在しません。

インターワールド(Interworld) B515P/2B195P
[[インターワールド>インフィニット・ワールド#Interworld]]
 セントラムにおける、インフィニティ・パトロールにあたる組織です。世界政府が保有する戦闘組織として、インフィニティ・パトロールより大規模かつ冷酷です。また、超次元技術の理解においてさえ、優っている可能性があります。インターワールドの工作員はほとんど例外なく、セントラムに対して狂信的な忠誠心を抱いています。さらに、その多くが生体移植を受けています――セントラムは非常に潤沢な資金を持っており、個々の工作員に充分な装備を与えることが可能なのです。彼らは必要とあらば殺人を厭いませんが、才能を重んじ、能力のある外時系の人々を招きいれようとすることもしばしばです。また、友人に対する忠誠心、子どもを守ろうとする気持ちなど、ふつうの人間の感情も持っています。けっして怪物や機械ではありません。

時間をまたぐ闘争(Crosstime Conflict) B515P/2B195P
[[時間をまたぐ闘争>インフィニット・ワールド#Crosstime_Conflict]]
 セントラム量子レベル8、ホームライン量子レベル5(Q5)に存在します。量子レベルを1つ飛びこえるのは容易で、2つを飛びこすのは困難とはいえ可能なため、セントラムホームラインの領域はQ6(ホームラインがより容易に到達できる)とQ7(セントラムが優位に立つ)で“重なりあって”います。
 ならば、自然の境界が生まれるだろうと考えられるかもしれません。残念ながら、そうはなりませんでした。1つには、セントラムが攻撃的であること。もう1つには、Q6に他のあらゆる量子レベルを合わせたより、さらに有用な世界があったためです(その理由はいまだわかっていません)。
 セントラムは、ホームラインより古くから、時間をまたいだ往き来を行なってきたと言われています。それは当初、主に資源を求めて、無人の世界へ入るために使われていました。セントラムが持つ超次元数学への理解の度合いは、ホームラインのそれをはるかにしのいでいます。彼らはその時系列が不安定かどうかを明確に割りだし、干渉によって自分たちの望む方向に動かすことができます(518ページ、「時系列シフト」を参照)。ホームラインの科学者たちはまだそうした方法を編みだしてはいません――少なくとも、インフィニティはそれを認めていません。
 ホームラインセントラムの存在に気づいたのは9年前、インフィニティの最も重要な秘密研究所の1つで、1人の侵入者が捕らえられたときに遡ります。男は自白剤の効果で、じつに奇妙な話をしたのです! インフィニティは友好の申し出を託して、その最初の工作員を解放しました。セントラムはただちにそれを受けいれ、インフィニティの領域を侵したことを謝罪しました。しかし、彼らの“友好”がまったくあてにならないことが、たちまちのうちに露見します。友好を装うにしても、セントラムには、そもそも真の協力関係を築いた経験自体ほとんどなかったのです。8年前、セントラムはQ6から4つの時系列を奪い取りました! そして1年後、“インフィニティ戦争”が現実のものとなったのです。
 セントラムが、ホームラインのような“歴史残像”を持たないことは明白です……あるいはそうした歴史残像世界が存在するなら、それらはホームラインの手の届かない量子レベルにあるのでしょう。インフィニティセントラムの心理を探る有効な情報源をもたないのは、このためなのです。
 興味深いことにセントラムは、星々から算出するかぎり、ホームラインとまったく同じ“時間”上にあると思われています。ホームライン以外で、超時転送機を維持できる既知の時系列セントラムのみ。“時間”の一致は、この事実と何かつながりがあるのでしょうか?答えは誰も知りません。


次元をまたぐ犯罪者(CROSSTIME BANDITS) B516P/2B196P

[[次元をまたぐ犯罪者>インフィニット・ワールド#CROSSTIME_BANDITS]]
 過去5年間、インフィニティは、10件を超える次元をまたいだ犯罪活動を摘発してきました。実際には、より多くの犯罪行為が存在するのはまちがいないでしょう。
王となるべき者(The Men Who Would Be King):
 優れた技術や歴史の知識を活かし、別の時系列で権力の座を狙う誇大妄想狂はつねに存在します。そうした者たちを見つけだすために、インフィニティ・パトロールセントラムの工作員を捕らえるのと同じ監視方法を取っています。実際、次元世界への侵入者が、ホームラインの冒険者かセントラムの工作員であるかを瞬時に見わけるのは困難なのです!
次元略奪者(Time Raiders):
 ただ金銭だけを狙う犯罪者は――狙いが宝飾品であれ、モナ・リザであれ、あるいは核弾頭であれ――捕捉が困難です。もっとも狡猾な略奪者は歴史残像世界に侵入し、目当ての品物が“歴史上で”失われる寸前に奪い取ります。そうすることで、パトロールの介入を招く時系列シフトを避けようとするのです。富裕な蒐集家相手の“盗みの請け負い”は確実な儲けになります……しかしここでは、知的財産の窃盗から武器の密輸に至るあらゆるものに、大儲けのチャンスが潜んでいるのです。
不法移民と次元をまたぐ奴隷取引(Illegal Immigration and Crosstime Slavery):
 これは、現在重要な問題となりつつあります。安価な労働力が必要なら?適当な次元を見つけだし、不法移民を扱う輸送業者を雇って、そうした移民を地上の境界ではなく次元の境界を超えて運びいれるのです。不法移民は当局に出向いたところでコヴェントリーへ送りこまれるだけ。そこで彼らは、偽造の市民証を買えるだけの金を稼がせてやるという言葉を信じ、安い賃金で働くしかなくなってしまうのです……犯罪組織は、売春婦であれ、兵士であれ、核物理学者であれ、おかまいなしに運びいれます。そうした者たちを使うのに、脅迫さえ必要ないこともあります。たとえば、ある歴史残像世界のスターリングラードからナチスの小隊を「救出」してやれば、彼らはよろこんであなたの忠実な傭兵となるでしょう。また、著名な映画俳優や歌手、美女を扱う不気味な闇市もあります。ほんの1ヶ月前にも、イタリアの特殊介入部隊(Gruppo Intervento Speciale - G.I.S.)が、誘拐されたトロイのヘレンを会員制の売春宿から救出したばかりです。
交換要員(Replacements):
 ベータ地球のような近接した並行世界には、ホームラインの多くの人々の映し身(“デュープ(dupes)”)が存在しています。ホームラインの住人たちは、死んだ子どもや古い恋人や宿敵をそうした世界から連れてこさせるために、金を支払い続けてきました。また数こそ少ないものの、ホームラインのオリジナルが殺され、“デュープ”がそれに成り代わったこともあります。これを使ったよくある詐欺を1つ。たとえば、ホームラインでは億万長者の実業家であるジョンソン氏が、ベータ地球では市場崩壊のために無一文の宿無しであるとします。マフィアはベータのジョンソンをとらえて、ホームラインにいるジョンソンと交替させてやろうと取り引きをもちかけるのです……彼らにとって都合のいい傀儡として。


現実解放軍(Reality Liberation Force / RLF) B517P/2B197P

[[現実解放軍>インフィニット・ワールド#RLF]]
 現実解放軍(RLF)はホームラインに拠点を置くゲリラ組織で、国連世界間評議会の“他時系列に対する非民主的かつ不公平な支配と開拓”に対抗し、平和で科学的な目的以外の次元航行の中止を求めています。
 RLFは、幅広い支持を集めています。いくつかの主流団体、とりわけ有名な“超次元開拓への反対者党(Peopleag ainst crosstime exploitation / PACE)"は、RLFの看板組織として活動しています。また、RLFは、政界や軍部に多くの支持者を有しています――ただし、そうした人々の多くは超次元航行への反対より、むしろ評議会を自分たちの権威を侵害するものと見て反発しています。


“陰謀者”:インフィニティの支配者たち(THE CABAL: MASTERS OF INFINITY) B517P/2B197P

[[“陰謀者”:インフィニティの支配者たち>インフィニット・ワールド#THE_CABAL_MASTERS_OF_INFINITY]]
 インフィニティの職員が接触した魔術師超能力者、超次元生物(518ページを参照)、あるいは超自然の存在のうち、無視できないかなり数が“陰謀者”と呼ばれる巨大な超常集団の存在を述べています。彼らによれば、“陰謀者(the Cabal)”は何千年間も闇にひそみ、秘密結社や秘術による陰謀によって、インフィニット・ワールドでの出来事を裏で操作してきたというのです。“陰謀者”がいずれの地球(あるいは“複数の”地球!)を故郷と呼ぶかは、インフィニティの直面するもっとも複雑でひょっとしたらもっとも不愉快な謎の1つです。
 こうした噂のなかでも特に不穏なのが、“陰謀者”が“存在の高位次元(higher dimensions of being)”に出入りできる、というものです。高位次元とは、アストラル界(Astral Realm)や鏡像界(the Iconic Realm)、純粋精神界(the Realm of Pure Spirit)として知られる、インフィニット・ワールドの“上位”にあたるとされる次元のことです。“陰謀者”のメンバーは、秘密の知識を求めてそうしたいくつもの領域とインフィニット・ワールドのあいだを行き来していると言われています。
 なかでも最も恐ろしいのは、“陰謀者”が分裂したという噂です。堕落した大魔導師とデーモン・ロードたちが、インフィニット・ワールドをその手駒および戦場として、密かな戦争を繰り広げているという説です。敗者は追放され、その多くは“陰謀者”の手の届かない並行地球の征服に血道をあげます。そこで力を蓄え、復讐をもくろんでいるのです……。


ライヒ-5(Reich-5)(REICH-5) B517P/2B197P

[[ライヒ-5>インフィニット・ワールド#Reich_5]]
 量子レベル3にあるライヒ-5は、インフィニティが発見した5番目の“ナチス勝利”の並行世界です。ライヒ-5は現在2010年で、ドイツと日本、ナチス化された合衆国に支配された、おそろしいほど効率主義の世界政府によって統治されています。ほとんどの分野で文明レベル8の段階にありますが、宇宙工学やねじ曲がった遺伝学――そして、おそらく超能力工学については――さらに進んでいます。
 当然、インフィニティはこの世界への渡航を固く禁じており、「秘密」の漏洩を防ぐため、その存在をひた隠しにしてきました。しかし、10年間の封じ込めの後、予想外の出来事が発生しました。SSの支配下にあるブルゴーニュ地方のナチスの超心理学者たちが、超能力による異世界跳躍者を発見したのです(あるいは、他の時系列から来た能力者が捕らえられたのかもしれません――インフィニティは真相をつかんでいません)。そして、その能力の制御や開発について、高度の知識を手に入れたのです。
 インフィニティがその事実に気づいたとき、ナチスはすでに20名ほどの異世界跳躍者を有していました。その能力と信頼性にはかなりのばらつきがあったものの(なかには、能力を解放するために危険な混合薬物を飲まねばならない者もいました)、選別交配やクローン作成、超能力移植の技術を駆使し、さらに多くの能力者を生みだしつつあります。さらに悪いことに、能力者同士が協力し、実験的な超能力リンクを用いることで、何人かの異世界跳躍者は自分の体重の4、5倍の重量を一兵士の小隊や小さな武装車輛さえ―運べるようになっているようです。
 ライヒ-5はほどなく、次元をまたぐ最初の侵略を開始しました。予言が現実のものとなった終末後世界“ノストラダムス”へ侵入したのです。ノストラダムスの人々は侵略者の到来を予見していましたが、そのことはほとんど役に立ちませんでした。それどころかその事実がまた、征服者たちの使命感を駆り立てました。そして、事態は悪化の一途をたどっています。
 ノストラダムスは“次元通路”の結節点であることが明らかになり、ナチスの異世界跳躍者はそれを見つけだして活用しました。ナチスが“クロノバーン”と呼ぶその通路は、存在と消滅の間をゆらぎながら、少なくとも数個の次元にまたがっていると考えられており……ナチスはすでにその探索をはじめています。まだ多少の危険を伴いながら小さな荷を転移させることしかできませんが、いずれより多くのことが学びとられるでしょう。
 ライヒ-5は、超次元理論に関して、セントラムホームラインよりはるかに遅れています研究者はすべて、非常に奇矯な“アーリア人の神秘主義者”で、ベルリンの“唯物主義者”たちから秘密を隠すことに没頭しているため、その弱点にいっそうの拍車がかかっているのです。
そのため、インフィニティはまだ緊急作戦――たとえば核弾頭をライヒ-5の既知の軍事基地や政治中枢に撃ちこむ――を実行に移さず、ライヒ-5に政情不安を引き起こすことに集中しています。いずれにせよ、“超次元親衛隊”は、すでに無数の次元にある拠点に送りこまれています。
 ライヒ-5が量子レベル3の世界すべてを支配できるだけの能力を有していること――そして、同盟者を得れば、大きく動きだすであろうことに――インフィニティは遅まきながら気づきつつあります。



超次元生物(パラクロノゾイド)(PARACHRONOZOIDS) B518P/2B198P

[[超次元生物>インフィニット・ワールド#PARACHRONOZOIDS]]
 そのウサギの穴は一見、地下道のように横に伸びていた。だが、突然、下向きの穴にかわった。それがあまりに急だったので、アリスは立ちどまろうと考える間もなく、深い深い井戸に落ちていった。
――『不思議の国のアリス』ルイス・キャロル

 「超次元生物(Parachronozoids)」は、生まれつき異世界跳躍の能力を備えた生き物です。超次元生物にはさまざまな種類があり、誕生する次元もまちまちです。白いウサギや美しい雄鹿、黒馬などのように、ふつうの動物の姿をしているものも、言葉を話すものもいます。それ以外のものは、謎に包まれています。また少数ですが、人類が知りたくもない、恐ろしい半物質の怪物まで存在します。超次元生物はすべて、特徴次元跳躍者/異世界」(55ページ参照)を備えています。ほとんどが特別増強トンネル」を備え、次元間通路を作りだし、移動することができます。もちろん、そうした通路は通過した後に閉じられ、再び開かれる保証はありません。うかつに飛び込んでしまうと、厄介な結果を引き起こすかもしれません。たとえば、猟師が美しい白い雄鹿を見かけて後を追ううち、徐々に世界が消えていき……雄鹿の姿も消え、猟師だけが別の世界をさまよう羽目になるのです!
 超次元生物の多くは特徴ワープ移動」(96ページ参照)も持っており、次元同様、空間を跳躍する能力を備えています。
 超次元生物のなかには、潜在的だったり、発現した超能力(たいていは、ESPテレポーテーション)に引き寄せられるものが存在するようです。また、マナが豊かな地域を捜し求めるものも存在し、そうした超次元生物魔法によって召喚したり、おびき寄せる手段が噂として囁かれています。確かに、魔術師たちはそうした存在を捕らえて手なづけ、背中にまがたったり引き具をつけて、異世界跳躍用の乗騎として利用しています。
 超次元生物の中には捕食生物や吸血種も存在し、獲物を求めて次元から次元へとさまよっています……。

コラム:異世界跳躍者(World-Jumpers) B518P/2B198P

[[異世界跳躍者>インフィニット・ワールド#World-Jumpers]]
 「次元跳躍者/異世界」の特徴(55ページ参照)をもつものはすべて、“異世界跳躍者(World-Jumpers)”です。この能力は「超能力」と思われていますが……正確なことはわかっていません。
 インフィニティはこの能力をもつものを数名、傘下に収めており、また常に新たな人材を求めて眼を光らせています。ホームラインの出身者はごくわずかですが、そのうちの少なくとも1人は、ヴァン・ザントより先に多元世界を訪れたことがあると主張しています……しかし、彼は自分が狂気に陥ったと思いこみ、そのことに口をつぐんでいます。インフィニティ異世界跳躍者は最高の密使であり、特殊工作員であり、トラブルシューターです。セントラムも同様に異世界跳躍者を抱えていることは衆目の一致するところです。
 インフィニット・ワールドでは、「次元跳躍者/異世界」の特徴は、通常、同一量子レベル内での跳躍として機能します。量子レベル間の跳躍は、量子レベルが1異なるごとに-5の修正を受けます。こうした性質をもつものは、自分がどの量子レベルにいるかを“感じ取る”ことができます。



時系列シフト(TIMELINE SHIFTS) B518P/2B198P

[[時系列シフト>インフィニット・ワールド#TIMELINE_SHIFTS]]
 量子レベル6でインフィニティが把握している379の時系列のうち281は、“歴史残像”――すなわちその歴史の早い時代には、ホームラインとまったく同一だった世界です。“未来”に属する歴史残像は知られていません――もっとも、高度な科学技術や日付のより進んだ並行世界は存在しています。Q6以外の量子レベルでは、歴史残像は確認されていません。
 ホームラインが別の量子に何度も“反映”されるのはなぜでしょう?誰もその答えを知りません。歴史残像は、歴史を通じて不規則に存在します。紀元前3000年以前の歴史残像はほとんど存在せず、紀元前12,000年以前となると皆無です。複数の歴史残像を持つ時代もあれば、1つも持たない時代もあります。
 すべての歴史残像では、時間はホームラインよりゆっくりと流れています――ただ、その違いはほとんど気づかないほどわずかです(最大でも250,000年ごとに1年の差)。しかし、歴史残像を生みだした元々の“事件”が35億年前おそらく地球に最初の生命が誕生した時代―に起こったとするなら、このわずかなずれによって、歴史上の相違が生じることを説明できるかもしれません。
 歴史残像は、歴史の研究に信じられないほどのチャンスを与えてくれます……しかし、同時にとてつもない危険ももたらします。歴史残像を訪れる者は、時系列に重大な変化をもたらすような行動を取らないよう厳重な警告を受けます。これは倫理の問題ではなく、安全の問題だからです。Q6の歴史残像を支えるバランスは、非常に脆いものなのです。もし、歴史残像の未来の道を変えるような事態が起これば、その世界は消滅してしまうかもしれません!実際にそうした事態が起きた最初の数回は、世界が破壊されたのだろうと考えられていました。しかし、インフィニティ歴史残像への移動をすべて封鎖しようとした矢先、失われたはずの世界が再発見されたのです……それも、Q5において!
 セントラムは、そうした“シフト”を意図的に起こすことができると考えられています。インフィニティによる発見以来、Q6から消滅した24の歴史残像のうち、4つがホームラインにより“近づいて”、Q5に現われたことが確認されています。消滅したうちの11はセントラムに近いQ7に移動しています……セントラムは、それらのシフトのうち少なくとも6つを意図的に行なっています。1つはホームラインを挟んで“反対側”のQ4に移動してしまいました。また、失われた時系列のうち8つは、いまに至るまで発見されていません。
 インフィニティの規則では、歴史残像世界への訪問には特別な配慮が必要とされています――気ままな旅や“観光”は認められません。Iコップは、セントラムによる介入の兆候に常に目を光らせています。しかし、歴史残像に大量の工作員を送りこむことはできません――そんなことをすれば、避けようとしているはずの変化を、かえって引き起こしてしまう危険性が跳ね上がるからです! その代わりに、Iコップは戦略的に配置した工作員の活動や定期的な巡回に重きを置いています。

コラム:多くの謎(Mysteries) B519P/2B199P

[[多くの謎>インフィニット・ワールド#Mysteries]]
 ホームラインインフィニット・ワールドに対するこれまでの理解は、とても完璧と言えるものではありません。いつ起こるかわからない“掟破り”の状況が、冒険の出発点となるかもしれません!2つの例を挙げておきます。

ブージャム(ルイス・キャロルの『スナーク狩り』に登場する危険な架空の生き物)(Boojum):
[[ブージャム>インフィニット・ワールド#Boojum]]
 まったくありふれた時系列が――歴史残像世界でも、Q6上にあるわけでもない――消滅しました。その時系列は、4ヶ月後に出現しますが、6ヵ月後には再び消滅してしまいます。つまり……“何か”が通常の時系列量子シフトを引き起こしているのです。あるいは、この時系列は正常ではないのかもしれません! いずれにせよ、ブージャムにいるホームライン人は、インフィニティの行政官や研究者同様、恐慌に陥ります。

ベータ・セントラム(Centrum Beta):
[[ベータ・セントラム>インフィニット・ワールド#Centrum_Beta]]
 新たに侵入が行なわれたQ7の時系列は、ホームラインの研究者たちの考える1895年のセントラムの世界とまったく同じと考えられます。歴史残像なのでしょうか?たとえそれが普通の並行世界であろうと、興味深いのは間違いありません。いずれにせよ、いままでなぜこれ一つしか発見されていないのでしょうか?さらに忘れてならないのは、Q7はホームラインよりセントラムに近いという点です。そこにセントラムの工作員がからんでいるのは、ほぼまちがいないでしょう。


セントラムの介入(CENTRAN INTERVENTION) B519P/2B199P

[[セントラムの介入>インフィニット・ワールド#CENTRAN_INTERVENTION]]
 セントラムは、歴史残像をQ8に“近づけ”ようとして、これまで数度の介入を行なってきました。その手段は、洗練の一途をたどっています。どのような変化が望みの効果を生み出すかを予測する方法を、セントラムが持っているのはまちがいありません。
 しかし、セントラムの予測は絶対確実なわけではありません。少なくとも4つの時系列において、セントラムによる大規模な介入は、まったく何の効果ももたらさなかったとされています。そうした時系列は、ホームラインとの類似性以外の何かによって“固定”されていると思われています(500ページ、「アンカー」を参照)。
 セントラムがなんとか介入に成功した場合、GMはその効果が現実となるまでの時間を決定します。シフトが発生するには数時間、あるいは数日一瞬にして起こることはありません―かかります。また、セントラムの工作員は介入をやりおおせるために、その場所にとどまらねばなりません!シフトが発生してからでも、介入の効果を打ち消すことによって、シフトを逆転できる可能性はあります。そのため、セントラムがひとたびQ6の時系列をQ7やQ8にシフトさせると、インターワールドセントラムの内部組織)の工作員はホームラインの人員の抹殺を企てます。こうした攻撃は公然とではなく、秘密裏に行なわれることが多いでしょう。

セントラムの介入の例(Examples of Centrum’s Intervention) B519P/2B199P
[[セントラムの介入の例>インフィニット・ワールド#Examples_of_Centrum_s_Intervention]]
 セントラムによる介入の成功例には、次のようなものがあります。
  • 1902年、ロンドンに核攻撃(The atomic destruction of London in the year 1902):
    • セントラムがこれほど大規模な攻撃を試みたのは、これが最初にして最後でしょう。この事件はセントラムでの政治問題に発展、指導勢力は権力の座を追われました。こうした極端な介入は、どのような事件であれ効を奏することはまずありません結果を予想することが、あまりにも困難だからです。
  • 1554年、戴冠前のエリザベス王女を処刑(The execution of Princess Elizabeth in 1554):
    • これによって、妹のメアリがエリザベス王女とはまったく逆の影響を受けたのはまちがいないでしょう。
  • 1833年初頭、英国海軍の軍艦ビーグル号が乗組員もろともに沈没(The sinking of HMS Beagle with all hands in early 1833):
    • 行方不明者のなかには、チャールズ・ダーウィンがいました。しかしこの時系列は1837年まで“消滅”しませんでした。
  • 1960年、ユーリ・ガガーリンの宇宙カプセルを妨害(The sabotage of Yuri Gagarin’s space capsule in 1960):
    • これによって、ロシアの宇宙計画内部に一連の魔女狩りや責任のなすりあいが生じました。それは、やがて戦略ロケット軍にまで拡大し、フルシチョフの権力掌握を非常に危ういものにしました。クレムリンの政情不安は1962年のキューバ危機に影響を与え、その結果アメリカとイギリスは、ソビエトのミサイル計画および宇宙計画に対する国際連合の管理を強めることができました。その後まもなく、この時系列はQ8にシフトしています。

長期に渡る介入(Long-Term Intervention) B519P/2B199P
[[長期に渡る介入>インフィニット・ワールド#Long-Term_Intervention]]
 インフィニティは「非常に長期に渡る介入」の可能性を憂慮しています。たとえば、アレクサンダー大王やカール・マルクスといった重要な人物を子供の頃に殺したとしても、歴史的な変化は何年間かは表に現われません……しかし、ひとたびその変化が現れたなら、とてつもない影響を及ぼします。おそらく、セントラムもそうした介入の効果を計算できないでしょうあるいは、人間の文化があるからこそ歴史残像が存在しているのなら、人々のあり方が突然大きく変化したときのみ、変化が生じるのかもしれません。歴史の鍵を握る人物が幼い頃に取り除かれたとしても、他の誰かが現れ、同じ歴史的役割りを果たすのかもしれません。つまり、台頭のはるか以前にヒトラーを抹殺しても、結局は同じような独裁者が現れ、流れにはほとんど変化がないかもしれないのです。時間を越えた介入は、いまだ科学というよりは芸術の域にあります。

介入に関わる冒険(Intervention Adventures) B519P/2B199P
[[介入に関わる冒険>インフィニット・ワールド#Intervention_Adventures]]
 歴史残像に対するセントラムの介入阻止は、Iコップでチームを組むPCたちにとってすばらしい冒険になるでしょう。GMは、次のような設定を行なうことができます。

●敵の工作員は数が少なく、秘密裏に行動しています。セントラムから量子レベル6に人員を送り込むのは難しく、費用もかさみます。

●敵の計画は秒刻みの時間管理を必要とします······そうでなければ、彼らはその計画をすでに成し遂げているはずです。セントラムが介入の計算にどんな手段を使っているにしても、答えが常に“1902年のロンドンへの核攻撃”のように単純なものなら、もっと頻繁に成功を収めてきたでしょう。しかし、敵は確実に予備の計画を用意しています。

インフィニティ・パトロールは、敵の潜入勢力について一般的な情報を工作員に与えます。工作員にとっては、上司がどんな手段でその情報を手に入れていようと、知ったことではありません!情報は、簡潔に伝えられます。たとえば、「シグマ-6Aは1453年の歴史残像だ。セントラムがドイツに侵入した証拠がある。連中が大きな効果を狙っているとするなら、標的はグーテンベルグの活版印刷機だろう······別のチームがほかの可能性を調査中だ」などという具合です。これは、介入への対抗チームが小規模である理由の1つです。ホームラインは、あらゆる可能性をしらみつぶしに調査しなければなりません。

逆介入(Intervention in Reverse) B520P/2B200P
[[逆介入>インフィニット・ワールド#Intervention_in_Reverse]]
 GMは設定をすべてひっくり返してもかまいません。インフィニティ時系列への介入に関わる秘密を解き明かし、量子レベル7にセントラムの一連の歴史残像を発見しました。そして、攻撃チームを送りこみ、それらをQ5にシフトさせようとしています。すべては逆転しています。ホームラインのチームは特殊任務を帯びています――もしそれが成功すれば、その時系列を有利な形にシフトできるとコンピュータが予測したのです。セントラムの対抗部隊は、多数の小チームで構成されています……ホームラインのチームがそれらをあからさなまやりかたで始末すれば、知らせを受けたインターワールドは、その地に大量の援軍を送りこむでしょう。


コラム:置き去りにされた!(Marooned!) B520P/2B200P

[[置き去りにされた!>インフィニット・ワールド#Marooned]]
 あなたのいる世界が時系列シフトによって、転送機の範囲(ホームラインならQ3~Q7、セントラムならQ6~Q10)から外へ移動してしまうと、あなたは身動きできなくなってしまいます!このとき、2つの選択肢があります。シフトを元に戻すか、他の移動手段(敵の運搬機や、友好的な異世界跳躍者など)を探すかです。
 他にも孤立してしまう可能性はあります。
量子サルガッソ(Quantum Sargasso):
 “量子サルガッソ”とは、異世界跳躍者運搬機が入りこめるものの、出られない次元のことです。転送機が焦点を合わせることはできますが、回収は行なえません。可能な脱出法は“次元門”(508ページ参照)を探し出すか、魔法を使うことだけです(たとえば、239ページの《異次元移動》など)。
マナ欠乏(No Mana):
 魔法がまったく働かない世界も存在します。魔法による異世界跳躍者や《異次元移動》の呪文などによって、そうした次元に侵入することはできますが、出られなくなってしまいます!


歴史残像への不法介入による影響(EFFECTS OF TAMPERING WITH ECHOES) B520P/2B200P

[[歴史残像への不法介入による影響>インフィニット・ワールド#EFFECTS_OF_TAMPERING_WITH_ECHOES]]
 1つの時系列全体を別の量子レベルへ“動かす”には、特筆すべき変化が必要です。“特筆すべき”変化がどのようなものかは、GMが決定します。どのような変化がそうしたものなのか、誰にもわからないからです。見知らぬ者が何人か歴史に現われただけでは、それほど大きな違いにはならないでしょう。しかし、それでも歴史の重要な瞬間に行き当たる可能性は常にあります。1938年のワシントンを訪れた者が列車の最後の座席を手に入れたため、ある上院議員が大統領との会合に遅れてしまい、鍵となる軍の配置に失敗……その結果、第二次世界大戦が勃発したとき、アメリカが敗北してしまう可能性もあるのです。
 一般に、その変化が歴史において“もし〜だったら”と引き合いに出されるようなものであれば、それは特筆すべき変化といえます。しかし、シフトは永続的なものとかぎりません。ある時系列は、1780年にセントラムがベネディクト・アーノルド(アメリカ独立戦争時の軍人。ウエストポイントを敵に売り渡そうとした)に手を貸し、革命戦争を英国の有利に導いたため、Q7ヘシフトしてしまいました。その後、この切り離された世界で、Iコップの精鋭部隊がボストンで英国艦隊に妨害工作を働き、ふたたび歴史の流れを変え、時系列をQ6に戻したことがあるのです!
 歴史は逸脱を吸収できるほど“柔軟”であるのは明らかです――あまり時間が経過しないうちに、正しく修復されれば。
 ゲームにおいては、ほんのわずかな変化では――すくなくとも瞬時には――シフトは起こらないとしてください。ただし、GMが“歴史を変える可能性がある”と判断するような行動を外時系の人物が取った場合、数分あるいは数日以内にシフトを起こしてもかまいません。量子レベルにして1のシフトが普通ですが、複数の量子レベルをまたぐシフトも起こり得ます。シフトの“方向”はランダムに選んでください。ただし、超時干渉が歴史にどう影響するか、正しい理解の上で立てられた特別な計画に従い、工作員が引き起こしたシフトは除きます。


シフトを起こした時系列の追跡(LOCATING A SHIFTED TIMELINE) B520P/2B200P

[[シフトを起こした時系列の追跡>インフィニット・ワールド#LOCATING_A_SHIFTED_TIMELINE]]
 失われた時系列の位置を瞬時に発見できる高度な装置やスーパーコンピュータを有するのは、インフィニティセントラムだけです。そうした探査には、一週間の作業と〈物理学/多元物理学〉の判定に成功しなければなりません。その時系列が、研究者の“本拠”と同じ量子レベルにあれば判定に+3、隣接する量子レベルにあれば判定に+1のボーナスがあります。量子レベルが2つ離れていれば修正はありません。3つ~4つ離れていれば、発見できません!
 装備が貧弱な場合、探査には数週間から数年を要します(GMが判断)――さらに、判定には大きなペナルティが課されるでしょう。

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